2015年ヘッジファンドの見通し - Neuberger Berman

目次
ヘッジファンドの機会は新たな局面入りか?
2014 年は戦略ごとの要因により実績の善し悪しは様々でしたが、世界的な金融緩和
や地政学的リスクの高まり、米国の金融政策変更に関する不確実性、企業合併への
政府介入など、ヘッジファンド・マネージャーにとって厳しい年でした。
その一方で、ヘッジファンドの投資分野の一部では、こうした逆風材料の多くが機会へ
と塗り変わる過渡期にあると当社は考えております。今回は以下の主要な投資戦略
について、当社の見通しをお伝えいたします。
第 1 章: 株式ロング・ショート - ダイバージェンス(相違)により有利となる可能性
株式間の相関性が低く、企業の基礎的なファンダメンタルズに相違がみられ、企業価値評価
が妥当なレベルとなっていることが、ファンドマネージャーにとって追い風に。2 ページ
第 2 章: イベント・ドリブン - 企業活動の活発化、追い風になるか
企業のバランスシート上の現金保有は引き続き高い水準にあり、新規案件の進捗も堅調に
進んでいることから、企業活動を後押しする環境は良好。9 ページ
第 3 章: グローバル・マクロ及び CTA - ついに反転の機会到来か
各国の成長パターンに相違が表れ、金融政策も非連動的なことから、債券市場や為替市場
のボラティリティが上昇、クロス取引の機会。12 ページ
第 4 章: オポチュニスティック - プエルトリコ債と学生ローンに注目
セクター別の動向では、プエルトリコ債の債務再編と学生ローン市場における革新が選択的
投資を好む投資家にとってチャンスに。23 ページ
現在の状況におけるお客様の投資判断に有益な情報となれば幸いです。
詳細については当社担当者にお問い合わせください。
1
第 1 章: 株式ロング・ショート-ダイバージェンス (相違)により
有利となる可能性
2015 年は、経済・企業のファンダメンタルズが引き続き堅調な米国株式ロング・ショー
ト戦略が魅力的な投資機会になると、当社は考えています。ボラティリティの上昇と有
力な投資テーマを通じて収益を得る戦略であり、その両方によって地域・セクター間で
買い銘柄と売り銘柄を選別しやすい環境が創出される可能性があります。
概観
米国企業は健全な財務状況
および資本市場への容易な
アクセスを背景に、堅調な伸
びを示しています。
米国の経済ファンダメンタルズは堅調かつ改善を続けています。2015 年の GDP 成長率は小
幅ながら、2.5~3.5%1とのプラス成長が見込まれます。また米国は、複数の州で最低賃金引
き上げの法案が成立し、失業率が低下していることを背景に賃上げ圧力がかかり、遂に賃金
上昇 2 の兆しが出始めています。加えて、ガソリン価格下落のプラス効果が遅れて現れてきた
ことで、個人消費の影響が大きい米国経済の成長に弾みがつきました。テクノロジー、ヘルス
ケア、エネルギーなどの重要分野におけるイノベーションも急速に進んでいるため、経済総生
産は更に拡大が見込まれます。また確定はされていないものの、貿易、インフラ、法人税改革
などに関する法制定があれば、経済成長の見通しは更に改善する可能性があります。米国企
業は財務状況が健全で堅調な伸びを示しています。また、企業は依然として流動性が高く緩
和的な金融市場の恩恵を受けることができる状況にあり、M&A、自社株取得、スピンオフ、組
織再編など、株主価値を上昇させる企業活動は引き続き堅調となっています。上記の要因に
より、米国株式への投資が有利な環境となっておりますが、市場の一部ではバリュエーション
水準に割高感が示されています。また、ドル高および金融引き締めは一部の企業及びセクタ
ーにとっては下押し圧力となります。これらの強弱材料が混在した状況は、株式ロング・ショート
戦略にとって投資妙味のある状況となっています。
図 1.1 S&P500 指数 PE レシオ推移(移動平均)
出所:ブルームバーグ
1
2
カンファレンス・ボード 2015 年グローバル経済見通し及び IMF 世界経済見通し 2015 年 1 月
労働統計局 2015 年 1 月
2
2014 年は、様々な規模・セクターで複数回の株価下落局面がありました。春はヘルスケア、
消費財、中小型株など、7 月には再度中小型株の下落がみられました。特に 10 月前半はエ
ネルギー・セクターをはじめとして、世界的に大規模な急落がありました。その間、多くの非レ
バレッジ型株式ロング・ショート・ファンドは、個別株のショートポジションで利益を確保しつつ、
企業別のファンダメンタルズが実質的に改善する中でより魅力的な新規・既存のロングポジシ
ョンのエントリー・ポイントを見出だす形で、こうした下落局面を有効に活用しました。時価評価
損を抱えるのは好ましいものではありませんが、市場の急落は将来的なパフォーマンス改善
のための仕込みをする上で有益となり得ます。また、2014 年を通じて株式銘柄間のバリュエ
ーション格差が拡大したため、ロング・ショート戦略のマネージャーにとっては魅力的なポジシ
ョンを発掘する機会が増えたと考えられます。株式市場は 2015 年に入ってからも一定のボラ
ティリティがみられる状況にあることから、引き続きこうした環境を活用してショートポジション
の利益が確保しやすく、ロングポジションによるアップサイドの獲得が可能とみております。
図 1.2 S&P500 指数構成銘柄におけるバリュエーション格差
(移動平均 PER ベースで上位 20%と下位 20%)
出所:ブルームバーグ、データは 2015 年 1 月 31 日まで。
全体的なバリュエーションは
過去平均と比較すると、妥当
な水準にありますが、分布の
上限は大幅に上昇しています。
全体的なバリュエーションは過去平均と比較すると妥当な水準にありますが、上記のグラフに
よると分布の上限は大幅に上昇しているものの、多くの場合、他よりもファンダメンタルズが良
いという根拠が必ずしもあるわけではありません。例えば、2014 年は公益や不動産投資信託
(REIT)セクターでほぼ一律に上昇がみられましたが、これは 10 年国債の大幅な利回り低下
を背景とした相対的に魅力的な利回りの追求が主な原動力となっています。バリュエーション
分布の上限上昇により、ロング・ショート・ポートフォリオのショート側にとって有利な状況となる
うえ、2014 年と同様に市場が度々ボラティリティ上昇にさらされる状況となる可能性が高く、
2015 年も堅調なアルファ創出が見込まれます。
3
米国以外の投資機会としては、まず日本では日銀の大規模な緩和措置、円安、外需が追い
風となり、経済ファンダメンタルズの改善が続いています。景気対策の実施以降、投資家は輸
出企業に対する評価を引き上げましたが、逼迫した労働市場 3 や信用拡大 4 といった国内経
済の進展、およびそれが金融や不動産、小売、資本財などの内需セクターの企業業績に及ぼ
す効果については、まだそれほど評価していません。欧州景気は引き続き逆風にさらされる
一方で、量的緩和により市場全体の上昇が続くとみられます。また、急成長するグローバル市
場に対する事業エクスポージャーの高い欧州の大手グローバル企業の中に、魅力的な投資
機会が存在します。こうした企業はユーロ安の恩恵も受けることができます。新興国市場は、
ドル高と資源価格の下落による逆風にさらされているものの、一部の国では積極的な財政政
策が進行する兆しがみられ、投資家心理が改善される可能性があります。したがって、新興
国市場にはロング、ショートの両面で魅力的な投資機会があるとみております。
更に 2015 年は、セクター間で勝敗を分ける様々な投資テーマがあり、有能なロング・ショー
ト・マネージャーは、それを識別して収益を得ることができるでしょう。この投資テーマには、資
源価格の急落、ドル高、テクノロジーやヘルスケア産業における継続的なイノベーションなど
が挙げられます。以下で、これらの中で魅力のあるテーマや投資分野について述べていきます。
ヘルスケア: 変化による投資機会の創出
米国のヘルスケア業界は過去数年にわたり大きな変化を遂げており、 当社は今後も同様の
変化が続くとみています。米国のヘルスケア支出は GDP の 17%を占め、近い将来に 20%
まで拡大する見込みです 5。米国の 65 歳以上人口は 4,450 万人と人口の 14%を占め 6、
毎日およそ 1 万人が 65 歳になっています 7。米国全体のヘルスケア支出は 2022 年までに
