第7章 研究活動と研究体制の整備

第7章
研究活動と研究体制の整備
1.研究活動
(1) 研究活動
論文等研究成果の発表状況
【現状説明】
文学部の日本語日本文学科では、日本文学会の機関誌『国語国文学誌』、学科の機関誌『日
本文学』、大学の紀要『論集』を始めとして、外部に発表されたものも含め、最近5年間で、
著書2、文献目録4(私家版)の外、共著・論文等1人当たり年平均約 1.4 篇を発表している。
英米言語文化学科では、学科の機関誌『英語英米文学研究』、『論集』を中心に、最近5年間
で著書6の外、共著・論文等年平均約 0.9 篇である。発表先は、全国誌、海外の専門誌に及
んでいる。また、学部・大学院担当教員共同の研究書刊行も2冊ある。人間・社会文化学科
では、『人間・社会文化研究』(一般教育紀要)、『論集』を中心に、最近5年間で著書3の外、
共著・論文等年平均約 0.5 篇である。その他、演奏会指揮もある。発表先は、上記2誌を始
めとして全国誌、又その支部の機関誌等である。
生活科学部の生活文化学科では、『生活科学部紀要』、『論集』を始めとして、最近5年間で
著著4の外、共著・論文(共同執筆を含む)・翻訳等年平均約 0.9 篇を発表している。生活科
学科では、上記2誌を始めとして、最近5年間で著書3の外、共著・論文(共同執筆を含む)
等年平均約 2.1 篇である。
大学院言語文化研究科には、上記紀要・機関誌の外、『言語文化論叢』がある。日本言語文
化専攻では、著書2の外、共著・論文等1人当たり年平均約 1.4 篇を発表している。また、
英米言語文化専攻では、著書5の外、共著・論文等年平均約 0.8 篇である。人間生活学研究
科では、上記紀要の外、全国誌等への発表が多い。生活文化学専攻では、著書4の外、共著・
論文等年平均約 0.9 篇である。生活科学専攻では、著書3の外、共著・論文等年平均約 2.6
篇である。発表先は、全国誌のみならず外国の専門誌に及んでいる。
【自己点検・評価及び問題点】
各学科・専攻とも1人当たり年平均約 0.5∼2.6 篇発表されていて、全体的には活発に行わ
れていると言えるが、一部に個人又は学科による差が見られる。研究活動については、学院
全体の『教育・研究活動に関する年次報告書』、『学院報』の雑誌目次、『論集』の「総目次」
HP 等によって公表されている。しかし、研究成果の発表状況自体を検証するシステムは充分
とは言えない。
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【将来の改善・改革に向けた方策】
今後も研究成果の発表をより活発にするとともに、その質的向上をはかることが求められ
る。各雑誌、紀要への論文掲載にあたっては審査が厳正になされること、またレフリー制の
ある学術雑誌への投稿もより積極的になされることが必要である。研究活動の検証システム
としては、自己点検・評価委員会の下の研究評価小委員会が行っていくのが妥当である。
国内外の学会での活動状況
【現状説明】
文学部の日本語日本文学科では、学会における口頭発表が、最近5年間で1人当たり年
平均約 0.1 回であり、数名によって行われている。英米言語文化学科では、1人当たり年平
均約 0.5 回であり、全国学会・国際学会での発表も多く、比較的活発である。人間・社会文
化学科では、共同発表を含めて1人当たり年平均約 0.2 回であり、数名に集中している。
生活科学部の生活文化学科では、共同発表を含めて5年間で1人当たり年平均約 0.5 回で
あり、全国学会での発表も多く、比較的活発である。学会役員では、日本ビジネス実務学会
理事、地中海学会常任委員等に就いている。生活科学科では、共同発表も含めて1人当たり
年平均約 1.4 回であり、全国学会・国際学会での発表も多く、活発である。
上述のうち、大学院言語文化研究科の日本言語文化専攻では、口頭発表が少ない。英米言
語文化専攻では、1人当たり年平均約 0.4 回である。学会役員では、日本英文学会評議員、
日本ヴァージニア・ウルフ協会会長、日本中世英語英文学会評議員、日本アメリカ学会評議
員等に就いている。
人間生活学研究科の生活文化学専攻では、共同発表を含めて1人当たり年平均約 0.5 回行
