KW-1062に 関す る薬理学 的研究 第2報 生 体 内 動 態

VOL.
25
CHEMOTHERAPY
NO.7
Aminoglycoside系
抗 生 物 質:
1863
第2報
KW-1062に
関 す る薬 理 学 的 研究
生 体 内 動 態
荒 谷 春 恵 ・山 中 康 光 ・建 石 英 樹 ・河 野 静 子
広 島大学医学 部薬 理学 教室
新Aminoglycoside系
抗 生 物 質KW-1062に
関する
薬 理 学 的 研 究 に つ い て,第1報1)で
は,一 般 薬 理 作 用 を
検 討 し,そ の結 果 をGentamicinな
ど の そ れ と比 較 し
た。 つづ い て,第2報
と し て,そ の体 内消 長 を ラ ッ トお
よび マ ウス で の体 内分 布,尿
中排 泄,胎
仔 内 移 行,さ
ら
ア ン モ ニ ア= 1:1:1の
下 層 を展 開剤 と して,16∼18
間 展 開(10∼11
て得 ら れ た 薄 層 を,B.
PCI
219株
cm)し
洋濾 紙No.51
Aを
で16∼18時
め,標 準 品 のRfと
lifeを 体 内 消 長 を 知 る一 つ の指 標 と して,
4.
と,さ らに,Gentamicin2)と
射 後,2時
1.
供 試 薬 物: KW-1062(協
用 い,使
す る際 に は,蒸 留 水,生 食 水 ま た はM/15燐
(pH 8.0)で
2.
用
酸緩 衝 液
後(週 齢 6∼7)の
重209前
健 常 雄 性Wistar系
ラ ッ トお よ び 体
後(週 齢 5∼6)の 健 常 雄 性ddN系
マ ウス の そ
れ ぞ れ1群5∼7匹
に つ い て,KW-1062の5お
10 mg/kg(原
よ び2mg/ml)を
液1お
mg/kgを
間 に,頸 動 脈 を 切 断 して採 血 後,す
よ う留 意 した),胎
よび
離
じみ 出 る血 清 を毛 細 管 で 集 め た)お
秤 量 し,M/15燐
酸 緩 衝 液 で ホ モ ジ ネ ー ト(20%)と
し,遠 心 分 離 して得 ら れ た上 清 お よび血 清 に つ い て,生
物 学 的 活 性 を 測 定 した 。
尾 静 脈 内,大 腿
5.
結 合 率 に つ い て の 実 験:ヒ
分,20分,
とKW-1062の
60分 お よび120分
よ び 他 側 の 大腿 筋 肉),経
回 腸 を 摘 出 し,出
で)後,M/15燐
20%)を
後 に,頸 動 脈 を
筋 肉(注 射 部 位 お
口投 与 群 で は十 二 指腸 お よび
酸緩 衝 液 を 加 え て,ホ モ ジ ネ ー ト(5∼
作 り,3,000rpm
(950×g)で15分
(Size
間遠心分離
8/32)(直
して 得 られ た 上 清 な らび に血 清 に つ い て,生 物 学 的 活 性
尿 中 排 泄 に 関 す る実 験 は,ラ
ッ トに 予 め,ほ ぼ15ml
1062の10
μg/ml,
ル ム,ま
ml)を,尾
mg/
静 脈 内 あ る い は大 腿 筋 肉 内 に 注 射 し,0∼30
入 れ,予
離
て,線
し た。
内 に 入 れ,氷
mg/kg適
用 ラ ッ トの蓄 尿 を 試 料 と して,ス ポ ッ トフ ィル ム(東 京
化 成)に5μ1塗
布 し,ク
ロ ロ ホ ル ム:メ タ ノー ル:濃
合率 お よび 再 生 率 を 求 め た 。
M/15燐
栓 付 遠 心 管 に,KW-
酸 緩 衝 液(pH
2.0∼9.7)
間 放 置 し,液
lipidは,再
rpm,15分
間遠心分離 し
の 操 作 を,水
層が無色 とな
繰 り返 し,上
室 に 保 存 し,使
層 のlipidを
用 の 際 に は,室
状 と な っ た も の を 用 い た 。1度
び 氷 室 に 保 存 し な か っ た)1mlを
壷 機 で60回/分,1時
間,室
ッ トよ り 分
重量の生食水を加 えてホモ
で5,000
維 組 織 な ど を 除 き,こ
る ま で,約3∼4回
2
酸 緩 衝 液 を 飽 和 した ク ロ ロホ
摘 出 し た 脂 肪 組 織 に,等
よび8∼24時 間 の 蓄 尿 を 採 取 し,M/15燐
酸 緩 衝 液 で20
∼200倍 に 稀 釈 した もの に つ い て ,生 物 学 的 活 性 を 測 定
60
液 お よび 残 液 とそ の 稀 釈 液 の生
めM/15燐
ジ ネ ー トを 作 り,4℃
尿 中 代 謝 物 質:上 述 のKW-1062の50
me-
た は ラ ッ ト よ り得 ら れ たlipid(ラ
分, 30分 ∼1時 間, 1∼2時 間, 2∼4時 間, 4∼8時 間 お
3.
