順序数の構成とその性質

順序数の構成とその性質
Ziphil Aleshlas
2015 年 2 月 23 日
1. 概要
自然数を構成したときと同様の方法で,自然数列 ω から ω + 1, ω + 2, 2ω, ω2 , ωω などが構築でき
ることを「記号論理学 II」の授業で知った.このことに興味をもったので少し調べてみると,これら
が「順序数」と呼ばれる概念であることが分かり,その順序数が満たすべき公理を見つけたので,こ
の公理に順序数に関するいくつかの性質を証明しようと思う.
「記号論理学 I」の授業で扱った公理的集合論は ZFC 公理系を基礎とするものだけであったが,こ
れ以外の公理系も考えられていることが分かった.そこで,ここではそのような公理系の 1 つである
NBG 公理系をもとに順序数を定義する.
なお,NBG 公理系の公理や概念の定義は全て Bernays[1] により,定理の証明図を自分で構成した.
以下,定理の証明には Gentzen 式の証明図を用いる.ただし,証明図が無意味に煩雑になることを
防ぐため, x ∈ {y, z} から x = y ∨ x = z を導くなどの集合に関係する簡単な変形はその過程を省略し
たり,仮説の並列と ∧ を同一視したりしている.
2. NBG 公理系
2.1. 集合とクラス
公理的集合論では ZFC 集合論が最も有名であるが,これの他に von Neumann-Bernays-Gödel 集合
論 (— set theory) と呼ばれるものが存在する.これは省略して NBG 集合論 (— set theory) とも呼ばれて
おり,ZFC 集合論の拡張になっていることが知られている.
ZFC 集合論との大きな違いは,ZFC 集合論が集合だけを扱うのに対し,NBG 集合論では集合の他
に「クラス」と呼ばれるものを扱う点である.クラスは集合の集まりという点では集合そのものと変
わりがないが,集合やクラスの要素にならないという点で集合と異なる.
例えば,NBG 集合論では以下のようなものを考えることができる.
{x | x は集合 }
— 1 —
ZFC 集合論では,分出公理の制約によりこのような集合は存在できないが,NBG 集合論ではこれをク
ラスであるとして議論の範疇に収めることができる.したがって,Russell のパラドックスで有名な
{x | x < x}
というものも考えることができる.NBG 集合論では,これをクラスであるとして集合ではないと考
え,さらに他の集合やクラスの要素にならないという制約をクラスに加えることで,パラドックスを
回避している.
2.2. 公理
NBG 集合論では,集合 (set) とクラス (class) を扱う.前者にはラテン文字やギリシャ文字の小文字
を用いて表し,後者にはラテン文字やギリシャ文字の大文字を用いて表すものとする.
一階述語論理に二項関係 ∈ を追加する.これは,a ∈ b もしくは a ∈ B の形で用いられ,A ∈ B は有
効な式ではない.
公理 1.
(∀x (x ∈ a ↔ x ∈ b)) → a = b
(∀x (x ∈ A ↔ x ∈ B)) → A = B
が成り立つ.
これは外延性公理 (axiom of extensionality) と呼ばれている.ZFC 公理系にも同様のものが存在するが,
NBG 公理系ではこれは集合にもクラスにも成り立つものとしている.
公理 2.
∃!a ∀x (x < a)
が成り立つ.
この公理により存在が保証される a は空集合 (empty set) と呼ばれ,∅ で表記される.ZFC 公理系で
は空集合の存在は分出公理から導かれるが,NBG 公理系に分出公理は入れないので,代わりに空集合
の存在を公理として採用している.
公理 3.
∀b ∀c ∃a (x ∈ a ↔ x ∈ b ∨ x = c)
が成り立つ.
これは対集合公理 (axiom of pairing) と呼ばれている.この公理における a はしばしば b ; c と書かれ,
b ∪ {c} に等しい.
— 2 —
公理 4.
集合 y に対して集合を返す関数 t(y) があったとして,
∀m ∃a (x ∈ a ↔ ∃y (y ∈ m ∧ x ∈ t(y)))
が成り立つ.
これは和集合公理 (axiom of union) と呼ばれている.式における a は
∪
x∈m
t(x) と書かれることが多い.
公理 5.
∀b ∃a (x ∈ a ↔ x ⊆ b)
が成り立つ.
これは冪集合公理 (axiom of power set) と呼ばれている.式における a は P(b) などと書かれる.
公理 6.
集合 x に対する述語 Φ(x) が,集合もしくはクラスに関する x 以外の自由変項をもたない
とき,
∃!A (x ∈ A ↔ Φ(x))
が成り立つ.
この公理により存在が保証される A は {x | Φ(x)} で表される.Φ(x) が集合に関する述語であること
と,{x | Φ(x)} がクラスであって集合でないことに注意されたい.
上で述べた NBG 公理系の対集合公理と和集合公理は,ZFC 公理系のそれと同じであるため,順序
対 ⟨a, b⟩ や和集合
∪
a, a ∪ b を ZFC 集合論と同様の方法で定義できる.共通部分
∩
a, a ∩ b や差集
合 a ∖ b については,NBG 公理系に分出公理がないため ZFC 集合論のようには定義できないが,別
の方法で ZFC 集合論のものと全く同じ性質をもつ集合が定義できる *1 .これについてはここでは触れ
ない.
なお,これ以外にも公理は存在するが,以降の議論では必要ないので省略する *2 .ただし,無限公
理だけは後に扱う.
3. 順序数の定義
定義 1.
述語 Trans, Alt, Fund, Ord を,
Trans(α) :↔ ∀x (x ∈ α → x ⊆ α)
Alt(α) :↔ ∀x ∀y (x ∈ α ∧ y ∈ α → x = y ∨ x ∈ y ∨ x ∋ y)
*1
*2
述語 Φ(x) を用いて自由にクラス {x | Φ(x)} を定義できるという公理が,実は非常に強力なのである.この公理により,
ZFC 公理系の置換公理を導くことができ,したがって分出公理も導くことができる.
クラスに関する正則性公理 (axiom of regularity) および axiom of limitation of size がある.
— 3 —
Fund(α) :↔ ∀x (x ⊆ α ∧ x , ∅ → ∃y (y ∈ x ∧ y ∩ x = ∅))
Ord(α) :↔ Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
によって定義する.
ZFC 公理系であれば正則性公理から Fund(α) は任意の集合 α に対して成り立つので,Fund(α) を
Ord(α) の定義に含める必要はないが,ここでは NBG 公理系を用いるので Fund(α) を定義として含
める.