っている。学会役員では、経済学教育学会幹事、国際服飾学会理事等に就いている。また、
生活科学専攻では、1人当たり年平均約 1.3 回である。学会役員では、主なものを挙げると、
日本調理科学学会中国・四国支部役員、日本インテリア学会中四国支部長、国際肥満学会理
事、生理人類学会評議員、日本生理学会常任理事等に就いている。
【自己点検・評価及び問題点】
学会での口頭発表は、学部・大学院ともに全国学会、国際学会も含め、総じて活発に行わ
れているが、論文等の発表に比して、より個人及び学科・専攻によって偏りがある。学会役
員は、特任教授が就任している場合が多く、要職に就いている。学会活動についても、論文
等の発表同様、『教育・研究活動に関する年次報告書』等で報告されているが、学会活動につ
いての検証自体は充分に行われているとは言えない。
【将来の改善・改革に向けた方策】
学会活動も、論文等の発表と同様に、各学科・教員にわたって一層活発に行われなければ
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ならない。また、各学科・専攻の事情はあるが、全国規模の学会での発表をめざすことも課
題である。学会活動を検証するシステムとして、論文等の発表状況と同様に、研究評価小委
員会が行っていくことが妥当である。
(2)教育研究組織単位間の研究上の連携
附置研究所とこれを設置する大学・大学院との関係
【現状説明】
大学学則(第 49 条)・大学院学則(第 44 条 2)に基づいて広島女学院大学総合研究所が置か
れている。その目的は、「広く人文・社会・自然の諸領域にわたる専門の学術理論及び応用に
関する総合的な研究を行い、学術・文化の創造と発展に貢献すると共に地域社会の進展に寄
与すること」(総合研究所規程第2条)である。そして、「本学の専任教員は、すべて研究所員
となる」と定められている(同第7条)。
総合研究所の事業の一つとして、本学における学術研究の奨励・促進に寄与するため、学
術研究助成の制度によって、毎年、学術研究助成費を交付している。その種目には、若手研
究、萌芽研究、基盤研究、学術図書出版助成の4種類がある。また、同じく事業の一つとし
て、研究発表及び研究報告書の編集・刊行があり、『広島女学院大学論集』(年1回、現在第
52 集まで)や各学科による公開セミナーの論集を刊行している。
【点検・評価及び問題点】
総合研究所は、教員の個人又はグループで行う研究を種々の面から奨励・促進する役割を
果たしている。また、『論集』の刊行によって、専任教員の多岐にわたる研究成果の公表を支
援している。総合研究所自体としては、大学院博士後期課程を修了した特別専任研究員が総
合研究所のあり方等の調査研究を行っている。平成5(1993)年度に総合研究所が設置されて
以来、大学の中での役割は重要さを増している。
総合研究所が大学・大学院の研究を側面から支援し、教員の研究活動を進展させている役
割は大きいものがある。しかし、研究所の事業として「理論的研究・実態調査研究及び実験
研究」を掲げ(規程第2条)、現在は特別専任研究員が調査研究を行っているが、研究所と大
学・大学院とが研究上の連携をとっているとは言えない。研究員には専任研究員、兼任研究
員、客員研究員があるが、現在は置かれていない。ただ、本学教員が研究所員でもあること
から、本学のあり方として大学と一体となって研究を進めているというのが現状である。
総合研究所の体制は、総合研究所長、事務課長がそれぞれ兼任であり、専任は事務課長代
理1名である。総合研究所委員会は、各学科主任によって構成されていて専門の委員会では
ないため、審議が充分に尽くせない面がある。また、総合研究所の位置が、所員との接点が
持ちにくい場所にあるため事務が進めにくいという事情もある。
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【将来の改善・改革に向けた方策】
総合研究所がそれ自体研究機関としての機能を果たし、特定の研究課題のもとに共同研究
を行うなど大学・大学院と連携して研究を進めていくことができるかどうかについては、そ
