1456 日本建築学会大会学術講演梗概集 (東北) 2009年 8 月 施工性を考慮した高強度コンクリートの調合に関する検討 ( その 5 コア強度に関する検討) 高強度コンクリート 構成割合 模擬柱部材 m S n 値 温度履歴 正会員 ○女屋 英明 * 1 正会員 中田 善久 * 2 同 斉藤 丈士 * 3 同 春山 信人 * 4 同 關 裕司 * 1 同 田村 裕介 * 5 同 大塚 秀三 * 6 同 毛見 虎雄 * 7 圧縮強度 500 1000 200 150 100 200 500 200 1000 200 100 150 1 .はじめに いる 1 ) , 2 ) , 3 ) と考えられる.また,単位粗骨材かさ容積 前報( その 1 ∼その 4 ) に引き続き,ここでは,実大 が大きくなると中央部の最高温度は若干高くなる傾向 施工実験における模擬柱部材の内部温度およびコンク を示したが,外周部では反対の傾向を示したことか リート強度の補正値( 以下,強度補正値と称する) m S n ら,これは試験のばらつきによるものであり,細骨材 につ い て 検 討 した 結 果 を 述 べ る. と粗骨材の構成割合の違いが最高温度に及ぼす影響は 2 .実験概要 小さい と考え られる .なお,目標と するス ランプ( ス 前報( その 4 ) において対象としたコンクリートを用 ランプフ ロー) が異な っても ,最高温 度はほ とんど 変 いて,硬化コンクリートの性状として模擬柱部材の内 化しなかった.これより,本実験の範囲では,高性能 部温度ならびに模擬柱部材から採取したコア供試体の A E 減水剤のセメントに対する添加率( 以下,S P 添加率 圧縮強度( 以下,コア強度と称する) を調べた.コンク と称する) の違い が模擬 柱部材 の最高 温度 に及ぼ す影 リートの打込み時期と構成割合の変化要因の組合せ 響は 小 さ い と 考 え ら れ る. は,夏期に単位水量,標準期に単位粗骨材かさ容積お ( 2 ) コンクリート強度の補正値 m S n よ び 冬 期 に 目 標 ス ラ ン プ ( ス ラ ン プ フ ロ ー ) であ る . ①強度補正値 2 8 S 2 8 図 -1 に示す模擬柱部材は,JASS 5T-704:2005 に準じ 調合の変化要因と強度補正値 2 8 S 2 8 の関係を図 - 3 に て作製し,上下を断熱材で挟み,柱の中央部における 示す.図中には材齢 2 8 日におけるコア強 度の平均値 熱履歴を模擬した形状とした.また,コア 断熱材 供試体の試験材齢は 2 8 および 9 1 日とし, コア供試体は試験を行う 2 日前に模擬柱部 温度測定点 材より抜き取り成形した後,試験前まで水 温度測定点 材齢28日 中で標準養生を行った.なお,ここで検討 している強度補正値 m S n は,材齢 m 日にお ◆ ◆ ける管理用供試体の圧縮強度から材齢 n 日 ◆ ◆ におけるコア供試体の圧縮強度を差し引い 材齢91日 た値である.ただし,冬期の模擬柱部材は 現時点で材齢 9 1 日に達していないため強 度補正値 2 8 S 9 1 は得られていない. 断熱材 300 100 400 100 100 3 .結果および考察 500 500 300 100 400 100 100 1000 打込み前の高強度コンクリートの空気量 500 500 は,全ての調合で設定空気量± 1 %と一定 1000 図 - 1 模擬柱部材の概要 の範囲にあったため,本検討において空気 100 標準期 W/C=35% W=185kg/m3 SF=50cm 80 最高温度(℃) 量の差が圧縮強度に及ぼす影響は考慮して いない.なお,図中の W は単位水量,G は 単位粗骨材かさ容積,S L はスランプ,S F は スラ ン プ フ ロ ー を 示 す. ( 1 ) 模擬柱部材の内部温度 調合の変化要因と模擬柱部材内部の最高 温度の関係を図 - 2 に示す.単位水量が増 加すると,中央部と外周部とも最高温度は 高くなる傾向を示した.