C E R N (セルン) の概要 2016.2.22 (V10U by T. Kondo) 1 目 次 ・CERNの概要(沿革・予算・組織・利用者分布など)……… p. 3 ・CERNにおける実験研究への日本の参加………………………… p.10 ・LHC計画 ………………………………………………………… p.11 LHC建設における日本の貢献…………………………… p.13 LHC超伝導電磁石…………………………………………… p.15 LHCの建設………………………………………………… p.15 LHCの完成と近未来予定………………………………… p.20 LHCの運転状況……………………………………………… p.27 アトラス実験……………………………………………… p.30 LHCによる物理研究………………………………………… p.38 ヒッグス粒子の発見……………………………………… p.41 重イオン衝突反応でのジェットの消滅現象を観測…… p.43 ・アリス実験・LHCf実験………………………………………… p.44 ・アサクサ実験・コンパス実験・ニュートリノ実験………… p.46 ・CERNの将来計画(LHCアップグレード、CLIC)…………… p.49 ・フェローシップ、夏の学校プログラム……………………… p.51 ・日本からの主な訪問者………………………………………… p.53 ・関連するウエブページ(主にLHC関連)…………………… p.55 2 CERN(セルン)の概要 研究所: CERNの名称は、前身組織仏名のConseil Européen pour la Recherche Nucléaireの略称を継続。現英語名称 はEuropean Organization for Nuclear Researchで、素粒子の基本法則や現象を加速器を用いて探究する研究 所。ジュネーブ郊外のスイスとフランスの国境にまたがる。 CERN 沿革: 1954年: 欧州12カ国の国際的研究機関として設立 1959年: 28GeVの陽子シンクロトロン(PS)完成 1971年: 陽子・陽子コライダー(ISR)の完成 1976年: 450GeV大型陽子加速器(SPS)の完成 1983年: 陽子・反陽子コライダーでWとZ粒子を発見 1989年: 50+50GeV電子・陽電子コライダー(LEP)の完成 1994年: 陽子・陽子コライダー(LHC)の建設を決定 2000年: LEP2加速器の運転を終了 2008年: LHC建設が完成し450GeVビーム周回に成功 2010年: pp実験を7TeVで開始し重イオン衝突にも成功 2012年: ヒッグスボゾンとみられる粒子をLHC実験で観測 2015年 : 13 TeV運転開始した 運営: 年間予算 約1000MCHF(1200億円相当)うち92% %は加盟国による出資(NNI(国民純所得)に比例)で8.5%はホス ト国の追加出資やEUなどの外部資金および資産運用収入による(2014)。 職員数 約2,300人 + 約1,400人 (payed personnel) 加盟国(21カ国):ドイツ,フランス,イギリス, イタリア, スペイン, オランダ, ベルギー, ,ノルウェー, ポーランド, スイス, スウェーデン, オーストリア, ギリシャ, デンマーク, フィンランド, ポルトガル, チェコ, ハンガリー, ス ロヴァキア, ブルガリア(出資高順),イスラエル(2013年12月に加盟) 加盟手続き中:ルーマニア・セルビア アソシエートメンバー国:トルコ・パキスタン(アゼルバイジャン・ブラジル・クロアチア・キプロス・インド・ ロシア・スロベニア・ウクライナは手続き中) オブザーバー国:インド、日本、ロシア、米国、EU、UNESCO、JINR(ドゥブナ合同原子核研究所) 利用:CERNを利用する高エネルギー物理などの研究者数は年間12,248人 [2016年1月現在、8ページ参照]。日本か らは、LHC計画ATLAS実験、COMPASS実験、ASACUSA実験、OPERA実験、ALPHA実験に、東大、名古屋大、神戸大、 KEKなどからの研究者が国際協力で参加している。またKEKとは加速器R&D協力が進められている。 3 C E R N (セルン) CERN Meyrinサイト 背景にジュラ山脈 World Wide Webの誕生地 CERN計算機部門(当時)の Tim Berners-Lee氏は、世界中 に散らばっている実験チームのメンバーの研究者間で、 瞬時に同じ情報をアクセスするにはどうしたらよいか悩 CERN ジュネーブ んだ末、1990年も年の暮れ近くにWebの発明に至った。 最初のWebに使われたNeXTStepというパソコンは CERN に陳列されている。 4 加盟国からの分担金一覧(2014年1月~12月) 国名 拠出率 拠出額 ( CHF ) 円換算額(億円:100円/CHF) オーストリア 2.2198% 24,409,450 24.409450 ベルギー 2.7758 % 30,524,000 30.524000 ブルガリア 0.2803 % 3,081,950 3.081950 チェコ 1.0298 % 11,324,100 11.324100 デンマーク 1.7581 % 19,333,100 19.333100 フィンランド 1.3925 % 15,312,300 15.312300 フランス 15.3875 % 169,206,150 169.206150 ドイツ 20.2738 % 222,938,350 222.938350 ギリシア 1.6363 % 17,993,450 17.993450 ハンガリー 0.6471 % 7,115,600 7.115600 イスラエル 1.1927 % 13,114,850 13.114850 イタリア 11.4817 % 126,256,550 126.256550 オランダ 4.6002 % 50,586,000 50.586000 ノルウェー 2.5468 % 28,005,550 