の他の人的・物的な問題も含めて総合研究所委員会及び大学評議会で検討していくべき課題
である。現在できることとして、平成 16(2004)年度から「広島女学院大学総合研究所叢書」
を刊行することになっている。
大学共同利用機関、学内共同利用施設等とこれが置かれる大学・大学院との関係
【現状説明】
ここでは学内共同利用施設について述べる。人間生活学研究科の施設は、基礎データ調書
によって示す(人間生活学研究科の施設・設備のデータ調書参照)。
同研究科生活科学専攻の実験用施設として使用しているものは以下の通りである。
① 共同実験室
② 機器分析室
③ 動物飼育室
④ バイオ実験室
いずれも学部と共同利用しているが、人間生活学研究科が主として使用している施設であ
る。設備については基礎データ調書に記載した通りであるが、基本的な実験に必要な設備は
整えられており、平成5(1993)年4月に、短期大学家政科から改組転換により生活科学部に
した際と、同 11(1999)年4月に人間生活学研究科が開設された際、文部科学省(現)と厚生労
働省(現)の審査を受けている。
【点検・評価及び問題点】
人間生活学研究科では、基本的な実験に必要な施設・設備は整っていると思われる。しか
し、徹底した少人数制教育であり、研究についても研究指導教員による個人指導を基本にし
ている。そして、多様な研究課題に対応するため、また学術研究の進歩に対応するためには、
常に新しい機器・装置の更新が必要となる。このことには大きな財政上の負担を伴う。
【将来の改善・改革に向けた方策】
人間生活学研究科は、地域社会から学校・企業や社会活動等、多様な場面で活躍できる、
より高い専門知識と能力を持った人材の育成が求められている。また、昼は就労し、夜間に
人間生活学研究科で学ぶ学生達にとっては、職場における様々な問題点の研究の場でもある。
より高度な産学共同研究の場として重要な役割を担うためにも、充分な施設・設備を整え
た研究環境作りのための努力が必要と考える。
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2.研究体制の整備
(1) 経常的な研究条件の整備
個人研究費、研究旅費の額の適切性
【現状説明】
個人研究費の年額は、全教員一律 55 万円である(消費税はその枠外であるが、55 万円に消
費税を加算した 57 万 5 千円が上限ではなく、消費税加算の不要な支出における上限が 55 万
円)。
個人研究費は、本学専任教員の学術研究を奨めることを目的とし、各人の研究に必要な図
書及び材料の購入費、実験費、調査費、文献複写費、学会出席旅費などのために用いること
になっている(研究費に関する内規)。費目による制限はないが、要望事項として、研究旅費
に 10 万円以上、消耗図書・図書費に 10 万円以上支出することになっている。私的な支出と
見なされるものや機器、備品、計器、その他には使用することができない。
研究旅費は、上記のように年額 10 万円以上の使用によって、学会活動などの促進と交流を
はかることとしている。旅費は、のぞみ利用を基本とし、また旅程が2日以上の場合の食卓
料及び自家用車を使用せざるを得ない場合の陸路旅行料金が設定されている。
国外の学会等出席の場合は、所定の手続き・承認を得て、この研究旅費の支給を受けるこ
とができる。
【点検・評価及び問題点】
個人研究費が、研究旅費を含めてであるが、年額 55 万円であるのは近年の経済情勢からす
れば少ないとは言えない額と考えられる。また、使用にあたっては、要望事項はあるが、費
目の立て方の上で裁量が効くこと、また、研究旅費についても、回数の制限や上限がないこ
となど、個人に合った研究活動を進めやすいと思われる。
個人研究費は、教員の研究活動を大きく支えているが、6年間据え置きであり、平成 16
(2004)年度も継続されることになっているので、実質的には目減りしている。また、学部と
大学院は、担当者が区別されているわけではないが、同額であることは、研究の比重からし
て検討課題である。使途については、機器、備品、計器等は、個人研究費では購入できない
ので教具・校具予算として前年度の予算申請になるが、予算が抑制されていることもあり、