(Visking
用 い た 遠 心 限 外 濾 過 分(1,800×9,
分 配 係 数 に つ い て の 実 験:共
mlを
液1∼10
g/dl)
tubing
ミ コ ン ・ フ ァ ー ・イ ー ス ト ・
行 な い,濾
物 学 的 活 性 か ら,結
分後 に,KW-1062の5∼50
g/dl)
cellulose
1/2幅1.0cm)
CF-25(ア
リ ミ テ ッ ド)を
の 常 水 を 経 口 ゾ ンデ を 用 い て,強 制 的 に 負 荷 し,20∼30
mg/kg(原
径0.6cm,
cones
6.
ト 血 漿(7.0
シ ア ル ブ ミ ン(3
用 い た 平 衡 透 析 法(4℃)とAmicon
分,4℃)で
を 測 定 した。
g/dl),ウ
結 合 率 を,Seamless
Company)を
mbrane
来 るだ け す み や か に 秤 量(1mgま
よび 羊 水 を 分
採 取 後,胎 仔 臓 器 は 同腹 の もの を 一 括 し,そ れ ぞ れ
お よ び ウ シ 血 清(7.2
30分,
みやかに
め 滅 菌 し たpaper
仔 血 清(同 腹 の 胎 仔 の 頸 動脈 を 切 断
筋 肉 内 あ る い は背 部 皮 下 に注 射 また は 経 口 投 与 し,10
切 断 して 採血 後,肝 臓,腎 臓,肺 臓
尾静脈内 ま たは筋肉内注
discに 採 取 し,直 ちに 密 封 し,出 来 る だ け乾 燥 し な い
し,に
溶 解 して 用 いた 。
体 内分 布 お よび 尿 中 排 泄 に つ い て:体 重200g前
もと
比 べ 同 定 した 。
開 腹 して,胎 盤,胎 仔,膀 帯 血(予
和 醸 酵)を
間浸
胎 仔 内 移 行:自 家 妊 娠 ラ ッ ト(第20日)1群5匹
に,KW-1062の5
実 験 材 料 お よび 実 験 方 法
で30分
間 培 養 し,菌 発 育 阻 止 像 か ら,Rfを
静 脈 内投 与 時 の血 清 内濃 度 の それ を,他 の投 与 路 の も の
I.
しい た 上に 重 ね,4℃
透 させ た 後,濾 紙 お よび ス ポ ッ トフ ィル ムを 除 き,37℃
分 配係 数 につ い て検 討 した 。
比 較 した。
subtilis
を試 験 菌 と し た,薄 層 菌 寒 天 上 に,滅 菌 東
に,体 内 消 長 に深 い関 連 性 の あ る,血 清 蛋 白 との結 合,
な お,half
時
密閉 容器
温 に2∼3時
液 状 に した
入 れ,振
温 に お い て 振 盪 し た も の を,
CHEMOTHERAPY
1864
3,000 rpmで15分(4℃)間
遠 心 分 離 を 行 な い,水 層
の生 物 学 的 活 性 を,同 一 操 作 で 行 な ったM/15燐
…
酸緩衝
7.