28.005550 ポーランド 2.6618 % 29,270,600 29.270600 ポルトガル 1.2009 % 13,205,900 13.205900 スロバキア 0.4966 % 5,460,950 5.460950 スペイン 8.2840 % 91,093,950 91.093950 スウェーデン 2.6111 % 278,712,950 278.712950 スイス 3.6890 % 40,081,700 40.081700 13.8782 % 152,609,250 152.609250 100.00 % 1,099,636,700 1099.636700 英国 合計 資料: http://dg-rpc.web.cern.ch/dg-rpc/Scale/MemberStatesContributions2014.html 5 CERNの組織図 (2016年1月) 職員の内訳 (2012年12月) 執行部:187名 管理部:412名 研究部:717名 加速器:1196名 研究職:79名 技術職:2036名 事務職:397名 6 国籍別職員数(2012年末現在) 国名 オーストリア 正規職員 フェロー 協力研究者 学生等 合計 ユーザー 47 14 14 19 94 2.49% 131 1.21% 105 8 1 3 117 3.10% 111 1.03% 13 7 2 5 27 0.71% 86 0.79% スイス 182 12 9 24 227 6.03% 208 1.92% チェコ 4 7 5 3 19 0.50% 198 1.83% ドイツ 184 52 13 51 300 7.97% 1,248 11.52% 21 2 0 4 27 0.71% 64 0.59% 115 81 49 23 268 7.12% 363 3.35% 28 3 2 8 41 1.08% 93 0.86% ベルギー ブルガリア デンマーク スペイン フィンランド フランス 1031 58 35 12 1136 30.18% 788 7.28% 223 28 13 18 282 7.49% 674 6.22% ギリシア 20 25 18 27 90 2.39% 172 1.59% ハンガリー 11 8 2 4 25 0.66% 75 0.69% イスラエル 1 1 1 0 3 0.07% 60 0.55% イタリア 275 90 76 48 489 12.99% 1,726 15.94% オランダ 67 8 5 6 86 2.28% 146 1.35% ノルウェー 12 2 1 11 26 0.69% 69 0.64% ポーランド 60 28 29 46 163 4.33% 271 2.50% ポルトガル 45 19 19 6 89 2.36% 108 1.00% ルーマニア 8 11 6 7 32 0.85% 120 1.11% 1 0.02% 5 2 6 46 1.22% 41 0.38% 英国 セルビア 1 スウェーデン 33 スロバキア 16 1 0 1 18 0.47% 78 0.72% 非加盟国 10 70 70 7 157 4.17% 3,999 36.93% 2,512 540 372 339 3763 合計 10,829 資料: CERN-HR-STAFF-STAT-2012.pdf 7 CERNを利用するユーザーの国別分布(2016年1月12日現在) 73カ国から 12,248名 加盟国: 59 % オブザーバー国:27 % (うち日本 2.3 %) 国別順では アメリカ 1915 名 イタリア 1505 名 ドイツ 1307 名 ロシア 980 名 フランス 933 名 イギリス 910 名 ・・・・・・ ・・・・・・ 日本 279 名 CERN加盟国とユーザーの国分布に大きな不一致がある。「CERNの地理的・科学的拡大のための ワーキンググループ」の答申に基づき2010年6月の理事会で以下の決定がなされた。 (1) アソシエートメンバー国について、その権利・義務を変更して欧州に限らず希望する国の参加 を可能にする。また、正式加盟国になる前段階としての役割も持たせる。(2) 現オブザーバー国の 身分を徐々に廃止する(UNESCOとEUは例外)。(3) 個別の国との研究協力関係は維持する。 イスラエルが2014年から加盟国となった。パキスタン・トルコはアソシエートメンバー。ルーマ ニア、セルビアは加盟準備のアソシエートメンバー。アゼルバイジャン・ブラジル・クロアチア・ キプロス・インド・ロシア・スロベニア・ウクライナからは加盟国またはアソシエートメンバーに なる準備をしている。(2016年1月末現在) 8 CERNを使う研究者の年齢分布 1100 27 1000 900 800 700 600 500 400 64 300 200 100 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 100 0 3000人以上の博士課程の大学院生がLHCの実験に参加している。 9 CERN 衝突実験 固定標的実験 2009年~ ニュートリノビーム 2006年~ LHC加速器建設(KEK) COMPASS実験(山形大他) ATLAS実験 (KEK,東大など16機関) OPERA実験(名古屋大他) ALICE実験(広大,東大,筑波大) ASACUSA実験(東大他) LHCf実験(名大,早大ほか) LEP加速器によるOPAL実験 (2000年に終了 東大,神戸大) LHC加速器 SPS、PS加速器 SPS加速器→伊グランサッソ 10 LHC計画 Large Hadron Collider(大型ハドロン衝突型加速器) 目的 ・質量の起源のヒッグス粒子や超対称性粒子などの新粒子を発見し、 物質の究極の内部構造を探索する。 LHC加速器 ・7兆電子ボルト(7 TeV)の陽子同士を衝突させる。 ・周長27kmの地下トンネル内に設置される。 ・8.33テスラの超伝導双極磁石1,232台などからなる。 ・総重量35,000トン, 液体He120トン, 液体N2 10,000トン。 ・運転のための消費電力は約120MW(CERN全体で約230MW)。 ・総建設費費は 約5000億円、建設期間は14年。 ・2008年9月:450GeV陽子ビ-ムの周回に成功。 大量のヘリウム漏れ事故が発生し修理開始。 ・2009年11月:世界最高の陽子衝突エネルギー2.36TeV達成。 ・2010年3月: 3.5+3.5=7TeV の陽子衝突実験を開始した。 ・2010年11月:鉛の重イオン衝突実験を開始した。 ・2012年7月:ヒッグス粒子とみられる新粒子を発見。 ・2013年2月:2015年からの14TeV運転に向けた改良のため、 長期シャットダウン。 国際協力 ・CERN加盟国に日・米・露・カナダ・インドなどが協力。 ・日本は計138.5億円の加速器建設協力を行っている。 ・KEKはLHC衝突点の超伝導四極磁石を開発製造した。 実験装置 ・国際共同実験: アトラス(ATLAS)とCMS(ヒッグス・超対称性粒子 などの探索)、アリス(ALICE,重イオン衝突物理)、LHCb(B物理)の他 に小実験としてTOTEM, LHCfがある。 ・日本からは、高エネ研(KEK)・東京大・神戸大など15機関から約 100名の研究者がアトラス実験に、アリス実験には広島大・東京大・ 筑波大、LHCfには名大・早大などが参加している。 円形の赤線の地下約100メートルに周長27kmのLHC加速器ト ンネルがある。4つの実験装置の場所が黄色丸で示してある。 2007年4月26日 全ての超伝導磁石約1700台が設置された。 2007年11月7日 全ての超伝導磁石の接続が完了した。 11 LHCの建設費の規模 [1] LHC建設のための直接建設費 ・LHCの加速器・実験室 ・実験装置 ATLAS CMS ALICE LHCb TOTEM 合 計 (CERN-Brochure-2008-001 より抜粋) 3.68 BCHF 1.24 BCHF 540 MCHF 500 MCHF 115 MCHF 75 MCHF 7 MCHF ----------------------------4.92 BCHF (約 5000億円) 注:CERNはLHC計画の全コストを約100億ドルと概算している。これは1994年よりLHC計画に 要したCERNと協力機関による経費の概算総計で人件費も含まれている。 [2] LHC加速器建設における非加盟国による資金協力 日本: 160 MCHF (138.5 億円) 米国: 200 M$ ロシア: 67 MCHF(ただし測定器も込み) カナダ: 60 MCanada$ インド: 12.5 MCHF 12 CERN理事会における日本政府代表 文部大臣 与謝野馨 達磨 CERN DG Chris Llewellyn Smith 1995年6月23日 に与謝野馨文部大臣がCERN理事会に出席し日本によ るLHC建設協力を表明した。非加盟国の中では日本が最初であった。 その後も日本は資金協力を行い、総計138.5億円の建設協力を行った。 (http://cdsweb.cern.ch/record/721046?ln=ja) 2008年10月21日 LHC完成祝賀式典にて山内俊夫文部 科学副大臣が達磨の左目を記入してLHC完成を祝した。 (http://cdsweb.cern.ch/record/1135731) 13 LHC建設に貢献した主な日本企業 推定規模 億円(註) 古河電気工業 LHC加速器 超伝導ケーブル ~20* 新日本製鐵 LHC加速器 双極電磁石の特殊ステンレス材 ~50* 東芝 LHC加速器 収束用超伝導四極電磁石 ~15* JFEスチール LHC加速器 電磁石用非磁性鋼材 カネカ LHC加速器 電磁石用ポリイミド絶縁テープ ~10* IHI (+Linde) LHC加速器 低温ヘリウムコンプレッサー ~20* 東芝 アトラス 超伝導ソレノイド 浜松ホトニク ス アトラス,CMS, シリコン検出器, 光電子増倍菅, LHCb 光検出ダイオード ~10 川崎重工業 アトラス,CMS LArカロリメター容器, 鉄構造体 ~10 林栄精器 アトラス ワイヤーチェンバー ~5 東芝 アトラス 信号読み出し集積回路 ~2 ソニー アトラス 検出器信号アンプ ~1 ジーエヌディー アトラス トリガー用電子回路 ~1 フジクラ アトラス 耐放射線性光ファイバー ~1 クラレ アトラス シンチレーションファイバー ~1 有沢製作所 アトラス 銅箔ポリイミド電極シート ~1 古河電気工業 ~5* ~10 (註)推定規模は、部分的な情報から推定しており、実際の契約額と相当にずれている可能性があります。 あくまでも企業の貢献の規模の目安にすぎません。*印は日本による建設協力資金が使用された事を示す。 新日本製鐵 東 芝 浜松ホトニクス 14 極低温コンプレッサー 超伝導ケーブル 超伝導ダイポール電磁石 B= 8.33テスラ I H I 古河電気工業 温度 1.9 K(-271oC) ポリイミド絶縁テープ (58.5, 68.6 m厚) 非磁性鋼 日本政府による建 設資金出資のお蔭 で参入できた。 カネカ 15 新日本製鐵、川崎製鉄 15.1 mm (both) Strand filament数: 8900, 本 filament径: 7 m Cu/NiTi: 1.65 Diameter: 1.065mm strand数 : 28(inner), 36(outer) Rutherford type Cable 13,750A @7T (inner cable) 12,900A@7T (outer cable) 2つの双極磁場とビームパイプ を一つのヨークとクライオス タットの中に入れる 2-in-1 型。 Cold-mass部分は超流動ヘリウ ムを使って 1.9 K まで冷やす。 1232台の超伝導双極磁石は、CERNが技術 開発し欧州の3企業に技術移転して量産を 行っている。2006年11月まで全台数が納 入された。全数CERNで冷却・励磁検査を 受け殆どが合格した。 