一概に不可とするには検討の余地がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
個人研究費は、「教育研究のため」とされており、個人の研究だけでなく教育を支えている
ものでもある。その額については、財政面が厳しくなっているが、教育研究の質的向上をは
かるものとして、大学評議会で実質的な議論をすることが求められる。その使用条件や必要
書類についても、教育研究の現場に配慮したより柔軟な対応をすることができる態勢を整え
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ていく必要がある。
教員個室等の教員研究室の整備状況
【現状説明】
文学部教員 38 名、生活科学部教員 30 名に全て個人研究室が整備されている。この中、大
学院担当教員は、言語文化研究科 15 名、人間生活学研究科 19 名(言語文化研究科との兼任4
名を含む)である。1室当りの平均面積は、文学部 27.9 ㎡、生活科学部 26.4 ㎡である。個人
研究室は6つの建物に分かれていて、部屋によって若干広さに違いがある。
個人研究室には、通常の設備の外、パソコンによるネットワークの環境も整備され、本学
図書館資料の検索をはじめ、国内外の図書館、国立情報学研究所の情報検索サービス
(NACCIS-IR)・国文学資料館・国立歴史民俗学博物館等へのアクセスも可能である。
その他、共同研究室が生活科学部に1室、大学院言語文化研究科に1室ある。ただし、言
語文化研究科の共同研究室は大学院生が使用している。
【点検・評価及び問題点】
個人研究室は、全教員に整備され、必要な設備もほぼ整っているので、教育研究の場とし
ての機能を果たしていると言える。
個人研究室は、教育研究の連携という面からすれば、学科・専攻によって一箇所に集まっ
ているのが望ましいが、中には分散し、又遠く離れている場合もある。
また、空調設備が全館集中管理方式になっていて、授業期間中、又一定の時間に限定され
た管理がなされている建物があることも検討を要する。特に大学院は昼夜開講制であり、授
業で個人研究室を使用する場合もあるが、授業終了前であっても止まってしまう。特に社会
人がいる場合、定時に授業が始められることは先ずなく、後へずれ込む。授業のない日や休
暇中には申し出によってつけて貰えるようになっているが、不便と言わざるを得ない。
【将来の改善・改革に向けた方策】
個人研究室は、できるだけ学科単位で一箇所に集中するようにしていく必要がある。また、
学生指導の上で、ゼミ室を個人研究室に隣接、又は近接して設置することを考慮しておかな
ければならない。
備品等についても、標準的な範囲に止まらず、電話のダイヤル・イン方式の採用など、教
育研究の場として必要な物は整備していくように見直しが行われるべきである。空調設備な
ど整備が遅れている個人研究室については早急な改善措置が必要である。
教員の側としても、個人研究室が本来の教育研究の場としての機能を充分に果たせるように
しておくべきである。
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教員の研究時間を確保させる方途の適切性
【現状説明】
専任教員は教育並びに学術の研究のため、1週の中、1日を研究日とすることができると
定められている。一方、出校については、原則として週最低4日間となっている。また、週
担当基準時間は、12 時間(6コマ、1コマは 90 分)、副学長は6時間、他の役職者は 10 時間、
また特別専任教員は6時間である。卒業論文・卒業研究の指導は2時間分と見なされている。
学院の研修制度として、国内と国外があり、いずれも短期(6月以内)と長期(1年以内)の
別がある。原則として国内研修の場合は3年以上、国外研修の場合は5年以上勤務した者と
いう条件がある。所定の基準による交通費・滞在費等必要経費の支給が原則であり、上限が、
国内は短期・長期共 70 万円以内、国外は短期 170 万円・長期 300 万円以内となっている。
過去5年間では、フランス文学担当教員が平成 10(1998)年9月からパリ大学で、現代社会