生 物 学 的 活 性 測 定 法:検
定 菌B.
subtilis PCI
子浮 遊 液)を 用 い た 薄 層 カ ップ法 お よ び薄 層
disc法 で,上 述 の試 料 に つ い て,そ
そ の 際 の 消 去 係 数 は0.0842
お よ び0.0185
の生 物 学 的 活 性 を
測 定 した。
て,KW-1062は
実
験
成
μg/min (im-血 清 内 濃 度)な
績
b.
血 中 か らす み やか に 消失 し,ま た,筋
臓 器 内分 布:上 述 の ラ ッ トに お け る 臓 器 内 分 布
2お よびFig.1に
ほ ぼhalf
しめ す とお りで あ る。
lifeを しめ す 時 間,静 脈 内 注射 群 で は10
1.
体 内分 布
分 お よび 筋 肉 内 注 射 群 で は20分
1)
ラ ッ トの場 合
脈 内 注 射 群 で は,血 清>腎 臓>肺 臓>筋
a.
half life:体 重200g前
ラ ッ ト1群5∼7匹
後 の 健 常 雄 性Wistar系
に,KW-1062の5
脈 また は大 腿 筋 肉 内 に 注射 後,10分,
分 お よび120分
で のhalf
15分,
尾静
30分,
lifeは,Table
60
1に 示 す とお りで あ る◎
清 内濃 度 で は8.23分(iv)お
た,筋
肉 内濃 度 で は20.56分
Table
Table 2
1
Half
よ び
で あ り,
life
Distribution
で の 臓 器 内濃 度 は,静
筋 肉 内 注射 群 で は,腎 臓>血 清>筋
の血 清 内 濃 度 お よび 注 射 部 位 筋 肉 内濃 度
half lifeは,血
37.26分(im),ま
mg/kgを
らび に
あ った。 した が っ
肉 内 注 射 に よ り,す み や か に 吸 収 され る。
は,Table
II.
1977
μg/min (iv-血 清 内濃 度)
0.0337 μg/min (im-筋 肉 内濃 度)で
液 の み の もの と比 較 し,分 配 係 数 を 算 出 した 。
219株(胞
SEPT.
臓>筋
肉>肝 臓 お よび
肉(注 射 部 位)>肺
肉>肝 臓 の 順 で あ る。
す なわ ち,腎 臓 を 除 き,臓 器 内 濃 度 は 血 清 内 濃 度 よ り
低 値 で あ り,と くに,肝 臓 内 濃 度 は きわ め て 低 い。
2)
マ ウ ス の場 合
a.
half life:体 重20g前
5∼7匹
of KW-1062
に,KW-1062の5
in rats
of KW-1062 in rats
後 のddN系
mg/kgお
マ ウ ス1群
よび10
mg/kgを
and mice
(5 mg/kg)
(ƒÊg/m1
or
g)
VOL.
25
NO.
CHEMOTHERAPY
7
Fig. 1
Distribution
1865
of KW-1062 in rats (5 mg/kg)
i.m.
i.V.
Table
3
Distridution
of
KW-1062
in
mice
(ƒÊg/ml
or
g)
CHEMOTHERAPY
1866
大 腿 筋 肉 内 ま た は 背 部 皮 下に 注 射,あ
後,10分,
20分,
30分,
60分
る い は 経 口投 与
お よ び120分
の 血清 内 濃
度 お よ び 注 射 部 筋 肉 内 濃 度 で の,halflifeはTable
half
lifeは,血
1
よ び18.24分
13.25分
mg/kg-im),
22.8分(5
(10 mg/kg-sc)な
(5 mg/kg-im)お
よ び21.66分
あ る 。 そ の 際 の 消 去 係 数 は,血
0.0221
μg/min
kg-im),
(5 mg/kg-im),
0.0303
μg/min
μg/min
(10 mg/kg-sc)な
μg/min
(5 mg/kg-im)お
kg-im)で
24時
(10 mg/
ら び に 筋 肉 内 濃 度 で は0.0523
群 で は0∼2時
μg/min
以 上 の 成 績 を ラ ッ トの そ れ と 比 ら べ る と,ほ
皮 下<筋
lifeで
の,投
(10 mg/
肉 内 の 順 で あ り,消
る 結 果 で あ っ た 。 な お,投
ぼ同
与路 に よ る 差 は,静
あ ぎ ら か に 低 く,し
の で,half
b.
