会期 - gallery αM

PRESS RELEASE 1/4
αMプロジェクト2015 資本空間 ̶ スリー・ディメンショナルロジカル・ピクチャーの彼岸
The Capital Room - Beyond the Three Dimensional Logical Pictures
キュレーター:山本和弘(栃木県立美術館シニア・キュレーター)
「資本空間 ̶ スリー・ディメンショナルロジカル・ピクチャーの彼岸」 山本和弘
「資本空間」などというと、金塊や手の切れるような新札、そしてピカピカの硬貨などがビッシリと詰まった中央銀行の金庫を
思い浮かべるのがパブリック・イメージかもしれない。つまり、真面目一途なアーティストには縁のない世界が思い浮かぶかもし
れない。
その一方、成功したアーティストのスタヂオ奥の小部屋を想起する人もいるだろう。
しかし、
この言葉を造ったドイツの彫刻家ヨーゼフ・ボイスは、資本を貨幣ではなく、創造性ととらえ直し、
「創造性=資本」
とい
うスローガンを掲げた。なるほど
(Ja)
と同意するか、そんなアホな(Nee)
と否定するかは意見の分かれるところだろう。現実世界
では、各種経済学が何と定義しようが、
あくまでも
「資本>創造性」
となっているのが実感だからだ。
このように資本概念の根本的転回を志向したボイスは、芸術もまたファスト・ポリティクスであるべきとの信念をもって活動し
ながらも、
スロー・ポリティクスとして展覧会やコレクションに回収される自らの作品に苛立っていた。
もちろん、現実世界はこの
ようなロマン化Romantisierungとは反対のベクトルを強化してきた。芸術はこのような力学に立ち向かうには徒手空挙のスロー・
ポリティクスとしての性格をますます強め、貨幣空間に取り込まれてきたようだ。
だが、21世紀に入ると同じ苛立ちを共有するアーティスト・アクティヴィストが貨幣空間の大海にやや漣を立て始めた。
しかしそ
れらもまた、芸術という制度空間の中でしか成立することなく、貨幣空間に消費されてしまうことを私たちは知ってしまっている。
ところで、サブタイトルの「スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャー」
とは、
ロバート・スミッソンが用いた言葉である。
スミ
ッソンは絵画から出発したアーティストであり、ボイスとは異なり、
もとより彫刻家ではない。
だが、
この三次元論理画像という空
間概念は、熱力学第二法則に抗って、一種の断熱系としての二次元ピクチャーを打破する志で共通するものととらえるならば、
こ
の二人の熱力学的アーティストにならった創造性空間創出の試みも可能かもしれない。
貨幣が増殖する今日の社会システムにおいて、芸術がサブ・システムである限り、先述のような転回は実現しえないだろう。
し
かし、芸術が貨幣以上に増殖しうる可能性を秘めた創造性の一部にすぎないことを私たちが自覚したとき、創造性が貨幣をはじ
めて批評しうる土壌に立ちうるかもしれない。私たちはこのギャラリーにユートピアが到来すると思うほど楽天的ではない。が、
せめて質量のある物質的作品に創造性を増殖させる触媒の役目をみてみたいのである。
また、私たちはボイスの先例にならって、
「創造性>貨幣」
であるべき、などと念仏を唱えようとするほど楽観的でもない。
ただ、
マルクスの「資本論」
をボイスが「資本論2.0」へのバージョン・アップしたことを踏まえて、私たちも
「資本空間」
を「資本空間2.0」
としてアートワールドのアウトサイド
(彼岸)にあるかもれない社会に向けていま敢えて問うてみたいと思っている。
ここでいう
「資本=創造性」
とは数理論を駆使しなければ理解できないような難しい概念ではなく、ひとつのギャラリーを満た
す創造性なるものを視覚化しうるか否かという問いかけにすぎない。言い換えるならば、
「資本空間2.0」
とは昨今の社会を覆っ
ている絵画や写真のような平たいピクチャーではなく、三次元的な厚みと質量をもったピクチャーでgallery αMを満たしてみよ
うという試みである。
会期
会期1:2015年4月11日
(土)∼5月16日
