宇電懇シンポジウム 2015-01-28 SPICA計画の経緯・現状 芝井 広(阪大),SPICAチーム 「あかり」遠赤外全天マップ 2014/12公開 科学目的3: 「銀河成長と惑星系形成: 最高感度の宇宙赤外線天文台の実現 多様で豊かな宇宙を生んだ Henning & Semenov 2013 微惑星帯 二大過程の解明」 地球型惑星 1. 銀河成長・物質進化過程の解明 ~1500K ~300K ~150K 小惑星帯 巨大惑星 円盤ハロー ~50K カイパーベルト領域 Riechers et al. 2013 2. 惑星系形成過程の解明 3. 最高感度の宇宙赤外線天文台の実現 1 6 冷却望遠鏡のメリット -雑音源赤外線の大幅抑制による高感度化- 105 SPICA's Coverage 2 これまでの経緯 2000年度 宇宙理学委員会がWG設置を承認 以降、戦略的開発研究費が交付される。 宇宙3機関統合・宇宙科学長期計画 2007年度 大型衛星計画に提案。これまでのMロケットを用いた 衛星の規模(中型衛星計画)を超えた、多くの分野が共同 して支え、実施する、フラッグシップミッション。 2008年度 大型衛星計画としてミッション定義審査MDR 合格 以降プリプロジェクト発足 技術検討の不十分問題 2010年度 大型衛星計画としてシステム要求審査SRR 合格 2011年度 中型衛星を超える規模ならば、宇宙科学の外側からの 貢献(資金、人的体制)が必要 以降、リスク低減フェーズ 宇宙科学ロードマップ。大型は難しくなる 日本学術会議、文部科学省ロードマップではともに最重点の評価 2013年度 PLAN-Bへの変更 戦略的中型程度の規模をめざす 2014年度 PLAN-Bの困難顕在化(6月) →新しいPLAN検討開始。ESA-JAXA技術検討(CDF) 3 (議事録抜粋) 2011年6月の宇宙理学委員会における委員長見解。了承された。 1. SPICAは、学術会議・光天連・米国decadal survey・ESA cosmic visionで一致して推挙さ れている。日米欧で一致されて支持されるこのようなすぐれたミッション提案が宇宙科学研究 所のWGから出たことは大変喜ばしいことであり、関係者のこれまでの努力を高く評価したい。 2. すぐれた大型ミッションは、天文学・宇宙科学全体に広汎な進展をもたらす。宇宙理学委員 会は、SPICAが極めて高い科学的成果を生み出すと予想し、強く推薦するものである。 3. SPICAの技術的困難さが指摘されているが、SPICAの技術成立性の根幹は、Herschelの 3.5m望遠鏡技術と日本の冷凍機技術であり、主要な要素技術に対する成立性は確保されて いると判断する。 4. また欧州および米国から強力な焦点面装置の提供の申し出があり、これがSPICAの魅力 を増している。 5. MDRとSRRの審査結果は、理学委員会における2010年までの議論で了承されている。 6. しかし国産の焦点面装置、外国の供給する大型装置があり、それらが複雑なインターフェ ースを持つことから、設計の進展と開発体制の具体化について、プロジェクトとJAXAにさらな る努力を強くお願いする。一方、SPICAにかかる費用は、現在の宇宙科学研究所の予算規模 を超えており、このミッションの実施には予算的困難が予想される。 7. このため、他の中型・小型ミッションへ大きな影響を与えないように、宇宙科学研究所は、 予算の増額に特段の努力をすべきである。これに理学委員は全面的に協力する。(すなわち、 従来の宇宙科学研究所の範疇の開発予算からは、中型科学衛星1機分程度の投資 宇宙研 宇宙理学委員会 に留め、不足部分は追加のJAXA予算の調達をしていただきたい。) 8. もしこれが困難で、今後の宇宙科学プログラムに対して大きなインパクトを与える場合は、 宇宙理学委員会は宇宙科学研究所と協力して必要な見直しを行う。(SPICAの開発を中止す 4 ることを含めて、宇宙理学委員会が判断に寄与する) PLAN-Bでの役割分担 望遠鏡(欧ESA) ペイロードモジュール 焦点面観測装置(FPIA) 欧(ESA) 遠赤外線観測装(SAFARI) 蘭+欧州連合(計13か国) 中間赤外線観測装置 ( SMI) 焦点面ガイドカメラ(FAS) バスモジュール SPICAデータセンター (国立天文台) サイエンス検討 (日、欧、韓、台、、研究者) 機械式冷凍機 ロケット打ち上げ5 SPICAプロジェクト実施体制 プロジェクト全体としては、JAXAリードのもと、ESAおよび欧州コンソーシアムとの密接な協力で、衛星全 体の開発を進める。