「競技場」という市場 ~より速く、より高く、より強く~

第142号
ぐんぎん Business Report
(平成27年 7月29日)
ぐんぎん経営倶楽部事務局
群馬県前橋市元総社町194
TEL:027-254-7315
今回の「ぐんぎん Business Report」は、(株)タナベ経営作成の「ビジネスニュースレター」をお届けいたします。今回のテーマ
は、「競技場」という市場 ~より速く、より高く、より強く~です。
「競技場」という市場 ~より速く、より高く、より強く~
「スポーツ産業は「ハブ産業」(各種産業をつなぐ中心産業)とされる。小売(用品店)、観光
(観戦ツアー)、建設(競技場建設)、教育(スポーツ教室)、食品(プロテインフード)、外食
(スタジアムグルメ)、サービス(スポーツイベント、施設運営管理)、IT(データ解析、顧客管
理)、アパレル(ウエア・シューズ)、製造業(用具、エクササイズマシン)、医療・福祉(スポー
ツ医療、運動指導介護)など、裾野が非常に広い。それだけに、ビジネスチャンスも多い。
日本政策投資銀行の試算によると、12年の国内スポーツ総生産(GDSP=国内で生産されたス
ポーツ関連の付加価値総額)は11.4兆円であり、他産業への経済波及効果倍率は1.63倍と商業
(1.51倍)を上回る。また、スポーツ産業は技術がものをいうマーケットだ。「0.1ミリ短
い」「0.01グラム軽い」など他産業では取るに足らない違いでも、スポーツでは大きな差別化に
なる。技術の高い日本企業が強みを発揮しやすい上に、利益率も高い。事実、日本は米独に並ぶス
ポーツ用品大国であり、世界市場をリードしている現実がそれを証明している。
スポーツ産業で成功したある企業を紹介しよう。その企業は創業時、新潟県三島郡で漁業用の木製
浮きを製造する小さな木工所だった。創業者が、第2次大戦で戦死した父の残した1台の木工用モー
ターを母から託されたのが始まりである。だが、時代の流れで浮きがプラスチック製へ変わり、経営
危機に陥った。新事業を迫られた創業者は、雪国でも高い付加価値が出せ、木工技術を生かせる成長
事業を探そうと全国を歩き、情報を集めた。そこで着目したのが当時ブームになりつつあった「バド
ミントン」だった。彼はあるラケットメーカーに日参し、交渉の末、OEM契約を獲得して下請けと
なった。同社は品質を評価され海外輸出品も任されたが、親会社のラケットメーカーが破綻。連鎖倒
産の危機に直面する。自社ブランド品の製造を決断したものの、今度は木造2階建ての本社工場が火
災で全焼してしまう。
同社は突貫工事で工場を建て直し、1週間で出荷を再開したところ取引先の信用が高まり、バドミ
ントンラケット製造で日本一を達成する。一方、外国産の格安品が台頭したため、対抗策を探るべく
海外視察を敢行。当時日本は木製ラケットが主流だったが、海外品はスチール製。それを目の当たり
にした創業者は帰国後、開発のため試行錯誤を繰り返した。そしてガス栓に着想を得て開発した世界
初のT型ジョイントを搭載した、国産初の金属(アルミ)製ラケットを完成させた。その後はテニス
ラケットに参入。現在はゴルフ事業やサッカーウエア、スノーボード、ランニングシューズを手掛け
るほか、カーボン加工技術を活用し、スポーツサイクルや風力発電用ブレードの製造販売に進出する
など、多角化を進めている。同社の名は「ヨネックス」。米山稔氏(現ファウンダー)が創業した木
工所は、今ではバドミントン用品で世界のトップシェアを握る企業である(同社ホームページより)。
プロテニスの錦織圭選手は、コーチで元全仏王者のマイケル・チャン氏にこう言われたそうである。
「お前が思っているより攻撃範囲というのは広いんだ」。スポーツ産業もあなたが考える以上に参入
範囲は広い。自社が活躍できる“競技種目”は何か。声援を送る観客は誰か。「より速く、より高く、
より強く」とは有名なオリンピックの標語だが、企業もスポーツ産業に挑み、「より速く(成長度)、
より高く(利益率)、より強く(安定性)」を目指したい。
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