第 65 回全国高等学校 PTA 連合会大会 岩手大会報告

第 65 回全国高等学校 PTA 連合会大会
岩手大会報告
第 65 回全国高等学校PTA連合会大会岩手大会が、平成 27 年 8 月 20 日から 21 日の 2 日間、盛岡市の
岩手産業文化センター(アピオ)をメイン会場に約 9500 人が出席し開催されました。この大会は、講演会
や分科会を通じ、PTAとして子どもたちの育成にどう携わるべきか活動の在り方を探るものです。
開会式には下村博文文部科学大臣が 3 年連続で出席され、その
ほか、岩手県副知事や盛岡市副市長など多くの来賓が出席されま
した。
全国高P連の佐野元彦会長は、今回の大会は 3 年前の東日本大
震災後、初めてこの地で開かれた大会で、復興の取り組みや教訓
を風化させないためにも、大会前後を通じて三陸沿岸部に足を運
び、復興の歩みを感じてほしい、全国高P連は今後とも復興を支
援していくと話されました。
今回のテーマ「未来圏からの風をつかめ!~新時代を担う君た
ちと共に~」は岩手県が誇る農業詩人宮沢賢治の「生徒諸君に寄せる」という詩の「諸君はこの颯爽たる諸
君の未来から吹いてくる透明な清潔な風を感じないのか、諸君はこの時代に強いられ率いられて奴隷のよう
に忍従することを欲するのか」という呼びかけから取ったものです。
今子どもたちをとりまく環境は大きく変わり、急激な社会変化、IT革命の進展、マスメデイアの発達の
中で、子どもたちは何を手にして何を失っているだろうか、自分は何をめざすべきか、子どもたち自身が確
信をもてずにうろうろしていることがないだろうか、今こそ子どもたちに「未来圏から吹く透明な清潔な風」
を肌に感じてほしい、手をかざして進むべき彼方を見つめてほしい、そして奮い立ってほしいという思いを
込めたものです。そしてそのために学力の3要素「知識、技能の十分な習得」、
「習得した知識、技能を通じ
て答えのない問題に自ら答えを出していこうとする、思考力、判断力、表現力」、
「これらの素になる主体性
を持って多様な人と関わる社会力」をしっかりと身につけ、伸ばしていくための取り組みを進めていくため
に今回の大会を生かしてほしいと話されました。
各来賓の挨拶の後、表彰式が行われ、平成 27 年度優良PTA
文部科学大臣表彰団体で広島県立加計高等学校芸北分校PTA,
第 65 回全国大会会長表彰(個人)で広島県立祇園北高等学校の
佐々木道宏氏、広島県立尾道商業高等学校の山室学司氏、同じく
団体では広島県立祇園北高等学校PTAが表彰されました。まこ
とにおめでとうございます。
1. 基調講演(8/20
10:50 から 11:50)
開会式の後、盛岡市出身の芝浦工業大学学長の村上雅人氏が、「夢高くして足地にあり The sky is the
limit」をテーマに、自分の経歴や、専門の超電導工学、教育の役割などを基調講演されました。
「The sky is the limit」とは直訳すると「空の高さを制限とする」ですが、空はどこまでも高く、限度
がありません。つまり、事実上は制限がないということで、
「制限なし」
「限度なし」また「可能性は無限
大」「能力や可能性にも制限がない」という意味で使われます。氏は人生を豊かにするものは「夢」であ
り、そして、自分の為すことが社会の役に立っていると感じるときに安寧が得られると話され、もうひと
つ重要なものは「知」の探求で、現代の科学で解明できることは限りがあるが、頭で考えることは限りが
ない、まさに「The sky is the limit」だと話されました。我々の頭の中は無限大で、無限大の可能性を秘
めており、無限大に心を寄せることができるのです。氏は若い人を育てることが自分の天命と思っている、
教育の大きな使命の一つは若者に夢を与えることであると話され、自分も高校時代の先生との出会い(ア
メリカ留学を勧めてくださった先生とのことでしたが)が自分の人生を決めたと話されました。氏の生き
生きとした話しぶりや、これまで成し遂げられたことをお聞きして、常に探求していく心が、物質的な意
味ではなく精神的にどれだけ人生を豊かにしていくか感じ、ぜひ自分の子どももこのような精神的に豊か
な生活を送ってほしいと思いました。
2. 第2分科会(8/20
14:00~16:30)