(土) 豊嶋康子
会期2:2015年5月30日
(土)∼7月4日
(土) 村上華子
会期3:2015年7月18日
(土)∼8月29日
(土) 隠崎麗奈(8/9∼8/17夏期休廊)
会期4:2015年9月12日
(土)∼10日17日
(土) 鈴木孝幸
会期5:2015年10月31日
(土)∼12月5日
(土) 藤堂
会期6:2015年12月19日
(土)∼2016年2月6日
(土) 河合政之(12/27∼1/11冬期休廊)
会期7:2016年2月20日
(土)∼2016年3月26日
(土) 白川昌生
会場:gallery
αM ギャラリーアルファエム
〒101-0031 東京都千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F
tel:03-5829-9109 fax:03-5829-9166 日・月・祝休 11:00∼19:00
http://gallery-alpham.com(URLがかわりました)
gallery αMは、質の高い表現と可能性を有するアーティストと、斬新な価値を発信できる
キュレーターの活動の場として、武蔵野美術大学が運営するノンプロフィットギャラリーです
主催:武蔵野美術大学 運営:武蔵野美術大学αMプロジェクト運営委員会
デザイン:大西正一
■本展に関するお問い合わせは下記までお願いいたします■
gallery αM
ギャラリーアルファエム
保谷香織(ほうや・かおり) [email protected]
〒101-0031 東京都千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F
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交通アクセス
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都営浅草線[東日本橋]より徒歩6分
PRESS RELEASE 2/4
αM2015 ゲストキュレーター プロフィール
●山本和弘(やまもと・かずひろ)
1958年山形県生まれ。東北大学美学専攻卒業。1985年より栃木県立美術館学芸員。主な展覧会:
「マンハッタンの太陽」
(2013)、
「冬のメルヘン‐20世紀ドイツ美術の神話」(1993)、
「ザ・サイレント・パッション‐日本の女性アーティストたち」
(1991)
など。主な論文:
「社会システムへの異議申し立て―ヨーゼフ・ボイス
《資本空間1970-77》
(1980)
」(2014)、
「ロバート・
スミッソン―メタ-サイトとしての絵画」
(2014)など。主な訳書:ハンス・アビング『金と芸術−なぜアーティストは貧乏なのか?
―芸術という例外的経済』
(グラムブックス、2007)ハイナー・シュタッヘルハウス
『評伝ヨーゼフ・ボイス』
(美術出版社、1994)。
αM2015 作家 プロフィール(会期順)
●豊嶋康子(とよしま・やすこ)
1967年埼玉県生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。主な個展に2014年「PANEL #24 」
(M画廊、栃木)
2013年「パネル」
(秋山画廊、東京)
、2008年「第2回多層展「豊嶋康子の多層系ー<マークシートから輪郭まで>ー」
(Fuji
Xerox Art Space、東京)
、2005年「公開制作27色調補正」
(府中市美術館、東京)
、2004年「作品解説」
(CAS、大阪)など多数。
主なグループ展に2013年「長い夢をみていたんだ」
(TALION GALLERY、東京)
、2013年「引込線」
(旧所沢市立第2学校給食
センター、埼玉)
、2006年「美術館は白亜紀の夢を見る」
(埼玉県立近代美術館、埼玉)
、2006年「第3回府中ビエンナーレ 美
と価値ーポストバブル世代の7人」
(府中市美術館、東京)
、2002年「傾く小屋―美術家たちの証言since 9.11」
(東京都現代美
術館、東京)
、2000年「Art in Tokyo No.12 崇高と労働」