life検
3に
77.39%で
あ り,投
に よ る と 思 わ れ る 差 は,ほ
脈 内 注 射 群 で は,0∼30分
間 に そ れ ぞ れ,総
に,筋
と ん どみ ら
肉 内注 射
排 泄 蹟:の半量:が 排 泄 さ
ぼ30%の
1062が
も の は,24時
一程
50 mg/kg皮
下 注 射 し た ラ ッ トの 尿 に つ い て,薄
ロ マ ト グ ラ ム よ り,代
Fig. 2 Bioautograms of KW-1062
solvent ; CHC13 : CH3OH : N114011=1 : 1 : 1
(bottom layer)
adsorbent ; Spot film (Tokyo Kasei)
test org. ; B. subtilis PCI 219
の
述 の 投 与路 群 に 比 べ,
管 か らは 吸 収 され 難 い
の マ ウ スに お け る 臓 器内 分 布
清 内 濃 度 は,10分
をpeak
と して 漸 滅 し,臓 器 内濃 度 は ほ ぼ 血 清 内 濃 度 の そ れ に 比
例 し,腎 臓 で 血清 よ り高 値 で あ った 他 は,い ず れ も低 値
で あ った 。
血清 内 濃 度 で ほ ぼhalf
分 布 は,筋
lifeを しめ す 時 間 で の臓 器 内
肉 内 注 射 群 で,筋
>筋 肉>肺 臓>肝 臓
肉(注 射 部)≒ 腎 臓 ≒血 清
お よび 皮 下 注射 群 で,腎 臓>血
清
>肺 臓>筋 肉>肝 臓 の順 で あ った。
一 方 ,経 口投 与群 で は,血 清 内 お よび 臓 器 内 濃 度 は,
10∼120分
2.
の 間 で ほ と ん ど 冶は み られ な か っだ,
尿中排泄
Table
4
Excretion
of
間
KW-1062
into
urine
of
層 ク
謝 物 質 の 有 無 に つ い て 検 討 した。
示 す とお りで あ る。 筋 肉 内注 射 群 お よ び
皮 下注 射 群 の い ず れ も,血
伊後
採 尿 時 間 で の 濃 度 は 表1了誌 な か
討 の 対 象 とは しな か った 。
臓 器 内 分 布=L述
は,Table
な お,投
述 の よ う に,KW-
与 量に よ る差 は ほ と ん ど み ら
た が っ て,腸
間,
間の尿
以 上貯 留 す る も の と 考 え ら れ る。
去係数はそれをほぼ裏 付け
μg/mlで,上
∼1時
め 経 口的 に 水を 負
体 内 で 代 謝 さ れ 難 い の で,ほ
脈 内く
口 投if.の 際 の 血 清 内 濃 度 で は,10∼120分
間 で,1.90∼1.11
示 す とお りで あ る
れ て い る 。 し か し な が ら,後
れ な か った 。
一 方 ,経
30分
間 お よび8∼24時
間 中 の 総 排 泄 吊:は,61.55∼
れ な い が,静
よ び0.0320
4∼8時
4に
与 路 お よ び 投与量
よ び0.0379
(5 mg/kg-sc)お
間,
っ た 、,
あ る。
度 で あ る 。half
2∼4時
荷 し た 。 し た が っ て,各
(10mg/kg-
μg/min
ラ ッ ト1群5
筋 肉 内 注 射 後,0∼30分,
間,
1977
静 脈 内 注 射 お よ び5-
締 時 間 で の 採 尿 を 必 要 と し た の で,予
清 内 濃 度 で は,
0.0238
mg/kgを
中 排 泄 は,Table
mg/kgmg/kg-sc)お
らび に 筋 肉 内濃 度 で は
im)で
後 の 健 常 雄 性Wistar系
50 mg/kgを
1∼2時
清 内 濃 度 で は31.22分(5
29.0分(10
体 眞190g前
匹 に,KW-1062の5
に し め す と お り で あ る。
im),
SEPT.
