コールドデータにおける磁気テープの現状と 将来技術

コールドデータにおける磁気テープの現状と
将来技術
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2015年11月26日
富士フイルム株式会社
記録メディア事業部 立川 篤
目次
テープストレージのトレンド
テープへの期待
テープのユーザー事例
テープストレージの特徴
大容量化
低コスト
テープ技術
大容量技術
信頼性向上
利便性
まとめ
2
テープストレージのトレンド
出荷容量は継続的に増加し続けている
富士フイルムの調査結果では、全世界のテープ出荷容量は、2008~
2013年にかけて年率約20%で増加しおり、直近1年ではさらに加速
傾向が見られる。
3
テープに期待されていること
なぜテープを増やすか?
Storage IT Decision Makers, June 2012 北米企業対象調査
データ量の増大
信頼性が高い
高セキュリティ
大容量
パフォーマンスが良い
予算内で運用
コストメリット
他のテクノロジーより簡単
0
10
20
30
40
50
60 %
JEITA Tape Storage Technical Committee
http://home.jeita.or.jp/upload_file/20130924142035_HeGRhaN95v.pdf
4
テープに期待されていること
データ損失の原因
コンピュータウイルス
6%
盗難
9%
自然災害
3%
ハードウェア故障
40%
ソフトウェア故障
13%
Source: David M. Smith, Ph.D., Pepperdine University
人為的ミス
29%
JEITA Tape Storage Technical Committee
http://home.jeita.or.jp/upload_file/20130924142151_WbQPI2w6x4.pdf
5
テープの使用状況
使用目的
アーカイブ/バックアップ
研究機関
映像、娯楽
気象
ITベンダー、
製造業
文化資料保管
NCSA
NIH
NERSC
CERN
OSU
JAXA
RIKEN
事業継続
コスト削減
USC
U. Oklahoma
CIT
NASA
Oxford Univ.
千葉大
Red Bull Media House
Los Angels Lakers
MLB
Endemole
Fox Sports
Magic TV
Maple Leaf
German Weather Service
Météo France
ECMWF
nVidia
T3 Media
Google
Anna Aluminium
CSC
Bombardier
CyArk
LOC
6
具体的事例① - NCSA
National Center for Supercomputing Applications
High Performance Storage System (HPSS) : 380 PB
非常に柔軟でスケーラブルな階層ストレージ管理システム
最近使われたデータはディスクに、
あまり使われなくなったデータはテープに保管
Redundant Arrays of Independent Tapes (RAIT)—
ディスクRAIDに類似なテープ技術
テープ巻数とフロアスペースを1/5に削減
並列動作によりデータのストレージとリストア性能が向上
http://www.ncsa.illinois.edu/news/story/ncsa_puts_worlds_largest_high_performance_storage_system_into_production
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具体的事例② - Météo France
データ総量の80 % をテープに保存
数年内に大量のデータ増加が見込まれる
2015 : 40 TB / day Æ 15 PB / year
2018 : 400 TB/ day Æ 150 PB / year
低コストで高信頼性のストレージシステムが必要
フロアスペースと省電力も重要
http://www.meteofrance.com/
8
具体的な事例③ - Google
2011年のGmail障害時に消失したデータはゼロ
最終的に全データはテープから復旧された
2013, Google, Raymond Blum;
バックアップにテープRAID (Redundant Array of
Inexpensive Device) を使用
NYC Tech Talk Series: How Google Backs Up the Internet
https://www.youtube.com/watch?v=eNliOm9NtCM
テープ5巻のうち1巻をパリティ 、4巻をデータ(RAID 4)
容量効率は80%
http://highscalability.com/blog/2014/2/3/how-google-backs-up-the-internet-along-with-exabytes-of-othe.html
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テープの特徴
ストレージメディア間の比較
テープ
HDD (Capacity
光ディスク
Enp.)
現
状
記録容量
[TB/unit]
2.5~10 (1巻)
転送速度
[MBPS]
160~360
アクセス時間
~分
(含マウント時間)
媒体寿命
[年]
容量単価
排CO2量
数ミリ秒
3~5
[$/GB]
0.015(LTO)
0.05
相対値
1/10~1/30*1
Write後 同時Read Verify
*1
160~210
30
ハードエラー率
技術特徴
4~10
1E-17~1E-20
可
BaFe磁性体
1.5 (12枚)
138 (Read)
~分
(含マウント時間)
50
-
1
テープ同等
1E-15
-
-
-
SMR
多層化
CO2排出量:JEITAテープストレージ専門委員会、テープストレージ動向(2013)
10
テープの特長① -記録密度(容量)の将来性
10000
記録密度(容量)の進歩が実証され、伸びしろが大きい
HAMR?