Trans(α) なる集合 α は推移的 (transitive) であるといい,Ord(α) なる集合 α を順序数 (ordinal number)
と呼ぶ *3 .
4. 順序数の性質
4.1. 最小元の存在
定理 7.
Ord(α) → ∀x (x ⊆ α ∧ x , ∅ → ∃y (y ∈ x ∧ ∀z (z ∈ x → y = z ∨ y ∈ z)))
が成り立つ.
この定理が述べていることは以下のようなことである.α が順序数であれば,定義から Alt(α) が満
たされる.Alt(α) が述べているのは,α の任意の元は二項関係 ∈ によって比較ができるということで
ある.したがって,所属関係 ∈ は不等号 < と同じような働きをしていることが分かる.そこで x ∈ y
を「 x は y より小さい」と読むことにする.このような解釈をすれば,この定理は,α の空でない部分
集合 x が存在して,x の元 y で,x より小さい全ての z が y と等しいか大きくなってしまうようなもの
が存在することを述べている.すなわち,y は x に属する最小の元である.まとめれば,この定理が
述べているのは,順序数の全ての部分集合は最小の元をもつということである.
証明は以下の通りである.まず,
P :↔ y ∈ x ∧ y ∩ x = ∅
Q :↔ y = z ∨ y ∈ z ∨ y ∋ z
R :↔ ∃y (y ∈ x ∧ ∀z (z ∈ x → y = z ∨ y ∈ z))
とおく.以下を部分証明図 Π1 とする.
*3
順序数の定義はここで述べたものだけではない.例えば Stoll[2] では,2 つの整列集合 a, b の間に順序を保存するような
全単射が存在するとき a ≈ b であるとして同値関係 ≈ を定義し,整列集合全体を ≈ でわったときの同値類を順序数と定
義している.
— 4 —
P
y∈x x⊆α z∈x x⊆α
Alt(α)
y∈α
z∈α
y∈α ∧ z∈α
y∈α ∧ z∈α → Q
Q
さらに,以下を部分証明図 Π2 とする.
P
y∩x=∅ z∈ x
[ y ∋ z ]1
z<y
[ y = z ]1
[ y ∈ z ]1
⊥
Q y=z ∨ y∈z y=z ∨ y∈z
y=z ∨ y∈z
1
y=z ∨ y∈z
Π1 , Π2 を利用して,以下の部分証明図 Π3 が構成できる.
x ⊆ α [ z ∈ x ]1
Π1
Q
R [ x ∈ x ]1
Π2
y=z ∨ y∈z
1
z∈x → y=z ∨ y∈z
P
y∈x
∀z (z ∈ x → y = z ∨ y ∈ z)
y ∈ x ∧ ∀z (z ∈ x → y = z ∨ y ∈ z)
∃y (y ∈ x ∧ ∀z (z ∈ x → y = z ∨ y ∈ z))
P Alt(α)
これを用いて,以下の証明図 Π4 が得られる.
Fund(α)
x ⊆ α ∧ x , ∅ → P [ x ⊆ α ∧ x , ∅ ]2 [ P ]1 Alt(α) [ x ⊆ α ]2
Π3
∃y (P)
R
1
R
2
x⊆α ∧ x,∅ → R
∀x (x ⊆ α ∧ x , ∅ → R)
最後に,定理の証明図が以下のように構成できる.
[ Ord(α) ]1
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Alt(α) ∧ Fund(α)
Π4
∀x (x ⊆ α ∧ x , ∅ → R)
1
Ord(α) → ∀x (x ⊆ α ∧ x , ∅ → R)
4.2. 順序数の要素
補題 8.
Ord(α) ∧ x ∈ α ∧ y ∈ α ∧ x ∈ y → y < x
が成り立つ.
簡単のため,
P :↔ z ∈ {x, y} ∧ z ∩ {x, y} = ∅
とおく.以下を部分証明図 Π1 とする.
— 5 —
x∈α ∧ y∈α
{x, y} ⊆ α
{x, y} = ∅
Fund(α)
{x, y} ⊆ α ∧ {x, y} = ∅ {x, y} ⊆ α ∧ {x, y} = ∅ → ∃z (P)
∃z (P)
続いて,以下を部分証明図 Π2 とする.
P
[ z = y ]1 z ∩ {x, y} = ∅
P
y ∩ {x, y} = ∅
[ z = x ]1 z ∩ {x, y} = ∅
x<y ∧ y<y
x ∩ {x, y} = ∅
P
x<y
x∈y
x<x ∧ y<x
z ∈ {x, y}
⊥
z=x ∨ z=y
y<x
y<x
1
y<x
Π1 , Π2 を利用して,補題の証明図を得る.
[ Ord(α) ]2
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
[ x ∈ α ∧ y ∈ α ]2
Fund(α)
[ P ]1 [ x ∈ y ]2
Π1
Π2
y<x
∃z (P)
1
y<x
2
Ord(α) ∧ x ∈ α ∧ y ∈ α ∧ a ∈ y → y < x
補題 9.
Ord(α) ∧ x ∈ α ∧ y ∈ α ∧ z ∈ α ∧ x ∈ y ∧ y ∈ z → z < x
が成り立つ.
簡単のため,
P :↔ w ∈ {x, y, z} ∧ w ∩ {x, y, z} = ∅
とおく.以下を部分証明図 Π1 とする.
x∈α ∧ y∈α ∧ z∈α
{x, y, z} ⊆ α
{x, y, z} = ∅
Fund(α)
{x, y, z} ⊆ α ∧ {x, y, z} = ∅
{x, y, z} ⊆ α ∧ {x, y, z} = ∅ → ∃w (P)
∃w (P)
続いて,以下を部分証明図 Π2 とする.
P
w = x w ∩ {x, y, z} = ∅
x ∩ {x, y, z} = ∅
x<x ∧ y<x ∧ z<x
z<x
以下を部分証明図 Π3 とする.
— 6 —
P
w = y w ∩ {x, y, z} = ∅
y ∩ {x, y, z} = ∅
x<y ∧ y<y ∧ z<y
x<y
⊥
z<x
x∈y
以下を部分証明図 Π4 とする.
P
w = z w ∩ {x, y, z} = ∅
z ∩ {x, y, z} = ∅
x<z ∧ y<z ∧ z<z
y<z
y∈z
⊥
z<x
Π2 , Π3 , Π4 を利用して,以下の証明図 Π5 を得る.
