短答特別講座・財表(2015.12) 第1章 財務会計総論 9 連携利益観(連繋利益観) 連携利益観(連繋利益観)とは、損益計算書で計算された期間利益が貸借対照表における期間利益と一致する関係(クリー ン・サープラス関係)にあることを前提とした利益観をいう。 クリーン・サープラス関係…ある期間における資本の増減(資本取引による増減 を除く)が当該期間の利益と等しくなる関係 貸借対照表(期首) 負 債 資 産 純資産 (期首) 貸借対照表(期末) 損益計算書 負 債 費 用 純資産 資 産 純資産 (期末) 貸借対照表観としての動態論は、 収益費用アプローチを別角度か ら表現したものである 利益観 収 益 (期首) 期間利益 連携 期間利益 『企業会計原則』では財務諸表のうち 損益計算書を重視しており、収益費用 アプローチに基づいていたといえる <収益費用アプローチと資産負債アプローチ> 収益費用アプローチ 資産負債アプローチ 期間利益=一会計期間における企業の業績を示す測定値 期間利益=一会計期間における企業の富の増加を示す測定値 一会計期間の成果たる収益に、これを獲得するための努力(犠 資産と負債の差額として定義される純資産の一会計期間にお 牲)たる費用を対応させて、両者の差額を利益とする ける変動額を利益とする 主要課題 = 企業活動の効率性を明らかにすること 主要課題 主要課題 = 企業の富を明らかにすること 企業は利益獲得を目的としているため、成果たる収益と努力 企業の富は純資産であり、それは一定時点の資産と負債の差額 (犠牲)たる費用との差額である利益が効率性の尺度になる である ↓ ↓ したがって、収益・費用の計算を会計の主要課題とする したがって、資産・負債の計算を会計の主要課題とする (収益・費用の定義、認識・測定基準が中心的課題) (資産・負債の定義、認識・測定基準が中心的課題) 期間収益 - 期間費用 = 期間利益(純利益) 期末純資産額 - 期首純資産額 = 期間利益(包括利益) 収益費用アプローチによる期間利益は、成果たる収益と努力 資産負債アプローチによる期間利益は、期首純資産額と期末純 利益の計算式 (犠牲)たる費用との期間的対応の結果算出される「純利益」 資産額の差額で求められる「包括利益」 業績指標性はない ↓ ↓ 利益はフローとしての収益・費用を基礎として定義される 利益はストックとしての資産・負債を基礎として定義される 中心概念 収益及び費用 資産及び負債 主要財務諸表 損益計算を重視する ⇒ 損益計算書が主要財務諸表 純資産の計算を重視する ⇒ 貸借対照表が主要財務諸表 貸借対照表(期首) 負 債 (従) 資 産 (従) 連携関係 貸借対照表は、損益計算書に 収益・費用を記載した後の未 解消項目を集めた一覧表と して、損益計算書に従属する 純資産 (期首) 貸借対照表(期末) 損益(純利益)計算書 負 債 (従) 資 産 (従) 純資産 (期末) 純資産 (期首) (期間利益) 費 用 (主) 貸借対照表(期首) 負 債 (主) 資 産 (主) 損益(包括利益)計算書は、純 資産の変動額として捉えられ た利益の構成要素を示す財務 諸表として位置付けられる 純資産 (期首) 貸借対照表(期末) 損益(包括利益)計算書 負 債 (主) 収 益 (主) 連携 期間利益 (純利益) 資 産 (主) 純資産 (期末) 純資産 (期首) 費 用 (従) 収 益 (従) 期間利益 連携 (期間利益) (包括利益) ・資産と負債の評価が損益計算の結果として導かれる場合には、貸借対照表と損益計算書は完全に連繋しており、純利益と包括利益との間に差 異はない。 【H20B○】 ・収益費用アプローチからは、将来の期間に影響する特定の費用は、将来の収益との対応を考慮したうえで費用配分の原則に従って、負債とし て計上しなければならない。 【H23①A×】 ・損益法の基礎となる収益と費用は収益費用アプローチにおいて会計上の中⼼概念とされ、他⽅、純資産の計算要素である資産と負債は、資産 負債アプローチにおいて会計上の中⼼概念とされている。 【H24①A○】 K.Watanabe@LEC 9
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