ー 銀河のスペクトル進化 ー - 宇宙物理学研究室赤外線グループ (UIR研)

At 研
4年
長屋文子
● INTRODUCTION
銀河の進化
力学進化
スペクトル進化
星は銀河の中で生まれ、進化し寿命を
迎えるので、それらの集合体である銀河
のスペクトルも必然的に進化する。
これがスペクトル進化である。
紫外~近赤外における銀河のスペクトル
は主に星が担っている。
銀河の進化はガスから星を作る歴史だと
考えることができ、また重元素量は星形
成率を変えるので、化学組成の進化は銀
河進化を決める1つの大きな要因である
といえる。
化学進化
星々の間には、無数の小さな重
元素の固体微粒子が漂っている。
これをダストという。
ダストは主に星が放つ可視光や
紫外線を吸収し温められ、その
結果、自ら赤外線を放つ。
赤外における銀河からの放射は
主にダストが担っている。
また、ダスト量は重元素量に大
きく関係しているため、赤外に
おける銀河のスペクトル進化を
考えるときには、化学進化が非
常に重要である。
● STELLAR EVOLUTION
褐色矮星
M/M☉<0.08
H燃焼
0.08<M/M☉<0.5
赤色巨星
He白色矮星
主系列
He燃焼
0.5<M/M☉<8
星間ガス
惑星状星雲
C+O白色矮星
He燃焼⇒C燃焼
8<M/M☉<30
中性子星
超新星爆発
30<M/M☉
ぶ
星の寿命
 M 

 M☉

   1010 
2.5
yr 
ブラックホール
星の光度
小質量星
L M5
大質量星
L M3
● CHEMICAL EVOLUTION
Closed‐box model
・・・銀河を一様で一定の質量M0を持った閉じた系とする
Mo = Mg + Ms = const
Mg : ガスの質量
Ms : 星の総質量
IRA(Instantaneous
Recycling Approximation : 瞬間リサイクル近似)
・・・8M☉以上の重い星は寿命が短い
⇒重い星はできた瞬間に重元素を放出し
軽い星は死なない
と近似
One-zone
・・・リサイクルされた重元素は一瞬にして全体に広がると近似
CHEMICAL EVOLUTION
● SFR(Star Formation Rate) :星形成率S(t)
⇒時刻 t に生まれる星の総質量
● IMF(Initial Mass Function) :初期質量関数φ (m)
⇒時刻 t に生まれる質量 m の星の個数密度
t:銀河形成時からはかった時間

初期重元素量 Z g t  0  0

IMF・・・Salpeter
(Salpeter 1955)
 (m )  m  (1 x )
SFR・・・exponential
 t 
p1
S (t ) 
exp  
p2
 p2 
IMF
p1  1 [M☉]
log m
渦巻き銀河
で典型的
p2  10 3 [Myr]
S(t)
log φ (m)

x  1.35
SFR
t

基礎方程式
CHEMICAL EVOLUTION
星がガスを放出する質量割合は星形成率 S(t)に比例するから、
dM g
dM s

 S ( t )   S ( t )  1   S ( t )
dt
dt
Mg + Ms = M0
β:比例係数

基礎方程式
CHEMICAL EVOLUTION
星がガスを放出する質量割合は星形成率 S(t)に比例するから、
dM g
dM s

 S ( t )   S ( t )  1   S ( t )
dt
dt

β:比例係数
ガス中の重元素量の変化率
星内部で新たに生産された重元素の放出率は S(t)に比例するから、

d MgZ
dt
   S (t )Z   S (t ) Z  yS (t )   y  1   Z  S ( t )
ガス中の重元素の質量
Z: ガスの重元素量
y: 比例係数

CHEMICAL EVOLUTION
基礎方程式
星がガスを放出する質量割合は星形成率 S(t)に比例するから、
dM g
dM s

 S ( t )   S ( t )  1   S ( t )
dt
dt

β:比例係数
ガス中の重元素量の変化率
星内部で新たに生産された重元素の放出率は S(t)に比例するから、

d MgZ
dt
   S (t )Z   S (t ) Z  yS (t )   y  1   Z  S ( t )
星を作るの
に使われた
重元素の質量
Z: ガスの重元素量
もともとの
重元素の質量
軽元素から
重元素に
なった質量
y: 比例係数