(板橋区立美術館、東京)など。http://www.toyoshimayasuko.com
豊嶋康子
「パネル」
2014年 展示風景
撮影:豊嶋康子
豊嶋康子
パネル #20
2014年 91.1x91.1x3cm 豊嶋康子
パネル #19
2014年 91.1x91.1x3cm ●村上華子 (むらかみ・はなこ)
1984年生まれ。東京大学文学部を経て、東京芸術大学映像研究科修士課程修了。ベルギー政府奨学生として渡欧、ポーラ美
術振興財団在外研修(パリ)
を経て現在ル・フレノワ:フランス国立現代アートスタジオ所属。主なグループ展に2014年「パノラ
マ18」ル・フレノワ:フランス国立現代アートスタジオ
(予定)
、2011年「日常の実践」国際芸術センター青森、2010年「トーキョ
ーストーリー」
トーキョーワンダーサイト青山(東京)
、2009年「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」
(新潟)など。
http://www.hanakomurakami.net
村上華子
リップマン法写真の実験
2014年 実験風景
collaboration: Dominique Genty 村上華子
イマジナリー・ポートレート
2012年
collaboration: Keiichi Moriguchi 村上華子
澤田家の火事
2010年 映像インスタレーション
photo: Yuichiro Tamura PRESS RELEASE 3/4
●隠崎麗奈 (かくれざき・れいな)
1977年岡山県生まれ。2000年武蔵野美術大学彫刻学科卒業。2002年武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了。主
な個展に2013年「もらうもの」
(gallery OUT of PLACE TOKIO、東京)
、2013年「goldie H.P.FRANCE × 隠崎麗奈」
(渋谷パルコ
part1、東京)
、2012年「サニーサイドアップ」
(art + cafe シファ、岡山)
、2011年「foggy」
(gallery OUT of PLACE TOKIO、東京)
、
2011年「misty」
(西武渋谷店、東京)など。主なグループ展に2014年「2人展 killing me softly」
(gallery OUT of PLACE TOKIO、
東京)
、2011年「2人展」
(a piece of space APS、Gallery Camellia、東京)
、2011年「THE 3rd COREDO Women s Art Style」
(コレド日本橋、
コレド室町、
日本橋三井タワー、東京)など。受賞歴に2012年岡山県新進美術家育成「I氏賞」奨励賞受賞。
http://www.reina-kakurezaki.jp
隠崎麗奈
「キメキメ」
2008年 村松画廊 展示風景
撮影:柳場大
隠崎麗奈
「サニーサイドアップ」
2012年 art + cafe シファ 展示風景
隠崎麗奈
「もらうもの」
2013年 gallery OUT of PLACE TOKIO 展示風景
撮影:柳場大
●鈴木孝幸 (すずき・たかゆき)
1982年愛知県生まれ。2007年筑波大学大学院芸術研究科修士過程総合造形分野修了。主な個展に2012年「川をつくること、
で [place/bottom] 」
(Gallery HAM、名古屋 2011、2010年にも個展開催)
、2010年「那珂川のほとりで [place/linear] 」
(板室
温泉大黒屋サロン、栃木)など。主なグループ展に2015年「豊穣なるもの−現代美術in豊川」
(豊川市桜ヶ丘ミュージアム他、愛
知)
、2014年「するがのくにの芸術祭 富士の山ビエンナーレ」
(静岡)
、2014年「逗子アートサイト」
(神奈川県逗子市)
、2014年「
4th Exhibition AGAIN-ST 置物は彫刻か?」
(東北芸術工科大学、山形)
、2014年「Transfer Land 渡される
(移される)土地
(世界)
」
(旧門谷小学校、愛知)
、2013年「境界」
(倉庫現代美術館、群馬)
