感染リスクには 恐怖が伴う 正しく恐れるとは?

2015/02/03
2015.2.2 JAMSNET東京講演会
鈴木 満 略歴
日本精神神経学会専門医・指導医。日本医師会認定産業
医。医学博士。
外務省メンタルヘルス・コンサルタント。常勤精神科医師とし
て国内外省員6,000名のメンタルヘルスケアを担当。メンタル
ヘルスケアを要する邦人援護事案については領事局と協働。
1987-1992年 英国国立医学研究所 研究員としてロンドンに
居住。ロンドンでメンタルヘルス専門家ネットワークを立ち上
げた。帰国後は海外邦人コミュニティにおけるメンタルヘルス
実態調査、連携支援に携わり、海外100都市以上を訪問。
国境を跨ぐ大規模緊急事態における メンタルヘルス・リスクマネジメント -­‐ 感染症の場合 -­‐
鈴木 満 本講演の内容は個人的見解によるものであり、 外務省を代表するものではありません。
外務省在外公館における 邦人援護数(2013)
•  総援護件数 17,796件
•  総援護人数 19,746人
•  「犯罪被害」5,353件:全体の3割
そのうち強盗被害が294件)
•  「事故・災害」
「交通事故」 143件
「水難事故」 33件
•  「その他」精神障害 203件
自殺・自殺未遂等(死亡者62人)
感染リスクには 恐怖が伴う
-­‐ 大規模緊急事態と惨事ストレス -­‐
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暴動・クーデター・紛争 大規模事故 自然災害 テロ 人質事件・ハイジャック 原子力災害 大規模感染症 正しく恐れるとは?
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1.Preparedness 心構え、備え、事前準備 ��������������巨大惨禍への精神医学的介入(2013�弘文堂)
海外大規模緊急事態における
メンタルヘルス・リスクマネジメント
海外大規模緊急事態における
メンタルヘルス・リスクマネジメント
n  有事の支援
n  平時の備え
メンタルヘルス・リテラシーの平準化
セルフケア能力の強化
異常な事態における正常な反応
異常な事態に誘発された過度な反応
平時でも見られていた異常な反応の増悪
災害弱者の把握
災害弱者、精神科救急事例、ケアギバーへの対応
専門家と非専門家の共通支援ツール普及: PFA
情報発信者と受信者の公正な関係作り
多様な人々から構成されるコミュニティに正しい 災害情報をどう伝えるか?
2.Risk communica7on リスク・コミュニケーション リスク情報を発信する人 伝える人 受け取る人 2
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リスクを 誰(当時者、支援者等)に、 どう伝えるか? リスクを 誰(コミュニティ、マスメディア等)と どう共有するか?
3.Cultural competence
文化を感じ取る能力
#
Cultural competence#
メンタルヘルスサービスの提供者が文化を超
えて効果的かつ効率的に作業するのに役立つ
ようなふるまい、態度、技能そしてポリシーのこ
とである。(Crisis counseling guide. New York State
恐怖と不安 Office of Mental Health 1997)#
有能なメンタルヘルスケアの提供者は、自分
自身の仮説や価値観を認識し、クライエントの
世界観を尊重し、文化的に適切な介入をする
能力を持っている。(Guidline of American
Psychological Assosiation 1993)#
恐怖には 特定の対象がある 恐怖は主観的。 その程度と内容は 多様では個人差がある 3
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地震>雷>火事>親父
普段は目に見えず、予測で
きず、甚大で、命に関わるも
のへの恐れは大きい?
恐怖症: 理屈でわかっても 怖がるケース
大多数の人とは異なる
「訂正不能な誤った確
信(妄想)」のために 怖がるケース
スティグマ
•  烙印、偏見、人種差別、性的志向 •  魔女狩り:異端者排除などによる殺戮 •  HIV:同性間の性交渉による感染 •  時にマスメディアのエンターテイメント志
向が助長 •  時に噂や恐怖と連動して肥大 恐れに随伴するもの
•  怒り(不公平感、既得権制限)、嫌悪、不信、
嫉妬、心気、スティグマ、予期不安 •  回避、無関心、過小評価 •  集団としての行動化:誹謗中傷、いじめ、攻
撃、悪者さがし、乱暴な単純化、過度な一般
化 •  Human errorと原因(感染源等)とのすり替え 4
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微生物:肉眼では見えない病因
梅 毒 医学が解明した「見えないもの」への恐怖
•  細菌の大きさ 1-­‐5 μm (1 μmは千分の1mm) •  ウイルスの大きさ 20-­‐970 nm (1 nmは100万分
の1 mm) •  光学顕微鏡の観察対象 0.2 μm-­‐1mm •  それより小さければ電子顕微鏡で観察 •  性交渉によって感染 •  原因菌である梅毒トレポネーマによる慢性
の全身性感染症 •  原因不明の精神病「進行麻痺」の病因で
あったことが解明 •  抗生物質による治療が可能となった 感染症を正しく恐れ
るとは?
• 恐れの対象を知ること • 恐れている自分(知識、スティ
グマ、感情)を知ること • 情報発信者、伝達者、受信者
それぞれの恐れ方の違いを
知ること 5