NIDS NEWS(2015年12月号)を掲載しました。

NIDS NEWS 2015年12月号
通算第204号
防衛研究所ニュース 2015年12月号
“NIDS NEWS”
防衛研究所企画部企画調整課(03-3713-5912)
・・・・・2015年11月の主な出来事・・・・・
《 駐日セルビア共和国大使の来訪 》
11月9日、ネナド・グリシッチ駐日セルビア共和国
大使が来訪されました。鈴木所長との懇談では、所
長から日本とセルビアは130年にわたる交流の歴史
があり、その歴史を鑑として友好関係を深めていき
たいと述べました。その後、戦史研究センター長と
の意見交換では、セルビアと第1次世界大戦に関連す
る、戦史研究センター所蔵の戦史史料につき説明を
行いました。
《 日豪防衛研究交流の実施 》
11月10日から11日にかけて、オーストラリ
ア戦略政策研究所(ASPI)との防衛研究交流
が実施され、アンドリュー・デービス研究部
長・上級分析員、マーク・トムソン上級分析
員が来訪されました。
鈴木所長との懇談では、ASPIと防衛研究所
との交流は長い歴史があり、今年2月には前
所長、5月には62期の研修団が訪問し、相
互に研究者を派遣する人事交流も行われて
いることに触れました。研究会では、「南シ
ナ海問題」についてトムソン上級研究員、飯田主任研究官が報告し、「日豪安全保障協力」につい
てデービス研究部長、石原研究員がそれぞれ報告し、その後質疑応答を行いました。
《 防衛省研究・教育機関合同発表会の開催 》
11月11日、防衛研究所において「防衛省研究・教育機関合同発表会」が開催されました。本発表
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会は、防衛省・自衛隊の各研究・教育機関相互の交流・協力を促進するとともに、研究成果を政策
部門に還元することを目的とした初めての試みです。発表会では、まず「中国を巡る諸研究」をテ
ーマとするセッションで、中国が主張する「九段線」の国際法的な議論、中国による「三戦」の理
論と実践、中国の海洋進出と台湾の関係について、海上自衛隊幹部学校、航空自衛隊幹部学校、防
衛研究所の研究者から発表が行われました。続いて「サイバー空間における安全保障」をテーマと
するセッションでは、サイバー攻撃やその手法に関して技術的側面及び国際法的側面からそれぞれ
防衛大学校及び防衛研究所の研究者による発表が行われました。また各セッションの後には活発な
質疑応答が行われました。
《 オーストラリア陸軍副本部長の来訪 》
11月19日、リチャード・バー オーストラリ
ア陸軍副本部長(陸軍少将)が来訪されました。
バー少将は、昨年2月にも米太平洋軍コマンド副
司令官として防研を訪問されました。今回、14
回目となる日豪幕僚懇談プログラムで来日され、
2回目の訪問となりました。鈴木所長との懇談で
は、所長から日豪は戦略的に重要なパートナー
であり、米国も含めた太平洋地域のパートナー
でもあるため、二国間関係の更なる深化に期待
したいと述べました。バー少将は、日豪二国間
関係はきわめて良好であり、同地域の安全保障環境に関する日本の観点を知るうえで、防衛研究所
との交流は貴重であると考えていると述べられました。
《 平成27年度国際安全保障シンポジウムの開催 》
11月30日、平成 27年度の安全保障国際シ
ンポジウムがホテル椿山荘東京(文京区)
で開催されました。本シンポジウムは、今
年度で第18 回目を数え、諸外国の著名な有
識者を招いて公開の場で意見発表及び意見
交換を行うことにより、安全保障対話の一
助にすることを目的としています。
今年度のテーマは、「宇宙安全保障――
諸外国の動向と日本の取組み」です。近年、
宇宙空間が安全保障上重要な領域として浮
上してきています。これは諸外国において安全保障目的の宇宙利用が活発化する一方で、宇宙ごみ
や対衛星兵器をはじめとする宇宙空間の安全な利用上の脅威が顕在化しているためです。我が国も
2008年に宇宙基本法を制定して以降、安全保障分野における宇宙利用の拡大に努めています。
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NIDS NEWS 2015年12月号
本シンポジウムでは、こうした昨今の状況を踏まえ、宇宙安全保障に関する諸外国の動向につい
て知見を得るとともに、研究報告と討議を行いました。
冒頭、藤丸防衛大臣政務官から省代表挨拶を頂き、その後、第 1 セッション「諸外国による宇宙
安保利用」では、ピーター・ヘイズ教授(ジョージ・ワシントン大学、米国)、ジャン=ダニエル・
エステ フランス統合宇宙コマンド司令官、グザヴィエ・パスコ上級研究員(フランス戦略研究財団)、
辻野照久特任フェロー(科学技術振興機構)、橋本靖明政策研究部長(防衛研究所)が、米国、フ
ランス、EU、中国、日本における宇宙利用の事例について、研究報告を行いました。
第 2 セッション「宇宙利用上の脅威と諸外国の対応」では、ブライアン・ウィーデン技術アドバ
イザー(セキュアワールド財団、米国)、パスコ研究員、青木節子教授(慶應義塾大学)が宇宙利