LHC加速器用超伝導双極磁石 16 全ての超伝導磁石は地上で冷却励磁試験された。 25台/週の双極磁石がトンネルに運びこまれた。 40,000ヶ所以上の真空溶接作業が延々と続いた。 2007.11.7 LHC加速器リングが完成した。 17 LHCのビーム衝突点 Low-b挿入用超伝導四極磁石 ビーム衝突点では、陽子ビームを10ミクロ ンの太さに絞りこむ。このためにレンズの 役割をする超伝導四極磁石が必要で日本と 米国とが設計・製造した。 KEKが設計、東芝が製造 磁場勾配 = 215 T/m 長さ 5 m、口径 70 mm 2005年に18台の生産と検査を完了した。 超伝導ケーブルを巻く 作業(東芝京浜工場) コイルを検査するために垂直型クラ イオスタットに入れる(KEK) LHCトンネル内に設置された超伝導四極磁石 その他、超伝導ケーブルの製造(古河電気工業)や、電磁石用特殊鋼(新日鐵、川崎製鉄)、極低温ヘリウム冷却設備(IHI) など、日本の建設協力資金を財源として調達した。日本企業によるLHC建設への貢献とその高い技術が評価を受けている。 18 主リング周長 26.7 km 陽子ビームエネルギー 7.0 TeV (7×1012eV) ルミノシティ 1034 cm-2s-1 バンチ間隔 25 nsec (40 MHz) バンチ当りの陽子数 1011 超伝導双極磁石 1232台 双極磁石長と磁場 14.2 m,8.33 Tesla 衝突点でのビーム半径 16 m バンチ衝突当りの陽子衝突数 約 20 (非弾性散乱) 2008年9月1日現在のLHC加速器の温度の現状。空色が液体ヘリウム温度。赤色が常温。運転時は全て空色になる。 19 CERNには加速器が多くありLHCへの入射ビームをつくる。25 GeV PSは1959年に完成したもの。 7 TeV 450 GeV 25 GeV 20 LHCの完成と近未来予定 2006年11月 最後のLHC超伝導磁石が納入された。 2007年4月 セクター7-8(LHCの8分の1)の1.9 K冷却に成功した。 LHC超伝導磁石が全て地下に運搬された。 2008年8月 SPSからLHCへのビーム入射(両方向)に成功した。 2008年9月10日 450GeVの陽子ビームの初周回に成功した(世界に放映)。 2008 年9月19日 大量のヘリウム漏れが発生し調査と修理を開始した。 2008年10月21日 LHC完成式典をCERNにて開催した。 2009年11月23日 450+450GeVの陽子衝突を4実験で観測した。 2009年11月30日 世界最高エネルギー1.18TeVまで加速に成功した。 2010年3月30日 3.5+3.5 = 7 TeVの陽子・陽子衝突実験を開始した。 2010年11月7日 287 TeVの鉛核イオン衝突に成功した。 2011年 7 TeVでの陽子・陽子衝突でATLAS/CMSで約6fb-1を蓄積した。 2012年 8 TeVでの陽子・陽子衝突でATLAS/CMSで約23fb-1を蓄積した。 2013-2014年 14 TeVを達成するためLHC加速器の修理を行う。 2015-2017年 14 TeVでの陽子・陽子衝突実験。 ビームの最新状況は http://lhc.web.cern.ch/lhc/ 2008年9月10日 にある。 450GeVの陽子ビームの初周回に成功した(世界に放映)。 この時のBBC映像は http://cdsweb.cern.ch/record/1125916 にある(公開) 21 22 2008.9.10 10:19 初めてのビームイベント 陽子ビームが約140m上流の閉じたコリメーターにダンプされ た時に発生したミューオンをアトラス実験装置が観測した。 左:成功喜ぶアトラス実験者 上:Googleに載ったマーク 右:歴代所長の見守る中で成功 23 陽子ビームの軌道は各所に取り付 けられたビームモニターによって 測定され、軌道補正がすぐに計算 された。 時計回りのビームの 周回は1時間以内で 成功した。ビーム スポットのうち1つは 一周後のビームによる。 翌日にはLHCのRF加速キャビティ とのタイミングマッチングに成功 しビームは週百回周回した。 2*109個の陽子が約140m上流 の閉じたコリメーターにダンプ された時の多数のミューオンが アトラス実験装置を通過し観測 された。 24 2008.9.19 のヘリウム漏れ事故と修理 ・セクター34(約3km長)の電力試験中に故障が発生した。 ・8.7 kAでマグネット間の超伝導ケーブル接続部で電気抵 抗が増加し発熱し放電した。液体ヘリウムが真空容器に 漏れ出して気化し圧力が急上昇した。 ・気化したヘリウムガスは真空容器内を走り、幾つかの圧 力障壁も壊して広がった。20台以上のマグネットの中身 または真空容器が最大50cmほど動いた。マグネットの支 持台のいくつかが破壊された。 ・2つのビームパイプも破れ、すす状の塵がその内部に広 ビームパイプ がった。計6トンのヘリウムが解放安全弁を経てトンネ も破壊された。 ル内に漏れ出した。 超伝導ケーブルの接続部が クエンチして発熱・溶解した。 ・53台のマグネットを地上に取り出して修理を行った。汚 染されたビームパイプの内部洗浄も行った。全ての超伝 導ケーブル接続部の測定を行い、幾つかの接続部を改善 した。クエンチ検出など各種の改善を行った。故障の規 模が内部圧力上昇で拡大しないよう安全弁などの改善も 並行して行った。 ・2009年11月に修理を完了し、ビーム運転が再開された。 マグネットが動き接続部が破壊された。 25 LHC運転の再開と近未来の運転予定 ・2009.11.20 450GeVでのビーム周回に成功。 ・2009.11.23 450+450GeVの陽子衝突を4実験で観測。 ・2009.11.30 世界最高エネルギー1.18TeVまで加速に成功. ・2009.12.8 2.36TeVの衝突現象を観測。 LHC加速器リーダーのスティーブ・マイヤー氏の言: 「LEPは加速器の調整に何週間もかかったが、 LHCでは時間単位で調整が進んでいる。」 ・2010.3.19 両ビームを3.5TeVまで加速できた。 ・2010.3.30 3.5+3.5=7TeV 衝突に成功し物理実験を開始。 ・2010 7 TeVの陽子衝突でATLASとCMS実験は積分ルミ ノシティ50 pb-1相当のデータを収集した。 287 TeVの鉛核イオン衝突に成功した。 ・2011 7 TeV陽子衝突を約6fb-1取る。 ・2012 8 TeV陽子衝突を約23fb-1取る。 ・2013-2014 加速器をシャットダウンし各種改善を行う。 ・2015- 14(or13)TeVで物理実験。 beam current 1.18TeV 450GeV 世界最高エネルギー達成を示すパネル。 450→1180GeVの加速に約10分かかった。 世界最高エネルギー達成を示すパネル を見上げて喜ぶLHC加速器オペレーター 26 2010年3月30日 7 TeVでの陽子陽子衝突に初成功! ビーム状態を示すパネルを見つめて7TeV衝突の瞬 間を待つ加速器オペレーターとCERNの職員たち アトラス実験で観測された最初の7TeVイベント 7TeV衝突の成功を喜ぶアトラス実験チーム 7TeV衝突の成功を祝福@東京大(左より小林富雄・Rolf Heuer CERN所長・ Sergio.Bertolucci副所長・徳宿克夫) 27 LHC加速器の運転状況 ・2010年3月~10月 7 TeV 陽子陽子衝突実験 ・2010年11月~12月 鉛イオン衝突実験 ・2010年12月~2011年3月 加速器運転休止 ・2011年3月~10月 7 TeV 陽子陽子衝突実験 ・2011年11月~12月 鉛イオン衝突 ・2012年4月~12月 8 TeV 陽子陽子衝突実験 ・2013年1月~2月 鉛イオン衝突 ・2015年2月 13 TeV 運転調整開始 LHC加速器の運転は順調で、2012年の 積分ルミノシティは予想の 15 fb-1を 上回る 23 fb-1 に達した。 2011年ピークルミノシティが大きくなった。 2012年の目標 2012年 積分ルミノシティは目標を越えた。 28 LHCの運転実績と運転計画 2010 2011 2012 2013 2014 2018 2019 8 TeV : 25 fb-1 エネルギーを上げる ための修理を行った。 13/14 TeV: 100 fb-1 2020 2021 2022 ための修理を行う。 休止して13 TeVの 2028 RUN 4 2023 2024 RUN 3 2029 2030 LS4 2031 2025 LS3 13/14 TeV: 250-600 fb-1 入射器の upgradeなど 2027 2017 RUN 2 LS 2 2026 2016 LS 1 RUN 1 7 TeV : 5.6 fb-1 2015 HL-LHCの設置, ATLAS /CMSの upgrades 2032 2033 RUN 5 2034 2035 LS5 HL-LHC計画 : 13/14 TeV, 3000 fb-1 29 情報源の基本は2015.6.18 第176回CERN理事会でのReport on new schedule HL-LHC (R. D Heuer) より CMS 汎用実験 TOTEM Total cross section 測定 LHCb Bの物理 ATLAS 汎用実験 LHCf 超前方実験 ALICE 重イオン 衝突実験 TOTEM ATLAS 汎用実験 30 アトラス実験装置 31 地下実験室で建設中のアトラス検出器 総重量 7000トン 研究者数 ~3000人 総工費 ~500億円 日本の分担 ~7% 2005年11月 (超伝導ソレノイド+中央カロリメターを中心に移動する直前) 32 写真①:日本で設計・製造された超伝導ソレノイドを液体アルゴ ンカロリメターに組込む作業が成功した(2004年2月)。 写真③:日本・英・米などで製造された2112台のシリコン検 出器はオックスフォード大で円筒状に組み上げられた。自動マ ウントロボットはKEKで設計されたもの(2005年1月)。 写真②:アトラス測定器の建設風景(2004年10月):バレル 液体アルゴンカロリメターとソレノイドが地下に下ろされた。 写真④:2006年春のアトラス測定器の建設風景:前後方液体 アルゴンカロリメターとバレル超伝導トロイド磁石が見える。 33 アトラス建設:日本の分担例(1) 超伝導ソレノイドマグネット 1998 超伝導線の製造 1999.12 コイルの内筒据付@東芝京浜工場 超伝導ソレノイドは中心部分に2テス ラの磁場を作る。KEKが100%分担。 1999 コイル巻き作業@東芝 2000.12 テスト励磁で8400A達成 2001 横浜港から ロッテルダムへ 2004.10 地下実験ホール(約90m)へ 2004.3 液体アルゴンカロリ メーターへの挿入作業。 2004.2 液体アルゴンカロリ メーター容器への挿入作業。 2001.9 CERNに到 着。CERN所長ほか。 34 アトラス建設:日本の分担例(2) シリコン飛跡検出器 1980年代:シリコン検出器が放 射線に強いことを初めて発見した。 KEKでの各種開発・検査作業 浜松ホトニクスがATLASとCMSの 殆どのストリップ検出器を製造 KEKで使った精密組立装置 2006: CERNで最終組み込み KEKでフレキ基板を設計・製造 KEK・セイコーによる組立ロボット 40%のバレルモジュールは日本で 組立・検査された。 2004-05: オックスフォード大 でモジュールをシリンダーに据付 35 アトラス建設:日本の分担例(3) 端部ミューオントリガー検出器を日本・イスラエルが建設 KEKで1200台を製造 (2000-2004年) 32万チャンネルの電子回路の 設計・製造・検査(KEKなど) 神戸大での宇宙線を 使った全数検査 CERNでのセクター組立と回路据付 (2005-2007年) 地下実験場でのアトラス測定器へ 組み込み (2006-2008年) 36 コンピューティング・グリッド 世界各国の研究所と大学を国際ネットワークで結んだ大規模計算機網 実験データの取得から物理解析まで,パイプライン処理を可能にする。 