1000
HDD
Tape Demo
LTO
LTO
Enterprise
Enterprise
INSIC
20%/y
面
記
録
密
度
[Gbpsi]
35%/y
220TB
100
1 5 4 TB
100%/y
10
Tape:30-35%/y
35TB
8TB
BaFe
JC
L6
1
1TB
0.1
2000
MP
2005
2010
2015
西暦
2020
2025
11
テープの将来展望
LTOロードマップ
48TB
1100MB/s
25TB
数字は非圧縮の場合
708MB/s
12.8TB
472MB/s
6.0TB
300MB/s
2.5TB
1.5TB
0.4TB
0.8TB
160MB/s
140MB/s
120MB/s
80MB/s
LTO3
2005
LTO4
2007
LTFS
LTFS
LTFS
LTFS
LTO5
2010
LTO6
LTO7
LTO8
2012
2015
LTFS
LTO9
LTFS
LTO10
BaFe
MP
12
テープの特長② -低コスト
低TCO(Total Cost of Ownership) 大規模システム、長期間
保存ほどテープストレージのコストが下がる
様々なモデルで試算されており、HDDのみで構成するストレ
ージより低コスト
5年間1PBのデータ保存の場合: HDDの半分のコスト
(Spectra Logic)
導入1PBで年率55%、9年後52PBまでデータ増加する場合
:HDDの1/6のコスト (Clipper Group)
省電力で環境にやさしい
データ保存のための電力不要なので消費電力が少ない
動作電力だけでなく、発熱量が少ないので空調のための
電力消費も少ない
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テープの特長③
-Verifyの即時性、高転送速度
ヘッド
<ディスク>
転送速度=線記録密度×周速
転送速度はディスクの回転数で制約さ
れる。
記録後にVerify
<テープ>
テープ進行方向
6-7m/s
側面
平面
アクチュエータで上下動
回転
ガイドローラー
Fwd
Rev
記録・再生素子
ヘッドモジュール
記録と同時にVerifyが可能
転送速度=線記録密度×テープ搬送速度
×CH(素子)数
転送速度はCH数を増やすことで向上。
図1-5.磁気ヘッドと媒体の位置関係
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テープ技術
高容量
ナノサイズの微小な磁性粒子
超平滑なメディア表面
磁性層の薄層化
正確なトラッキング位置制御
書き込み、読み出しヘッド技術、信号処理技術
高信頼性
化学的安定性
磁気的(熱的)安定性
>>30年以上の寿命
利便性
磁性層(上層)
非磁性層(下層)
ベースフィルム
バックコート
LTFS
JEITA資料
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テープ技術 – 大容量化①
磁気テープの技術変遷
10
1.0
面記録密度 [Gbpsi]
NANOCUBIC-BaFe
デジタル化
ATOMM
0.1μm
0.1
10-20nm
Magnetic Layer
50-100nm
NANOCUBIC-MP
Non Magnetic
1μm
Layer
35-45nm
Substrate Film
Magnetic Layer
LTO-6以降
50-100nm
1μm
Non Magnetic
Layer
Substrate Film
LTO-4~5
Magnetic Layer
MP
0.25μm(Particle Size)
Non Magnetic
Layer
0.2~0.3μm
2~3μm
NANOCUBIC 技術
Substrate Film
0.01
Magnetic Layer
3~5μm
Substrate Film
1990
LTO-1~3
超微粒子磁性体
薄層磁性層
高度な分散技術
放送用ビデオ
2000
2010
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テープ技術 – 大容量化②
磁性粒子体積の低減
1.E+06
メタル磁性体
バリウムフェライト
粒子体積 (nm3)
1.E+05
1.E+04
1.E+03
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
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テープ技術 – 大容量化③
バリウムフェライト磁性体(BaFe)とメタル磁性体(MP)の特徴
<MP>
酸化保護膜
微細化
Fe-Co Alloy
針状比低下 (細くすることが困難)
保磁力低下
形状磁気異方性
長手方向に磁化される
保磁力は針状比に依存する。
保護膜が薄くなる
化学的に不安定(錆びる)
<BaFe>
微細化
BaFe
結晶磁気異方性
板面に垂直方向に磁化される。
保磁力は形状に依存しない。
錆びない(元々酸化物)
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テープ技術 – 大容量化④
テープ表面の電子顕微鏡写真
MP (LTO5)
BaFe
長手方向
幅方向
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テープ技術 – 大容量化⑤
磁性粒子の体積と保磁力(Coercivity)の関係
250
Coercivity (kA/m)
BaFe
製品
200
MP
123Gbpsデモ
150
100
500
1000