P
[ w = y ]1 x ∈ y P
[ w = x ]1 P
w ∈ {x, y, z}
Π3
Π2
w=x ∨ w=y ∨ w=z
z<x
z<x
z<x
[ w = z ]1 y ∈ z P
Π4
z<x
1
最後に,Π1 , Π5 を利用して,補題の証明図を得る.
[ x ∈ α ∧ y ∈ α ∧ z ∈ α ]2
∃w (P)
[ Ord(α) ]2
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Fund(α)
[ P ]1
Π1
[ x ∈ y ]2
z<x
[ y ∈ z ]2
1
z<x
2
Ord(α) ∧ x ∈ α ∧ y ∈ α ∧ z ∈ α ∧ x ∈ y ∧ y ∈ z → z < x
補題 10.
Ord(α) ∧ x ∈ α → Trans(x)
が成り立つ.
簡単のため,
P :↔ Ord(α) ∧ x ∈ α ∧ y ∈ z ∧ z ∈ x
Q :↔ x = y ∨ x ∈ y ∨ y ∋ x
とおく.以下を部分証明図 Π1 とする.
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Trans(α)
x∈α → x⊆α
x∈α
x⊆α
z∈x
z∈α
— 7 —
Π5
以下を部分証明図 Π2 とする.
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Trans(α)
Ord(α) x ∈ α z ∈ x
Π1
z∈α → z⊆α
z∈α
z⊆α
y∈α
y∈z
これらを利用して,以下の部分証明図 Π3 を得る.
Ord(α) z ∈ x
z∈α
Ord(α) y ∈ z z ∈ x
y∈α
y∈α ∧ z∈α
x∈α
x∈α
Π1
Π2
これにより,以下の証明図 Π4 が構成できる.
Ord(α) y ∈ z z ∈ x x ∈ α
Π3
y∈α ∧ z∈α
Ord(α) y ∈ z
Ord(α) ∧ y ∈ α ∧ z ∈ α ∧ y ∈ z
補題 8
z<y
[ x = y ]1
z<x
⊥
1
x,y
z∈x
さらに,以下の証明図 Π5 も構成できる.
Ord(α) y ∈ z z ∈ x x ∈ α
Π3
y∈α ∧ z∈α
Ord(α) x ∈ α y ∈ z z ∈ x
y∈α ∧ z∈α ∧ x∈α ∧ y∈z ∧ z∈x
補題 9
x<y
以下を部分証明図 Π6 とする.
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
P
Π
Alt(α)
y∈α 2 x∈α
x∈α ∧ y∈α
x∈α ∧ y∈α → Q
Q
Π4 , Π5 , Π6 により,以下の証明図 Π7 が成立する.
P
Π6
Q
P
Π4
[ x = y ]1 x , y
⊥
y∈x
P
Π5
[ x ∈ y ]1 x < y
⊥
y∈x
y∈x
[ y ∈ x ]1
これを用いて,補題の証明図を得る.
[ Ord(α) ∧ x ∈ α ]3 [ y ∈ z ]1 [ z ∈ x ]2
Π7
y∈x
y ∈ z → y ∈ x1
∀y (y ∈ z → y ∈ x)
z⊆x
2
z∈x → z⊆x
∀z z ∈ x → z ⊆ x
Trans(x)
3
Ord(α) ∧ x ∈ α → Trans(x)
— 8 —
1
補題 11.
Alt(α) ∧ x ⊆ α → Alt(x)
が成り立つ.
簡単のため,
P :↔ y = z ∨ y ∈ z ∨ y ∋ z
とおく.このとき,証明図は以下の通りである.
[ y ∈ x ]1 [ x ⊆ α ]2 [ z ∈ x ]1 [ x ⊆ α ]2
[ Alt(α) ]2
y∈α
z∈α
y∈α ∧ z∈α
y∈α ∧ z∈α → P
P
1
y∈x ∧ z∈x → P
∀y ∀z (y ∈ x ∧ z ∈ x → P)
Alt(x)
2
Alt(α) ∧ x ⊆ α → Alt(x)
補題 12.
Fund(α) ∧ x ⊆ α → Fund(x)
が成り立つ.
簡単のため,
P :↔ ∃z (z ∈ x ∧ z ∩ x = ∅)
とおく.このとき,証明図は以下の通りである.
[ y ∈ x ]1 [ x ⊆ α ]2
y∈α
[ y , ∅ ]1
y∈α ∧ y,∅
[ Fund(α) ]2
y∈α ∧ y,∅ → P
P
1
y∈x ∧ y,∅ → P
∀y (y ∈ x ∧ y , ∅ → P)
Fund(x)
2
Fund(α) ∧ x ⊆ α → Fund(x)
定理 13.
Ord(α) ∧ x ∈ α → Ord(x)
が成り立つ.
すなわち,順序数の元もまた順序数なのである.
まず,以下を部分証明図 Π1 とする.
— 9 —
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Trans(α)
x∈α → x⊆α
x⊆α
x∈α
これにより,以下の証明図 Π2 が構成できる.
Ord(α)
Trans(α)
∧
Alt(α) ∧ Fund(α)
Ord(α) ∧ x ∈ α
Π1
x⊆α
Alt(α)
Alt(α) ∧ x ⊆ α
補題 11
Alt(x)
さらに,以下の証明図 Π3 が構成できる.
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Ord(α) ∧ x ∈ α
Π1
Fund(α)
x⊆α
Fund(α) ∧ x ⊆ α
補題 12
Fund(x)
以上から,定理の証明図を得る.
[ Ord(α) ∧ x ∈ α ]1
Trans(x)
[ Ord(α) ∧ x ∈ α ]1
[ Ord(α) ∧ x ∈ α ]1
Π3
Π2
Alt(x)
Fund(x)
Trans(x) ∧ Alt(x) ∧ Fund(x)
Ord(x)
1
Ord(α) ∧ x ∈ α → Ord(x)
補題 10
4.3. 所属関係と包含関係
補題 14.
Ord(α) ∧ x ∈ α → x < x
が成り立つ.
簡単のため,
P :↔ ∃y (y ∈ {x} ∧ y ∩ {x} = ∅)
とおく.以下を部分証明図 Π とする.
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
x∈α
Fund(α)
{x} ⊆ α {x} , ∅
{x} ⊆ α ∧ {x} , ∅
{x} ⊆ α ∧ {x} , ∅ → P
P
これを用いて,補題の証明図を得る.
