VOL. 58 生活者の貯蓄意識と消費意識 2013.6 生活を支える消費 未来につながる消費 為替、株価の急変動…、安倍政権による経済政策 「アベノミクス」 は、 は、 「旅行に行く」 「趣味や娯楽のためにお金を使いたいと思う」 など、 デフレ脱却の期待を高めただけでなく、生活者の暮らしに様々な変 今の暮らしを楽しむことを強く意識している。今後予定している消費 化をもたらしている。そのような状況のなか、今年 5 月に DNP が実 の内容としても同様に、 「自己投資を重視していない生活者」は 施した調査では、生活者の約8割が「節約」を重視しており、生活者 「ローンの返済」や 「食費の切り詰め」 など、日々の暮らしを回すことを の共通意識となっていることが分かった(図 1) 。また、自分の楽しみ 優先しているが、 「自己投資を重視している生活者」 は 「切り詰めなが や目標のための支出「自己 らも、楽しみのために使いたい」、 「趣味と貯蓄を両立させたい」 など、 図 1 暮らしに対する意識 投資」をしていないという 重視している 重視していない どちらかと言えば重視している 行っていない 生活者が約 2 割を超える どちらかと言えば重視していない 一方、そのような支出を重 0(%) 40 60 80 が捉えられている (裏面参照) 。 100 無駄なお金を使わない 視する生 活 者も約 4 割。 年代や年収とは関係なく 20 節約 29. 3 「未来の暮らしにつながる消費」が、消費気分を創る 13 . 2 2 .37.6 51. 2 「今を豊かに暮らしたい」 「将来に備え、切り詰める努力をする」 などと 将来のために貯金をしている 捉えられた。消費への考え 貯蓄 17. 5 49.7 いった意識を、昨年と今年実施した 2 回の調査で比較すると、いずれ 19.4 4 .09.4 や行動が揺れ動くなか、今 自分の楽しみや目標のためにお金を使う 号では、生活者の消費の 自己投資 8.7 今を探る。 DNP「お金に関する調査」2013 年 5 月 32.8 将来への備えの大切さを意識しながらも、今の暮らしを楽しむ傾向 も上昇傾向となり、生活者の家計や消費に対する意識が今年に入っ 24.9 11.0 て、敏感になっていることがうかがわれる(図 3) 。ただし、自己投資を 22.6 重視する生活者は、自分や子供の教育費のほか旅行などのレジャー への支出について意識的に 「お 生活を支える消費、今を楽しむ消費 金をかける」という消費気分を 図 3 将来に対する意識の変化 35 (% ) 30 生活者の関心が高い今後の消費を見ると、節約や貯蓄など今の「生 持っていることも分かっている。 活を支える」内容と、趣味や旅行など 「今を楽しむ」ための内容という それは、単に今の暮らしを享楽 20 二つの側面を意識して暮らす生活者の姿が捉えられた(図 2) 。それ 的に楽しんでいるわけではな 10 らのバランスは日常のお金の使い方によって異なる。自分のための支 い。彼らの貯蓄意識が高いこと 0 図 2 興味・関心のある今後の消費について 出である「自己投資 も分かっており、消費の先にあ 50 を重 視していない る未来の暮らしをイメージしな 生活者」では、 「無 がら積極的な消費をするとい 駄 遣いをなくし貯 う、 メリハリを持っているのだ。 60 80 100 できれば将来のために 備えたいが、今は 経済的に余裕がない 40 保険や貯蓄など、 お金に 関わる内容について、 家族や親戚とよく 話題にするほうだ 30 5 将来のために 備えるよりも、 今を豊かに暮らしたい 40 15 万が一の場合や 将来に備え、生活を 切り詰めるなどの 努力をしている 全体 自己投資(重視) 自己投資(やや重視) 自己投資(やや重視せず) 0 20 自己投資(重視せず) 自己投資しない (%) 25 2012 年 7 月(n=5466) 2013 年 5 月(n=2388) DNP「生命保険に関する自主調査」2012 年 7 月 DNP「お金に関する調査」2013 年 5 月 0 買い溜めをする」な を意識せざるを得ない状況が続いている。来年計画されている消費 ど今の生活を支え 増税を控え、 生活者の消費気分は、 ますます環境変化にさらされてい 15 る消費を中心に据 10 く。今後、商品やサービスの取捨選択が進むこ とも想定されるなか、 える傾向が見られ 生活者の心をつかみ続けるためにも商品やサービスの 未来の暮ら るが、 「自己投資を しにつながる価値 を伝えることで、生活者の消費気分を刺激するこ 重 視する生 活 者 」 とが求められていくのだ。 