、2013年「中之条ビエンナーレ 2013」
(群馬県中之条
町(2009、2011も参加)
、など。受賞歴に2009年第4回大黒屋現代アート公募展大賞受賞。
鈴木孝幸 by 6 pieces -66
2010年 石
鈴木孝幸 digging earth -420
2011年 地面に掘った穴
中之条ビエンナーレ 大岩第四分校跡地
鈴木孝幸 heaping earth -441
2014年 補修用アスファルト
するがのくにの芸術祭 旧蒲原劇場
(静岡)
●藤堂 (とうどう)
1969年東京生まれ宇和島市出身。
1997年多摩美術大学大学院修了。
2003年デュッセルドルフ芸術大学ダニエル・ビュレン教授
よりマイスターシューラー取得。
主な個展に2011年「7000 Basalt」
(アートフロントギャラリー、東京)
など。
主なグループ展に2014
年「知ってる形/知らない形+本」
(うらわ美術館、埼玉)
、2013年「BOOK- Chapter 1」
(MA2 Gallery、東京)
、2011年「彫刻・林間
学校 アースバウンド」
(メルシャン軽井沢美術館、長野)
、2009年「日常/場違い」
(神奈川県民ホールギャラリー、神奈川)
など。
藤堂
Säule_Yokohama
2009年 W46 x D47 cm x H346cm
関東大震災で倒壊した横浜の建物のレンガ、
積層ガラス、
コンクリート
藤堂
Basalt
2010-2011年 H50-55cm
ドイツ産玄武岩、
積層ガラス
藤堂
DAS KAPITAL
(資本論)
2009-2011年
W15.5 x D12.5 x H22cm
書籍、
積層ガラス
PRESS REL EASE 4/4
●河合政之 (かわい・まさゆき)
哲学的かつ先鋭的な映像作品を制作、世界 30ヶ国以上で上映。映像の本質をつねに問い続けながら、映画、現代美術、
メディ
アアートなど既成のジャンルに捕われない幅広い作風と活動を展開する。文化庁、ポーラ美術振興財団の派遣芸術家として
NYで活動するほか、
イェルサレム、パリなどのアーティスト・イン・レジデンスに招待。
その作品はNYクィーンズ美術館(アメリカ)
や国立国際美術館(日本)などにコレクション。展覧会のオーガナイザーとしても活動し、"Visual Philosophy"のコンセプトにも
とづくさまざまなヴィデオアートのプロジェクトを展開している。http://masayukikawai.com/
河合政之
W.W.W.「オール・ピスト東京」公演
2012年
河合政之
Video Feedback Aleatoric no.7-1
2013年 Video
河合政之
Feeback : Reflexion
2013年 モリユウギャラリー東京 展示風景
photo: Kenryu Tanaka
●白川昌生 (しらかわ・よしお)
1948 年福岡県北九州戸畑生まれ。1981年デュッセルドルフ国立美術大学卒業。修士称号。主な個展に2014年「白川昌生ダ
ダ、
ダダ、
ダ 地域に生きる想像☆の力」
(アーツ前橋、群馬)
、2007年「白川昌生と
『フィールドキャラバン計画』」
(群馬県昭和
庁舎、群馬)
、2002年「サチ子の夢」
(現代アートセンター、
メッス、
フランス)
、1999 年オープンサークル・プロジェクト
(モリス・
ギャラリー、東京)
、1994年「SHIRAKAWA '94 日本美術試作ー日本人ですか1」
(佐賀町エキジビット・スペース、東京)など。
主なグループ展に2015年「引込線」、2013年「カゼイロノハナ 未来への対話」
(アーツ前橋、群馬)
、2012年「水と土の芸術
祭」
(小野田賢三らと
《沼垂ラジオ》
で参加)
(新潟)
、2002年「第7回北九州ビエンナーレーART FOR SALE アートと経済の恋
愛学」
(北九州市立美術館、福岡)
、1993 年第「2回北九州ビエンナーレークロノスの仮面」
(北九州市立美術館、福岡)など。
白川昌生
無人駅での行為(群馬と食)
2000年 撮影:木暮伸也
白川昌生
Tomoko & Light
2014年 撮影:木暮伸也
白川昌生
馬屋の木馬
2011-2014年 撮影:木暮伸也