— 10 —
[ Ord(α) ]1 [ x ∈ α ]1
Π
[ Ord(α) ]1 [ x ∈ α ]1
P
Π
P
y ∈ {x}
y=x
y ∩ {x} = ∅
x ∩ {x} = ∅
x<x
1
Ord(α) ∧ x ∈ α → x < x
定理 15.
Ord(α) ∧ x ∈ α → x ⊂ α
が成り立つ.
この定理は,順序数の全ての元が部分集合としてその順序数に含まれていることを表している.
定理 13 で用いた部分証明図 Π1 を,ここでも Π として利用する.定理の証明図は以下の通りで
ある.
[ x ∈ α ]2 [ x = α ]1
x∈x
[ Ord(α) ]2 [ x ∈ α ]2
Ord(α) ∧ x ∈ α
補題 14
x<x
[ Ord(α) ]2 [ x ∈ α ]2
⊥
Π
1
x,α
x⊆α
x⊂α
2
Ord(α) ∧ x ∈ α → x ⊂ α
補題 16.
Ord(α) ∧ Trans(x) ∧ x ⊂ α → x ∈ α
が成り立つ.
簡単のため,
P :↔ y = z ∨ y ∈ z ∨ y ∋ z
Q :↔ y ∈ α ∖ x ∧ y ∩ α ∖ x = ∅
とおく.以下を部分証明図 Π1 とおく.
z∈ x y=z y∈α∖x
y∈x
y<x
⊥
z∈y
以下を部分証明図 Π2 とおく.
Trans(x)
z∈ x → z⊆ x z∈ x y∈α∖x
z⊆x
y<x
y<z
y∈z
⊥
z∈y
— 11 —
さらに,以下を部分証明図 Π3 とおく.
x⊆α z∈ x y∈α∖x
Alt(α)
z∈α
y∈α
y∈α ∧ z∈α
y∈α ∧ z∈α → P
P
これらを用いて,以下の証明図 Π4 を得る.
[ y = z ]1
P
y∈α∖x z∈ x
Π1
z∈y
[ y ∈ z ]1
z∈y
Trans(x) y ∈ α ∖ x z ∈ x
Π2
z∈y
[ y ∋ z ]1
1
これより,以下の証明図 Π5 が構成できる.
Alt(α)
x ⊆ α y ∈ α ∖ x [ z ∈ x ]1
Π3
P
Trans(x) y ∈ α ∖ x [ z ∈ x ]1
Π4
z∈y
z ∈ x → z ∈ y1
∀z (z ∈ x → z ∈ y)
x⊆y
さらに,以下を部分証明図 Π6 とおく.
Trans(α)
y∈α∖x
y∈α
y∈α → y⊆α
y⊆α
y∩α∖x=∅
y⊆x
Π5 , Π6 により,以下の証明図 Π7 が得られる.
Alt(α) Trans(x) x ⊆ α y ∈ α ∖ x
Trans(α) y ∈ α ∖ x y ∩ α ∖ x = ∅
Π5
Π6
x⊆y
y⊆x
x=y
x∈α
y∈α∖x
y∈α
以下を部分証明図 Π8 とおく.
x⊆α
Fund(α)
α∖x⊆α α∖x,∅
α ∖ x ⊆ α ∧ α ∖ x , ∅ α ∖ x ⊆ α ∧ α ∖ x , ∅ → ∃y (Q)
∃y (Q)
これを用いて,以下の証明図 Π9 を得る.
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Fund(α)
∃y (Q)
x⊆α
Π8
Π7 , Π9 により,補題の証明図を構成することができる.
[ Ord(α) ]2
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
[ Ord(α) ]2 [ x ⊆ α ]2
Trans(α) ∧ Alt(α)
[ Trans(α) ]2
Π9
∃y (Q)
x∈α
1
x∈α
2
Ord(α) ∧ Trans(x) ∧ x ⊂ α → x ∈ α
— 12 —
[ x ⊆ α ]2
[ Q ]1
Π7
定理 17.
Ord(α) ∧ Ord(β) → (α ∈ β ↔ α ⊂ β)
が成り立つ.
この定理から,順序数において所属関係と包含関係は同値であることが分かる.
証明は以下の通りである.
[ Ord(α) ]3
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
[ Ord(β) ]3 [ α ∈ β ]1
Trans(α)
[ Ord(β) ]3 [ a ⊂ β ]2
Ord(β) ∧ α ∈ β
定理 15
Trans(α) ∧ Ord(β) ∧ a ⊂ β
α⊂β
α∈β
1
2
α∈β → α⊂β
α⊂β → α∈β
α∈β ↔ α⊂β
3
Ord(α) ∧ Ord(β) → (α ∈ β ↔ α ⊂ β)
補題 16
4.4. 三分律
定理 18.
Ord(α) ∧ Ord(β) → α ⊆ β ∨ α ⊇ β
が成り立つ.
この定理は,順序数において二項関係 ⊆ が全順序であることを述べている.さらに,定理 7, 17 に
より,⊆ が整列順序であることも分かる.
証明は以下の通りである.簡単のため,
P :↔ ¬(α ⊆ β) ∧ ¬(α ⊇ β)
Q :↔ Ord(α) ∧ Ord(β)
とおく.以下を部分証明図 Π1 とする.
[ x ∈ α ∩ β ]1
x∈α ∧ x∈β
x∈α
[ x ∈ α ∩ β ]1
x∈α ∧ x∈β
x∈β
Trans(β)
Trans(α)
x∈β → x⊆β
x∈α → x⊆α
x⊆α
x⊆β
x⊆α∩β
1
x∈α∩β → x⊆α∩β
∀x (x ∈ α ∩ β → x ⊆ α ∩ β)
Trans(α ∩ β)
以下を部分証明図 Π2 とする.
Ord(β)
Ord(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α) Trans(β) ∧ Alt(β) ∧ Fund(β)
Trans(α)
Trans(β)
Π1
Trans(α ∩ β)
— 13 —
これを用いて,以下の証明図 Π3 を構成する.
P
¬(α ⊆ β)
α∩β⊆α α∩β,α
Q
Π2
α∩β⊂α
Trans(α ∩ β)
Ord(α)
α ∩ β ⊂ α ∧ Trans(α ∩ β) ∧ Ord(α)
補題 16
α∩β∈α
同様にして,以下の証明図 Π4 も構成する.