国内体制としては、JAXA宇宙科学研究所をコアとして、JAXA研究開発本部・環境試 験技術センターなどのJAXA内の密接な協力および、国立天文台、国内大学研究機関との密接な協力で 開発を進める。特に日本が担当する焦点面観測機器については、大学コンソーシアムが主体となって開 発を行う。 6 SPICA Management Structure of Japanese side ISAS (JAXA) Japanese SPICA Team Director General Saku Tsuneta M4 Science Core Team SPICA Science T/F Satoshi Yamamoto (U Tokyo) Principal Investigator Hiroshi Shibai (Osaka U) Project Scientist Takashi Onaka (U Tokyo) SMI (MIR) PI Hidehiro Kaneda (Nagoya U) Project Manager Takao Nakagawa (ISAS) Payload Module (JP) Data Center Issei Yamamura (ISAS) Hideo Matsuhara (ISAS) SAFARI (JP) Yasuo Doi (U Tokyo) SPICA Data Center in Japan with NAOJ 衛星運用体制(案) JAXA宇宙研 Operational Ground Segment JAXA Stations Mission Operation Center (MOC) 国立天文台 Science Ground Segment Science Operation Center (SOC) Science Data Center (SDC) NonEuropean User Community (Japan) (East Asia) Instrument Control Centers (ICCs) ESA Stations ESA ESA Science Center (ESC) European Data Archive Center (ESDC) TBD 共同利用が基本であり、データは広い範囲の研究者に公開される。 European User Community 8 新しいPLAN (仮称 PLAN-D) PLAN-Bでは、 ESA Cosmic Vision M4に応募する計画だった。しかし -ヨーロッパ内研究者の意見統一が不十分 -ESA側リスクと経費増大の懸念(Mクラスとして) の問題点が、2014年6月に顕在化した。 ESA-JAXA共同技術検討 技術的に可能、かつ、ESAのMクラス+JAXAの戦略的中型クラスで可能なミッショ ン例。 「次世代の極低温冷却赤外線望遠鏡」参照モデル -結果は公開される- JAXAの従来の検討、観測装置設計、サイエンス要求が入力された。2月に結果公 開予定。 研究者(日本のSPICAチームと欧州のSAFARIコンソーシアム)間の共同 口径3mが実現できない可能性大。観測装置と観測計画の変更などを議論中。 科学目的は不変であり、観測装置・計画を変更してM5提案。 日欧共同で「SPICAコンソーシアム」を結成する予定。 (M4、M5:ESAのCosmic Vision Mクラスの第4、5番目のプロジェクト) SPICA(JAXA)型のデザイン 従来のデザイン。H-IIA-5Sフ ェアリングに搭載できる案とし て、衛星+Y方向(太陽)に垂 直な面内をノミナル観測する( 面外オフセットは、-5~+30 度)。 サンシールドから鏡筒まで、 +Y側は低吸収率/高反射 率面(+MLI)で断熱し、-Y 側に放射冷却のためのラジェ ータ面を設けている。 鏡筒(30K)に必要なラジェータ面積を確保するため、中間温度のシールドはーY側で開かれている必要が ある。