「過活動膀胱」 名古屋第一赤十字病院泌尿器科 吉田和彦 年齢を重ねるにつれて、トイレが近くなるとよく言われます。それは、膀 胱の働きである尿を貯める「蓄尿」と尿を排出する「排尿」が、だんだんうま くいかなくなってくることによります。また、年を取るとおしっこが我慢でき なくなってきたと、訴える人が増えてきます。このように、おしっこが漏れそ うになってしまう尿意切迫感、我慢できなくて漏れてしまう切迫性尿失禁、ト イレの回数が異常に多くなる、いわゆる頻尿を訴える人が、加齢と共に増えて きます。これらの症状を引き起こすのは、膀胱排尿筋の不随意収縮によるもの です。この状態にある膀胱を最近、過活動膀胱と呼んでいます。疫学調査で40 歳以上の人口における有病率は日本人では、約17%(800万人)と推定されて います。原因は今だ不明であり、加齢に伴って起こってくる膀胱排尿筋の変化、 尿意を感じる神経の変化などが考えられます。また、血尿、排尿痛、蓄尿時膀 胱痛などの症状が伴う膀胱癌、細菌性膀胱炎、間質性膀胱炎との区別が大切で す。治療には副交感神経の働きを抑える薬が用いられます。膀胱容量の増加、 排尿筋の不随意収縮に有効ですが、口内乾燥、便秘などの副作用、男子高齢者 で前立腺肥大症のある人では、尿閉となる危険があります。緑内障の人の一部 には、使用出来ない場合もあります。水に手をつけた途端に強い尿意を感じ、 時には漏れてしまう、さらにトイレに行きたくなり、十分用意のできる前に漏 れてしまう。昼夜を問わずにトイレが近いなどの症状のある方は、一度診察を 受けられることをお勧めします。 -1-
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