P
¬(α ⊇ β)
α∩β⊆α α∩β,β
Q
Π2
Trans(α ∩ β)
Ord(β)
α∩β⊂β
α ∩ β ⊂ β ∧ Trans(α ∩ β) ∧ Ord(β)
補題 16
α∩β∈β
Π3 , Π4 から,定理の証明図を得る.
[ P ]1 [ Q ]2
Π3
α∩β∈α
Ord(α)
α ∩ β ∈ α ∧ Ord(α)
補題 14
α∩β<α∩β
⊥
1
¬P
a⊆b ∨ a⊇b
2
Q → a⊆b ∨ a⊇b
[ P ]1 [ Q ]2
[ P ]1 [ Q ]2
Π3
Π4
α∩β∈α
α∩β∈β
α∩β∈α∩β
定理 19.
Ord(α) ∧ Ord(β) → α = β ∨ α ⊂ β ∨ α ⊃ β
が成り立つ.
この定理により,2 つの順序数は等しいかどちらか一方が他方に含まれているかのいずれかである
ことが分かる.この性質はしばしば順序数の三分律 (trichotomy) と呼ばれる.
定理の証明は以下のように行う.以下を部分証明図 Π とおく.
[ α ⊆ β ]1 α , β [ α ⊇ β ]1 α , β
Ord(α) ∧ Ord(β) 定理 18
α⊂β
α⊃β
α⊆β ∨ α⊇β
α⊂β ∨ α⊃β
α⊂β ∨ α⊃β
1
α⊂β ∨ α⊃β
これを用いて,定理の証明図が得られる.
[ α , β ] [ Ord(α) ∧ Ord(β) ]2
Π
[α = β]
α⊂β ∨ α⊃β
α=β ∨ α,β α=β ∨ α⊂β ∨ α⊃β
α=β ∨ α⊂β ∨ α⊃β
1
α=β ∨ α⊂β ∨ α⊃β
2
Ord(α) ∧ Ord(β) → α = β ∨ α ⊂ β ∨ α ⊃ β
— 14 —
定理 20.
Ord(α) ∧ Ord(β) → α = β ∨ α ∈ β ∨ α ∋ β
が成り立つ.
これは定理 17 を用いて定理 19 を書き換えただけであり,成り立つことは明らかである.証明図も
省略する.
定理 21.
Ord(α) ∧ Ord(β) ∧ Ord(γ) → (α ∈ β ∧ β ∈ γ → α ∈ γ)
が成り立つ.
定理 22.
Ord(α) ∧ Ord(β) → (α ∈ β → α = β)
が成り立つ.
これらの定理は,帰結部分の ∈ を ⊂ に書き換えたものが自明であるから,定理 17 より直ちに成り
立つことが分かる.したがって,証明図は省略する.
4.5. 最小順序数の原理
定理 23.
Ord(α) ∧ α ∈ A → ∃β (Ord(β) ∧ β ∈ A ∧ ∀γ (Ord(γ) ∧ γ ∈ A → β = γ ∨ β ∈ γ))
が成り立つ.
この定理が述べていることは以下のようなことである.すなわち,任意の空でないクラス A に対し
て,順序数である A の元 β で,どんな順序数である元 γ をとってきても, β と等しいか β を元として
含んでいるようなものが存在するということである.定理 7 のときと同じように,β ∈ γ を「β は γ よ
り小さい」と解釈することにすれば,この定理によって,任意の空でない順序数からなるクラスには最
小の順序数が存在することが分かる.これを最小順序数の原理 (principle of least ordinal number) と呼ぶ.
証明は以下のように行う.まず,簡単のために,
P :↔ β ∈ α ∩ A ∧ ∀γ (γ ∈ α ∩ A → β = γ ∨ β ∈ γ)
Q :↔ γ ∈ α ∩ A → β = γ ∨ β ∈ γ
Rβ :↔ ∀γ (Ord(γ) ∧ γ ∈ A → β = γ ∨ β ∈ γ)
Rα :↔ ∀γ (Ord(γ) ∧ γ ∈ A → α = γ ∨ α ∈ γ)
— 15 —
S :↔ ∃β (Ord(β) ∧ β ∈ A ∧ ∀γ (Ord(γ) ∧ γ ∈ A → β = γ ∨ β ∈ γ))
とおく *4 .以下を部分証明図 Π1 とおく.
Ord(α) β ∈ α
Ord(α) ∧ β ∈ α 定理 13
Ord(β)
これを用いて,以下の証明図 Π2 を構成する.
Ord(α) β ∈ α
Π1
Ord(β)
Ord(α) Ord(γ)
Ord(β) ∧ Ord(α) ∧ Ord(γ)
定理 21
β∈α ∧ α∈γ → β∈γ
以下を部分証明図 Π3 とする.
Ord(α) Ord(γ) β ∈ α
Π2
β∈α ∧ α∈γ → β∈γ
β∈γ
β∈α α∈γ
β∈α ∧ α∈γ
これを用いて,以下の証明図 Π4 を構成する.
Ord(α) Ord(γ)
[ α ∋ γ ]1 γ < α
[ α ∈ γ ]1
Ord(α) ∧ Ord(γ) 定理 20 [ α = γ ]1 β ∈ α
⊥
α=γ ∨ α∈γ ∨ α∋γ
β∈γ
β∈γ
β∈γ
β ∈ α Ord(α) Ord(γ)
Π3
β∈γ
1
以下を部分証明図 Π5 とする.
P
β∈α∩A
β∈α ∧ β∈A
β∈α
Π1 , Π5 を用いて以下の証明図 Π6 が構成できる.
P
β∈α∩A
P
Π5
β∈α
Ord(α)
β∈α ∧ β∈A
Π1
β∈A
Ord(β)
Ord(β) ∧ β ∈ A
さらに,Π4 , Π5 により,以下の証明図 Π7 が得られる.
P
[ γ ∈ α ]1 [ γ ∈ A ]2 ∀γ (Q) [ γ < α ]1
γ ∈α∩A
Q
γ∈α ∨ γ<α
β=γ ∨ β∈γ
β=γ ∨ β∈γ
1
Ord(γ) ∧ γ ∈ A → β = γ ∨ β ∈ γ
∀γ (Ord(γ) ∧ γ ∈ A → β = γ ∨ β ∈ γ)
*4
Ord(α) [ Ord(γ) ]2
β∈γ
β=γ ∨ β∈γ
P
Π5
β∈α
Π4
1
α ∩ A とは,x ∈ α ∩ A と x ∈ α ∧ x ∈ A が同値になるような集合のことである.このような集合が存在することは公理か
ら導かれる.
