2015 年 7 月 24 日 企業会計基準委員会 御中 株式会社 プロネクサス プロネクサス総合研究所 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」に関する意見 2015 年 5 月 26 日に公表されました標記公開草案について、当研究所内に設置さ れている「ディスクロージャー基本問題研究会」で取りまとめた意見等を提出いた しますので、宜しくお願い申し上げます。 記 質問1 <コメント> 過去の実績に基づき 5 分類とすることには、同意する。 ただし、質問3のコメントに示したように、過去の会計上の利益により区分 することが適当と考える。また、質問4と質問5に関連した状況では、将来の 課税所得の予測に着目した別の考え方が混入しており、会計ルールとしての考 え方の整合性をとることが必要である。 質問2 <コメント> 同意しない。 各分類の要件が「過去(3 年)および当期」といった線引きが明確なため、 分類1から5の要件を満たさない会社のイメージが浮かばない。 新設会社以外に各分類の要件をいずれも満たさない会社があるのであれば、 理解を助けるための設例が必要ではないか。設例ができないとすると、このよ うな規定は不要なのではないか。 質問3 <コメント> 同意しない。 経常損失かつ課税所得ありの場合(たとえば棚卸資産の評価損(有税)が毎 期発生するような場合)、経常的な利益が確保されていないにもかかわらず、課 税所得が安定的に生じているとして分類2に該当すると判断することについて、 1 収益力に基づいた企業の分類といえるのか疑問である。 これまで、会計上の利益で回収可能性を判断してきたのであり、 「経常的な利 益(損益)」をベースにしつつ、永久差異を加減算するとした方が、より適切で はないか。 公開草案の 70 項第4パラグラフにおいても、そのように説明している。 質問4 <コメント> 同意しない。 「繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合」が明確で なく、判断に実務上の混乱が生ずる可能性が高い。この種の規定は不要ではな いか。 当該規定が拡大解釈され、回収可能性に関する楽観的な予測からくる実務の 混乱を招く懸念がある。 期末において将来の一定の事実の発生が認められず、または一定の行為の実 施が存在せず、税務上の損金算入時期が個別に特定できない時点で、将来にお ける回収可能性を合理的に説明できる蓋然性は低いとみておくべきではないか。 74 項では政策保有株式の例示がなされているが、1 点のみの例示しかなされ ていないこと、および例示の妥当性について疑問がある。適用指針において例 外規定を設けるのであれば、繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説 明できる場合のより詳細な例示を行うべきではないか。 現実に企業で生じている将来減算一時差異の内容を、具体的に調査したデー タに基づき、例外規定をより多く示してほしい。 質問5 <コメント> 同意しない。 漠然と「回収可能性が合理的に説明できる場合」とあるが、何を満たせば「合 理的か」の判断が難しい。企業の中長期計画(通常5年が最長と考えられる) を超えた期間の課税所得の見積りを合理的と説明するのは難しいと考えられる ことから、この規定は削除したほうがよい。 質問6 <コメント> 同意しない。 「繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合」が明確で 2 なく、業績の悪化した状況での繰延税金資産の計上の判断に実務上の混乱が生 ずる可能性が高い。このような例外規定は不要ではないか。 繰越欠損が毎期存在するような(分類4)の企業では、とくに、当該企業の 将来性に対する経営者の判断と監査人の判断が相違することが予想される。楽 観的な経営者の予想が実現しなかった場合の投資家(および市場)の期待損失 は、監査人が回収可能性を保守的に予想して外れた場合の期待損失と比較して 大きいと考えられるので、このような主観的な分類変更条件は設けない方が社 会的な損失は小さいと考える。 質問7 質問7-1 <コメント> 現行の注記では、純損失の場合に税率の調整表が開示されないが、期間比較 上有用な情報と思われるので、開示すべきではないか。 また、重要な繰延税金資産(項目別)について、企業の分類に関する情報を 要約したものを開示した方がよい(縦軸:発生項目、横軸:分類、各セル:該 当企業の繰延税金資産合計金額)。 質問7-2 <コメント> 「(分類3)に該当する企業における 5 年の超える見積もり可能期間に関する 取扱い」や「(分類4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類2)又は(分類 3)に該当する取扱い」には反対である。 質問8 <コメント> 同意する。 質問9 <コメント①> 「適用指針(案)」で中核的な役割を果たしている「スケジューリング」とは何 かが明確ではない。 3項(5)において「スケジューリング不能な一時差異」を先に定義している が、 「スケジューリング可能な一時差異」を明確にし、それ以外を「スケジューリ ング不能な一時差異」と定義すべきである。 3 <コメント②> 「適用指針(案)」32 項について、従来監査委員会報告第 66 号では「将来の業 績予測は、事業計画や経営計画が原則として、取締役会や常務会等の承認を得た ものが必要である」と規定されていたが、将来の会計上の見積りに関する事項の 重要性が増している昨今で、その規定を取り外し安易に正式な承認を得ていない 内部資料の利用を可能とすることは適当ではない。 <コメント③> 投資家の観点から改正の要否を検討することが必要である。 以上 4
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