タイムリーな生徒把握により、授業や家庭 学習の進化に取り組む

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タイムリーな生徒把握により、授業や家庭
学習の進化に取り組む
私立
星野学園中学校 共学
学科: 理数選抜クラス、進学クラス、
規模: 1学年約160名(2015年度)
主な進路状況: 大阪大学、東北大学など国公立大79名、早慶上智42名、
MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)194名
※星野高等学校全体の合格者数(2015年度入試)
取り組み
● タブレットとClassiを活用し、生徒と双方向のやり取りを行う授業展開
● 生徒1人ひとりの家庭学習や小テストの結果を即時に把握し指導にいかす
これからの社会に必要な力を身に
つけるために
──── 貴校では早くからICTを活用した教育に力を
また、タブレットに保存した教科書を黒板に
入れられていますが、背景を教えてください。
投影して授業を進めるスタイルにしています。
黒木先生 本校は開校16年目になりますが、開校当初
重要な内容は投影した教科書の画像の上
から学校長の「これからの社会に必要な力
から黒板に書き込みます。私の授業に関し
を身につけさせたい」という意向があり、入
ては、板書をノートに写すのではなく、教科
学時に1人1台ノートパソコンを購入してもら
書に重要な内容を書き込ませるようにしてい
う取り組みをしていました。現在は、中学1年
ます。後で復習するときに、「教科書が最高
生から3年生まで1人1台のタブレットを貸与
の参考書になるように」と指導しています。
しています。タブレットは授業での活用が主
教科書とノートを見比べるより、効果的に学
で、生徒は自宅には持ち帰らず、使った後
習することができます。
は学校のラックに戻すようにしています。
──── その他の授業での取り組みについて教えてく
──── タブレットを活用した授業について教えてくだ
さい。
黒木先生 本校では、今年度から学校に向け教育クラ
黒木先生 数学ではタブレットにインストールした出版
社のデジタル教材を活用しています。問題
をタップするとすぐに解説を確認できるなど、
紙の問題集にはない使いやすさがあります。
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ださい。
ウドサービスのClassiを導入しています。こ
れまでは、生徒が授業中に、本当にタブレッ
トで問題に取り組んでいるかどうか確認でき
ませんでした。
今は、ClassiのWEBテストを利用して、授業
授業だけでなく、帰りのHRで実施する「HRテ
中に生徒に問題を配信しています。生徒が
スト」でもWEBテストを活用しています。数学
タブレットに配信された問題を解くと、すぐに
はA、BクラスとC、D、Eクラスで難易度を分
自動採点されて教師のタブレットで解答状
けて配信しています。A、Bクラスは進研模試
況が簡単に把握できます。これまでよりも、
の基礎的な問題を意識した難易度の問題を
生徒の状況を把握しながら授業を進められ
出題し、C、D、Eクラスは進研模試のやや発
るようになりました。数学の授業では、問題
展的な問題を意識した難易度の問題を出題
を紙で配布することもありますが、その場合
しています。英語も同様に、HRテストでWEB
は、解答欄だけを設けたWEBテストを配信し
テストを活用しています。授業での活用と同
ます(図1)。生徒は紙の問題用紙で問題を
じで、すぐに生徒の状況が把握できますし、
解き、タブレットに配信された解答欄に答え
採点・集計が自動化されているため、HRテ
を入力します。あらかじめ正解を設定してお
ストにかかわる仕事をかなり効率化できるよ
けば、自動的に採点、集計され、その結果を
うになりました。また、生徒は解答結果をす
元に、解説をしていきます。
ぐに先生が確認できることを知ってるので、
緊張感を持って取り組んでいます。
──── 授業外でも、Classiを活用いただいていると
お聞きしています。
黒木先生 アンケート機能を利用しています。ちょうど
今、合唱祭の課題曲を決めているのですが、
Classiのアンケート機能で投票するようにし
ています(図2)。
▲図1:実際の問題は紙で生徒に配布。Classiの「WEBテスト」では解答欄
のみ作成して生徒のタブレットに配信する。生徒は解答を入力すると自動
的に採点される。
▲図2:合唱祭の課題曲を決めるアンケートを配信。回答は自動的に集
計され、すぐに生徒に提示できる。画像の添付も可能。