rats
Bioassay
(%)
VOL.
25
NO.
CHEMOTHERAPY
7
Table 5
Migration of KW-1062
rats (5 mg/kg, 2 hrs)
ラ ッ ト尿5μ1を
to fetuses
of
Table 7
ロホ ル ム:メ タ ノー ル:濃
ア ンモ ニ ア=1:1:1の
間展 開 した もの に つ い て,生
of KW-1062
下層
物 学
内へ は成 熟 ラ ッ トの そ れ よ りも,さ らに 低 濃 度 がみ られ
た に 過 ぎ な い。
4.
体 内分 布 に 関与 す る1,
KW-1062の
間 で は,ほ ぼ 同一 位 置 に 阻 止 像 が み ら
れ た。
3.
coefficients
B. a/P. c. (lipid) r =0.9060
B. a/P. c. (CHC13) r=0.3801
P. c. -CHCl3/lipid r=0.7492
ロ
的 測 定法 で,そ の菌 発 育 阻 止 像 を 求 め た。Fig.2は そ の
一 部である
。 対 照 と して 用 い たKW-1062のRf
0.333
に対 し,0∼2時
Partition
(Bioassay)
塗 布 した ス ポ ッ トフ ィル ムを,ク
を 用 い て,10∼18時
1867
2の 因 子 に つ い て。
体 内分 布 に も っ とも深 い 関 連 を もつ,血
清 蛋 白 と の結 合 お よび 分配 係 数 に つ い て 検 討 した 。
1)
胎 仔 内移 行
自家 妊 娠Wistar系
5 mg/kgを
ラ ッ ト,1群5匹
に,KW-1062の
尾 静 脈 内 また は大 腿 筋 肉 内 に 注射 後,2時
討 したKW-1062と
間 で の母 体 血 清,胎 盤,膀 帯 血,胎 仔 血 清,胎 仔臓 器 お
よび 羊 水 内濃 度 お よび 移 行 率 は,Table
血 清 蛋 白 との結 合
遠 心 限 外 濾 過 法(4℃)お
ヒ ト血 漿,ウ
ブ ミン と の結 合 状 態 は,Table
5に 示 す とお り
で あ る。
KW-1062の10
μg/mlの
心 限 外 濾 過 法 で は10.57%で
静 脈 内注 射 群 で は,膀 帯 血>胎 盤>胎 仔 血 清>羊 水>
よび 平 衡 透 析 法(4℃)で
ア ル ブ ミンで は19.16%お
検
シ血 清 お よび ウ シ ア ル
6に 示 す とお りで あ る。
ヒ ト血 漿 との 結 合 率 は,遠
あ り,ウ シ血 清 お よび ウ シ
よび27.82%で,そ
の うち
胎 仔 肺 臓>胎 仔 腎 臓 の順 で あ り,筋 肉 内注 射 群 で も ほ ぼ
の ほ ぼ30%が
蛋 白結 合 の解 離 に よっ て,生 物 学 的 活 性
同 様 で あ るが,胎 仔 臓 器 内 濃 度 は 痕 跡 程 度 で あ った 。 母
を 再 生 す る もの で あ つ た。 方 法 を 変 え て,平 衡 透 析 法 の
体 血 清 内 濃 度 との 比 か らみ た 移 行 率 は,膀 帯 血 で36.79
場 合 に は,結 合 率 は さ らに 少 な く,再 生 率 は ほ ぼ そ の
%
30%で
(im)お
14.67%
よび66.55%
(im)お
って,KW-1062は
(iv)な
よ び26.69%
ら び に 胎 仔 血清で は
(iv)で あ った 。 し た が
ラ ッ ト胎 仔 内へ は 移 行 す るが,臓
Table
6
Binding
器
あ った。 した が って,KW-1062は
血 清 蛋 白 と結
合 す る が,そ の 程 度 は きわ め て 少 な く,他
glycoside系
of KW-1062
to serum
のAmino-
抗 生 物 質3)と 大 略 同 一 傾 向で あ る。 なお,
protein
CHEMOTHERAPY
1868
協 和醸 酵 の 研 究 陣4)は,ゲ
で,ヒ
SEPT.