用に伴う脅威に対する米国、EU、日本の対応について、研究報告を行いました。
第 3 セッション「宇宙安全保障に関する国際協力」では、ジョン・シェルドン上級研究員(アト
ランティック・カウンシル、米国)、中須賀真一教授(東京大学)が、それぞれ「宇宙安全保障協
力に関する日欧協力の機会と課題」、「宇宙基本計画およびその後の議論に見る日本の宇宙安全保
障政策の現状と考察」と題した研究報告を行いました。その後、フロアからの質問に対して各パネ
リストが回答しました。
今年度の聴講者は、一般の方々も含めて 241 名に及び、盛況のうちに終了しました。本シンポジ
ウムの詳細な報告書は、防衛研究所ウェブサイトで公開される予定です。本シンポジウムのこれま
での開催実績及び報告書については、(http://www.nids.go.jp/event/symposium/index.html)
をご参照ください。
《 第63期一般課程 》
11月は、「戦略理論」、「法と安全保障」、「経済と安全保障」、「米国の安全保障政策」、「東
アジアの安全保障Ⅰ」、「戦争史原論」、「冷戦と日本の安全保障政策」の各講座及び7個のセミナ
ーを実施しました。さらに、中西寛京都大学公共政策大学院教授による「安全保障政策」に関する
特別講義を行いました。
また、18日から20日は広島・京都、19日は十条、25日から26日は中京・伊勢地区において、それ
ぞれ現地研修を実施しました。
広島・京都研修は、留学生を主対象として、海軍兵学校以来の伝統が数多く継承されている江田
島の幹部候補生学校や第1術科学校及び原爆ドーム、神社仏閣等を研修し、日本の歴史・文化等に
ついての認識を深めました。
十条研修は、陸・海・空自衛隊の補給統制本部等を研修して、各自衛隊の兵站の現状について認
識を深めました。
中京・伊勢研修は、川崎重工業株式会社航空宇宙カンパニー、三菱重工業株式会社名古屋航空宇
宙システム製作所を研修して、防衛産業の現状を認識するとともに、陸上自衛隊航空学校で概要説
明及び航空機展示の後、史跡研修として伊勢神宮を訪問しました。
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NIDS NEWS 2015年12月号
・・・・・「史料紹介コーナー」・・・・・
平成 27 年度も、各都道府県出身の陸海軍将官の中から毎号一人を取り上げて、戦史研
究センター史料室が所蔵するその人物などに関連する史料を紹介しています。
い で
けん じ
《 井出 謙治 1870~1946年 》
-静岡県出身の海軍大将-
潜航艇に就いて(登録番号:⑩外駐員報-30-6-6)
井出謙治大将は、明治 23 年 4 月、海軍兵学校(16 期)を卒業後、呉
水雷隊司令官、軍務局長などの要職を務めました。この史料は、明治
35 年 6 月、米国から帰国した井出少佐が、留学中に米国が採用を検討
していたホーランド型潜航艇について、その実用価値を認め、各地で講
演を行ったときの原稿「潜航艇ニ就イテ」です。その中で、潜航艇は「昼
夜ノ別ナク敵ニ発見セラレズ、又敵ノ砲火ヲ避ケテ潜航シ、敵ヲ撃沈ス
ル場合ニ使ヘ」、「港湾封鎖 市街砲撃等ヲ防グコトハ実ニ容易ニ出来
ル」ことから、井出は「此『ホーランド』潜航艇ハ国防上ニ於テ一刻モ
忽ニスルコトハ出来ナイ大切ナ武器デアルト」としています。そして日
露開戦後の明治 37 年 5 月、海軍は潜航艇の採用を決定し、米国からホ
ーランド型潜航艇 5 隻を購入します。
陸海軍航空協定委員会設置の件(登録番号:大日記甲輯-T12-1-14)
第1次世界大戦後の航空機の発達は目覚ましく、航空機を巡る陸海軍
間の競合や、これによる産業界の混乱などが懸念されました。そこで陸
海軍は、大正9年12月1日、軍事航空に関する陸海軍協定事項を審議する
ため「陸海軍航空協定委員会」を設置し、委員長に井出海軍次官(当時
中将)を任命します。委員会は、12月24日に第1回会議を開き、14項目
の協定事項の調査を委員会に、空軍組織問題研究調査を特別委員会に付
託します。そして空軍組織問題特別委員会の判決では、「統一空軍制度
ト航空部隊ヲ陸海軍ニ分属スル現制度トハ互ニ長短得失アリ(中略)、
遽ニ断案ニ到達シ難キモノアルヲ以テ依然現制ヲ持続スルノ妥当ナル
ヲ認メサルヲ得ス」と結論づけています。この史料は「陸海軍航空協
定委員会設置ノ件」
で、
委員会内規や各種議事録が綴られています。
《お知らせ》
史料保存のためのマイクロ撮影にともない、一時的に閲覧できない史料があります。
詳しくは、防研ウェブサイト「閲覧が一時不能となる史料」をご覧下さい。
※ 記事に関する御意見、御質問等は下記へお寄せ下さい。なお、記事の無断転載・複製はお断りします。
防衛研究所企画部企画調整課
専用線 : 8-67-6522、6588(史料紹介コーナーのみ6668)
外 線 : 03-3713-5912
FAX : 03-3713-6149
※ 防衛研究所ウェブサイト:http://www.nids.go.jp
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