— 16 —
さて,以下を部分証明図 Π8 とおく.
Ord(α) 定理 7
α∩A⊆α α∩A,∅
α ∩ A ⊆ α ∧ α ∩ A , ∅ α ∩ A ⊆ α ∧ α ∩ A , ∅ → ∃β (P)
∃β (P)
Π6 , Π7 , Π8 により,以下の証明図 Π9 が構成できることが分かる.
[ P ]1 Ord(α)
[ P ]1 Ord(α)
Π6
Π7
Ord(β) ∧ β ∈ A
Rβ
Ord β ∧ β ∈ A ∧ Rβ
Ord(α) α ∩ A , ∅
Π8
∃β (Ord β ∧ β ∈ A ∧ Rβ )
∃β (P)
1
∃β (Ord β ∧ β ∈ A ∧ Rβ )
一方で,以下を部分証明図 Π10 とおく.
[ α ∋ γ ]1 α ∩ A = ∅
γ<A
[ γ ∈ A ]2
⊥
α=γ ∨ α∈γ
α=γ ∨ α∈γ
2
Ord(γ) ∧ γ ∈ A → α = γ ∨ α ∈ γ
∀γ (Ord(γ) ∧ γ ∈ A → α = γ ∨ α ∈ γ)
Ord(α) [ Ord(γ) ]1
Ord(α) ∧ Ord(γ) 定理 20
α=γ ∨ α∈γ ∨ α∋γ
[ α = γ ∨ α ∈ γ ]1
1
これを用いることで,以下の証明図 Π11 が得られる.
Ord(α) α ∩ A = ∅
Π10
Rα
Ord(α) α ∈ A
Ord(α) ∧ α ∈ A ∧ Rα
∃β (Ord(β) ∧ β ∈ A ∧ Rβ )
最後に,Π9 , Π11 を利用すれば,定理の証明図が構成できる.
[ α ∩ A = ∅ ]1
α∩A=∅ ∨ α∩A,∅
[ Ord(α) ]2 [ α ∈ A ]2
Π11
S
S
2
Ord(α) ∧ α ∈ A → S
[ α ∩ A , ∅ ]1 [ Ord(α) ]2
Π9
S
1
4.6. 超限帰納法の原理
定理 24.
∀α (Ord(α) ∧ ∀β (β ∈ α → β ∈ A) → α ∈ A) → (Ord(γ) → γ ∈ A)
が成り立つ.
この定理の主張は以下の通りである.順序数 α より小さい全ての β が A に属しているときに α も A
に属しているということが証明できたならば,どんな順序数 γ をとっても γ は A に属することが導か
れる.つまり,これは自然数の累積帰納法の順序数版と考えることができる.この定理は超限帰納法
の原理 (principle of transfinite induction) と呼ばれている.
— 17 —
まず,簡単のため,
P :↔ Ord(β) ∧ β ∈ Ac → α = β ∨ α ∈ β
Q :↔ Ord(α) ∧ α ∈ Ac ∧ ∀β (Ord(β) ∧ β ∈ Ac → α = β ∨ α ∈ β)
R :↔ Ord(α) ∧ ∀β (β ∈ α → β ∈ A) → α ∈ A
とおく *5 .以下を部分証明図 Π1 とする.
Ord(α) β ∈ α
Ord(α) ∧ β ∈ α 補題 14
β,β
これを用いて,以下の証明図 Π2 が構成できる.
Ord(α) β ∈ α β ∈ α α = β
β<β
β∈β
⊥
さらに,以下を証明図 Π3 とする.
Ord(α) β ∈ α
Ord(α) ∧ β ∈ α 定理 13
Ord(β)
Ord(α)
Ord(α) ∧ Ord(β)
定理 21 β ∈ α α ∈ β
β∈α ∧ α∈β → β∈β
β ∈ α ∧ α ∈ β Ord(α) β ∈ α
Π1
β∈β
β<β
⊥
以下を部分証明図 Π4 とする.
Ord(α) β ∈ α
Ord(α) ∧ β ∈ α 定理 13
Ord(β)
β ∈ Ac
Ord(β) ∧ β ∈ Ac
α=β ∨ α∈β
P
Π2 , Π3 , Π4 により,以下の証明図 Π5 が得られる.
Ord(α) [ β ∈ α ]3 [ β ∈ Ac ]2
α=β ∨ α∈β
P
Π4
[ α = β ]1
Ord(α) [ β ∈ α ]3
Π2
⊥
[ α ∈ β ]1
⊥
2
β < Ac
β∈A
3
β∈α → β∈A
これを用いて,以下の証明図 Π6 が構成できる.
Q
∀β (P)
Q
P
Ord(α)
Π5
β∈α → β∈A
Q
∀β (β ∈ α → β ∈ A) Ord(α) ∀α (R)
Q
Ord(α) ∧ ∀β (β ∈ α → β ∈ A)
R
α ∈ Ac
α∈A
α<A
⊥
*5
Ac は {x | x < A} によって定義されるクラスである.
— 18 —
Ord(α) [ β ∈ α ]3
Π3
⊥
1
最後に,これを用いて定理の証明図を得る.
[ Ord(γ) ]3 [ γ ∈ Ac ]2
Ord(γ) ∧ γ ∈ Ac
∃α (Q)
定理 23
[ Q ]1
[ ∀α (R) ]4
Π6
⊥
1
⊥
2
γ < Ac
γ∈A
3
Ord(γ) → γ ∈ A
4
∀α (R) → (Ord(γ) → γ ∈ A)
4.7. 後続数
定義 2.
関数 •′ を,
α′ B α ∪ {α}
によって定義する.
順序数 α に対し,α′ は α の後続数 (successor) と呼ばれる.
補題 25.
Trans(α) → Trans(α′ )
が成り立つ.
証明図は以下の通りである.
[ x ∈ α ]1
[ Trans(α) ]3
x⊆α
[ x ∈ α′ ]2
x ⊆ α ∨ x ⊆ {α}
x ∈ α ∨ x ∈ {α}
x ⊆ α′
x ⊆ α′
2
′
x ∈ α → x ⊆ α′
∀x (x ∈ α′ → x ⊆ α′ )
Trans(α′ )
3
Trans(α) → Trans(α′ )
[ x ∈ {α} ]1
x=α
x⊆α
x ⊆ α ∨ x ⊆ {α}
x ⊆ α′
1
補題 26.