LHCの4実験(ATLAS, CMS, ALICE, LHCb)で取得される年間30~40PBの サイズに達するデータは,CERNの計算機センター(Tier-0)に蓄積する と同時に,13か所の主計算機センター(Tier-1)に専用ネットワークを介 して転送され,分散アーカイブされる。 一次処理されたデータは解析センター(Tier-2)に自動的に分配される。 研究者は,自分のパソコンからグリッドにアクセスして,データや計算 機の所在を意識することなく,即座に解析結果を得ることができる。 CERN ICEPP 計算ノード 40ヶ国に点在する170の拠点が高帯域学術ネットワーク (10Gbps~100Gbps)で接続されている。 ディスクストレージ 全体で50万個のCPUと50PBのディスクストレージが利用でき,常時 200万のデータ解析とシミュレーションが実行されている。 (CERNの計算機の割合は全体の10%程度) http://wlcg.web.cern.ch/ 東京大学素粒子物理国際研究センターに設 置されたグリッド拠点(WLCG Tier-2) 37 アトラス実験で観測された陽子衝突現象 Jet1:16 GeV Jet2 : 6 GeV 2009.11.23:最初の衝突イベント(900GeV) アトラス実験で観測されたKs粒子候補の 質量分布。黒点が観測値、黄色シミュレー ションによる予想分布でよく一致している 12.8:2.36 TeVでの衝突で2本のジェットを観測 アトラス実験観測された+,- 対の不変質量分布。 既知の粒子(J/, Zなど)のピークが見える。 38 LHCの物理(1) : 標準理論とヒッグス粒子 質量の起源であるヒッグ ス場に伴うヒッグス粒子 のみが未発見だった。 物質を細かくしていくと最後には クオークとレプトンにつき当たる。 標準理論は6種のクォーク・6種のレプトン・3 つの力の粒子・ヒッグス粒子から成り立っている。 4つの力(相互作用)が存在する:強さの順に 強い力 > 電磁気力 > 弱い力 > 重力 CERNグッズ のTシャツ 強い力・電磁力・弱い力で起こる現象は「標準理論」を使 えば非常に高い精度で予言できる。ただしそのためには ヒッグス場(右図の赤い記号)が存在しなくてはならない。 標準理論の方程式。質量の起源である ヒッグス場が赤い記号で示されている。 39 LHCの物理(2) : 超対称性(SUSY)理論・宇宙物理 大統一理論:超対称性粒子が1TeV付近に存在 すれば高いエネルギーで3つの力を統一できる。 WMAP クォークなどとスピンが半整数異なる超対称性粒子が LHCで発見される可能性が高い。 銀河系 ビッグバン後10-12 秒までさかのぼる LHC イベント 宇宙エネルギーの22%を占める暗刻物質は、超対称性 粒子の一つとしてLHCで発見される可能性が高い。 LHCでは宇宙創成(ビッグバン)時から1兆 分の1秒後の物理法則を研究している。 40 標準モデルの予言と高精度で一致 • ATLASとCMS実験は、陽子陽子衝突で発生す るWやZボソン、トップクォーク等の重い粒子の 発生頻度が、標準モデルの予想とぴっぴったり 一致することを示した(図1)。 図1:重い粒子の生成断面積 • 高い横運動量のジェットの発生頻度は標準モデ ルのQCD(量子色力学)の予言と10桁の範囲 で一致した(図2)。 図2:ジェットの横エネルギー分布 41 ヒッグス粒子とみられる粒子を観測 • ヒッグス粒子の質量は標準モデルでは予言出来 ない。質量が114GeV以上の領域でアトラス・ CMS実験がヒッグス粒子に似たイベントを探し 続けてきた。 ・2012年7月4日 CERNは「ATLASとCMS両実 験ともに質量125-126GeV付近に新粒子を観 測した」と発表した[1]。 図1:アトラスで観測されたヒッグス粒子が 4個の電子に崩壊する事象の候補 ・2013.3.14 CERNで発見された粒子がヒッグス 粒子であることを示唆していると発表された [2]. 超対称性粒子は見つかってない ・ 2012年7月、両実験とも超対称性粒子は約 1 TeV 以下の質量領域には存在しないと報 告した。 ヒッグス粒子の質量 [GeV] 図2:ヒッグス粒子が2個のガンマ線に崩壊 する事象の不変質量分布(アトラス実験) [1] http://press.web.cern.ch/press/PressReleases/Releases2012/PR17.12E.html 和訳はhttp://atlas.kek.jp/sub/CERN-LHC/PR17.12_J.pdf にある。 [2] CERNプレスリリース http://atlas.kek.jp/sub/CERN-LHC/PR20130314_J.pdf 参照。 42 2012年7月4日 ヒッグス粒子発見の発表 新聞がトップ記事として伝えた 43 LHC:ALICE(アリス)による 重イオン衝突実験 • 鉛イオン(208Pb82+)ビームを核子当たり 2.76TeV ま で加速し衝突させる。重心系衝突エネルギーはsNN= 5.5 TeV でRHIC実験(米国BNL)の28倍にもなる。 • RHIC実験などで発見された原子核特有の現象の ジェットの抑制と形状変化、J/ψ生成の抑制や完全流 体的集団運動などをより高いエネルギーで観測する。 • 物理はビッグバン誕生後10-6秒付近でのクォーク→ハ ドロン遷移の領域に相当する。 建設中のALICE実験装置 • L3マグネットの中に設置した大型TPCで1000を越える飛跡を観測する。 • 31カ国から約1000名の参加。日本からは広島大・東京大・筑波大が参加し主にフォトン検出器の建設と運転 を担当している。計算機センターを広島大に設置し解析も進める。 