論担当教員が平成 13(2001)年4月から米国ボーリンググリーン州立大学で、英語教育学担当
教員が平成 13(2001)年8月からケンブリッジ大学で、それぞれ1年間の研修を行った。また
生活文化学担当教員が平成 15(2003)年4月から京都大学で研修中である。このうち1名は大
学院担当教員である。
【点検・評価及び問題点】
週1日の研究日は、取りにくい場合もあるが、一般的に利用されている。国内・国外の研
修制度も、代替措置が講じられることを条件として、ほぼ例年利用されている。
研究日は、自己の研究のためだけでなく、授業の準備のためにも必要である。しかし、各
種委員会等校務が入って取れなくなることがある。また、校務の繁忙は年々研究時間を圧迫
している。国内・国外の研修制度は、教員が長期の研修時間を確保する上で極めて有用な制
度である。しかし、学科によっては利用されていないところもある。
一方、授業時間も基準担当時間数を越えて持っている教員が、平成 15(2003)年度の例では、
学部と大学院を併せて、文学部で 38 名中 28 名(半期のみの者6名を含む)、生活科学部では、
30 名中 14 名(半期のみの者3名を含む)ある。増担時間数は、平均1人当たり 4.2∼5.5 時
間であるが、個人によって差がある。卒業論文担当人数も個人によって大きな開きが見られ
る。
大学院言語文化研究科では、15 名のうち 13 名(半期のみの者1名を含む、増担 4.5∼5.3
時間)、人間生活学研究科では、19 名のうち 15 名(両専攻重複1名、増担 6.3∼6.4 時間)が
増担していて、大学院の増担率が高くなっている。
【将来の改善・改革に向けた方策】
研究日が確保できるように委員会等の開催日はできるだけ調整が必要である。また、基準
担当時間を守るため学部のみの担当者が大学院も担当できるように、一層促進していくこと
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も一つの方策である。さらに研修制度がより積極的に利用されるような態勢を作っていくこ
とが求められる。併せてサバティカル制度の実施も検討する時期に来ている。
共同研究費の制度化の状況とその運用の適切性
【現状説明】
共同研究費の制度として特定したものではないが、総合研究所の学術研究助成の中に萌芽
研究と基盤研究があり、いずれも個人又はグループで行うものとされている。萌芽研究は、
芽生え期の研究の奨励を目的とし、研究計画を助成する(申請条件は 37 歳以下、期間は1∼3
年で、単年度 100 万円以下、総額 300 万円以下)。基盤研究は、発展的な研究の奨励を目的と
し、研究計画を助成する(期間は 2∼4 年、単年度 100 万円以下、総額 400 万円以下。1年間
の申請は不可)。
最近5年間では、平成 10(1998)年度の基盤研究として、一般教育教職課程(当時)教員3名
による「女性教師の教職意識と力量形成―広島女学院大学卒業生の現職教師の調査を通して
―」と題する共同研究があった。目的は「本学の教師養成の今後の在り方を考える」ためで
ある。これは平成8(1996)年度当時の種目であった共同研究を引き継ぐものであり、3年に
亘っている。
なお、学術図書出版助成も、個人だけでなく共著の刊行も助成されるので、ここで触れて
おく。英米言語文化学科・大学院英米言語文化専攻の教員による『言語の空間――牛田から
のアプローチ
広島女学院大学開学 50 周年記念論文集』(英宝社・平成 12 年)、大学院担当
教員を交え学科で行われている研究活動であるスタディ・ミーティングの1グループ教員5
名による『談話、「語り」、ナラティブディスコースのすがた』(大阪教育図書・同)、同学科
教員4名による『英語学の道しるべ』(英潮社・同)、同学科教員5名による『英語世界のナ
ビゲーション』(青踏社・平成 15 年)が刊行された。
【点検・評価及び問題点】
共同研究(本学ではグループ研究)自体は、最近5年間で1件のみであり、しかも以前から
の継続によるものである。他大学における共同研究には参加しているが、学内では活発とは
