運動伝達の魔法の言葉に迫る 石野 航 (生涯スポーツ学科 学校スポーツコース) 指導教員 柴田 俊和 キーワード:魔法の言葉,リズム化能力,アナロゴン,観察能力,心身一元論 1.緒言 他人に運動感覚を伝える場面に直面したと 「リズム化」して捉えることができる経験的な 能力が必要ではないかと考えられる. き,運動課題についての説明が上手く伝わらな また,促発能力においては,観察・交信・代 いことがある.特にいつの間にか習得している 行・処方という4ステップそれぞれで具体的に ような運動であるほど伝達が難しい.しかし, 対私的意味構造の観察能力・共鳴能力・代行能 何か一言アドバイスすると驚くほど簡単に習 力・感覚呈示能力が「魔法の言葉」の発生には 得させてしまうことがある.この「魔法の言葉」 必要であると考えられる.教師は主にこの4つ はできる人が聞けば「そんなことで?」と疑問 の能力を用いて指導していくことで,「魔法の をいだくことがほとんどである. 言葉」につなげていくと考えられる.運動学の そこで本研究では,先行研究をもとにしなが 歴史的推移を検討した結果,過去の指導はマネ ら,筆者が定義した「魔法の言葉」が運動学領 ジメント重視の,心身二元論的な指導.そして, 域においてどこに位置づくのか検討していく. 筆者が研究している「魔法の言葉」を用いた指 その結果から,どのような能力が「魔法の言葉」 導は,心身一元論的な指導であると考えられる. と密接な関係にあるのか,その関連性を明らか 4.結論 にする.また,運動学の歴史推移をもとにその 研究結果より, 「魔法の言葉」はリズム化能 動向を知り,今後の参考資料とすることを目的 力に位置づくことが分かった.また,考察で述 として,文献の内容を検討した. べた促発能力の4ステップは,心身一元論的指 2.研究方法 導であることが明らかになった. 5つの文献で,運動学領域と体育領域から つまり,教師は運動をリズム化して言葉に表 「魔法の言葉」にアプローチする. そうと試みたり,アナロゴンを探求して言葉に 3.結果と考察 表そうとすることが,「魔法の言葉」を発見す 運動伝達において,一般的なコツで「分から るスタートラインだといえる. ない」という子どもにはその子に応じた「魔法 引用・参考文献 の言葉」探っていかなければならない.それに 1)植田裕己(2011)運動の伝承に関する研究~ は,アナロゴンの発見が大切で,子どもの情報 効果的な逆上がりの教え方を求めて~,びわ から子どもの動いている感じが分かる(運動共 こ成蹊スポーツ大学卒業研究. 感)ことで,子どもが「分かった」という状態 2)金子明友(2002)わざの伝承,昭和出版. になればその言葉がけは「魔法の言葉」であっ 3)金子明友(2005)身体知の形成〈上〉,昭和出 たということになる. 版. 「魔法の言葉」をわざの伝承の創発能力の視 4)山本儀浩・益子照正(2013)つまずきを徹底サ 点から金子の構造図に当てはめた結果, 「コツ ポート!体育授業で使える魔法の「言葉か の創発能力」における「力動的修正能力」の「リ け」,明治図書. ズム化能力」に意味的な観点から一致すること 5)吉田茂・三木四郎(1996)教師のための運動学 が明らかになった.つまり,教師は運動課題を ~運動指導の実践理論~,大修館書店.
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