CERNで作業中の日本メンバー 0秒 ビッグバン 10-6 秒後:クォーク・グ ルーオンプラズマ状態 4×10-5 秒後: 陽子・中性子の形成 3 分後:原子 核の形成 44 LHCf 実験 (実験は終了) • アトラス実験の衝突点から140メートル離れたビーム ライン上に小型の検出器を設置し、陽子衝突で超前 方に放出される中性二次粒子(中性パイオン、中性 子)を観測する。 • 地球に降り注ぐ1017-1021電子ボルトの超高エネル ギーの宇宙線は、上空で大気原子とぶつかり巨大な粒 子シャワーを発生する。このシャワーを詳しく観測すれ ば、宇宙線の起源や宇宙の解明に役立つ。 LHCf 検出器はアトラス衝突点の超前方に設置される • しかし大気中の粒子シャワーの発達は、粒子の衝突で 発生する二次粒子の分布に依存する。その計算には 幾つかの理論モデルが使われている。 • LHCでの陽子衝突は1017 電子ボルトに相当する。超 前方に生成される中性粒子を観測すれば、それらの 理論モデルを検証することが出来る。 • 実験は衝突頻度が低い初期段階に行われ、2010年8 月17日にデータ収集を終え現在データ解析中。 • 日本・イタリアなど6カ国から30人、日本からは名大・ 東大・神奈川大・早大・甲南大・芝浦工大から15名が 参加している。 LHCf 検出器は小型で中性粒子を観測する。 45 ASACUSA・ATHENA実験と日本グループ Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons AnTiHydrogEN Apparatus Collaboration ASACUSA(アサクサ) ・反陽子源と減速器(AD )による低速・高輝度反陽子を 用いて種々の反物質科学を開拓する。 ・3体、多体量子系の束縛及び連続状態の精密研究 反陽子質量・電荷等の精密測定→CPT ・東大・理研・東工大・筑波大・CERN・イタリア他 Spokesperson : 山崎(理研) ・2010年12月 CUSP trapを用いて大量の水素原子を 作ることに成功したとCERNが発表した。 ・2011年7月 反陽子質量/電子質量比は陽子質量/電子 質量比と<1.3×10-9の精度で一致するとNatureに発表。 ・2014年1月 反水素原子ビームの作成に初めて成功。 ATHENA ・反水素原子生成と分光測定 ・高精度分光:水素との比較によるCPT対称性の検証 左:反陽子減速器(2000-) 右:28GeV PS(1959-) mp me mp me 反陽子捕獲/冷却・混合装置・反水素検出装置 陽電子蓄積装置 46 COMPASS実験と日本グループ ・11カ国、約240名で構成 ・日本グループ:9人(代表:岩田高広,山形大)) ・ 核子スピン構造とハドロン分光学研究(SPSを使用) ・ 1997年に実験が承認され、2002年よりデータ収集開始 ビーム 実験の目的 ・ 190GeVの偏極ミューオンビームと偏極核子標的 核子スピンの解明〜グルーオンスピンの測定〜 ・長さ60mのスペクトロメーター ・偏極核子標的 日本とドイツBochum大学が担当 冷却システム : 50mK (CERN最低温度到達地点) 超伝導磁石システム : 2.5T solenoid、0.6T dipole 核磁気共鳴、マイクロ波システム 偏極標的物質(LiD or アンモニア) 核子内のクォークとグルーオンと、 それらのスピンのイメージ 47 OPERA実験と日本グループ ・ 日本(名大・愛知教育・宇都宮大・東邦大・神戸大)・ベ ルギー ・クロアチア・フランス・ドイツ、イスラエル・イ タリア・ロシア・スイス・トルコ・韓国の共同研究 ・ミューニュートリノが 730キロメートル飛来する間にニュー トリノ振動してタウニュートリノになる現象を捕まえる。 ・名古屋大が開発した原子核乾板技術を使い、タウニュートリ ノが作るタウ粒子を直接観測する。 ・ 2006年よりCERNからのビームによる実験を開始。 ・ 2010年5月 初めてタウニュートリノ反応を観測した。 ・2011年9月 ニュートリノの速度が光速を越える観測結果が 得られたと発表した。 ・ 2012年6月 2番目のタウニュートリノ反応を観測した。ま たニュートリノの速度は光速を超えてないことがわかった。 ・ 2015年6月 5番目のタウニュートリノ反応を観測した。 2010年5月31日:初めてタウニュート リノ反応を観測したと発表 CERNで作られたμニュートリノは730km地中を 飛んでローマに近くの実験場を通過する。 グランサッソ地下研究所のオペラ測定器 48 FCC計画 ~100TeV April 5, 2013 S. Myers EPS Edison Volta, Strasbourg 49 CLIC計画(Compact Linear Collider) ・ 新しい方式の電子・陽電子リニアーコライ ダーをCERN中心に開発している。 ・ 到達可能エネルギー:0.5~3 TeV ・ 加速勾配:100 MV/m ・ 加速周波数: 12 GHz ・ 特徴:超伝導空洞を使うILCに比べ、加速勾 配が約2~3倍大きいので、高いエネルギー まで到達できる。 2ビーム加速方式の原理を示す図。 ・ 2ビーム加速方式:並行の走る低いエネル ギー・高電流のドライブ電子ビームから高 周波エネルギーを取り出して、主ビームラ インの電子・陽電子を加速する。 ・ 研究開発は1990年代から始められた。実証 のための加速器CTF3がCERNに建設され、 ビームを使った実験が始まっている。 • 2012年に概念設計報告書(CDR)を提出する 予定である。 Home page: http://clic-study.org/ CTF3:CLIC 技術実証のための施設が CERN内に建設され、実験が進んでいる。 50 CERN日本フェローシップ制度 日本の国籍もしくは永住権を持つ研究者を、LHCのデータ解析や物理の研究を行うために、 CERNフェロー として採用する制度。LHCの現象論や加速器 物理の研究者も含まれる。 採用期間: 3年、 採用数: 年間2名程度 資格: 博士号の資格を持ち修士号取得から研究歴が10年以内の人。 