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アンケートは他にも、修学旅行のしおりを作
る際にも使いました。表紙候補のイラストを
こうした取り組みによって、学習時間も以前
と比べて増加してきた実感があります。また、
アンケートに添付し、生徒に良いと思うもの
学習記録には生徒が学習した内容を記入す
に投票してもらいました。修学旅行から帰っ
るコメント欄があります。紙の時と比べても、
てきた後にとるアンケートもClassiを利用して
生徒がいろいろなことを記入してくるようにな
います。60問くらいのボリュームがあるもの
りました。コメントの内容から、これまで気が
ですので、毎年、集計が非常に大変でした。
つかなったことに気がついたり、生徒とのコ
Classiのアンケート機能を使うことで、集計
ミュニケーションが深まっていると感じていま
の手間がなくなったことは非常に大きかった
す。 学習記録は学習時間以外の「読書」な
です。授業アンケートも手軽にとれるように
どの項目を学校独自に設定できます。学年
なりました。国語の先生はこれまで、授業後
の先生と話し合って、「隙間学習」、「読書」、
に、生徒が感想を手書きしたものを集めて、
「家事」、「テレビ」、「ゲーム・PC」なども記録
良い内容のものがあれば、パソコンで打ち
し、集計できるようにしています(図3)。全員
直してプリントにして、生徒に共有していまし
が正確に入力していないかもしれませんが、
た。Classiのアンケートは選択式だけでなく
生徒にいろいろな気づきを与えるきっかけに
自由記述もできます。感想をアンケートに打
なっています。 ちこんで送信してもらえば、その場で確認し、
よい内容の回答を共有することができます。
その場で確認しきれないものは後で、プリン
トにコピー&ペーストして配布するなど、いろ
いろな使い方をしています。
──── 生徒の家庭学習についても、Classiを利用し
て把握されているとお聞きしています。
黒木先生 これまでは、紙の学習記録表で家庭学習の
様子を記入させていました。今はClassiの学
習記録を全クラスで利用しています。生徒と
紙の学習記録をやり取りしていた時と比べて、
生徒が入力すると状況がすぐにわかる点、
集計が自動化されている点などにメリットを
感じています。私は、テストの2週間前の家
庭学習時間に注目して、集計結果を生徒に
共有するようにしています。定期テスト1週間
前になると、ある程度全員が学習時間を確
保するようになり、差はつかないのですが、2
週間前だとかなり個人差があります。「こんな
に勉強しているクラスメートがいる」ということ
をテスト2週間前に気がつかせることによって、
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危機感を持つ生徒が出てきます。
▲図3:学習記録で集計したデータを、「校内グループ」でクラスの生徒に
共有している。
タイムリーな生徒把握によって授業や学習指導が変わる
■ いろいろな場面でClassiを利用した生徒把握が進んでいます。WEBテストやアンケートにより、そ
の場で生徒の理解度や考えていることが分かることで、指導がしやすくなり、生徒の反応も変わっ
てきています。家庭学習記録のやり取りも、「この生徒がこんなことを考えていたのか」という、今ま
成
果
で気がつかなかった一面が確認できることもあります。今後は生徒の学力向上や、学習時間の向
上を数値的にも実感できればと思っています。
■ タブレット利用に関しては、最初は思うように生徒が学習に使ってくれない状況もありました。しかし、
折に触れて学校長が語っていた「これからの社会に必要な力を身につけるため」という導入理由を
伝えたり、授業中の机間巡視を心がけるなど、地道な取り組みを継続することで、適切な活用がで
きるようになってきています。 ■ 次年度は、中学だけでなく高校1年生の理数選抜コース
もタブレットとClassiを活用した学びを進める予定です。
今
後
高校ではパソコンでしかできなかった大学調べなどの進
路学習が教室でもできるようになればと考えています。
向
■ 中学では、校外学習の様子をプレゼンテーション用のソ
フトを使ってまとめるなど、表現力を磨く活用も進めて行
きたいと考えています。生徒は、他の生徒が進んだ活用
をしているのを見て刺激を受けると、どんどん使い方を吸
収していきます。こうした活動を通して自発的に学ぶ力を
身につけて欲しいと考えています。
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お話を伺った 黒木 誠一朗先生(数学担当)