1 兆 9,000 億ドル増加する見通しです 8。このヘルスケア支出の大幅な増大傾向は、その恩
恵を受ける企業を特定することができる投資マネージャーにとっては、収益獲得の機会へと
つながります。
3
厚生労働省、 日銀、 日銀、 米国国勢調査局、 ピュー・リサーチ・センター、
8
4
5
6
7
メディケア・アンド・メディケイド・サービス・センター(CMS)
4
図 1.3 米国の人口動態およびヘルスケア支出推移
米国における 65 歳以上の人口
米国ヘルスケア支出
出所:メディケア・アンド・メディケイド・サービス・センター(CMS)
医療保険制度改革法の実施
による影響を実感しているの
は、現時点では関連企業と
投資家のみであると思われ
ます。
同セクターにおける近年最も重要かつ劇的な変化は、おそらく医療保険制度改革法(ACA)と
いえます。同法により、1,200 万人以上が新たに医療保険に加入しました 9。また今後 2、3 年
で、新たな保険市場である「エクスチェンジ」を通じた加入や低所得層向け医療保険(メディケ
イド)で 1,700 万人、子供向け医療保険プログラム(CHIP)で 1,300 万人が更に加入する見
込みです 10。
現時点では、この改革実施による影響を実感しているのは関連企業と投資家のみであると思
われます。当社は 2014 年初めに、同法が利用率やヘルスケア支出に及ぼした初期的影響、
及び病院や保険会社、製薬会社、医療機器メーカーなどの関連業種への影響に関する調査
報告を受け、すでに病院セクターをはじめとする一部の株式に良い影響をもたらしていること
が分かりました。
その他ヘルスケア産業の追い風となっている要因としては、新薬開発、疾病治療、技術革新
が挙げられます。製薬企業は、がん免疫治療、分子診断オーダーメイド医療、糖尿病、アルツ
ハイマー病をはじめとする多くの分野で、近年、飛躍的進歩を遂げました。これらは巨大な潜
在市場をもつ主要疾患カテゴリーにおける進歩であるため、ヘルスケアのサプライチェーン全
体への支出拡大に結びつくとみられます。また、米国食品医薬品局(FDA)の審査プロセスは
近年合理化されており、新薬承認にかかる期間は 2006 年から 2013 年の間に平均 17.5 ヵ月
から 13.2 ヵ月まで短縮されました 11。FDA は 2014 年には 41 件の新薬承認を行っており、
2013 年の 27 件から増加しています 12。今後 5 年間に 200 件の新薬が発売され、世界全体
の医薬品売上高は 30%増加し、1 兆 3,000 億ドルに達する見込みです 13。
5
ヘルスケアは全般に景気の影響を受けにくく、前述のとおり人口動態も有利な状況にあること
からロングからの成長余地が見込めるものの、上記の変化により関連セクター間や銘柄間で
相当程度のリターンのばらつきが起こる可能性があるため、株式ロング・ショート戦略の魅力
が高まるセクターとみています。
エネルギー: シェールガスのドミノ効果から収益機会を追求
中長期的にみると、現在の
原油価格水準では大半の
エネルギー企業は適切な
利益を得られない可能性が
あります。
米国は非伝統的な掘削技術により、近年において世界で最も急速に石油・ガス生産量を伸ば
しました 14。直近では生産拡大に加えて、中国など複数の国で需要減速が重なり、供給過多
(1 日あたりの需要の約 2%に相当する日量 150 万~200 万バレル程度 15)の状態に陥った
結果、原油価格が急落しています。2015 年 4 月の WTI およびブレント原油の取引価格は、
2014 年夏の 110 ドル前後から半減しています。
しかし中長期的にみると、現在の価格水準では大半のエネルギー企業は適切な利益を得ら
れません。すでに現在の原油価格下落により、多くのエネルギー企業が高コスト地域におけ
る探査・生産活動への設備投資を縮小しています。また、石油の年間需要は増加傾向が続く
でしょう。実際、長期的には日量平均 100 万バレルで伸びています 16。足元の原油価格急落
を背景に需要がさらに拡大し、今後はこの伸びはさらに加速する可能性もあります。上記の流
れにより将来的な需給ギャップが生じ、米国の生産効率の向上ではカバーしきれない状況と
なるかもしれません。
図 1.4 イーグル・フォード地区 掘削効率
掘削あたりの生産性
出所: 米エネルギー情報局(EIA)
9
10
11
14
米保険社会福祉省(HHS)、
米保険社会福祉省(HHS)、ロバート・ウッド・ジョンソン・ファウンデーション、アーバン・インスティテュート、
12
13
ロバート W.ベアード、 米食品医薬局(FDA)、 ファイナンシャル・タイムス、IMS ヘルス
15
16
米エネルギー情報局(EIA)、Van Eck Global、 EIA、 EIA, Van Eck Global
6
もちろん、原油市場におけるボラティリティにより業種や企業の間に勝ち組と負け組が出るた
め、同分野に注目するロング・ショート・ファンドのマネージャーにとっては良い材料となります。
エネルギー関連分野はいずれも様々なリスク・リターン特性があり、原油価格がどの水準とな
るかによって価値上昇のポテンシャル幅が変わります。原油価格が変動する中、いずれの分
野も検討に値しますが、当社は中流部門の関連分野のリスク・リターンが最も魅力的であると
考えています。一般的に、中流部門の企業の大半はキャッシュフローが長期契約に基づいて
おり、直接原油価格には縛られていません。また、中流企業株は最近の急落で、インカム志
向の投資家にとっては 2014 年に大幅に上昇した REIT や公益事業株よりも相対的に魅力的
な利回りが期待できることから、原油価格が低水準であっても中流部門にとってダウンサイド
リスクのバッファーとなります。また、最終的に原油価格が継続的に上昇すれば、中流企業は
センチメント改善による上昇のポテンシャルがあります。
中型株: 巻き返しを図る
特に株式ロング・ショート戦略
を用いて中型株に投資する
理由としては、長期的な構造
面と中期的な戦術面の両方
があると考えられます。
特に株式ロング・ショート戦略を用いて中型株に投資する理由としては、長期的な構造面と中
期的な戦術面の両方があると考えられます。
構造面では、一般的に中型株は大型株よりも非効率とされています。以下のグラフに示したと
おり、時価総額が小さい企業ほどセルサイド・アナリストによるカバー件数も少ない結果となっ
ています。中型株を構成する企業はアナリスト・カバレッジが低いことから価格のずれが生じ
る可能性があり、パッシブ戦略やロングに特化した戦略と比較して、ロング・ショート・マネージ
ャーが力量を発揮しやすいと当社は考えています。
図 1.5 時価総額別アナリストの平均カバレッジ
出所:ドイチェ・アセット&ウエルス・マネジメント
7
戦術面では、2014 年は中型株が大型株よりもパフォーマンスが低かったことから、2015 年に
は魅力的なエントリー・ポイントとなっていると考えられます。2014 年 10 月における S&P400
(中型株指数)と S&P500 の 12 カ月移動平均ベースでのパフォーマンス格差は、過去 9 年
間で 2012 年のマイナス 9.38%17 に次いで 2 番目に低い水準(マイナス 9.07%)となりました。
中型株は過去数カ月の間に一部改善しましたが、依然として大幅なアンダーパフォームを続
けています。2006 年以降でみれば、S&P400 の 12 カ月移動平均ベースのパフォーマンスは
S&P500 を約 2.5%上回っていますが、2014 年全体では約 4%下回っており、6%18 以上の
開きが出ています。米国開示資料であるフォーム 13F を分析すると、ヘッジファンドは S&P500
や S&P400 に対してロングポジションを通じて大きなアルファを創出したことが分かります。
図 1.6 S&P400 中型株指数と S&P500 指数との
12 ヵ月移動平均パフォーマンス格差
出所:ブルームバーグ、データは 2015 年 1 月まで。
当社が米国の中型株に注目するもう一つの理由は、構成企業が米国中心で展開していると
いう点です。売上高のうち国内市場が占める割合は S&P500 構成企業が約 50%19 であるの
に対し、S&P400 構成企業は売上高の約 80%にのぼります。米国以外の経済成長が鈍化す
るなか、中型株は比較的堅調な米国経済へのエクスポージャーにより特化していると同時に、