しかしそうすると打ち上げ時機械環境条件を満たさないので、中間温度シールドは、パネル無しの多 数のフレームによってーY側では構造的に支持されている。極低温ステージへの侵入熱を極力抑えるため 、メイントラスは軌道上で分離される。GAIAの方式に比べて熱侵入量を軽減しやすく、高周波擾乱遮断の 10 効果も期待できる独自のCFRPバネを用いた分離機構を考案した。 PLANCK型のデザイン +Z +X +Y ESA CDF検討チームのPlanck型デザイン。衛星-Z方向に太陽があり、望遠鏡は-Z方向に垂直な面内を 観測する(面外オフセットも+/-15度程度検討中)。これは半年で天空上のどこでも観測可能という科学的 要求を満たすため。ロケットフェアリング内で望遠鏡は水平横向きとなる。なお極低温熱負荷を減らすため 11 、トラス分離をGAIAで実証済みの方法で行う。 SPICAミッション再定義のための活動計画 SPICAプリ・プロジェクト 平成23年 1月 平成27年 9月 平成25年 平成26年 5月 3月 5月 リスク低減フェーズ PLAN-A PLAN-B 移行 宇宙科学研究所にて 活動をサポート 平成29年 7月 概念設計(見直し) 計画決定 PLAN-B 破棄 計画変更 審査 新生SPICA 2025年度 打上げ (想定) プロジェクト化 アウトプット: <新生SPICA開発計画> ミッション再定義 • • • • 実現可能なミッション構成案 上記に対応した科学目的(見直し) 日欧の役割分担およびコスト見積り スケジュール 活動内容: 以下を想定した実現可能なミッション 構成を示し、今後の計画見直しを行う ・日本:戦略的中型計画 ・ESA: Cosmic Vision M5 12 SPICA Consortium 日本 欧州 M5 Proposal NAOJ JAXA SPICA-J Project ESA SRON SPICA Consortium SAFARI Consortium 遠赤外線観測 装置(欧州+) SMI Consortium 中間赤外観測 装置(日本) Scientists (outside of instrument teams) 装置チーム外 研究者 SPEChO Consortium 系外惑星大気分 光装置(検討中) 13 最先端宇宙研究の一翼を担う スペクトル線検出感度 (W/m2) 10-16 10-17 SOFIAジェット機望 遠鏡(口径2.5m) スピッツアー 宇宙望遠鏡 極低温 (85cm) ハーシェル宇宙望遠鏡 低温望遠鏡(3.5m) 2010年代 10-18 望遠鏡を冷却することで 観測性能が100 倍向上 10-19 2020年代 JWST 低温望遠鏡 (6.5m) ALMA-日米欧共同 大規模電波干渉計 SPICA 極低温望遠鏡(2m、検討中) 20ミクロン 100 200 波長 350ミクロン 1 ミリメートル (2) ライン観測 2.4. グレーティング分光装置の検出限界(続) 波長100 mm以上ではどの口径 の場合もConfusion limit (confusion limit は2.2節の図と 同じ) Raymond et al. (2013) によれば、 ラインの等価幅が 大きいときには、 Confusion の影響 を1/5~1/10 に低減 することが可能。 15 支援体制・評価 ・ ISAS-SRON両所長共同声明 ・ 光赤天連声明 ・ 天文学・宇宙物理学の展望と長期計画(2010) 国家的に推進すべき計画として認定 ・ 日本学術会議の重点大型計画に選定 (27件に入る) ・ 科学技術学術審議会ロードマップ2014に掲載 (最高評価5件に入る) ・ 宇宙政策委員会の宇宙科学ロードマップで、 今後10年間で実行するプロジェクトの候補 ・ ESA、NASAが参加体制をスタンバイ 両所長声明 ISAS、SRON 両所長声明 (2014年2月) 17 光赤天連 の声明 18 日本学術会議 大型研究計画マスタープラン(2014) 重点大型研究計画27件の一つとして選ばれた(元のプラン)。 