CHEMICAL EVOLUTION
基礎方程式
星がガスを放出する質量割合は星形成率 S(t)に比例するから、
dM g
dM s

 S ( t )   S ( t )  1   S ( t )
dt
dt

β:比例係数
ガス中の重元素量の変化率
星内部で新たに生産された重元素の放出率は S(t)に比例するから、

d MgZ
dt
   S (t )Z   S (t ) Z  yS (t )   y  1   Z  S ( t )
Z: ガスの重元素量
y: 比例係数
2式より・・・・

d MgZ
dM g
 Z
y
 Z  y*
1 
t=0でMg=M0、Z=0として積分すると
Z   y * ln
Mg
M0
dZ
  y*
d lnM g


重元素量の時間変化
化学進化
Gasの割合が減ると
重元素量が増える!
● SPECTRAL EVOLUTION

年齢 t 、波長λの銀河の単色のスペクトル :
F ( t ) 
 
t
0
mu
ml
S ( t   ) ( m ) f  ( m , )dmd
SFR
t : 銀河の年齢
Monochromatic
flux of a star
θ : 星の年齢
m : 星の質量
IMF
SFR×IMF
さまざまな質量
と年齢をもつ星
たちがそれぞれ
何個ずつあるか
ある年齢と
質量をもつ
星が示す
スペクトル
SPECTRAL EVOLUTION
λL λ [erg/s/M☉]
*大質量星の光が支配的
なので紫外側が卓越
λ [Å]
SPECTRAL EVOLUTION
λL λ [erg/s/M☉]
*星が増えるので
光度が上がる
λ [Å]
λL λ [erg/s/M☉]
SPECTRAL EVOLUTION
λ [Å]
SPECTRAL EVOLUTION
λL λ [erg/s/M☉]
*暗い星が溜まってくる
λ [Å]
SPECTRAL EVOLUTION
λL λ [erg/s/M☉]
*紫外側が減衰
λ [Å]
SPECTRAL EVOLUTION
λL λ [erg/s/M☉]
*紫外側がどんどん減衰。
λ [Å]
● DUST EXTINCTION
減光前
Galaxy
Dust
減光後
Observer
● DUST EXTINCTION
Uniform dust screen model
f0
f 0 e  
Dust
Galaxy
(Calzetti et al. 1994)
 減光等級 A を用いて
fobs  f 0  10  0.4 A  f 0  e  
よって、
   0.921 A
Observer
● DUST EXTINCTION
Uniform dust screen model
f0
f 0 e  
Dust
Galaxy
(Calzetti et al. 1994)
Observer
 減光等級 A を用いて
fobs  f 0  10  0.4 A  f 0  e  
よって、
   0.921 A
 Optical depth  
放射に対するガスの不透明さを示す尺度
重元素が多いほどdustが多く不透明
● DUST EXTINCTION
Uniform dust screen model
f0
f 0 e  
Dust
Galaxy
(Calzetti et al. 1994)
Observer
 減光等級 A を用いて
fobs  f 0  10  0.4 A  f 0  e  
よって、
   0.921 A
g(t )  M g (t )/M 0
 Optical depth  
 A  Z g ( t ) 



  ( t )  0.44  3.25
g( t )



 AV  Z solar 
t:銀河の年齢
(Guiderdoni & Rocca-Volmerange 1987)
 Effective extinction law
DUST EXTINCTION
A k ( )