Alt(α) → Alt(α′ )
が成り立つ.
以下を部分証明図 Π1 とする.
y ∈ α′
[ y ∈ α ]1 x ∈ α Alt(α)
y ∈ α ∨ y ∈ {α}
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y
— 19 —
[ y ∈ {α} ]1
y=α
x∈α
x∈y
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y
1
さらに,以下を部分証明図 Π2 とする.
y ∈ α′
y ∈ α ∨ y ∈ {α}
x ∈ {α}
[ y ∈ {α} ]1 x ∈ {α}
[ y ∈ α ]1 x = α
y=α
x=α
y∈x
x=y
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y x=y ∨ x∈y ∨ x∋y
1
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y
これら Π1 , Π2 を用いることで,補題の証明図を得る.
[ x ∈ α′ ∧ y ∈ α′ ]2
x ∈ α′
x ∈ α ∨ x ∈ {α}
[ x ∈ α′ ∧ y ∈ α′ ] 2
[ x ∈ α′ ∧ y ∈ α′ ]2
′
y∈α
[ x ∈ α ]1 [ Alt(α) ]3
y ∈ α′
[ x ∈ {α} ]1
Π1
Π
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y 2
1
x=y ∨ x∈y ∨ x∋y
2
x ∈ α′ ∧ y ∈ α′ → x = y ∨ x ∈ y ∨ x ∋ y
∀x ∀y (x ∈ α′ ∧ y ∈ α′ → x = y ∨ x ∈ y ∨ x ∋ y)
Alt(α′ )
3
Alt(α) → Alt(α′ )
補題 27.
Ord(α) → Fund(α′ )
が成り立つ.
この補題の証明の前に,定理 23 が式中のクラス A を集合である a に置き換えても成り立つことを
補足しておく.これは,A B {x | x ∈ a} とおくことで, x ∈ A と x ∈ a が同値になることから容易に分
かる.以下に示す補題の証明では,定理 23 の A を集合とみなしたものを利用している.
簡単のため,
P :↔ Ord(y) ∧ y ∈ x ∧ ∀z (Ord(z) ∧ z ∈ x → y = z ∨ y ∈ z)
Q :↔ Ord(z) ∧ z ∈ x → y = z ∨ y ∈ z
R :↔ ∃y (y ∈ x ∧ y ∩ x = ∅)
とおく.以下を部分証明図 Π1 とおく.
z ∈ x x ⊆ α′ [ z ∈ α ]1 Ord(α)
[ z ∈ {α} ]1
Ord(α) ∧ z ∈ α 定理 13
z=α
Ord(α)
z ∈ α ∪ {α}
z ∈ α ∨ z ∈ {α}
Ord(z)
Ord(z)
1
Ord(z)
これを用いて,以下の証明図 Π2 を構成する.
Ord(α)
x ⊆ α′ z ∈ x
P
Π1
Ord(z)
z ∈ x ∀z (Q)
Ord(z) ∧ z ∈ x
Q
y=z ∨ y∈z
以下を部分証明図 Π3 とする.
— 20 —
P
Ord(y) [ y ∈ y ]
Ord(y) ∧ y ∈ y 定理 22
y<y
[ y ∈ y ]1
⊥
1
y<y
z<y
y=z
以下を部分証明図 Π4 とする.
Ord(α)
x ⊆ α′ z ∈ x
P
Π1
Ord(z)
Ord(y) y ∈ z
Ord(y) ∧ Ord(z) ∧ y ∈ z
定理 22
z<y
Π2 , Π3 , Π4 により,以下の証明図 Π5 が成立することが分かる.
Ord(α)
x ∈ α′ [ z ∈ x ]2
y=z ∨ y∈z
P
[ y = z ]1 P
[ y ∈ z ]1
Π3
z<y
z<y
2
z∈x → z<y
∀z (z ∈ x → z < y)
x∩y=∅
Π2
[ z ∈ x ]2 Ord(α)
z<y
x ∈ α′
1
これにより,以下の証明図 Π6 が得られる.
′
[ P ]1 Ord(α) x ⊆ α [ P ]1 Π
5
y∈x
x∩y=∅
Ord(α) α ∈ x
y∈ x ∧ x∩y=∅
Ord(α) ∧ α ∈ x 定理 23
∃y (P)
∃y (y ∈ x ∧ x ∩ y = ∅)
1
∃y (y ∈ x ∧ x ∩ y = ∅)
さて,以下を部分証明図 Π7 とおく.
x ⊆ α′
∀z (z ∈ x → z ∈ α ∪ {α} z ∈ x ∧ z < α
z ∈ x → z ∈ α ∪ {α}
z∈x
z ∈ α ∪ {α}
z ∈ α ∨ z ∈ {α}
これを用いることで,以下の証明図 Π8 を得る.
x ⊆ α′ z ∈ x ∧ z < α
Π7
z ∈ α ∨ z ∈ {α}
z∈x ∧ z<α
z<α
[ z ∈ {α} ]1 z ∈ x ∧ z < α
z=α
z∈x
⊥
α∈x
α∈x
1
α∈x
[ z ∈ α ]1
以下を部分証明図 Π9 とおく.
[ Ord(α) ]3
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Fund(α)
x⊆α ∧ x,∅ → R
R
— 21 —
x⊆α x,∅
x⊆α ∧ x,∅
P
Π4
また,Π6 , Π8 を用いて,以下を部分証明図 Π10 とおく.
¬(x ⊆ α)
[ z ∈ x ∧ z < α ]1
∃z (z ∈ x ∧ z < α)
α∈x
1
α∈x
x ⊆ α′
Π8
Ord(α)
x ⊆ α′
R
Π6
最後に,Π9 , Π10 によって,補題の証明図が得られる.
[ x ⊆ α ]1
x ⊆ α ∨ ¬(x ⊆ α)
[ x , ∅ ]2 [ Ord(α) ]3
Π9
R
R
2
x ⊆ α′ ∧ x , ∅ → R
∀x (x ⊆ α′ ∧ x , ∅ → R)
Fund(α′ )
3
Ord(α) → Fund(α′ )
[ ¬(x ⊆ α) ]1
[ x ⊆ α′ ]2
R
[ Ord(α) ]3
Π10
1
定理 28.
Ord(α) → Ord(α′ )
が成り立つ.
この定理は,ある順序数の後続数もまた順序数であることを述べている.
証明にはここまでに示した補題を用いる.以下の通りである.