午後からは7つの分科会(7会場)に分かれ、私は岩手県民会館で行われた第 2 分科会「進路指導と
PTA~「キャリア教育」の推進と PTA 活動~」に出席しました。
このテーマの趣旨は、少子高齢化社会は産業経済の構造的変化や雇用の多様化をもたらし、就職就業を
めぐる環境が大きく変わってきており、このような中で若年層の社会人・職業人としての資質や素養が問
題視されています。人間関係を上手に築けず「自分で意志決定できない」
「自己肯定感が持てず将来に希
望が持てない」など子どもたちの生活や意識が大きく変化しています。このような状況に対応すべく政策
として打ち出されたの「キャリア教育」ですが、まだまだ多くの課題が指摘されています。一人一人の子
どもたちが、自分の個性や適性を充分に踏まえて未来に向けた夢・希望・目標の実現に努力できるよう
PTA としてどのように活動できるか考えようというものです。
4つの高等学校が 15 分程度かけて発表し、その後質疑応答があり、助言者による助言が行われました。
(1)発表テーマ「先輩たちに学び、将来の職業を考える」
(北
海道帯広柏葉高等学校)
<発表概要>
職業イメージを育てるキャリア教育の一環として平成 17 年度
から実施している「柏葉塾」と、PTA 進路講演会について発表さ
れました。
「柏葉塾」は各界で活躍する同窓の先輩諸氏による講演
会を実施しており、平成 26 年度は 11 名の同窓生に講師(薬剤師、
看護、建築士、医師、研究者等様々な分野にわたる)を依頼し講
演を行いました。また、子供たちの進路を考えるうえで必要な情
報を得るとともに親子で進路選択について考え、家庭の役割を見直す機会となることを期待し、講師を予
備校から招いて大学受験に関わる講演を行っています。
<感想>
社会人としての資質・素養の欠如がある、精神的・社会的自立が遅れている、自信がない、社会との関
わりに実感がないという今の子どもは、進学・就職後長続きしないとのことであるが、それは今に始まっ
たことではなく、昔も自分自身を思えばそれは同じではなかったかと言われ、自分も短大卒業時に働くと
いうことが具体的に全くイメージできなかったことを思い出しました。学生の時に、働くということにつ
いて具体的なイメージを持つことは、卒業後の人生に大変有益であると強く思いました。
(2)発表テーマ「メール配信による取り組み」(東京都立向丘高等学校)
<発表概要>
東京都立向丘高等学校は東京大学から徒歩 5 分の位置にあり、東京のど真ん中で、情報過多、情報漏え
いなどが犯罪に直結してしまう怖さのある環境にあるため、個人情報の問題も含め学校からのお知らせが
紙ベースでしたが、子どもたちがお知らせを持って帰ってこない、また出身中学校が都内 500 校を超え
ることから保護者同士のつながりがほとんどなく情報交換ができないなどで、保護者が学校の状況が全く
わからない状態にありました。3 年前にリスクを覚悟しメール配信を始め、学校からの情報が保護者に届
くようになり、それにより保護者が学校に興味を持ち、学校への協力につながり、保護者が学校からの情
報により子どもたちへのアドバイスも的確になり子どもたちがぶれることなく自分の目標に向かって邁
進できるようになりました。
<感想>
私の住む府中町では小学校からメール配信を行っているため、メール配信にそこまでのリスクがあるの
かと、東京ならでは土地事情があるのだとは思いますが、大変なことを成し遂げたかのような発表でした
が、あまり賛同はできませんでした。しかしながら、保護者は、小学校から、子どもたちが配布物をちゃ
んと保護者に渡さないという悩みを抱えており、
「今日○○を渡した」などの情報がメールで保護者に届
くと、子どもに確認することができるため、そのようなメールの活用方法は見習うべきとも感じました。
(3)発表テーマ「PTA が関われるキャリア教育~親が働く姿を見せれば、子供は学ぶ~」
(和歌山県立桐
蔭中学校・高等学校)
<発表概要>
「桐蔭は、自ら人生を切り拓く人を育てます」をキャリア目標として、平成 25 年度に文部科学大臣か
ら研究開発学校の指定を受け、28 年度までの 4 年間、いわゆる進学を主とする学校におけるキャリア教
育に関する研究開発を行っています。普通科にこそキャリア教育が必要と考え、学ぶ目的を省察させるこ