言えない。ただ、学部・大学院にわたる共著の出版は英米言語文化学科で活発に行われてい
る。
萌芽研究・基盤研究の中に含まれるものであるが、共同研究の制度自体は整備されている
と言える。一方、共著の出版という面では学術図書出版助成が活用されている。しかし、共
同研究自体が活発でないのは、教員間の専門をまとめにくいこと、研究時間を確保しにくい
こと等も考えられる。
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【将来の改善・改革に向けた方策】
共同研究は、大学・大学院の特色を発揮する上でも重要である。以前には、広く学科を越
えて語学関係の教員がチームを組み、「高等教育課程における外国語教育の改善」というテー
マで共同研究を行ったことがあった。本学の教育研究の向上をめざすようなものであれば、
共同研究を行いやすいであろう。また、個人の発意だけでなく、学科・専攻が主導していく
ことも方策として考えられる。
(2) 競争的な研究環境創出のための措置
科学研究費補助金及び研究助成財団などへの研究助成金の申請とその採択の状況
【現状説明】
科学研究費補助金への最近5年間の新規申請件数に対する採択状況は以下の通りである。
平成 11(1999)年度:申請件数 11―基盤研究(C)(2)採択 1(130 万円)、奨励研究(A)継続 1(80
万円)、12(2000)年度:同 12―基盤研究(C)(2)採択 1(130 万円)、同継続 1(60 万円)、13(2001)
年度:同9―採択0、基盤研究(C)(2)継続1(80 万円)、14(2002)年度:同 14―基盤研究(C)(2)
採択2(190 万円、130 万円)、萌芽研究採択 1(70 万円)、若手研究(B)採択 1(150 万円)、計採
択4、基盤研究(C)(2)継続2(80 万円、110 万円)。15(2003)年度:同9―若手研究(B)採択2
(120 万円、220 万円)、基盤研究(C)(2)継続4(80 万円、110 万円、120 万円、80 万円)、萌芽
研究継続 1(60 万円)、若手研究(B)継続 1(100 万円)、その他、他大学の共同研究に参加して
科研費を受けている者が2名ある。
なお、本学の学術研究助成のうち若手研究、萌芽研究、基盤研究を申請しようとする者は、
同じ年度の科学研究費補助金のそれぞれ若手研究(B)、萌芽研究、基盤研究(C)一般を申請す
る必要がある。
この中、大学院担当教員は、平成 11(1999)年度∼15(2003)年度は、申請4、5、4、3、
2で、新規採択は基盤研究(C)(2)採択1名(130 万円)である。12(2000)年度∼14(2002)年度
に基盤研究(C)(2)継続1名(3年で 130 万円、80 万円、80 万円)がある。
研究財団からの研究助成は、生活科学科の大学院担当教員1名が(財)ソルトサイエンス研
究財団の平成 12(2000)年度研究助成(100 万円)を受けている。その他、学外者との共同研究
では、平成 15(2003)年度サントリー文化財団研究助成を受けている。
【自己点検・評価及び問題点】
科学研究費補助金の最近5年間の年平均新規採択者数は 1.6 件、平均採択率は約 15%であ
る。平成 14(2002)年度の新規採択件数は4件(他に継続2)、15 年度は2件(他に継続6)であ
り、研究活動が活発化していると見ることができる。科研費への申請は年平均約 11 件と多い
が、これは本学学術研究助成への申請が条件になっていることもあると思われる。
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大学院担当教員では、最近5年間の採択者数は継続も含めて2名と少なく、申請も人間生
活学研究科に偏っている。
また、他の研究財団への研究助成の申請は活発とは言えない状況にある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
科研費補助金及び他の研究助成金への申請は、大学・大学院の研究水準を向上させるため
にも一層推進する必要がある。そのためには研究環境のよりよい構築が必要である。なお、
