【交通事故】 ◇脳外傷による高次脳機能障害・その②◆ 交通事故にあった後,被害者の方が,周囲から「人が変わったようになってしまった」 といわれることが,稀にあります。 このような場合は,「脳外傷による高次脳機能障害」と呼ばれる,交通事故による特殊 な後遺症の影響の可能性があります。 今回は,弁護士の立場から,この高次脳機能障害という問題を取り上げてみます。 なお,この問題は,性質上,医師による判断が必須です。実際に,高次脳機能障害の 可能性が疑われる方は,専門医を受診して,慎重な検査を経て判断をしてもらうようお すすめします。 3 高次脳機能障害にあたるかどうかの判断基準 さて,その①で述べたとおり,交通事故の後に,知的機能の低下や人格変化など, 高次脳機能障害を疑わせる異常があらわれたとしても,その症状の原因が,交通事故 とは別にある可能性も考えられるわけです。 では,どのような場合に,交通事故が原因の,「脳外傷による高次脳機能障害」であ る,と判断されるのでしょうか? 自賠責保険の後遺障害等級認定手続の認定基準では, 「脳外傷による高次脳機能障害」 にあたるかどうかの判断について,いくつかの要素が列挙されており,参考になりま す。 (1)事故の後に,意識喪失(意識障害)があったかどうか,またその程度 脳外傷による高次脳機能障害は,一般に,意識障害(意識喪失や意識レベルの低 下)を伴うような頭部外傷の後に起こりやすいとされています。意識障害の時期は, 事故直後の場合が多いですが,必ずしも事故直後には限りません。 意識障害がどの程度深刻だったか(刺激に反応して覚醒するか,など),意識状態 の検査結果が非常に重要とされます。 z[б惨井类弹H陌@[禁队j贫Q ̄б趁妇SbIzUа朽Dlб醛笋淡窥苹衡 の意識障害が6時間以上続くようなケースでは,永続的な高次脳機能障害が残りや すいとされています。 (2)画像検査の結果から,何らかの特定の異常が確認できるか(画像所見の有無) 頭部への外傷によって,脳に何らかの損傷が生じた可能性を裏付ける検査結果が ある場合には,脳の損傷が,知的機能の低下や人格変化の原因になっていると疑う 事情の1つになります。 -1- ① 急性期の出血等の有無 急性期(治療開始後の,症状が流動的な時期)に撮影されたCTやMRIなど の画像で,脳内の出血が確認されるような場合には,脳自体に外的な損傷がある と疑われる,とされています。 ただ,画像からはこのような異常が見られない場合に,そのことだけで,高次 脳機能障害の可能性を否定できるわけではない,との指摘もされています。 ② 脳室拡大・脳萎縮の有無 事故後に,脳に外的な損傷が生じたことが疑われるような変化,脳室拡大・脳 萎縮などの変化が生じたかどうかも,重要な判断要素とされています。 ただ,画像から異常が見られない場合に,そのことだけで,高次脳機能障害の 可能性を否定できるわけではない,との指摘があることは,同様です。 (3)因果関係の判定(他の疾病との識別) 高次脳機能障害の症状は,他の疾病によっても起こり得るので,症状の発生時期 や推移を確認し,症状の原因を判定する必要がある,と指摘されています。 高次脳機能障害の症状は,典型的な場合には,頭部への外傷をきっかけとして症 莉H尸汉Sб近腻g棺悍SfHě贫儿队搅牡Uīбd@ōíb@zUа 逆に,頭部外傷がなかったり,頭部外傷の後いったん通常の生活に戻り,数ヶ月 以上が経ってから症状が発現し,次第に悪くなっていったような場合には,外傷と は関連がない別の疾病が発症した可能性が高い,といわれています。 また,画像検査で異常が見られない場合には,そのことも,他の疾病による症状 である可能性を支持する,といわれています。 さて,以上から,この問題が,性質上,専門医による慎重な検査,判断が必須であ ることは,おわかりいただけるのではないかと思います。 しかし,そもそも,「「脳外傷による高次脳機能障害」の疑いがある」という前提で 専門医に受診してみなければ,判断の入り口にも辿り着けないわけです。 さて,今回,自賠責保険の後遺障害等級認定手続に言及しました。次回は,高次脳 機能障害の疑いがある場合に,どのような手続で判断がなされるのかについて,触れ ることにしたいと思います。 (注)本コラムは,個別の事案についての結論を保証するものではありませんので,具 体的な事案について疑問がある場合には必ず専門家にお尋ねください。 ㄨ┲┮┲ê┪┪┮┫ 急撮害踩往小窖链谴偏┰┫┯ê┫ 弁護士法人いまり法律事務所 弁護士 圷悠樹【文責】 -2- -3-
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