採用: 応募者は日本の選考委員会面接を受ける。 CERN研修プログラム ・ 日本からの事務職員の研修派遣: ・ 日本からの技術系職員の研修派遣: 1~2年間、CERNでの研修を受ける。 約1年間、CERNで特定グループに属し研究を行う。 高校教師研修プログラム ・ 2009より毎年、佐賀県が1名の高校教師を3週間のプログラムに派遣している。 51 CERNでは、毎年6月~9月の間、サマースチューデントプログラムを実施している。参加学生はこの期間 CERNに滞在して、CERNの特定の研究グループに所属し指導を受けながら研究の補助をするほか、並行して 行われる講義を受講したり、ディスカッション、フィールドトリップ等の各種アクティビティに参加して、 最先端の素粒子・高エネルギー物理、粒子加速器、宇宙物理、データ処理に触れることができる。 2004年度より、日本人学生もこのプログラムに参加することが可能となり、参加のための事務的な便宜及 び現地でのサポートをKEKが行なってる。毎夏5名の日本の学生(修士1年)を派遣してきている。 2007年夏の学校参加者 全員の集合写真 2007年講義の様子。夏の学校 生徒以外にも多くの参加者がお りホールがいっぱいになる。 2007年 いろいろな国からの 生徒が集まった夕食風景 52 最近の主な日本からのCERN訪問者 2007.4.28 田中俊一 内閣府原子力委員会委員長代理 他 2011.8.31 中鉢良治 総合科学技術会議委員/ソニー副会長 2007.5.15 生川浩史 文科省科学技術学術政策局計画官 2011.9.23 奥村展三 文部科学副大臣 2007.6.22 桑田 悟 文科省研究振興局量研室専門官 2011.9.24 北澤宏一 科学技術振興機構(JST) 理事長 53 2007.7.2 鈴木厚人 高エネルギー加速器研究機構長 2012.1.16 小田部陽一 在ジュネーブ日本政府代表部特命全権大使 2007.7.10 木村直人 文科省研究振興局量研推進室長 2012.3.15-16 増田寛也 日本創成会議座長/元総務大臣 他 2007.12.14 有薗文博 文科省研究振興局量研室機構係長 2012.3.16 福井県立藤島高等学校コアSSHプログラム海外研修 2008.2.5 古山泰生 岡山県議会議員 他 2012.6.17 柿田恭良 文部科学省研究振興局基盤研究課長 他 2008.3.18 大竹 暁 文科省研究振興局基礎基盤研究課長他 2012.8.22 塩谷立 自由民主党総務会長/元文部科学大臣 他 2008.4.27 柳 淳 2012.10.15 関西生産性本部経営幹部交流セミナー研修チーム26名 2008.6.17 古川 康 佐賀県知事 外務省国際科学協力室長 2013.5.13 小川洋 福岡県知事・古川康 佐賀県知事他 2008.6.20 小酒井克也 文科省研究振興局量研室専門官 2013.6.6 岡田隆在 ジュネーブ日本政府代表部大使 2008.8.11 内藤正光 参議院議員 2013.8.30 松山政司 外務副大臣 2008.9.22 北島信一 ジュネーブ日本政府代表部特命全権大使 2013.9.9 衆議院総務委員会チーム(山口泰明衆議院議員ら4名) 2008.10.14 山本日出夫 文科省研究開発局核融合科学専門官 2014.1.17 櫻田義孝文部科学副大臣 2008.10.21 山内俊夫 文部科学副大臣 他 2014.5.21 笹川陽平日本財団会長 2008.11.21 坂田東一 文部科学審議官 他 2014.7.7 中曽根弘文参議院議員 2008.11.29 土屋定之 文科省政策評価審議官 2014.8.20 西田厚聰東芝相談役・室町正志東芝会長 2008.12.4 小林岳明 日本学術振興会研究事業部 他 2014.10.27 日本電機工業会中堅企業海外調査団12名 2009.5.3 野田聖子 内閣府特命担当大臣 他内閣府より 2014.11.10 達増拓也岩手県知事 2009.9.2-4 倉持隆雄 文部科学省 大臣官房審議官 他 2014.11.28 本島修未来エネルギー研究協会会長他11名 2009.11.11 菅沼健一 在ジュネーブ日本政府代表部大使 2015.2.25 嘉治美佐子在ジュネーブ領事事務所大使 2010.9.2 田島一成 環境副大臣 2015.5.18-19 菅原茂気仙沼市長ほか15名 2010.10.11 村上達也 東海村村長 田中俊一氏 他 2015.10.15 名古屋GNIC産業振興評議会経済ミッションチーム他18名 2011.2.25 内丸幸喜 文科省研究振興局 基礎基盤研究課長 2016.2.3/2.9 ジュネーブ日本政府代表部長岡寛介公使他 2011.6.23 藤澤亘 2016.2.18 井原純一 在ジュネーブ日本政府代表部特命全権大使 文科省研究振興局量研室専門官 最近の主な日本からのCERN訪問者(続き) 2009.5.3 野田聖子 内閣府特命担当大臣 他内閣府より9名 野田国務大臣訪問時の写真は 右のページに掲載: http://atlas.kek.jp/sub/photos/CERNVisitors/2009/ http://cdsweb.cern.ch/record/1175345 研究の現場見学とCERN滞在者への激励をありがとうございます。 54 関連するウエブページ (主にLHC関係) ・ 本資料 「CERNの概要」 http://atlas.kek.jp/public/IntroductionOfCERN.pdf ・ アトラス日本グループ広報ページ(日本語) http://atlas.kek.jp/ には、LHC/アトラス実験のニュース・発表・解説・写真・ムービー・ 記録・報道・CERNの歴史などの数多くのリンク先が載っています。 ・ CERN http://cern.ch ・ アトラス実験、 CMS実験 http://atlas.ch , http://cms.cern.ch 55
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