家電製品の買い替えや 購入を予定している 車の購入や買い替えを 予定している 海外旅行に行く予定 趣味や娯楽のために お金を使いたいと思う 国内旅行に行く予定 自分 暮らし 今を楽しむ DNP「お金に関する調査」2013 年 5 月 無駄遣いをなくし 貯金を増やす予定 よる加工食品の値上げなど、生活者にと30っては、生活防衛型の消費 日持ちの良い日用品の 買い溜めをする予定 ちの良い日用品の 契約している保険を 見直そうと思う 35 輸入原材料の価格上昇に アップルによるタブレット端末の値上げや、 住宅のリフォームやリノ ベーションをしようと思う 金を増やす」 「日持 10 20 日常 生活を支える 50 50 40 40 25 20 5 0 暮らしに対する生活者の意識 今後予定している消費について、 計画内容を尋ねたところ、 自己投資に対する意識の違いによって、 異なる消費の方向性が見てとれた。 「自己投資を重視する生活者」 からは旅行や趣味を中心に今後の予定が多くあげられたが、 「重視していない生活者」 は、 生活必需品の買い替えや買いだめなど、 日々の生活に関わる内容が多くあげられた。 仕事 • 今を倹約してつまらなく暮ら 良い すより、贅沢はしないで元気 に楽しく快適に暮らしたい (女性 60 代 専業主婦) • 趣味と貯蓄を両立させる (男性50代 自由業、 自営業) • よき父でいられるよう内面外 面両方投資していきたい (男性 20 代 会社員) 家計 自分の楽しみや 目標のために お金を使うことを重視 控える 自己投資しない 使う 行う 年 夏 運用 エアコン 軽自動車 買い換える 40 29.0 ローン ● 今後の暮らし向きについて、 どのようにお考えですか? 暮らし向きが「変わらない」 と答えた人は過半数を占め、 「良くなる」 と答えた人 は 16% にとどまった。 良くなると思う あまり影響がない 60 悪くなると思う 80 29.2 保険 DNP「お金に関する調査」2013 年 5 月 (エルネ) を対象に 2013 年 5 月に調査を実施 (対象 20 ∼ 60 代男女、 有効回答数 2,388 件) ※ DNP が保有する生活者パネル 「アベノミクス」 が暮らしに影響があると答えたのは 5 割に満たないが、 「消費増 税」 については 8 割に迫る。 やや影響がある 増やす • 特に具体的な計画はない (女性 40 代 専業主婦) • 安いものを大量購入ストック (女性 30 代 専業主婦) • できるだけ節約している (男性30代 自由業、 自営業) 自己投資やや重視せず ●ご自身の生活にどの程度影響があると感じていますか? どちらでもない・わからない 安い 未定 パソコン 自己投資重視せず 節約 商品 株 影響がない 自己投資やや重視 温泉 外壁 影響がある 沖縄 計画はない 購入 予定 上がる フリーアンサーの内容を テキストマイニングで 見える化した • 必要な日用品等はできるだ 16.2 家 旅行 今後予定 している消費 光熱費 無駄遣い アベノミクス かける 楽しみ 消費 できるだけ 20 海外 自己投資重視 予定はない 回す 行く 自宅 日用品 ために使いたい (女性 50 代 未婚) • 年に一 度、ご褒 美 的に海 外 旅行に行く (女性 30 代 会社員) • 自分のためにお金を使いたい (女性 50 代 専業主婦) 東北 資格 食費 0(%) • 切り詰めながらも、楽しみの 続ける 楽しむ 趣味 少ない け特売日に買う (女性 40 代 専業主婦) • 食費などを切り詰めて貯蓄に 回したい (男性 30 代 未婚) • 車検を通さず維持費の安い 軽自動車に買い替える予定 (男性 20 代 未婚) 車 14.0 10.9 2.9 100 11.5 やや悪くなると思う 19.4 やや良くなると思う 12.9 今後の 暮らし向き ( %) 消費増税 44.2 13.2 2.85.9 33.8 53.9 あまり変わらないと思う DNP「お金に関する調査」2013 年 5 月 生活者とのコミュニケーションチャネルを探る 「メディアバリュー研究」 http://www.dnp.co.jp/mediavalue DNP「お金に関する調査」2013 年 5 月 • DNP は 2001 年より、生活者の情報コミュニケーションや購買行動の変化を捉える生活者調査研究 に取り組んでいます。 • 生活者の購買行動把握から、商品(ブランド)を通した、企業と生活者のコミュニケーション戦略まで 幅広くサポートしておりますので、 お気軽にご相談ください。 C&I事業部 マーケティング開発室 〒141-8001 東京都品川区西五反田3-5-20 URL http://www.dnp.co.jp/cio/ いかなる形式でも本紙の一部または全部の複製および無断転載をお断り致します。 当レポートは、 メディアバリュー研究が実施する調査を基にしています。 © 大日本印刷株式会社 2013 printed in japan 0 20 40 60 80 100 13.6
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