ドル高や輸出需要の鈍化の影響も受けにくい傾向があります。
結論
株式銘柄間のバリュエーション
格差およびボラティリティ環境
は継続すると想定され、ロング
及びショートの双方からのアル
ファ創出機会が存在すると予
想されます。
当社は 2015 年も引き続き株式ロング・ショート戦略が底堅く推移すると考えています。米国
の景気動向は依然として好調であるうえ、株式市場全体の評価も妥当な水準にあります。市
場では株式銘柄間のバリュエーション格差やボラティリティの高い環境が続くため、ポートフォ
リオのロング・ショートの両面でアルファ創出の機会があると当社はみています。また当社は、
資源価格の急落、ドル高、テクノロジーやヘルスケア産業における継続的なイノベーションな
ど、上記に挙げた主要な投資テーマに特に注目しており、これらは業界内で勝ち組と負け組
を生むと考えています。有能なロング・ショート・マネージャーはこうした投資テーマを活用し、
収益追求が可能とみています。
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ブルームバーグ、
18
ブルームバーグ、
19
ファクトセット、ラッセル・インベストメンツ
8
第 2 章: イベント・ドリブン- 企業活動の活発化、追い風になるか
最近は逆風もみられるものの、企業のキャッシュ・バランスは健全で、米国連邦準備
制度理事会(FRB)の緩和縮小を見越した企業活動の増加も見込まれるため、イベン
ト・ドリブン戦略の見通しは良好だと当社はみています。
概観
2008 年の世界金融危機を受け、多くの企業はコスト削減とキャッシュの確保による保守的な
戦略に舵を切りました。その結果、合併買収(M&A)や自社株買い、増配、スピンオフなどの
企業活動が急速に縮小しました。2007~2009 年の景気後退後も経済成長は比較的低調で、
企業は社内成長を追求しました。投資家の多くは、社債やプライベート・エクイティ・ファンドの
キャッシュ・バランスが高水準である一方で経済成長が低迷していることから、企業活動は回
復に転じると思われましたが、投資家の予想以上に企業は守りの姿勢を維持しました。2013
年に発表された M&A 及びスピンオフの件数と規模は、金融危機以前のピークであった 2006
年、2007 年の水準からはほど遠い水準でした。
利上げ予測から、企業側が
金利上昇前に低コストで取引
資金を調達しようとする動き
に弾みが付きました。
2014 年に入り、企業活動のペースはようやく加速に転じました。前述の要因に加え、企業経
営者の信頼感が数年ぶりに上昇に転じたうえ、利上げ予測から、企業側が金利上昇前に低
コストで取引資金を調達しようとする動きに弾みが付きました。
図 2.1 S&P 指数内の企業-総資産に対するキャッシュ比率
出所:ブルームバーグ
9
図 2.2 北米 M&A 取引額(単位:10 億米ドル)
出所:ブルームバーグ
米国企業は、同国の高い法人
税率の影響を緩和するための
巧妙な対策を講じ始めました。
上記の後押し要因に加え、米国企業は同国の高い法人税率の影響を緩和するための巧妙な
対策を講じ始めました。エネルギー分野では MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)へ
の転換が相次いだほか、不動産関連企業(屋外広告からデータストレージ企業まで)の多くが
不動産投資信託に転換しました。国外子会社を通じて多額の現金を保有する米国企業は、タ
ックス・インバージョン(節税目的の本社移転)のための企業合併により、米国からの課税を受
けずに国外保有現金を利用しています。
イベント・ドリブン戦略の課題
このような状況によりイベント・ドリブン戦略には広範な機会がもたらされていますが、複数の
逆風要因にも見舞われました。うち最も大きなものは法規制面の問題です。具体的には 2014
年 8 月、3 件の大型取引が頓挫し、独占禁止法の強化、またタックス・インバージョン目的の
合併に対し米国議会や米国財務省が対策を講じる可能性が取りざたされました。これを受け
て、同ニュースの影響を直接受けたポジションが急落しただけでなく、無関係のイベント・ドリブ
ンのポジションの大量売りも広くみられました。これは投資マネージャーが全体的なリスク・エ
クスポージャーを軽減しようとしたことが背景にあります。
実際、財務省は 9 月にタックス・インバージョン目的の合併に関する新規則を導入し、イベン
ト・ドリブンによる投資は再度打撃を受けました。そして 10 月初旬には、連邦住宅抵当公社
(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に関する不利な法律、またこれに続
いてタックス・インバージョン目的の大型合併のうち 1 件の交渉が予想外の失敗に終わり、ヘ
ッジファンドは打撃を受けました。これにより、イベント・ドリブン型取引はさらに減少しました。
10
結論
こうした逆風にもかかわらず、イベント・ドリブン戦略のマネージャーは、今後は比較的ポジテ
ィブな見通しを持っていると当社はみています。すでに相当規模の取引が発表されているにも
関わらず、企業のキャッシュ・バランスは依然として過去最高の水準にあります。また、現在の
経済低成長が続けば、売上高の自律的成長が阻まれ、企業活動の必要性が浮き彫りとなる
可能性があると考えられます。更に金利上昇局面が近付いており、企業経営者は低コストの
資金調達確保のためにも早急に取引を完了する必要に迫られています。より専門的な観点
からみれば、金利上昇は合併アービトラージ・スプレッドの拡大につながるかもしれず、リスク
を上昇させずにトータル・リターンを増加させる可能性があります。また、アクティビスト・ヘッジ
ファンドの運用資産規模は、現在 1,000 億ドル 20 を上回っており、企業活動の活発化を促す
ための手元資金は潤沢にあるといえます。そして前例をみても、現在のようにスピンオフが活
発化した後は、M&A が堅調となっています。
図 2.3 グローバルにおけるスピンオフ件数
出所:ブルームバーグ
20
11
HFR グローバル・ヘッジファンド・インダストリー・レポート(2014 年末)
第 3 章: グローバル・マクロ及び CTA-ついに反転の機会到来か
グローバル・マクロ及び CTA マネージャーは、信用収縮、ボラティリティと市場の持
続的傾向の欠如により、これまで活躍の場が狭められていました。金融政策が変更
され、市場の乱高下が見込まれることから、今後数ヵ月間は当戦略が注目に値する
と当社はみています。
概観
グローバル・マクロ及び CTA
戦略は、世界金融危機以降、
2014 年の回復兆候までの数
年間にわたり、比較的低調な
パフォーマンスとなりました。
グローバル・マクロ及び CTA 戦略は、世界金融危機以降、2014 年の回復兆候までの数年間
にわたり比較的低調なパフォーマンスとなりました。各国中央銀行の協調対応などの様々な
要因が重なったことにより、多くの市場間で実現ボラティリティが低下し、トレンドが横ばいとな
ったこと、2008 年の記憶が払拭できないことにより(特に一部のグローバルマクロファンドの
間で)過度に弱気なポジションがとられたこと、また、投資マネージャーが単に取引の目測を
誤ったことなどが多かれ少なかれこの低調の原因となっています。
図 3.1 グローバル・マクロ戦略パフォーマンスとその他ヘッジファンド戦略との比較
出所:ヘッジファンド・リサーチ(HFR)、ブルームバーグ
12
以下の MOVE 指数(米国債の予想ボラティリティを示す指標)と G3 通貨の予想ボラティリテ
ィの推移を示したグラフのとおり、2008 年以降の中央銀行がとった対応により債券及び通貨
のボラティリティは歴史的な低水準に落ち着きました。
図 3.2 MOVE 指数(米国短期金利ボラティリティ指標)
出所:ブルームバーグ
図 3.3 G3 通貨の予想ボラティリティ推移(1 ヵ月、アットザマネー)
出所:ブルームバーグ
13
マクロ・マネージャーや CTA
の見通しは、今後改善して
いくと当社はみています。
マクロ・マネージャーや CTA の見通しは、以下をはじめとする理由により今後改善していくと
当社はみています。

米国の景気が改善し FRB が利上げに踏み切るが、その一方で他の主要中央銀行は当
面は非常に緩和的な政策を続ける構えであるため。

各国中央銀行が協調行動をやめ、ここ数年間抑制されていた通貨・債券市場のボラティ
