木工芸品における3次元CAD利用の一例

木工芸品における3次元CAD利用の一例
機械・材料技術部 材料加工チーム 斉
藤 光 弘
寄木で作成した種板から直接,ろくろなどで形状を削り出す寄木細工の「無垢(ムク)作り」に対し,3次元 CAD
の機能を利用して,切削面の意匠確認のための加工シミュレーションを行った例を報告する。
キーワード:CAD/CAM,NC,寄木細工
1 はじめに
寄木細工の「無垢(ムク)作り」は,ベースとなる種板
(寄木板)の模様と削り出し曲面の違いによって生じる,
断面の様々な幾何学模様の立体的な美しさが特徴であり,
厚みのある種板をそのまま加工するため,比較的高価な製
品が多い。しかし,削り出し形状の違いによって微妙に異
なってくる断面模様を加工前に予測するのは困難であり,
イメージと異なる作品が完成してしまう可能性がある。今
回は3次元 CAD の図形演算機能を利用することで,加工
前における,
無垢作り寄木細工のデザイン検討を実現した。
2 概 要
3次元 CAD の図形演算機能の一つである「干渉チェッ
図1 種板となる寄木と削り出し形状
ク」機能を利用し,矢羽根模様の種板(図1左下)から,
図1右上の回転体形状を削り出した。削り出しの基となる
種板は断面が矢羽根模様の単なる直方体に見えるが,実際
の寄木と同様に,8色の異なる材質(部品)の組み合わせ
で構成されている(図2)
。この種板と削り出したい形状を
3次元 CAD で作成して重ね合わせ,重なり合う部分のみ
を別形状として取り出す(図3)
。種板は,模様の寸法が分
かっていれば3次元 CAD で比較的容易に作成できるので,
一度,矢羽根などの種板を作れば,それを様々な削り出し
形状に利用することが可能となる。色の違い毎に材質(部
品)を割り当てているので,木(色)を変更した場合の意
図2 種板(矢羽根模様)の構成
匠の確認も容易となる。
3 まとめ
無垢作りの断面模様(意匠)を確認するため,3次元C
ADで擬似的な加工を行った。無垢作りでは実際に削らな
いと模様の確認が出来なかったが,種板の寄木模様と削り
出し形状が分かれば,3次元CADを利用することで,比
較的簡単にデザイン
(加工面の模様)
の確認が可能となる。
図3 完成品
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神奈川県産業技術センター研究報告 No.15/2009