不確実性を考慮した野生動物個体群の管理

国際野生動物学会 シンポジウム 33
2015 年 7 月 28 日 1:00-3:30 B 会議室
不確実性を考慮した野生動物個体群の管理
-現場の経験から共通の実践原理を模索する
Managing wildlife populations in the face of uncertainty
Seeking common practices through a sharing of real-world experiences
シカ、上位捕食者、ネズミ類、野生動物個体群を管理する際に、情報不足や不確実性は
つきものです。管理計画はこれらの限界を覚悟して立案、実施しなくてはなりません。計算
機の中では数字を与えないと計算できませんから、不確実性を無視していると思われるか
もしれません。しかし、現代の個体群動態の数理モデルは、不確実性を真っ向から扱って
います。むしろ、情報不足下での個体数推定や管理計画立案には数理モデルが欠かせま
せん。管理目標の実現可能性、費用対効果を吟味する際にも数理モデルが重要です。
このセッションでは、国内からは山梨、屋久島、北海道のシカ問題、外来ザリガニ対策、
風車の鳥衝突問題とカワウの漁業被害対策、海外からは上位捕食者、太陽光発電と希少
ネズミ類の関係など、徹底して現場の実践経験を紹介しあいます。扱う種はさまざまです
が、不確実性とどう向き合い、社会的に必要とされる管理目標の実現に必要な共通点が
あるはずです。
国際学会は、あるときには行政政策を変える重要な転換点となりえます。今回の IWMC
は、鳥獣保護管理法の新たな体制を決める上で重要なセッションがいくつも組まれていま
す(シカ、クマ、カワウ、海獣、外来種、風力など)。一つの大きな流れは、一部の野生動物
における保護から管理への転換です。本セッションでは、限られた知見の中で、その「変え
方」にどう個体群モデルを活用するかなどを議論します。このセッションは、再生可能エネ
ルギー問題の Borosk 氏らの提案と、4 月 4 日に東京大学で開催された関連行事の紹介にこたえて、2名の海外研
究者に自己資金で参加いただいています。4 月の行事では RAMAS 開発者の一人である Burgman 教授に「個体
群モデルにおける不確実性の扱い方:情報のギャップをいかに補いよい決定を行うか」と題して基調講演いただき、
環境省推進費 S-9 の諸成果の紹介とともに、日本のゼニガタアザラシ政策の見直しを海外研究者に説明しました。
皆さんのご参集をお待ち申し上げます。(松田)
プログラム
•
•
•
•
•
•
•
•
松田裕之:趣旨説明
Tracey Hollings ら (メルボルン大)上位捕食者(タスマニアデビル)の感染症は外来種の侵入を招き、生物
多様性の脅威となる (abst)
Brian Borosk ら(H. T. Harvey & Associates 社) 太陽光発電施設の開発による希少ジャイアントカンガルー
ラット個体群への影響の最小化 (abst)
飯島勇人(山梨県森林総合研究所)シカ個体群動態推定における複数データ利用の重要性 (abst)
西嶋翔太(横浜国大)上位捕食者駆除が外来中位捕食者の激増をもたらすリスクを管理する(abst)
藤巻碧海ら(横浜国大)区域別の管理目標を定めたヤクシカ管理計画の提案(abst)
松田裕之(横浜国大)野生動物管理における実現可能性、費用対効果、合意形成に資する個体群モデル
の役割(abst)
総合討論