リティが再上昇する可能性があるため。

地政学的リスクの要因が増加する結果、将来の予測が不可能となり、トレーディングの
機会が生じるため。

僅かな流動性に対して伝統的株式や信用市場におけるポジションが集中しているため。
経済概況
米国の景気回復は目覚ましいものではありませんが、着実に改善を続けています。失業率は
2010 年初の 10%近くから直近では 6%を大幅に下回っています。また GDP 成長率も 2010
年初の年率平均 1~3%から、2014 年は数四半期にわたり 4.5~5%の水準まで伸びました。
図 3.4 失業率 vs GDP 成長率
失業率(%)
年間 GDP 成長率(%)
失業率(%)
年間 GDP 成長率(%)
出所:世界銀行、米国労働省
過去 5 年間にわたり雇用は
毎年加速し続けており、雇用
が持続的に創出されていると
いう事実に反論することは難
しいと思われます。
労働市場の減速や労働参加率の低下といったマイナス要因を指摘し、雇用統計の改善によ
る好影響に反論する懐疑的な見方もありますが、過去 5 年間にわたり雇用は毎年加速し続
けており、雇用が持続的に創出されているという事実に反論することは難しいと思われます。
14
図 3.5 非農業部門雇用者数月次平均変化率(単位:1,000 人)
出所:ブルームバーグ、米国労働省労働統計局
また、2008 年の経済破綻の元凶の一つにもなった住宅市場は、安定化を続けています。住
宅価格は 2009 年の低水準から大幅に上昇しており、住宅販売件数全体に占める差し押さえ
物件の販売件数の割合は低下し、ローン延滞率は引き続き低下を続け、ローン金利も依然と
して低水準です。こうした要因が、ローン借り換えや新規の住宅購入を後押ししています 21。
図 3.6 S&P/ケース・シラー 20 都市総合住宅価格
出所:スタンダード&プアーズ 、データは 2014 年 11 月まで。
21
15
ブルームバーグ
図 3.7 住宅売却の比率
■ディストレス(破綻状況)下における売却
■非ディストレス下における売却
出所:全米不動産協会(NAR)、ドイツ銀行グロ-バル・マーケット・リサーチ、データは 2014 年 12 月まで。
FRB が利上げの前提条件と
して示した労働市場の減速の
改善についても、実際に兆し
がみられます。
また、FRB が利上げの前提条件として示した労働市場の減速の改善についても、実際に兆し
がみられます。求人倍率は 2005~2006 年の水準に回復している一方で、人手が不足してい
るとされる住宅建設業者の割合は、ここ数年高い水準にあります。
図 3.8 求人数に対する失業者数の割合
出所:米国労働省労働統計局
16
図 3.9 人手不足を抱える建築業者の比率
出所: 全米住宅建設業者協会(NAHB)、ドイツ銀行グロ-バル・マーケット・リサーチ
FRB の利上げで各国中央銀行の政策にばらつき
金利上昇の環境は、ヘッジフ
ァンド・マネージャーにとって
多くの場合で有利に働きます。
各国中央銀行の協調対応と大規模な量的緩和が景気回復に及ぼした効果については議論
の余地がありますが、金利とボラティリティの抑制と株式市場の拡大がもたらす直接的な効果
は概ね誰もが認めるところでしょう。米国経済の継続的な成長や堅調な兆しを受け、市場は
FRB による利上げのタイミングを 2015 年半ばから年末と予測しています。これにより、マク
ロ・ヘッジファンドと CTA にとっての運用環境は改善する可能性があると当社はみています。
利上げはドル高を促し、中長期債の価格下落をもたらします。通貨・債券は大半のマクロ・ヘ
ッジファンドが長らく好んで投資してきた分野であり、CTA にとっても重要なリスク配分の可能
性をもたらすため、FRB の動きにより生じるトレンドは、投資マネージャーには魅力的な機会
となり得ます。金利上昇の環境は、ヘッジファンド・マネージャーにとって多くの場合で有利に
働きます。以下のグラフは、過去 2 回の FRB による金融引き締め期と危機後のゼロ金利政
策期におけるマクロ・ヘッジファンドのパフォーマンスの比較を示しています。
図 3.10 直近の金利サイクルにおける HFRI マクロ指数のパフォーマンス
(1998 年~現在)
■年率リターン
■年率ボラティリティ
FED 金利引締め局面
(1998-2000&2004-2006)
出所: ヘッジファンド・リサーチ(HFR)、ブルームバーグ
17
FED 金利緩和局面
(2000-2004&2006-2014)
主要国の一部における経済の
足並みが乱れてきていること
から、各国中央銀行の短中期
的対応にも差が出ると当社は
考えています。
また、主要国の一部における経済の足並みが乱れてきていることから、各国中央銀行の短中
期的対応にも差が出ると当社は考えています。そして、これによりボラティリティが上昇し、複
数の国における経済成長軌道や金融政策路線を活用して投資するマクロ・マネージャーにと
っては、市場間取引の機会が高まると当社は予想しています。次のグラフは、主要国・地域の
短期金利の推移を示したものですが、米国及び英国は十分に力強い成長となっており、2015
年中に短期金利の上昇が始まる可能性があります。他方、欧州と日本ではゼロ金利政策が
続くとみられます。欧州中央銀行は最近発表した量的緩和措置で景気停滞の打開に取り組
んでいるほか、日銀も成長刺激により 20 年間のデフレに終止符を打とうと試みています。
図 3.11 GDP 成長率(年率、%)
米国
EU 諸国
英国
日本
出所:世界銀行
図 3.12 3 ヵ月短期金利予想(%)
米国
EU 諸国
英国
日本
出所:ブルームバーグ
18
FRB が今後利上げを開始す
ることにより、過去数年間に
わたってリスク資産投資を促
してきた低金利、低ボラティリ
ティのトレンド終焉へと大きく
潮目が変わると当社は考えて
います。
FRB が今後利上げを開始することにより、過去数年間にわたってリスク資産投資を促してき
た低金利、低ボラティリティのトレンド終焉へと大きく潮目が変わると当社は考えています。ま
た、中央銀行の政策が非連動的となり、通貨・債券のボラティリティが上昇する(最近ユーロと
円に生じたような動き)ことから、こうした市場間での投資に特化したマクロ・ファンドと CTA に
とって状況の改善がみられるでしょう。
その他の要因: 地政学的要因と市場のポジショニング
足元の株式市場の上げ相場は、地政学的リスクの高まりに付随した動きになっています。
図 3.13 VIX 指数(株式ボラティリティ指数)
出所:シカゴ・オプション取引所(CBOE)
左から、ギリシャ財政危機、米債務上限問題、スペイン経済危機、財政の崖、ロシア・ウクライナ情勢、
イスラム国問題/イスラエル・ガザ情勢、ウクライナでのマレーシア航空機墜落、原油価格の下落。
ボラティリティの上昇はヘッジファンドの戦略のパフォーマンスとは必ずしも一致していません
が(実際、戦略によっては全く逆の動きをするものもあります)、不確実性の上昇をもたらし、マ
クロ・ファンドと CTA が取引する市場の多くに大きな影響を及ぼします。一般に、株式ロング
やクレジット・ベータ型などの比較的伝統的な戦略にとっては追い風にはならないケースが多
くみられます。地政学的リスクの高い環境では、様々な市場において方向性(トレンド)をもた
らす可能性が拡大することから、マクロ・ファンドと CTA にとっては収益機会が増加します。
19
図 3.14 VIX 指数の上昇・下落月におけるヘッジファンド戦略パフォーマンス
出所: ヘッジファンド・リサーチ(HFR)、シカゴ・オプション取引所(CBOE)、
データは 2005 年 1 月から 2014 年 12 月まで。
銀行による自己勘定取引が
減少したため、一部の市場
では世界金融危機以前より
も流動性が低下しています。
アクティブ・マネージャーは、地政学的不確実性のある状況下でも、株式及びクレジット市場に
相当程度のロングポジションを組んでいます。近年は 6 年続いた上昇相場と超低金利により、
リスクテイクが収益につながっていたため、これは何ら驚くことではありません。しかし、主に
銀行による自己勘定取引が減少したため、一部の市場では世界金融危機以前よりも流動性
が低下しています。金融危機以前は、銀行はより積極的に市場に介入し、市場を下支えして
いましたが、流動性が低下した現在では、株式及びクレジット市場で相関の高い巻き戻しが起