ラ ッ ト尿 中 代 謝 物 質 の証 明 は,ク
ル濾過法 お よ び 平衡透 析法
トア ル ブ ミンお よび ウ シ ア ルブ ミ ン との結 合 状態
ー ル:濃
ア ン モ ニ ア=1:1:1(下
1977
ロ ロホ ル ム:メ タ ノ
層)を 展 開 剤 と した
を検 討 し,ウ シ アル ブ ミンで は ヒ トア ルブ ミ ンの そ れ に
薄 層 ク ロマ トグ ラ ムか らは 出来 なか った 。 同様 の事 を 日
比 らべ,結 合 率 が 高 い と述 べ てお り,私 ど も の結 果 と同
一 傾 向 で あ った。
大 外 科6)お よび 協 和 醸 酵 の 研 究 陣7)に よ っ て も報 告 され
2)
分配 係数
ラ ッ ト胎 仔 内 移 行 率(2時
KW-1062の1ipid(ラ
9.7)お
ッ ト)/燐酸 緩 衝 液(pH
よび クロ ロ ホ ル ム/燐 酸 緩 衝 液(pH
対 す る分 配 係 数 は,Table
pH2.0∼9.7で
pHに
て い る。
2.0∼9.7)に
6.0∼2.0で
で あ り,最 高値 を しめ すpH8.0の
な った。 分 配 係 数 で は,こ
れ た が,ク
は
は ほ ぼ一 定
そ れ に 比 ら べ,ほ
の生 物 学 的 活 性 と
lipid(ラ ッ ト)/燐酸 緩 衝 液 との 間 で は,ほ
ぼ相関がみ ら
ロ ロホ ル ム/燐 酸 緩 衝 液 と の間 で は 必 ず し も
KW-1062の
ラ ッ トお よび マ ウ ス で の 体 内動 態 を検 討
で あ り,GM23)
分 に 比 べ,や
次 に,筋
mg/kg静
5 mg/kg静
は0.0842
0.0612 μg/minに
37.26分
lifeは5
脈 内 注射 群
脈 内注 射 群 の6.85
や長 くな る傾 向 が み られ た 。 そ の際 の 消去
係 数 はKW-1062で
よ び36.79
らび に 胎 仔 血 清 内 濃 度 で26.69%
(im)で
(iv)お よ
あ った 。 そ の 際,胎 仔 臓 器 内濃 度 お
よび 羊 水 内 濃 度 は 低 値 で あ った 。
体 内 消 長 に 深 い 関 連 を もつ 血 清 蛋 白 との結 合 は,き わ
め て 少 く,ま た,ヒ
ト血 漿 と の結 合 率 は10.57%で
の に 対 し,ウ シ血 清 で は19.16%で
ある
あ り,種 差 に よ る結
合 率 の 相 違 が み られ た 。 こ の よ うな,結 合 率 が低 く,ま
た,種 差 の み られ る事 実 は,協 和 醸 酵 の研 究 陣 に よ る報
lipid(ラ
考 按 お よび 結 語
した 。 ラ ッ トで のhalf
で8.23分
体 血 清 内濃 度
(iv)お
告 と同 一 傾 向 で あ る。
相 関 は み られ な か った。
III.