[ Ord(α) ]1
[ Ord(α) ]1
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Trans(α) ∧ Alt(α) ∧ Fund(α)
Alt(α)
補題 26 [ Ord(α) ]1 補題 27
Trans(α)
補題 25
′
′
Trans(α )
Alt(α )
Fund(α′ )
′
′
′
Trans(α ) ∧ Alt(α ) ∧ Fund(α )
Ord(α′ )
1
Ord(α) → Ord(α′ )
4.8. 自然数と Peano の公理
特定の性質を満たす順序数を考えることで,自然数を構成することができる.
定義 3.
述語 Suc, Ind, Nat を,
Suc(n) :↔ ∃x (Ord(x) ∧ n = x′ )
Nat(n) :↔ Ord(n) ∧ ∀x (x ∈ n → (x = ∅ ∨ Suc(x))) ∧ (n = ∅ ∨ Suc(n))
によって定義する.
Nat(n) なる集合 n を自然数 (natural number) と呼ぶ.また,Suc(n) なる順序数 n は他の順序数の後続
数になっており,後続順序数 (successor ordinal number) と呼ばれる.
— 22 —
定理 29.
5式
Nat(∅)
Nat(n) → Nat(n′ )
Nat(n) → n′ , ∅
Nat(m) ∧ Nat(n) ∧ m′ = n′ → m = n
∅ ∈ A ∧ ∀n (Nat(n) ∧ n ∈ A → n′ ∈ A) → (Nat(m) → m ∈ A)
が全て成り立つ.
自然数の定義としては Peano の公理によるものが有名だが,この定理はここでの自然数の定義も実
際に Peano の公理を全て満たしていることを示している.これらは,ここまで示した順序数の性質を
用いて示すことができる.
5. 順序数の演算
5.1. 関数
定義 4.
述語 Pair, Func を,
Pair(A) :↔ ∀x (x ∈ A → ∃u ∃y (x = ⟨u, v⟩))
Func(A) :↔ Pair(A) ∧ ∀x ∀y ∀z (⟨x, y⟩ ∈ F ∧ ⟨x, z⟩ ∈ F → y = z)
と定義する.
Func(F) なるクラス F を関数
(function) と呼ぶ.解析学などの数学の他の分野では,ある集合のそ
れぞれ元をもう 1 つの集合の元に対応させるものが関数だと考えられるが,その観点からすれば,
Func(F) なる F は関数への入力と出力の対を全て元として含むクラスとみなされる.Func(F) の定義
の後半部分は,関数への入力に対し複数の出力が存在しないことを意味している.
定義 5.
関数 dom, ran を,
dom(F) B {x | ∃y (⟨x, y⟩ ∈ F)}
ran(F) B {y | ∃x (⟨x, y⟩ ∈ F)}
と定義する.
クラス F が Func(F) を満たす,すなわち F が関数であるとき,dom(F), ran(F) はそれぞれ定義域
(domain), 値域 (range) と呼ぶ.
— 23 —
5.2. 和, 積, 冪
定義 6.
述語 Seq, It を,
Seq(s) :↔ Func(s) ∧ Ord(dom(s))
It(s, a, F) :↔ Seq(s) ∧ Nat(dom(s)) ∧ s(0) = a ∧ ∀x (x′ ∈ dom(s) → ⟨s(x), s(x′ )⟩ ∈ F)
によって定義する.
Seq(s) とは,集合 s が定義域を順序数とするような関数であることである.It(s, a, F) なる集合
s, a とクラス F について少し詳しく見る.まず,Seq(s) と Nat(dom(s)) がともに成り立つから,s は定
義域を自然数とするような関数である.さらに,定義の最後の部分から,⟨s(0), s(1)⟩, ⟨s(1), s(2)⟩ · · ·
が F に属することが分かる.つまり F は,ある自然数による s の出力とその次の自然数による s の出
力を合わせた順序対からなるクラスであることが分かる.It(s, a, F) が成り立つとき, s を a から始
まる F の iteration sequence と呼ぶ.
ところで,述語 Func はクラスに対して定義されたものだったから,集合である s に対して Func(s)
は本来まだ定義されていない.そこで,S B {x | x ∈ s} とおいて,Func(s) を Func(S ) と解釈するこ
とにする. x ∈ s と x ∈ S は同値であるから,これは自然な解釈である.このような S は s を表現
(represent) しているという.
Func(F) なるクラス F と dom(F) に属する集合 a に対し,⟨a, x⟩ ∈ F なる x を,通常の関数適用の
表記と同じく F(a) と書くことにする.
定義 7.
関数 nit を,
nit(F, a) B {⟨x, y⟩ | ∃z (It(z, a, F) ∧ ⟨x, y⟩ ∈ z)}
によって定義する.
nit(F, a) を a に関する F の numeral iterator と呼ぶ.
定義 8.
順序数同士の演算を,
α + β B nit({⟨x, y⟩ | y = x′ }, α)(β)
α · β B nit({⟨x, y⟩ | y = x + α}, ∅)(β)
αβ B nit({⟨x, y⟩ | y = x · α}, ∅′ )(β)
によって定義する.
α, β が順序数であるとき,α + β, α · β, αβ がどれも順序数になることは,定義から明らかである.
— 24 —
6. 無限公理
自然数の定義から,自然数は順序数に含まれるということが分かるが,自然数でない順序数が存在
することはまだ示されていない.実は,初めに定式化した 6 つの公理だけでは,自然数でない順序数
が存在することも存在しないことも証明できないことが知られている.もし自然数でない順序数が存
在しないのならば,ここまで構成してきた順序数が全く意味のないものになってしまうので,NBG 集
合論では以下の公理を認めることにしている.
公理 30.
∃a (x ∈ a ↔ Nat(x))
が成り立つ.
これを無限公理 (axiom of inifinity) と呼ぶ.この公理により存在が保証される a を特別に ω と書く.定
義から明らかなように,ω は自然数全体の集合を表す.
定理 31.
Ord(ω)
が成り立つ.
ω そのものは自然数ではないので,この定理によって自然数でない順序数が存在することが保証さ
れる.さらに,すでに定義した演算により ω + 1, ω + 2, ω · 2, ω2 , ωω などの数が順序数として存在
することが分かる.
参考文献
[1]
P. Bernays (1958), Axiomatic Set Theory, North-Holland Publishing Company
[2]
R. R. Stoll (1963), Introduction to Set Theory and Logic, W. H. Freeman and Company
— 25 —