天文からは、SPICA、LiteBIRD、SKA 天文学・宇宙物理学の展望と長期計画(2010) 国家的に推進すべき計画として、TMT、SPICA、LCGT 19 【物理学】次世代赤外線天文衛星 SPICA 計画 計画期間 H26-H28:設計 H29-H34:製作試験 H34:打上げ H34-H39:観測運用 実施機関等 国内:宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東京大、名古屋大、大阪大、国立天文台等の大学・研究機関 国外:欧州宇宙機構(ESA)等 所要経費 (億円) 総額 868 (概算) (日本側 538、 欧州側 330) 日本独自の宇宙冷却技術と、赤外線天文衛星「あかり」(2006年打上げ)の赤外線天 体サーベイ観測の結果を活用し、ヨーロッパの諸機関と共同して世界をリードする国際 共同研究計画。 宇宙の歴史においては、約100億年前を中心にして、恒星・惑星、銀河や、様々な元 素が生成された。この最も活発な時代の過程および現象を宇宙物理学的、定量的に研 究し解明することが主目的。また、宇宙赤外線天文台として、ほぼすべての宇宙・天文 学研究分野で活躍が期待される。 • 最高感度の宇宙赤外線望遠鏡 • • • • 望遠鏡口径 3.2 メートル 極低温冷却(絶対温度 6 K) 遠赤外線・中間赤外線 国際共同利用天文台として利用 • 2020年代に太陽-地球系の第2ラグランジュ 点ハロー軌道に打ち上げて5年間の観測 科学技術学術審議会 (文部科学省) 「学術研究のロードマップ2014」新たな10計画の一つ。aa評価は5つ。 21 宇宙政策委員会 新宇宙基本計画(素案)から抜粋 ⅸ) 宇宙科学・探査及び有人宇宙活動 (中略) そこで、今後10年間では、戦略的に実施する中型計画に基づき3機、公募型小型計 画に基づき2年に1回のペースで5機打ち上げるとともに、多様な小規模プロジェクト を着実に実行する。具体的には、X線天文衛星(ASTRO-H)、ジオスペース探査衛星 (ERG)、水星探査計画(BepiColombo)等のプロジェクトを進める。また、国際共同 ミッションである次世代赤外線天文衛星(SPICA)の2020年代中期の 打ち上げに関する検討も行う。さらに、現在ISAS において検討中のプロジェク トについては、検討結果を踏まえ、着実に進める。 また、太陽系探査科学分野については、ボトムアップの議論に基づく探査だけではな く、効果的・効率的に活動を行える無人探査を学術的大局的観点からプログラム化し て進める。具体的には、月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活 動を目標として、特に長期的な取組が必要であることから、必要な人材の育成に考 慮しつつ計画的に取り組む。(文部科学省) 22 SPEChO EChO instrument on SPICA ESAのCosmic Vision M3でPLATOが選ばれた(2月)直後、 EChOから「SPICAに搭載したい」という申し出があり、さまざ まな機会に議論した。(英仏中心) (5月のLeiden Workshop、9月のOxford Workshop) 波長5-20ミクロンの低(中)分散同時分光による、系外惑星大 気のトランジット分光が主目的。極低温冷却を必要としない。 SPICA全体、あるいは他の観測装置やサイエンスには大き い影響がないという前提で、搭載可能性を検討。 JWSTと比較してどのようなアドバンテージがあるかが焦点。 23 サブミリ波高分散分光器 波長200-350ミクロンの高分散分光器の搭載可能性が検 討されてきた。 現在のSPICA-ALMA間の波長帯ギャップを、高感度分光 機能で埋める。 遠方銀河および原始惑星系円盤のスペクトル線をほぼ1オ クターブにわたってカバーすることになる。 SPICAが正式にスタートすれば、上記装置搭載の可能性を 米国研究者と検討開始。 24 科学目的3: 銀河成長と惑星系形成: 最高感度の宇宙赤外線天文台の実現 重元素とダストが織りなす 多様で豊かな宇宙を生んだ二大過程の解明 1. 銀河成長・物質進化過程の解明 2. 惑星系形成過程の解明 3. 最高感度の宇宙赤外線天文台の実現 25 6
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