こるリスクが高まっているといえます。以下のグラフは、米国企業による社債発行残高とプライ
マリー・ディーラーによる社債保有在庫の推移を示しています。
図 3.15 米国社債発行額 vs.プライマリー・ディーラー在庫(単位:10 億米ドル)
発行済み米国社債の総額
プライマリー・ディーラーの社債保有在庫
出所:米国証券業金融市場協会(SIFMA)、ニューヨーク連邦準備銀行
20
グローバル・マクロ及び CTA はこれによりどのような影響を受けるでしょうか。両戦略は過去
においては、(2014 年、2008 年には主に CTA マネージャーが)こうしたポジションの巻き戻し
を活用して、例えば、「株式ショート、クレジットまたは長期政府債ロング」といった、いわゆる質
への逃避を通じて収益を獲得しました。同様の状況が生じた場合、今回もそれを活用した利益
を得られるかどうかは確実ではありませんが、少なくとも過去においては成功していることから、
収益獲得の可能性はあるとみています。
アロケーションの実施
あらゆるヘッジファンド戦略の
中でも最も制約が少なく、一般
的に個々のマクロ・マネージャ
ーによって投資リターンは大き
く異なる傾向があります。
グローバル・マクロや CTA のアロケーションには、特別な配慮が求められます。あらゆるヘッ
ジファンド戦略の中でも最も制約が少なく、一般的に個々のマクロ・マネージャーによって投資
リターンは大きく異なる傾向があります。これは、概して最もボラティリティの高いヘッジファンド
戦略である CTA についても同様です。以下のグラフは、マクロ及び CTA とそれ以外のヘッジ
ファンド戦略のマネージャーのリターン分散、およびボラティリティと最大ドローダウンを比較し
たものです。
図 3.16 グローバルのヘッジファンド戦略リターン格差
(2010 年 1 月-2014 年 12 月までの 5 年間、年率)
図 3.17 年率ボラティリティおよび最大ドローダウン中間値
これは、NBオルタナティブ・インベストメント・マネジメント・チーム、また外部企業が収集・分析したデータや市場見通しに基
づいた情報です。同チームは12年前より、80種類の投資戦略、地域にまたがる4,000のヘッジファンドの情報を保有・管理
しています。各外部企業に含まれるファンドは、ファンドの組成・閉鎖に応じて入れ替わることがあります。NBオルタナティ
ブ・インベストメント・マネジメント・チームのメンバーは、ヘッジファンド戦略の定義を通じて、 各ヘッジファンドの活動を正確
に反映した投資定義を行い、それぞれの同業他社が比較可能なデータで構成されるように図っています。
21
パフォーマンスのばらつきやボラティリティ、ドローダウンは比較的高い水準にあるため、ポー
トフォリオ内におけるマクロ及び CTA 戦略への適切な配分は極めて重要と考えます。マクロ・
ファンドや CTA を組み入れる場合、(その他の条件が同じであれば)他の伝統的な戦略よりも
投資配分を小さくすることが最も慎重な方法であると思われます。
結論
地政学的なイベントによる潜在
的なリスク及び主要な株式・ク
レジット市場における集中リス
クといった要因が、同戦略にと
っての機会拡大をさらに後押し
するとみています。
マクロ・ファンド及び CTA は、ここ数年間は比較的期待を下回るリターンとなっていました。同
戦略カテゴリーに対する見方が悪化する一方で、米国の景気が改善し、今後の FRB の利上
げで各国中央銀行の政策にばらつきが生じ、ようやくポジティブな材料もみられるようになって
きました。同時に、地政学的なイベントによる潜在的なリスク及び主要な株式・クレジット市場
における集中リスクといった要因が、同戦略にとっての機会拡大を更に後押しするとみています。
22
第 4 章: オポチュニスティック-プエルトリコ債と学生ローンに注目
ヘッジファンド戦略の多くは大きなトレンドやより長期的な投資戦術と関連付けられて
いますが、オポチュニスティック戦略のマネージャーは、よりユニークかつ短期的な投
資機会にフォーカスし、優位なリスク調整後リターンの創出を追求しています。現在、
当社が関心を抱いている分野は、プエルトリコ債の債務再編問題と、変動がみられる
学生ローン市場といったニッチな分野です。
プエルトリコ: 債務再編により投資家に機会
米国における三重の非課税措置により、プエルトリコ債は、以前から地方債市場で投資家か
ら大きな需要を集めてきました。そのため、プエルトリコ自治連邦区とその関連事業体は長年
にわたり多額の債券を発行することができ、現在の公債発行残高は約 730 億ドルにのぼって
います。しかし、プエルトリコ政府による保証付き債券は、うち 430 億ドルのみで、それ以外の
発行体は独立した公社であり、自治連邦区またはプエルトリコ政府開発銀行からの明示的保
証は受けていません。景気減速の長期化で、債券償還/利払いのための現金収支が圧迫さ
れ、発行体の多さにより市場で実際のプエルトリコ政府債の発行残高を巡る混乱が生じ、一
部の短期債の償還期限が迫るなか、自治連邦区は 2014 年 6 月 25 日、プエルトリコ公社債
務執行・回復法を承認しました。
公社債務執行・回復法とその影響
公社債務執行・回復法により
複数年にわたる債務再編プロ
セスが始まったことで、プエル
トリコの資本構成全体や公的
事業体の間に多くの投資機会
が生まれる可能性があると当
社は考えています。
同法は、米国連邦破産法の第 9 章と 11 章をモデルにした、プエルトリコ公社債の債務再編
に関する法的枠組みを作ることを目指して制定されました。プエルトリコ政府保証付きの債券
を対象外とすることにより、「リング・フェンス」債とすることで、公社債に優先される債券である
ことを明示的に示しました。
公社債の保有者は直ちに同法について異議を申し立てた結果、プエルトリコ管区米国連邦地
方裁判所は、2015 年 2 月 6 日、同法の無効判決を下しました。この判決により、自治連邦区
は公的な債務再編枠組みを失い、判決の上訴や破産法第 9 条の拡張適用(現行ではプエル
トリコは適用対象外)など様々な手段を検討中といった状況となっています。
いずれにせよ、同法により複数年にわたる債務再編プロセスが始まったことで、今後の成り行
きや景気データ次第では、プエルトリコの資本構成全体や公的事業体の間に多くの投資機会
が生まれる可能性があると当社は考えています。
23
投資機会: リング・フェンス債から金融保証付き債券まで
プエルトリコの資本構成においては、大きく分けて以下の 4 つの投資機会が存在します。
リング・フェンス債
1 つ目の投資機会は「リング・フェンス」債です。これは前述のとおり、当初は公社債務執行・
回復法の債務再編プロセスの対象外とすることを目的としていました。リング・フェンス債には、
一般財源保証債(GO 債)、政府開発銀行の保証付き債券(GDB 債)、および地方売上税収
を担保とするプエルトリコ売上税金融公社債(COFINA 債)が含まれます。こうした債券は、以
下の理由により、資本構成の中で優位な位置づけにあります。
a) 自治連邦区あるいは政府開発銀行の明示的保証、また COFINA 債の場合は、強固な収
入源で担保されている
b) 憲法上の保護
c) 償還のための現金確保においてより多くの手段が存在
d) 他の公的事業体が再編になった場合においても、プエルトリコは理論的にはデフォルトに
はなっていないと主張することが可能である点。これは、プエルトリコの資金調達能力に
とって重要であり、将来の資金調達コストにも影響する可能性あり。
同法は公社債の債務再編の可能性を主眼とし、リング・フェンス債を保護することを明示的目
的として制定されましたが、様々な発行体の格付が相次いで引き下げられ、リング・フェンス債
も含むプエルトリコ関連債が大量に売られる結果となりました。しかし、同債券においては償
還資金の確保や価格回復が予想されており、また非課税メリットを考慮した利回りの観点から
も、リング・フェンス債に投資するための魅力的なエントリー・ポイントとなると当社は考えてい
ます。
図 4.1 10 年債券イールド(租税考慮後)
出所:サウンド・ポイント・キャピタル・マネジメント、データは 2014 年 10 月 8 日時点。
24
当社は、プエルトリコにおけ
る投資機会の中ではリング・
フェンス債が最も魅力的だと
みており、実際に、大多数の
ヘッジファンドも同債券を
保有しています。