とを通じて学ぶ意欲の向上につなげるとともに人間関係づくりのためのコミュニケーション能力等の向
上につながる「桐蔭キャリア教育モデル」を構築し、中学校 1 年生の時から、「桐蔭の学び」という授業
で徹底的になぜ勉強するのかということを考えさせるようにしています。PTA はこのキャリア教育に図
書館ボランテイアで子供を見守る姿を、文化祭での PTA バザーで親が協力して働く姿を見せることで関
わっています。
<感想>
最初にテーマを見たときに「親が働く姿を見せれば」という部分で、仕事を持つ親の働く姿のことかと
思ってしまったので、PTA 活動で親が働く姿なのか、とそれがキャリア教育になるのかと、正直よくわ
かりませんでした。しかし、桐蔭中学校・高等学校が中学校1年生の時に行う「桐蔭の学び」という授業
の内容「なぜ○○を勉強するのか、○○の勉強がどう役に立っていくのか、○○と学部学科・職業との関
係、社会で活躍するために必要な力とは何かを考えさせる、15 年後の私を 2 つ以上の挫折経験を入れて
シュミュレーションさせる」などは素晴らしい取り組みだと思いました。
(4)発表テーマ「子どもの背を押す育友会~「NPO 法人倉吉鴨水館」の設立をめぐって~」(鳥取県立
倉吉東高等学校)
7 月 11 日に岡山市で開催された中四国大会と同じ発表ですので、割愛します。
助言者からは全体として、キャリア教育とは出口指導を中心になりがちだが、そもそもは社会の中で自立
して進路を切り拓いていく子どもをどのように育てたらいいかということを念頭において考えられたも
のであり、どの発表も子どもに自分の進路を主体的に考えさせる素晴らしい取り組みであると感想を述べ
られました。
3.記念講演(8/21 10:00~11:15)
大会 2 日目は、盛岡市出身の映画監督の大友啓史氏が「アドリ
ブを生きる力」をテーマに豊富な現場エピソードの中から自身の
アクシデントすら楽しみ、それを作品としての力に変えていくア
ドリブ力をどう蓄えていくか講演されました。
監督の作品としては、NHK 大河ドラマ「竜馬伝」、
「るろうに剣
心」
、「プラチナデータ」などがあります。
氏は、いろいろな作品の撮影過程で生じたアクシデントをいか
に作品に生かしたか様々なエピソードを交えて語られ、必ずしも
与えられたものが絶対ではない、予想外のことが起きた時にそれ
を楽しめない人ほど現場からどんどん脱落していってしまう、過去あるようなものをなぞるような発想・
行動からは残念ながら新しいもの、面白い発想は出てこないというのがこの 20 年間の実感であると話さ
れました。思いがけないことが起きた時の対処法といったようなものをもっと意識して子育てしたほうが
いいのかどうかはわからないが、常日頃あっさり死んでしまったり、あっさり人を責めていったりするよ
うなニュースを見ると、どこかおもいがけないことが起きた時の耐久度が落ちているのではないか、特に
若い人はまだ知っていることが少ないはずなのに、まだ一つのルールを決める必要はないはずだと思うと
話されました。
昨日の分科会でも、今の子どもたちはストレス耐性が低い(叱られるとすぐ萎縮する)
、自信満々だけ
ど実践に弱い、失敗を極端に恐れ、間違いのない答えを求めるなどの特徴があるという話がありましたが、
想定外のことが起きた時にそれに飲み込まれてしまって、楽しむ余裕が今の子どもたちにはないような気
がしました。しかし、では自分の子どもにどのようにそれを身に着けさせたらいいかというと、どのよう
にしたらいいかなかなか難しいと思いました。
閉会式で、大会宣言が採択され、次期開催地である千葉県の紹介と挨拶がされました。次回の大会のため
に 3 年前から準備委員会を設けて準備されていると聞き、改めて大変な大会なのだと思い、ここまで準備
された岩手大会の役員の方々に心から敬意を表します。
今回の大会中、主に盛岡市内の会場を移動しましたが、
建物や道路の損傷といった東北大震災の傷跡はほとんど
感じられませんでした。しかし、まだまだ多くの人が非
難を強いられている状況や母校が立ち入り禁止区域のた
め他の場所を借りて授業を行っている高校のことなどを
聞くと、改めて震災の恐ろしさと平和な日常があること
の有難さを感じました。
とても充実した 2 日間で、参加できたことに心から感
謝いたします。
<1 年生副会長 松原 千穂子>