(im)な
び14.67%
8.0∼6.0で
間 値)は,母
の 比 よ り,膀 帯 血 中 濃 度 で66.55%
%
7に 示 す と お りで あ る。
の 生 物 学 的 活 性 は,pH
ほ ぼ 比 例 し て低 下 し,pH
ぼ45%と
2.0∼
比 らべ,高
μg/minで
い値 を しめ した 。
肉 内 注射 群 の 血 清 内 濃 度 で のhalf
お よび 注 射 部 位 で のhalf
lifeは
lifeは20.56分
緩 衝 液 に 対 す る分 配 係 数 は,そ れ ぞ れ0.26∼0.934お
び0.1356∼0.4481で,い
であ
ず れ も1.0以
よ
下 で あ り,分 配
係数 か らみ て も脂 溶 性 の 少 い 事 が うか が わ れ るが,lipid
(ラ ッ ト)/燐酸 緩 衝 液 で は,pHが
も1.0に
あ り,GMの
ッ ト)(燐酸 緩 衝 液 お よ び クロ ロ ホ ル ム/燐酸
高 くな る と,分 配 係数
近づいた。
以 上 の 事 実 よ り,KW-1062は
ラ ッ トお よび マ ウ スで,
筋 肉 内 注 射 で よ く吸 収 され,血
中か ら比較 的速 や か に 消
失 す るが,吸 収 の早 さ は静 脈 内注 射>皮 下 注 射>筋
肉内
り,筋 肉 内注 射 に よ りよ く吸 収 され る こ とが うか がわ れ
注 射 の 順 で あ り,血 清 内濃 度 お よび臓 器 内濃 度 は,投 与
た。
量 に ほ ぼ 比 例 し,血 清 内濃 度 に比 らべ 臓 器 内濃 度 は低 値
臓 器 内分 布 は,血 清 内 濃 度 よ りも低 値 で あ り,腎 臓 内
に 多 く,肝 臓 に は 僅 少 の もの が み られ た に 過 ぎ な か っ
た 。 これ ら の成 績 は,放 射 性KW-1062を
用 い た実 験 結
で あ った 。 一 方,経
口投 与 に よ る吸収 は僅 少 で あ った 。
尿 中 排 泄 率(24時
量 は 早 期(2時
間)は
間)に
あ り,そ
の過 半
排 泄 さ れ た 。 ラ ッ ト尿 中 に,代
果5)と よ く一 致 して い る。
一方 ,マ ウ ス で の 筋 肉 内 注 射 お よ び 皮 下 注 射 群 の
物 質 が 証 明 され な か った 。
half lifeお よび 消 去 係 数 は,ラ
は36.79∼66.55%で
ッ トの そ れ に ほ ぼ 類 似
ほ ぼ70%で
ラ ッ ト胎 仔 内 移 行 率(母
謝
体 血 清 内 濃 度 と の 比-2時
あ っ た 。 そ の 際,胎
間)
仔 臓器 内濃 度
し て い る。 投 与路 に よ る吸 収 の 早 さは,静 脈 内 注射 群>
は き わ め て 低 値 で あ っ た 。 血 清 蛋 白 と の 結 合 率 は,ヒ
皮 下 注 射 群>筋
血 漿 で10.57%で
を5∼10
肉 内 注 射 群 の 順 で あ り,さ らに,投 与 量
mg/kgと
度 は,peak値
した 際,血
で は,ほ
清 内濃 度 お よ び臓 器 内 濃
ぼ投 与 量 に 比 例 して い た。 しか
lipidに
あ り,ウ
な る と 分 配 係 数 も1.0に
き ら か に低 値 で あ
1)
が うか が わ れ た。
静 脈 内注 射 群 お
よ び筋 肉 内 注 射 群 の い ず れ に お い て も,ほ ぼ70%で
2)
分,お
間)に 排 泄 され る。
高 く
谷 春 恵:Ami関 す る薬
一 般 薬 理 作 用。
1851∼1862,
塚 正 行:抗
1977
生 物 質 併 用 に 関 す る基 礎
に生 体 内動 態 を 中心 に
第1報
GenSulbenicillinお
よ び Cephacetrilの
ば あ い 。Jap.