当社は、プエルトリコにおける投資機会の中ではリング・フェンス債が最も魅力的だとみており、
実際、大多数のヘッジファンドも同債券を保有しています。公社債務執行・回復法/債務再編
枠組みは判決により無効となったものの、キャッシュフロー予測や、必要に応じ償還資金の拡
大策が複数確保されていることを考慮すれば、リング・フェンス債の多くは 1970 年代初めか
ら半ばの更に厳しい景気シナリオを基準にしても、十分なダウンサイド・プロテクションが提供
されていると当社はみています。
プエルトリコはすでに相当の財政健全化策を講じています。歳入拡大のため、石油製品への
課税を引き上げ、税の抜け穴を狭め、売上税の課税ベースを拡大しました。歳出削減面では、
2014 年に財政安定法を成立させ、全ての公務員契約の再交渉や公務員年金改革、政府の
雇用削減を可能にしました。プエルトリコはこうした歳出入の見直しに加え、債券発行の簡素
化やリング・フェンス債の償還能力強化のため、COFINA が徴収する売上税の税率を引き上
げました。最終的に公社債の債務再編でプエルトリコの公的事業体の債務総額が減免された
としても(公社債務執行・回復法で想定)、リング・フェンス債に対する市場の信認は上がり、本
来の債券価格で取引される可能性が高いと当社はみています。
公社債
2 つ目の投資機会は、公社債や予算変更により悪影響を受ける「クローバック」制度が適用さ
れる債券です。プエルトリコの公社は長年大きな経常赤字を計上していることから、債務再編
の中心となると予想されます。うち最大のプエルトリコ電力公社(PREPA)は、債券発行残高
が約 90 億ドルにのぼっています。同社は大規模な設備投資ニーズを抱えた経営効率の悪い
発電企業で、債務負担は持続不可能な水準となっています。流動性が厳しい状況であるため、
最初に債務再編が行われる公社となる可能性が高いとみられます。実際に、同社は 2014 年
8 月に債権者との間で返済条件の緩和合意を締結し、財務改善・債務再編の策定を行う余地
が与えられました。公社債の保有者は大幅な債務減免となる可能性が高いことから、債券価
格は現在の水準から大幅に下落し、魅力的なエントリー・ポイントが得られる可能性がありま
す。またヘッジファンドにとっては、こうした公社の債務再編に様々な形で直接出資する機会
があり、それによって再編プロセス完了時には魅力的な投資となる可能性があります。例を挙
げると、プエルトリコ・インフラ金融公社(PRIFA)が保有する政府開発銀行(GDB)からの高速
道路建設資金の借り入れのリファイナンス(借り換え)を支援するためのグループが組織され
ています。GDB にとっては、短期的な流動性が不安定な状況にあることから、この案件実施
は非常に重要であり、投資案件としてはいずれも魅力的な条件となると、当社は予想しています。
25
また、プエルトリコ高速道路・運輸局(PRHTA)の場合は、債券発行残高が約 50 億ドルにの
ぼり、債券の一部にクローバック条項(債権回収金の払い戻し条項)が適用されています。ヘ
ッジファンド・マネージャーにとっては、クローバック条項のリスクを考慮した適切な価格設定
が行われていない債券を特定することが投資機会となります。職員退職制度の債券(債券発
行残高 30 億ドル)は、支出変更の影響を受ける可能性があり、プエルトリコ政府の歳出削減
計画による改革により投資機会が生まれるといえます。
歳入債
3 つ目の投資機会としては、個別の資産(有料橋など)のキャッシュフローに特化し、リング・フ
ェンス債の償還などの一般予算の他の歳出項目に充当されることのないタイプの歳入債が挙
げられます。PRHTA の場合と同様、同債券のクローバック条項に対する市場の疑念により、
妥当でない価格設定となり、そこから魅力的な投資機会が生まれる可能性があります。
金融保証付き債券
4 つ目は金融保証付き債券です。プエルトリコ債の約 20~30%が様々なモノライン保険会社
により付保されていますが、それぞれの保険会社が異なる信用リスクの特性を持っているた
め、非効率的な価格設定が生じる可能性があります。多数のヘッジファンドはモノライン保険
会社が保証する住宅ローン担保証券への投資を引き受けた際、様々な保険会社について詳
細分析を行った経験を有するため、同じ保険会社が保証するプエルトリコの金融保証付き債
券をより容易かつ迅速に評価可能であり、魅力的な機会が生じればそれを活用すると思われ
ます。また場合によっては、金融保証付き債券を保証無し債券と同様の価格で取引できること
もあり、効率的に無償で保証付債券にアクセスすることが可能となります。
プエルトリコ債のリスク
プエルトリコ債への投資には、様々なリスクが伴います。最も差し迫ったリスクは、おそらく流
動性イベントです。PREPA の返済緩和合意が 2015 年第 2 四半期に失効するほか、PRIFA
への融資案件が実施されない場合には、夏までに政府開発銀行(GDB)が流動性不足に陥
ることとなります。PREPA は負債が膨らんだバランスシートに対処する債務再編枠組みが整
プエルトリコ債への投資はリスク
を伴うものの、洞察力のあるヘッ
ジファンドであれば、複数年にわ
たり、大規模で複雑な資本構成
や急速に展開する債務再編プロ
セスを通じて、魅力的なリスク調
整後リターンを生み出す機会が
多くあると当社は考えています。
備されなければ、返済緩和合意の再交渉を行うか、厳しい条件で追加資金の調達を確保する
か、または債務不履行に陥るのか、同社の次の手をめぐり大きな不確実性が生じます。この
流動性問題の解消にあたっては、プエルトリコの資本構成全体に価格面での影響があるでし
ょう。GDB はプエルトリコ政府関連機関の多くに融資しているため、流動性が強化されない場
合、より重大なリスクに直面することとなります。その結果、政府のサービス削減や政治・社会
的混乱、資本構成においては資源価格の下落が起こる可能性があります。また、債務再編の
指針となる枠組みがなければ、拙速で無秩序な再編が起こるおそれもあります。とはいえ、知
見が豊富で長期型の運用資金を有するヘッジファンドにとっては、こうしたリスクから魅力的な
投資機会を見出せるはずですが、流動性イベントが発生すれば大幅な時価評価損を被るお
それがあります。もう一つの投資リスクは、先の危機を上回る厳しい景気低迷が長期化
26
することです。そのような状況となれば、資本構成の大部分においてすでに価格下落は底を
打ったとする前提が崩れ、損失が出るおそれがあります。
結論
プエルトリコ債への投資はリスクを伴うものの、洞察力のあるヘッジファンドであれば、複数年
にわたり、大規模で複雑な資本構成や急速に展開する債務再編プロセスを通じて、魅力的な
リスク調整後リターンを生み出す機会が多くあると当社は考えています。
学生ローン: 否定的な見方が逆に魅力
否定的な見出しやデフォルト、
支払延滞といった現状はある
ものの、当社は注目すべき非
常に興味深い 2 つの機会が
存在すると考えています。
米国の学生ローン市場は規模が大きいと同時に問題を抱えています。市場規模は約 1 兆
1,300 億ドルで、消費者信用部門ではローン市場に次ぐ大きさとなっています。また、残高約
1,000 億ドルの連邦学生ローン(市場全体の約 9%に相当)22 はデフォルト状態にあり、破綻
前の米国住宅市場とよく比較されています。実際のところ、多くの学生ローンは返済猶予や返
済条件が緩和されており、このデフォルト額は問題の真の根深さを過小評価しています。最近
のウォールストリート・ジャーナルの記事によると、連邦学生ローン市場の 16%で返済条件が
緩和され、借り手は最大 3 年間返済を延期できるようになっています
23
。「学生ローン」という
単語で検索をすると、毎日のように本問題を懸念する内容の記事が無数に出てきます。
一見すると、このデータや否定的な報道は回避すべき市場について示しているようにみえま
す。こうした否定的な見出しやデフォルト、支払延滞といった現状はあるものの、当社は注目
すべき非常に興味深い 2 つの機会が存在すると考えています。
学生ローン市場の概要
学生ローンは他の消費者信用商品とは異なり、2008 年以降も着実に成長を続け、前述の通
り相当大きな市場となっています。
27
22
出所:ニューヨーク連邦準備銀行、
23
Delisle, Jason, “The Hidden Student-Debt Bomb,” ウォールストリート・ジャーナル 2014 年 12 月 31 日