AV 4.05
0.657(  1.857  1.040 /  )  1

0.63 m    2.20m


2
3
0
.
657
(

2
.
156

1
.
509
/


0
.
198
/


0.011/

)1


0.12m    0.63 m
(Calzetti et al. 2000)
DUST EXTINCTION
Aλ/Av
 Effective extinction law
Effective extinction curve
(Calzetti et al. 2000)
λ [Å]
DUST EXTINCTION
Aλ/Av
 Effective extinction law
Effective extinction curve
(Calzetti et al. 2000)
λ [Å]
まとめると
f obs ( t )  f 0 ( t )  10
 26.4 Z g ( t ) g ( t ) k (  )
DUST EXTINCTION
0Myr
λL λ [erg/s/M☉]
*Z=0 なのでダストなし。
減光されない。
λ [Å]
DUST EXTINCTION
10Myr
λL λ [erg/s/M☉]
*少しだけ減光される。
λ [Å]
DUST EXTINCTION
100Myr
λL λ [erg/s/M☉]
*減光が強くなってくる。
λ [Å]
DUST EXTINCTION
1Gyr
λL λ [erg/s/M☉]
*もっと減光が強くなる。
λ [Å]
DUST EXTINCTION
5Gyr
λL λ [erg/s/M☉]
*Gas割合が減るため、MgZも小さく
なり1Gyr よりも減光が弱まる。
λ [Å]
DUST EXTINCTION
10Gyr
λL λ [erg/s/M☉]
*さらに減光が弱まる。
λ [Å]
● DUST RERADIATION
Dale et al. (2001) のdust emissionのデータを用いる。
 Dustは吸収したエネルギーをすべて再放射すると仮定。
 Three dust components :

FIR
NIR
IR
UV
UV
UV
Large grain
Very small grain
PAH
熱容量 大
熱容量 小
⇒熱平衡になれる
⇒ 平衡温度が
決まらない
放射のエネルギーを
吸収して励起される
⇒分子内の振動など
の量子状態に対応
する輝線で解放
15~60μmの
3~15μmにおいて
Graybody spectrum
Blackbody×FIR emissivity
波長域で重要
バンド放射
DUST RERADIATION
Dust emission
Extinguished spectra
PAH
λL λ [erg/s/M☉]
Very
small
grain
λ [Å]
Large grain
DUST RERADIATION
α : 様々な放射場の寄与を考慮
するためのパラメータ
α 小
α 大
星形成領域
拡散放射場
α=1
α=1.75
α=2.5
Extinguished spectra
λL λ [erg/s/M☉]
α=2.5
α=1.75
α=1
λ [Å]
● OBSERVED SED
Extinguished spectra
λL λ [erg/s/M☉]
10Myr
*減光が小さいため再放射も弱く、
まだ紫外側が卓越。
λ [Å]
α=1
α=1.75
α=2.5
OBSERVED SED
Extinguished spectra
α=1
λL λ [erg/s/M☉]
100Myr
*再放射のスペクトルが
目立ち始める。
λ [Å]
α=1.75
α=2.5
OBSERVED SED
Extinguished spectra
α=1
λL λ [erg/s/M☉]
1Gyr
*赤外銀河になっている!
λ [Å]
α=1.75
α=2.5
OBSERVED SED
α=1
λL λ [erg/s/M☉]
5Gyr
*可視光が卓越、紫外は減衰。
λ [Å]
α=1.75
α=2.5
OBSERVED SED
Extinguished spectra
λL λ [erg/s/M☉]
10Gyr
λ [Å]
α=1
α=1.75
α=2.5
● SUMMARY
Chemical Evolution・・・Gasの割合が減ると重元素量が増える。
 Spectral Evolution・・・・星の進化によって銀河全体のスペクトルが進化し、

歳をとった銀河ほど赤く見えるようになる。

Dust Extinction・・・・・・・減光の度合いはdust量に依存しており、dust量は
重元素量に依存している。
また、短波長側で大きく減光する。

Dust Reradiation・・・・・ Dustに吸収された紫外・可視光のエネルギーは赤
外で再放射される。
また、Dust emissionでは、large grain , Very
small grain ,PAHの要素が重要である。

Observed SED ・・・・・・
一般的に近傍宇宙で可視光が明るい渦巻き銀河
も、一度赤外銀河を経験する。
● 参考文献 ●
• 『宇宙物理学』
高原文郎 著
• 『元素はいかにしてつくられたか』野本憲一 編
• 『現代の天文学 4.銀河Ⅰ』
谷口義明 他 編
• 『銀河進化論』
谷口義明・塩谷泰広 著
• Fioc, M., & Rocca-Volmerange, B. 1997 , A&A, 326, 950
•
•
•
•
Calzetti, D. , Kinney, A. L., & Storchi-Bergmann, T. 1994, ApJ, 429, 582
Calzetti, D. , et al. 2000, ApJ, 533, 682
Guiderdoni, B., & Rocca-Volmerange, B. 1987, A&A , 186 , 1
Dale, A. D., et al. 2001 , ApJ, 549, 215