これは,水セメン ト比を一定としているため,単位水量の増 加に伴う単位セメント量の増加が影響して 60 40 20 0 中央部 外周部 外気温 △ □ ○ 中央部 外周部 外気温 標準期 W/C=35% 3 3 W=185kg/m3 G=0.55m /m △ □ 中央部 外周部 外気温 ○ 夏期 W/C=35% 3 3 SF=50cm G=0.55m /m 170 185 200 単位水量 (kg/m3 ) △ □ ○ 0.45 0.55 0.65 SL21 SF50 SF60 3 3 目標SL,SF(cm) 単位粗骨材かさ容積 (m /m ) 0.4 0.4 5 0.5 0.5 5 0.6 0.6 5 0.7 図 - 2 調合の変化要因と模擬柱部材内部 の最高温度の関係 Study on Mix Proportion of High-Strength Concrete Considered Workability (Part5. Examination Concerning Compressive Strength of Core) ONAYA Hideaki, NAKATA Yoshihisa, SAITO Takeshi, HARUYAMA Nobuhito, SEKI Hiroshi, TAMURA Yusuke, OTSUKA Shuzo and KEMI Torao ―911― 2 5 中央部 △ 0 平均 ● コア強度 外周部 □ 70 ▼ 18 0 19 0 20 0 170 18 0 19 0 20 0 17 0 18 0 19 0 200 図 - 3 調合の変化要因と強度補正値 2 8 S 2 8 の関係 を併記している.強度補正値 2 8 S 2 8 は,単位水量が増加 するとやや小さくなる傾向を示し,単位粗骨材かさ容 積の変 化によ る違い は見ら れず,目標ス ランプ( スラ ンプフロ ー) が大き くなる とやや 小さく なる傾 向を示 した.しかし,いずれの変化要因も強度補正値 2 8 S 2 8 に 及ぼす影響は小さかった.単位水量が増加すると強度 補正値 2 8 S 2 8 が小さくなる傾向は,前報( その 3 ) に示す ように単位水量の増加に伴い強度はやや小さくなる が,最高温度が高いほど比較的早期において強度が発 現するためコア強度ではこれらが相殺し,管理用供試 体と コ ア 強 度の 差 が 小 さ くな っ た た め と考 え ら れ る. また,目標スランプ( スランプフロー) が大きいと強度 補正値 2 8 S 2 8 が小さくなったが,これは S P 添加率が大 きいほど強度が高くなる傾向が管理用供試体よりもコ ア供試体において顕著なことを示しており,S P 添加率 が強度に及ぼす影響は,温度によってその程度が異な る可能性がある.なお,目標スランプ( スランプフ ロー) が大きいほど強度補正値 2 8 S 2 8 のばらつきは大き かった.これは,構成割合が同じであっても,S P 添加 率を大きくし流動性を高めると材料分離抵抗性はやや 低く な る 可 能 性を 示 唆 し て い ると 考 え ら れ る. ②強度補正値 2 8 S 9 1 調合の変化要因と強度補正値 2 8 S 9 1 の関係を図 - 4 に示 す.図中には材齢 9 1 日におけるコア強度 の平均値を 併記している.強度補正値 2 8 S 9 1 は,単位水量が増加す ると若干小さくなる傾向を示したが,その差は強度補 正値 2 8 S 2 8 よりも僅かであった.この結果から,材齢の 経過に伴い単位水量の増加が強度補正値 m S n に及ぼす 影響は小さくなると考えられる.また,単位粗骨材か さ容積が変化しても,強度補正値 2 8 S 9 1 はほとんど変化 せず,2 8 S 2 8 と同様の傾向を示した.したがって,材齢 にかかわらず,細骨材と粗骨材の構成割合の変化が強 度補正値 m S n に及ぼす影響は小さいと考えられる.な お,夏期実験における強度補正値 m S n が標準期や冬期 内山アドバンス 中央技術研究所 日本大学 理工学部 建築学科 博士(工学) 内山城南コンクリート工業 博士(工学) フジミ工研 滑川工場 コンクリート品質管理担当 日本大学大学院 理工学研究科 建築学専攻 ものつくり大学 建設技能工芸学科 助教 修士(工学) (前)足利工業大学工学部建築学科 教授 工学博士 標準期 W/C=35% 75 W=185kg/m3 SF=50cm 5 70 0 65 -5 中央部 △ SF=50cm 中央部 △ 平均 ● 平均 ● コア強度 ▼ 外周部 □ コア強度 ▼ 外周部 □ -10 60 0.45 0.55 0.65 170 185 200 3 3 3 単位水量 (kg/m ) 単位粗骨材かさ容積 (m /m ) 17 0 18 0 19 0 20 0 17 0 18 0 19 0 2 17 0 2 中央部 △ 平均 ● コア強度 外周部 □ -5 28 91 28 28 75 80 夏期 W/C=35% 