図 4.2 学生ローン総額(単位:10 億米ドル)
出所:ニューヨーク連邦準備銀行、データは 2014 年第 3 四半期まで。
この成長はローン件数だけでなく、授業料の持続的な引き上げに伴い、ローンの平均残高
(現在 3 万 2,000 ドル)の上昇にもみられます。
図 4.3 学生ローン平均額
出所:ニューヨーク連邦準備銀行、マーク・カントロウィッツによる全米教育統計センターのデータ分析
問題は、学生ローンの 90 日以上の延滞やデフォルトの割合が拡大し、ファンダメンタルズが
脆弱化している点にあります。
28
図 4.4 90 日以上延滞の学生ローン(残高比率)
出所:ニューヨーク連邦準備銀行
図 4.5 学生ローンのデフォルト率
出所:米国教育省
債務不履行により納税者と引
受人の損失発生が続くことに
なる一方で、学生ローン市場
における様々なセグメントを
区別することが重要だと思わ
れます。
こうした数値は、学生ローン市場は不健全な形で拡大していることを示しています。とはいえ、
背景を詳細に分析することが重要であり、当社はサブプライム・ローン危機に匹敵する深刻さ
はないと予測しています。学生ローン市場の規模は大きいものの、住宅市場と比較するとそ
れ程ではないため、経済全体に及ぼす影響もサブプライムと比べればはるかに小さいと見込
まれます。また、景気も学生ローンを下支えすると当社はみております。米国は現在 6 年連続
で拡大を続け、この期間に失業率は 10%から 6%まで低下しました。これは、雇用と長期的
な学生ローン市場における信用実績の相関性からみて妥当といえます。
さらに、債務不履行により納税者と引受人の損失発生が続くことになる一方で、学生ローン市
場における様々なセグメントを区別することが重要だと思われます。当社はこのうち、大学院
生ローンと民間ローンの 2 つの分野で機会があるとみています。
29
投資機会の選定: 大学院生ローンと民間ローン
全ての学生ローンが平等に作られている訳ではありません。このことは、一般的な学生ローン
の信用リスク設定方法(つまり利率に反映)に注目すると分かりにくいので、説明を簡潔にす
るために単純化します。学生ローンの借り手は、一流の大学院に行き安定して給与の高い職
に就く場合でも、あるいは相対的に評価の低い大学に行き、卒業できずに失業する場合でも、
基本的に同じローン利率を払っています。つまり、その他の信用市場と異なり、学生ローン市
場にはリスクに基づく価格設定は存在していません。この価格格差は大学院生ローンにおい
て顕著となっています。
「質の高い」大学院生ローンの
ために出現した証券化市場は
借り手にはローン救済、投資
家には機会を提供しています。
「質の高い」大学院生ローンのために出現した証券化市場は、借り手にはローン救済、投資
家には機会を提供しています。あるプログラムは、借り手が厳格な引受基準を満たして借り換
えを行った場合、より低い金利を提供しています。こうしたプログラムでは 7~8%の固定金利
ローンを、様々な満期日でより低い変動・固定金利のローンに効果的に借り換えることができ
ます。証券化されるローン債権は、安定した職と高収入を伴う主に一流大卒業生といった低リ
スクの借り手のローンで構成されています。ローン債権は一桁後半の中~高利回りで証券化
され、最も保守的なシナリオでの証券化には劣後債もあります。証券化を後押しするために作
られたローン債権は、ここ数年間、債務不履行や支払延滞はゼロとなっています
24
。信用度
は高く、構造的レバレッジ(必要に応じて財務レバレッジも可能)によるため、利回りは相当魅
力的なものになると当社はみています。
もう一つの注目分野は、政府の学生ローンの対極にある民間学生ローンです。民間学生ロー
ン市場(つまりサリー・メイなどの機関が発行したもの以外)は、学生ローン市場全体の約
10%を占めています。民間学生ローンの条件は、一般的に、政府によるローンと異なり強固
なファンダメンタルズで発行されるため、結果的により良好なクレジットに対する投資パフォー
マンスとなります。政府保証付きローン市場とは異なり、民間ローンでは個別ニーズに応じて
条件が設定されるため、個別案件のクレジット分析がより重要となります。また民間学生ロー
ンは、引受人が引受の決定に用いる信用基準をより厳格に審査するため、連帯保証人も求め
られるのが一般的です。こうした要因が積み重なり、民間の学生ローンの債務不履行比率は
より低い水準となっています。民間の学生ローン市場は全体として規模が小さいため、ストラ
クチャード・ファイナンス市場における大型投資家の投資対象となりにくいことから、価格面か
らも十分に評価されておらず、引き続き機会があるとみています。
24
ウエストサイド・アドバイザーズ
30
考慮すべきリスク
米国の景気減速、競争激化、規制/政策変更といったリスク要因には注視する必要があると
考えます。

経済 : 雇用は学生ローンのパフォーマンスとの間に高い相関性があります。米国経済
は現時点では比較的好調ですが、世界経済の弱含みの波及により景気減速や景気後
退への逆戻りが起これば、学生ローン市場にも悪影響が及ぶおそれがあります。

競争: 大学院生学生ローンの証券化市場への参入が増加すれば、リターンが低下す
るほか、供給を拡大するために信用基準を下げるため、証券化されるローン債権の質が
低下するおそれがあります。

政策: いずれの戦略にとっても撹乱要因となり、正確に予想することも非常に難しいもの
の、所得ベースでの返還計画の前進、または破産の際の学生ローン返済免除の改正と
いった政策変更は、引き続きリスクとなります。
結論
否定的な報道や一部芳しくないクレジット・パフォーマンスが出てはいるものの、上述のローン
市場には十分な投資機会があると当社はみています。民間学生ローンは、投資機会は中盤
から後盤にありそうですが、依然として投資機会が存在します。他方、大学院生ローンは有望
な投資セグメントとして新たに出てきた分野であり、当面は成果をもたらす可能性があります。
31
32
ご注意
本資料は、当社グループが作成した資料をもとに当社が翻訳・作成した資料であり、必ずしも原文の内容と一致するものではなく、また、その正確性、完全性及
び信頼性を保証するものではありません。当資料の複写、転載及び第三者への提供については、当社の同意なくこれを行うことは固くお断りいたします。
当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、法的、税・会計上または投資のご提案のためのものではなく、また個別の有価証券等の勧誘等を目的と
するものでもありません。当社グループ、その従業員及び当社グループが投資助言を提供する顧客は当資料にて言及されるセクターに属する企業の有価証券
等を保有する場合があります。当資料は、作成時点において信頼できると思われる情報に基づき作成されていますが、かかる情報(第三者からの情報を含む)
のいずれについてもその公正性、正確性、信頼性、完全性および妥当性について、明示または黙示を問わず表明または保証するものではありません。当資料
に含まれる意見や見通しについては作成時点のものであり、今後予告なく変更されることがあります。当資料中の見通しや意見については、必ずしもニューバー
ガー・バーマンとしての統一見解ではない場合があることにご注意ください。当資料に記載する商品または運用戦略が、すべての投資家に適合するものではあ
りません。当資料は予想、見込み、見通し、その他の「将来予測に関する記述(Forward-looking statements)」を含みます。様々な要因により、実際に生起する
事象は当資料に記載されているものと大幅に異なる場合があります。投資はリスクを伴い、元本の毀損を伴います。過去の実績は将来の運用成果を保証また
は示唆するものではありません。
手数料等について
投資一任契約に基づく運用報酬:投資一任契約に基づく運用報酬として、受託資産の時価総額に対して年率 1.00%(税抜き)を上限とする金額が徴収され、こ
れとは別に成功報酬(ない場合もあります)、受託銀行に対する報酬等の費用が徴収されます。また、当資料において記載される戦略は、投資家の利益に資す
ると当社が判断した場合には、同様の戦略を有するファンドを組み入れることを通じて提供する場合があります。その場合、組入れを行うファンドにおいて以下
のような報酬等が別途徴収されます。