半量 は 投 与 後 早 期(静 脈 内注 射 群 で は0∼30
よび 筋 肉 内 注 射 群 で は0∼2時
25:
荒 谷 春 恵,中
的 研 究,特
tamicinと
あ
り,投 与量 あ る い は 投 与 路 に よ る差 はみ ら れ な か った。
そ の際,過
第1報
Chemotherapy
mg/kgを
石 英 樹,荒
抗 生 物 質:KW-1062に
理 学 的研 究
あ り,
献
野 静 子,建
noglycoside系
っ た。 した が っ て,腸 管 か ら の吸 収 が きわ め て 少 な い 事
ラ ッ ト尿 中 排 泄 は,5∼50
山 中 康 光,河
下 で あ り,pHが
近 づ い た。
文
し な が ら,経 口投 与 群 で は,血 清 内 お よ び 臓 器 内 濃 度
は,上 述 の非 経 口投 与 群 に 比 らべ,あ
シ 血 清 で は19.16%で
対 す る 分 配 係 数 は1.0以
ト
J. Antibiotics
29:
1019∼1034,
1976
3)
橋 本 孝 夫:抗
生 物 質 の生 体 内 動 態 に関 す る基 礎 的
VOL.
25
CHEMOTHERAPY
NO.7
研究
第1編
Chemotherapy
4)
佐藤
清,荒
ibid.
5)
25:
6)
血 清 蛋 白 と の 結 合 に つ い て。
21: 38∼44,
1973、
木 義 孝,福
noglycoside系
井 正 憲,丸
抗 生 物 質KW-1062の
1844∼1850,
坂部
睦 美,川
茂 博 大:Ami-
孝,中
山 一 誠,岩
辺 隆 道,大
の 抗 菌 力,吸
1977
佐藤
清,丸
満,村
井 重 富,鷹
田 郁 夫,杉
取
山 博 昭,
科 領 域 に お け るKW-1062
収 ・排 泄,代
す る 検 討 。ibid.
7)
本 英 男,岩
橋
水 足 裕 子,石 山 俊 次:外
抗 菌作用。
出 口 隆 志,石
井 昭 男,皆
刀胎 重,奥 村 修 造:KW1062標
識 体 の 吸 収 ・分 布 ・排 泄 。ibid. 25: 1880
∼1887,
1869
25:
謝 お よ び臨 床 応 用 に 関
2108∼2117,
茂 博 大:KW-1062の
布 ・排 泄 ・代 謝 。ibid.
25:
1977
吸 収 ・体 内 分
1870∼1874,
1977
1977
PHARMACOLOGICAL
STUDIES
AMINOGLYCOSIDE
II.
DISTRIBUTION,
FATE
ON
KW-1062,
AN
ANTIBIOTIC
AND
EXCRETION
HARUE ARATANI, YASUMITSU YAMANAKA, HIDEKI TATEISHI and SHIZUKO KONO
Department
of Pharmacology,
Hiroshima
Hiroshima,
University,
School of Medicine
Japan
Distribution,
fate and excretion of KW-1062, a new aminoglycoside
antibiotic,
were investigated
in rats and mice.
When rats were intravenously
and intramuscularly
injected KW-1062 at a
dose of 5 mg/kg, biological half lives were 8. 23 and 37. 26 min, respectively.
The biological half life
of KW-1062 in the injected site of muscle was 20. 56 min. KW-1062 was well absorbed from muscle
and rapidly eliminated from blood. The serum level and organ levels were proportionally
increased
with the doses applied, and all organ levels were lower than the serum level.
KW-1062 was hardly
absorbed from intestine.
The total amount excreted in 24 hr urine of the rat was 70% of the
injected amount. The cord blood levels were 36. 79 to 66. 55% of maternal serum levels in the pregnant
rats.
The fetal organ levels were very low.
Approximately
10. 57 and 19. 16% of KW-1062 were
bound to human plasma and to bovine serum, respectively.