科研費の申請は本学の学術研究助成と連動しているので、申請を促している面があるが、研
究テーマが必ずしも対応せず、連動させることについては検討を要する。
学内的に確立されているデュアルサポートシステム(基盤(経常)的研究資金と競争的研究資
金で構成される研究費のシステム)の運用の適切性
【現状説明】
基般(経常)的研究資金としては、個人研究費(研究旅費を含む)が年額 55 万円あり、それに
加えて、先述した本学の学術研究助成による研究資金がある。この助成には4種目あり、こ
の場合、学術図書出版助成を除いて、以下の(1)∼(3)が該当する(以下の助成には継続する
30 日程度の国外旅費も当該年度の助成額に含まれる)。
(1)若手研究(個人で 37 歳以下) :期間 2∼3 年、単年度 100 万円以下、総額 300 万円以下。
(2)萌芽研究(個人又はグループ):同 1∼3 年、
同
100 万円以下、
同
300 万円以下。
(3)基盤研究(
同
100 万円以下、
同
400 万円以下。
同上
):同 2∼4 年、
上記研究助成の申請には、当該年度の各種目に対応する科学研究費補助金への申請が必要
である。審査は、学術研究助成審査委員会で行い、大学評議会が決定する。
平成 11(1999)∼15(2003)年度の5年間の年平均採択数は、継続も含めて、若手研究(平成
13 年度までは奨励研究)2.4、萌芽研究(同じく萌芽的研究)3.6、基盤研究 4.0、国外調査研究
(平成 13 年度まで)3.3、国内調査研究(同)1.3 となる。
このうち大学院担当教員は、5年間の年平均採択数が、萌芽研究 1.0、基盤研究 1.6、国外
調査研究 1.7、国内調査研究 0.7 である。
【点検・評価及び問題点】
大学全体では、基盤研究、萌芽研究、国外調査研究、若手研究、国内調査研究の順にこの
制度がよく利用されている。大学院では、国外調査研究、基盤研究、萌芽研究、国内調査研
究の順に利用されている。
義務として、研究終了年度末までに概要報告書を提出し、また、助成年度の次年度末まで
に学術雑誌等へ発表した研究成果を報告しなければならない。義務が遵守されない場合、3
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年間申請ができない。研究成果の公表は、一昨年度のものが大学評議会に出され、『総合研究
所年報』の「研究成果報告一覧」にも掲載される。また前年度の決算報告が評議会・教授会
に出されている。
問題点としては、文系と理系を一律にすると実情に合わない面が見られる。また、科研費
と連動させることで、特殊な研究の位置付けがはっきりしなくなる。その他、申請者に偏り
が見られる、研究成果の報告において適切でないものが含まれる等である。
【将来の改善・改革に向けた方策】
今後も個人研究費に加えて学術研究助成による研究資金によって大学・大学院の研究活動
が進展していくものでなければならない。そのためには真に必要とされている助成のあり方
を研究分野別に分析すること、科研費と連動させることの適否についての検討を要する。ま
た、研究成果については、報告だけで終わるのではなく、審査委員会において、その助成に
よってどれだけの成果が上がったかをより厳密に検証するべきである。
(3) 研究上の成果の公表、発信・受信等
研究論文・研究成果の公表を支援する措置の適切性
【現状説明】
総合研究所では、『論集』(年1回 12 月発行、現在第 52 集まで)及び公開セミナー論集の刊
行とともに、学術研究助成の中に学術図書出版助成があり、単著・共著の刊行を助成する(当
該年度内に刊行するもので 100 万円以下)。この制度によって、平成 11(1999)∼15(2003)年
度の5年間で、単著 12 冊、共著3冊が刊行、単著2冊がその予定である。
学部・学科の紀要、学術雑誌の発行は、学科共同運営費及び大学協力会の援助費から支出
される。日本語日本文学科には、教員・学生のために『国語国文学誌』(日本文学会・12 月
発行)があり、現在第 32 号まで、又教員のために『日本文学』(7月)があり、現在第 12 号ま
で、英米言語文化学科には、『英語英米文学研究』(3 月)があり、現在第 11 号まで、人間・