3 3 10 G=0.55m /m コア強度(N/mm ) 10 冬期 W/C=35% W=185kg/m3 強度補正値 S (N/mm ) 2 標準期 W/C=35% W=185kg/m3 SF=50cm 中央部 △ 平均 ● 65 外周部 □ ▼ G= 3 3 3 3 0.55m /m コア強度 ▼ G=0.55m /m SF=50cm -10 60 SL21 SF50 SF60 170 185 200 0.45 0.55 0.65 3 3 3 3 単位水量 (kg/m ) 単位粗骨材かさ容積 (m /m ) 目標SL, SF(kg/m ) *1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 15 80 夏期 W/C=35% コア強度(N/mm ) 強度補正値 S (N/mm ) 15 200 図 - 4 調合の変化要因と強度補正値 2 8 S 9 1 の関係 よりも大きかったことは,全体にコンクリート温度が 高かったためにコア強度が低めとなったことが影響し ていると考えられる.また,標準期における強度補正 値 28 S 91 は全体に 0 に近く,さらに 28 S 91 のばらつきが 28 S 2 8 と比較して小さかったことから,本実験で標準期の材 齢 9 1 日において得られ たコア強度は,ポテンシャル 強度 に 近 い と 考 え ら れ る. 4 .まとめ 前報に引き続き,模擬柱部材の内部温度および強度 補正値 m S n について検討を行った結果,以下の知見が 得られた. ( 1) 単位水量が増加すると,模擬柱部材の最高温度 は高くなる傾向を示した. ( 2 ) 構成割合の変化が強度補正値 m S n に及ぼす影響は 全体に小さかった. ( 3 ) S P 添加率を増加してスランプ( スランプフロー) を 大きくすると m S n のばらつきは若干大きくなった. 本実験では,構成割合を変化させても m S n の変化は 小さかったことから,構成割合を変化させて施工性を 改善させた高強度コンクリートについても従来の高強 度コンクリートと同様に,構造体の強度は管理用供試 体に よ り 管 理 で きる と 考 え ら れ る. 室内実験ならびに実大施工実験の結果から,高強度 コンクリートは,構成割合を変化させることにより施 工性を副次的に改善できる可能性があることが明らか になった.今後は,高強度コンクリートの品質におけ る構 成 割 合 の影 響 を さ ら に検 討 し て い く予 定 で あ る. 【謝辞】 本実験の実施にあたり,( 株) 岡本建設重機,太平洋セメント( 株) 技術部, (株) 花王,フジミ工研( 株) 滑川工場 PC 製造部,日本大学理工学部建築学科 中田研究室な らびにもの つくり大学 建設技能学科 の学生より 多大なるご 協 力を頂き ました .ここに付 記し,感謝の意 を表し ます. 【参考文献】 1 ) 日本建築学会:高強度コンクリート施工指針( 案)・同解説,日本建築学 会,1999.11 2 )日本建築学会:マスコンクリートの温度ひび割れ制御設計・施工指針 (案)・同解説,2008.2 3 ) 日本建築学会:建築工事標準仕様書・同解説 JAS S5 鉄筋コンクリート 工事,2009.2 Dept.of Architecture, Graduate School of Science & Technology, Nihon Univ. Dept.of Architecture, College of Science & Technology, Nihon Univ.,Dr.Eng. Uchiyama Jyounan Concrete Industry Co.Ltd., Dr.Eng. Technical Research Institute, Uchiyama Advance Co.Ltd. Charge of QC of Concrete, Namegawa Factory, FUJIMI KOKEN Co.Ltd. Dept.of Building Technologists,Monotsukuri Institute of Technologists, One-time Prof.,Dept. of Architecture,Ashikaga Institute of Technology,Dr.Eng. ―912―
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