運用報酬料率:運用報酬料率は、運用戦略、運用資産額、投資スキーム等に基づく商品の内容及び成功報酬の徴収の有無等により、商品毎又は契約毎に異
なりますが、一般的な運用報酬料率の上限は、運用資産の時価評価額に対して 2.0%となります。ただし、その他の諸条件を踏まえ、個別案件や投資金額毎に
異なりますので、詳細を表示することはできません。
成功報酬料率:成功報酬の徴収の有無及びその料率は、運用戦略、運用資産額、投資スキーム等に基づく商品の内容等により、商品毎又は契約毎に異なりま
すが、一般的な成功報酬料率の上限は運用資産の超過収益に対して 20%となります。ただし、その他の諸条件を踏まえ、個別案件毎に異なりますので、詳細
を表示することはできません。
その他費用等:商品の種類、スキーム等により各種費用(経費、運営費用、ファイナンス・コスト、組成費用、取引手数料等)が発生しますが、これら諸費用は運
用状況及び資産規模等により異なりますので、詳細を表示することはできません。
上記の投資一任契約及び組入れファンドに関して徴収される報酬及び諸費用の合計は、戦略、運用状況及び資産規模等により異なりますので、その総額や上
限等について、あらかじめ表示することはできません。
投資リスクについて
投資一任契約に基づき投資を行う投資運用商品には、投資信託、株式、債券、為替、先物、デリバティブ等、各種金融資産が含まれますので、各市場等におけ
る相場その他の指標に係る変動等の影響により投資価値が下落し、損失を被ることがあります。外貨建資産への投資は、為替変動により損失を被るリスクを伴
います。投資運用商品は、投資元本が保証されているものではなく、投資元本を割り込むことがあります。投資信託、外国籍リミテッド・パートナーシップ等のファ
ンドに投資する場合、投資するファンドの種類により投資リスクは異なりますが、主なリスクとして、価格変動リスク、流動性リスク、信用リスク、為替リスク、金利
リスク、デリバティブ・リスクなどがあります。また、受託資産の運用に関してデリバティブ取引等を利用する場合は、受託資産から委託証拠金その他の保証金
(以下総称して「証拠金」と言います)を預託する場合がありますが、当該取引等にかかる想定元本の額が証拠金の額を上回る可能性があるとともに、当該取引
の対象となる有価証券の価格、利率又は参照する指標等の変動による損失の額が証拠金の額を上回ることにより、証拠金を上回る損失が生じ結果として元本
を上回る損失を蒙る可能性があります。なお、デリバティブ取引等の証拠金に対する比率は、取引毎の具体的な条件に応じて決定されるため、予め算出するこ
とはできません。
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債券、バンクローン、モーゲージ証券、メザニン債等への投資について: これらの商品の価値は金利、市場環境、信用状況その他の要因により変動します。償
還前に債券を売却した場合、売却による利益又は損失が発生する場合があり、また利子についても何らかの課税の対象となる場合があります。ハイ・イールド
債券(「ジャンク債」)、バンクローン(優先担保及び劣後担保のものを含む)、非政府系モーゲージ証券、メザニン債等に対する投資は一般的に投機的な投資で
あり、投資適格債に対する投資と比較してより大きなデフォルトリスクを伴います。こうした商品の市場価格は、金利、市場環境、信用状況、政治、通貨の切り下
げその他の要因により変動する場合があり、投資適格債と比較してよりその変動幅が大きくなります。従って、これらの商品に対する投資はすべての投資家に
適合するものではなく、投資に当たっては潜在的なリスク及びリターンの特性を十分ご理解のうえご検討ください。
株式への投資について: 大型株への投資の場合であっても、株式投資に関するあらゆるリスクを伴います。かかるリスクには、全般的な市場或いは経済状況
により株式価値が毀損されるリスクを含みます。中・小型株式への投資の場合は、財務及びその他のリスクに関し、大型株と比較してより影響を受けやすい傾
向にあり、また、取引量が大型株と比較して限定的であること等から、市場価格の変動はより大きくなる傾向があります。
外国有価証券及び外貨建て有価証券への投資について: これらの商品に対する投資については、為替の変動や政治経済の情勢といったリスクを伴い、投資
資産の価値及び配当が影響を受けることがあり、投資元本を割り込む可能性もあります。また、新興国への投資については、先進国への投資に比べて市場規
模や流動性等の観点から価格変動が大きくなる傾向があるなど、より大きな損失を被る場合があります。加えて、新興国における経済は一般的に規制が十分で
なく、貿易障壁、為替管理、保護主義的政策及び政治的・社会的不安定性により悪影響を受ける可能性があります。流動性が低い場合や信頼できる情報が利
用できない場合には変動性が高くなるリスクがあります。
ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド等のオルタナティブ投資について: ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド等のオルタナティブ投資は
投機的な投資であり、高いリスクを伴います。ファンドは、レバレッジの高いキャピタル・ストラクチャー商品への投資を通じて、レバレッジをかけることがあります
(レバレッジは高い金利リスクを伴い、金利上昇や景気後退、原資産の減少といった要因に対し、投資資産のエクスポージャーが増加することがあります)。これ
らのリスク要因の影響を受けて、ファンドの運用実績は大きく変動することがあり、結果的に投資元本の全部又は大部分を失うことがあります。
プライベート・エクイティ・ファンドの組入れを行う場合について: プライベート・エクイティ・ファンドの場合、一旦ファンドへの出資を行うと中途解約は原則として
認められず、またファンドの持分には通常譲渡制限が付されているため流通市場はなく、今後も整備される見込みはありません。従って、中途換金は非常に困
難であり、流動性は殆ど存在しません。また、ファンドで徴収される報酬及び費用の発生により、費用控除後の実現利回りが大きく低下することがあります。更に、
これらの報酬及び費用の発生によって、投資家に返還される金額が拠出総額を下回る可能性があります。なお、当資料に記載する戦略をファンドの組入れを通
じて提供する場合、当該ファンドに係る条件等の詳細については今後関係者の承認を経て正式決定される場合があり、その場合当資料中に記載された内容が
予告なく変更され、またかかる状況において新たなリスクが発生することもあります。
適合性原則について
当資料でご紹介する戦略がすべての投資家に適合することを保証するものではありません。当社は、金融商品取引法等の法令・諸規則等に従い、投資家の知
識、投資経験、財産の状況、投資一任契約を締結する目的その他の個別の事情等を踏まえたうえで、個別戦略の正式なご提案をさせていただくこととしており
ます。なお、投資家の知識、投資経験、財産の状況、投資一任契約を締結する目的その他の個別の事情等を確認した結果、当社の判断により一定の戦略のご
提案を行わない場合や、投資家からの戦略提案のご要望に応じることができない場合があることをご了承ください。また、かかる場合に代替的な戦略のご提案
をさせていただく場合もございますが、常にそのようなご提案を行うことを保証するものではありません。また、正式な戦略のご提案以降であっても、投資家の財
産の状況や規制環境の変化、その他個別の事情等に照らして当社が必要と判断する場合には、当初の提案を随時見直す可能性があります。厚生年金基金で
ある投資家に対するご提案に当たっては、運用指針(及び、場合によっては運用の基本方針)等を確認させていただく他、必要に応じて情報を提供していただく
こともあわせてご了承ください。
ニューバーガー・バーマン株式会社
Neuberger Berman East Asia Limited
〒100-6511 東京都千代田区丸の内一丁目 5 番 1 号
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2094 号
加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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