社会文化学科では、新学科への移行に伴い、『一般教育紀要』第9号(一般教育・教職課程研
究室発行)を引き継ぎ、『人間・社会文化研究』創刊号を平成 15(2003)年3月に発行、生活科
学部には、『生活科学部紀要』(3 月) があり、現在第 10 号まで発行している。
上記のうち大学院担当教員では、出版助成によって、平成 11(1999)年度単著 1、共著で大
学院・学部双方にわたるもの2、12(2000)年度単著1、13(2001)年度単著 1、14(2002)年度
単著 5、共著で大学院・学部双方にわたるもの1が刊行、15(2003)年度単著2がその予定で
あり、多数を占めている。なお、平成 10(1998)年度助成の佐中忠司著『英国電気通信事業成
立史論』(大月書店・1999 年)は、第 15 回電気通信普及財団賞奨励賞、国際公共経済学会尾
上賞を受賞した。言語文化研究科には、院生と教員のための『言語文化論叢』(3月)があり、
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現在、第6号まで発行している。
その他、総合研究所の事業の一つとして、学術研究特別助成の制度(助成額は1件 10 万円
程度)があり、対象は個人又はグループによる「学外の全国的学術雑誌等に発表された論文及
び全国レベルの雑誌で高い評価を受けた論文」である。平成 13(2001)年度に1件、同 14(2002)
年度に3件あり、この中3件は大学院担当教員である。
【点検・評価及び問題点】
学術図書出版助成は、単著・共著併せて年平均 3.6 冊の刊行があり、主として大学院担当
教員によって利用されている。また、大学、学部・学科、研究科等それぞれを母体として論
集・紀要等が発行されている。研究論文・研究成果の公表を支援する態勢は整っていると言
える。大学院生にも発表の場が与えられている。一部に紀要の発行が円滑に行われていない
こと、審査が規定通りに行われているとは言えないこと等の問題がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
論文の質的向上をはかるためには、大学院生に対してだけでなく、教員についてもより厳
密な審査を行うことが重要である。また、大学院生が単独、または教員とともに学会で発表
する場合には旅費の支給ができるようにして、研究活動を促進することが検討課題である。
(4) 倫理面からの研究条件の整備
倫理面から実験・研究の自制が求められている活動・行為に対する学内的規制システムの適
切性
【現状説明】
本学生活科学部には、「広島女学院大学生活科学部倫理委員会規程」に基づいて倫理委員会
が設置されている。倫理委員会は、生活科学部の教員3名により構成され、生活科学部に所
属する教員が人間を直接対象とした研究を行う場合に、ヘルシンキ宣言(2000 年エジンバラ
総会で修正)の趣旨に沿った倫理的配慮を図ることを目的としている。
【点検・評価及び問題点】
本学生活科学部に所属する教員が研究を目的に人間を直接対象とする場合、所定の審査書
類を倫理委員会に提出することになっている。倫理委員会は、倫理的・社会的観点から提出
された研究内容について、研究の対象となる個人の人権の擁護、研究の対象となる者に理解
を求め同意を得る方法、研究によって生ずる個人への不利益及び危険性並びに学術上の貢献
の予測について審査を行っている。
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現状の倫理委員会の問題点として、委員会の構成員に外部の委員が含まれていないことが
ある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
本学では、医学的治療を目的に遺伝子治療や臓器移植等を行うことはないため、現状の倫
理委員会は外部の委員を含めた大規模な構成になっていないが、将来的には必要に応じて研
究内容が適切に審査および評価されるよう改善していきたいと考えている。
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