『仕事観』と『職業観』”…

雑感
『仕事観』と『職業観』”…
最近、人と話している中で「今の若い人たちは、職業意識(仕事意識)がなっていない!」とか、「倫
理観がなっていない!」などの言葉を聞く機会が多いです。[特に中高年世代から]
「倫理」については、東京海上日動リスクコンサルティング(株)〈2008月6月TRC
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EYE vol.185〉 が「社員教
育に提言」としてレポートが発表されています。概略ですが、倫理観(道徳観)というものが個々人の心
の中に存在するものであるがゆえに、研修を行ったとしても成果がなかなか見えなくまどろっこしく魅力
的に感じないかもしれないが、ひとたび不祥事などが起きた場合はその代償は教育費用の何十倍、何百倍
となると。ですから、企業は社員の心の充実向上に大きな投資をすべきであると。スキル教育、ノウハウ
教育だけではなく心(人)の教育を取り入れることを考慮すべきである。「知識・技能」+「倫理観(道
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徳観)【人の部分】」のバランスが必要であると提言しています。
『仕事観』については、ほとんど書籍もありませんし、研究レポートもありません。『職業観』につい
ては、大学の先生などが大学生などの就活などのアンケートを基にしたレポートや国やいろいろな研究所
による調査データがあります。また、国産比較のデータもあります。
『仕事観』『職業観』をビジネス雑誌やネットなどで調べていっても、人それぞれでこれだというものも
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ありません。下記は、私の考えおよび思っていることです。
「あなたは、何のために働くのですか…?」。
「いったい私は何のために仕事をしているのだろう…?」。
この素朴な質問が『仕事観』とつながってくると思います。そのような質問をすると、「自分(家族)の
生活の糧を得るため」「夢や希望を叶えるため」「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」「幸せな人
生を送るため」「自分の能力を向上させる」「人として成長するため」などいろいろな意見が出てきます。
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仕事観・職業観の『観』の意味を調べてみると、広辞苑や国語辞書では「考え方。ありさま。様子。見た
目」。漢字辞書では「ありさま。様子。姿。考え。意識。見方」などと示されていました。最終的には自
分をつくる基本ではないかと思います。同じように『観』の付く言葉には、価値観・人生観・死生観・結
婚観・先入観・大局観・国家観などなどがあります。
『仕事観』は個々人の心の部分であり、自身の人生観ともつながってきます。自分の人生においての仕
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事の位置づけ、そして仕事に対する考え方・姿勢・意識ではないでしょうか。形成される過程では、やは
り両親の影響が大きいと思います。また、他人では自分が師と思っている人とか信頼している人などの話
を聴いたり、行動などを見たりすることも影響されるのではないでしょうか。例えば、少し前までの日本
では家庭を顧みないで仕事が命的に長時間労働をし滅私奉公的な働き方が多かったです。その結果、反面
教師として学んだ若い世代層の仕事に対する考え方が変化したのではないでしょうか。物質的なことや金
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銭的なことは恵まれましたが、心のどこかで幸せ感が薄いのではないでしょうか。
よく「仕事がつまらないから転職したい(辞めたい)」などの話を聴くことがありますが、仕事は本来大
変なことや、つまらないことなど多くあります。ひょっとしてつまらなくしているのは、その人の仕事観
の問題ではないでしょうか。ですから、転職を繰り返す人は次から次へと理由は「仕事がつまらないから」
では。私も、仕事を楽しむと考えています。大変なこと、イヤなことなど多々ありましたが、楽しみは与
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えてくれるものではなく自分でつくっていくものと考えています。ですから仕事の中でも、この仕事は楽
しい、この仕事の中のこの部分が楽しいと思いながら今まで仕事をしてきました。仕事を“させられてる
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”のか“する”のかによっても仕事をすることによってのストレスの溜め方が違ってきます。
欧州では、仕事はお金を稼ぐために働き、その稼ぐお金はリタイア後に楽しむためと言います。そのリタ
イアも早い年令で仕事を離れ楽しむそうです。人生を大きく見て夫婦および家族と過ごす時間は仕事をし
ている時間より長いと考えてのことだそうです。ですからバカンスを大切にしているのかもしれません。
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『仕事観』がベースとなり、次に来るのが『職業観』ではないでしょうか。
『職業観』は、どのような仕事であっても基本は変わらないと思いますが、仕事の種類(職種・業種)
によって少しずつ変わってくると思います。職種・業種に対する考え方。日常従事する業務に対する考え
方・姿勢・意識ではないでしょうか。別の言葉で表すと「使命感」ではないかと。看護関係で言うと、看
護観に相当します。公務員であれば公務員という職種に対する姿勢や考え。警察官であれば警察職員とし
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ての姿勢。個人情報などを扱うIT関連の社員であればその職務に対する姿勢。この基本が全員とはいい
ませんが出来ていないので不祥事を起こすのではないでしょうか。ベネッセにおける個人情報漏えい事件
や、学校の先生が子どもたちの情報を持ち歩き紛失する事件など個人情報に携わる職業に対する考え方お
よび意識がなかったのか、薄かったのか。その業務に携わる姿勢の問題ではないでしょうか。
高校生や大学生がインターンシップ制度で就業体験をしますが、『職業観』が形成されるプロセスとして
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大切と思います。その体験を元に高校生であれば大学の専攻を選択する糸口にもなります。また、大学生
は就活に関し業種を選択するヒントにもなります。組織側としても大企業、中小企業、それと業種(病院
や高齢者施設も含め)など関係なくどんどんインターンシップ制度を導入することも採用のミスマッチが
少なくなるのではないでしょうか。
『仕事観』と『職業観』がミックスされ『働き方』という一般的な言葉で言われていると思います。新
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人社(職)員などの講演などで、これからいただく給料を日給および時給レベルまで落とし計算をさせる
時があります。計算が終わるとメンバーの中に「アルバイトの方が時給が高い」という人が現れます。し
かし、その後の説明の中で病気やケガをした時の健康保険や税金を払うことにより社会貢献をしている、
また少しずつかもしれないが給料の高くなっていく、そして仕事のスキルも向上していくなどの話をして
いくと納得感が出てきます。そこから『仕事観』と『職業観』に話題を広げていくことがあります。決し
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て押しつけることは出来ませんがひとつのヒントとして考えてほしいと思っています。
ちなみに2005∼2006年の「今の仕事に満足していますか?」という調査では、スイス・アイルランド・メ
キシコなどが90%以上の満足で、ロシア・韓国は70%を切って低いランクになっています。日本は7
3%でやはり下位の方です。
また、企業の採用評価ポイントは、①「熱意・意欲」②「性格・人柄」③「考え方・価値観」が上位3項
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目で、さらに「礼儀・マナー」「健康・体力」「一般常識」「風貌・雰囲気」などでした。具体的には、①
コミュニケーション能力 ②行動力 ③向上心 ④責任感 ⑤誠実さなどでした。
40才代以上において仕事を有意義に、そして楽しく働きがいを感じるようにするためには、20才代で
『仕事観・職業観』を形成されることが必要ではないかと考えます。忘れてはならないのは、プライベー
トも含めてです。仕事時間というのは、人生時間の3分の1くらいです。
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みなさんは、『仕事観・職業観』についてどう考えていますか。
また、お子さんのいる方はどのように話し、どのようなモデルを示していますか。
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