1500
2000
2500
Particle Volume (nm3)
3000
20
テープ技術 – 大容量化⑥
SNR (Signal to Noise Ratio) の記録密度依存性
LTO6
LTO5-6
21
テープ技術 – 信頼性向上①
テープシステムのクレーム率
富士フイルム調査
クレーム率
25
20
1/20以下
15
10
5
0
DDS
かつての問題点
走行によるテープ
ダメージ
保存安定性
DLT4
LTO G5
LTO G6
解決策: 現状
シンプルな走行系
粘着、耐久性劣化防止
記録磁化の安定化
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テープ技術 – 信頼性向上②
エッジ規制によらないトラックフォロー
トラッキング概念
時速21.6km
長さ800m以上、太さ7μm以下の綱渡り
テープ規制比較
DLT:ヘッド固定、テープを
強制的に直進させる。
LTO:ヘッド動かして追従
させる。(サーボ技術)
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テープ技術 – 信頼性向上③
トラックレイアウト (LTO6)
Servo Band 0
Data Band 3
Servo Band 1
Data Band 1
Servo Band 2
Data Band 0
Servo Band 3
データバンド:544トラックで構成、822m
テープ幅:
12.65mm
Data Band 2
Servo Band 4
テープ全幅で544×4=2176 トラック (トラックピッチ:8μm)
製品出荷時にあらかじめ記録された磁気ストライプ
磁気ヘッド
サーボバンドとサーボヘッド
16chのデータヘッド
データバンド
ストライプ情報(下記)に基づき
*アクチュエターでヘッド位置制御
*モ-ター回転数で速度を制御
サーボバンドとサーボヘッド
トラッキングサーボ技術でガイドによる規制緩和も可能になった。
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テープ技術 – 信頼性向上④
大容量(高密度記録)のデータを長期保管
記録媒体の保存安定性がますます重要
過去に生じた保存問題の原因究明を徹底的に行い対策
有機材料(バインダー、潤滑剤)の化学変化抑制
環境中の水分による加水分解:塗膜強度の低下により、走行耐久性
劣化、粘着等の障害
>>独自の分子構造設計により安定化
磁性材料の変化による記録信号減衰抑制
熱揺らぎ:周囲の熱で、記録磁化が減衰
酸化反応により、磁性体の磁力が低下
>>安定な微粒子BaFe磁性粉
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テープ技術 – 信頼性向上⑤
高温高湿環境下
Ms(飽和磁化) 減衰 (%)
0
-5
-10
-15
-20
メタルテープ
バリウムフェライトテープ
-25
0
1000
2000
3000
4000
磁性粒子体積 (nm3)
5000
60’C, 90%RH, 30日保存後 (~室温環境の30年に相当)
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テープ技術 – 信頼性向上⑦
テープ信頼性と長期保管に関する発表論文
Katayama et. al. “Long term stabilities of magnetic tape for data storage in
office environment,” J. Appl. Phys. 117, 17E305 (2015)
Kurihashi et. al. “Effect of Thermal Conditions on Bit Error Rate for BariumFerrite Particulate Media,” IEEE Trans. Magn. 49, 3760, (2013)
Shimizu et. al. “Distribution of Thermal Stability Factor for Barium Ferrite
Particles,” IEEE Trans. Magn. 49, 3767, (2013)
Kurihashi, et. al. “A study on stabilities of linear tape system in High
temperature and high humidity,” submitted to SC15 (2015)
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テープ技術 – 利便性
LTFS技術: Linear Tape File System
従来のリニアテープ(LTO4まで)はバックアップ用のデータストリーマー
ファイル単位でのデータ取り扱いが出来ず、アクセス、検索不便
テープ用途拡大:大容量アーカイブデータをアクティブに利用
>>LTO5からテープを複数の領域に分割(パーティション)
ファイルシステム化
LTFSがもたらすメリット
ホストからテープ上のファイルに直接アクセス可能
ディスク同様の作業性(ドラック&ドロップ)
ネットワークとの親和性向上(NASとしての利用も可能)
アクティブアーカイブへの適用
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まとめ
テープシステムはその特徴から様々な業界、研究機関、学術
機関などで不可欠なデバイスとして幅広く使われている
テープの記録容量は継続的に増加し続けており、220TB/巻の
将来技術も発表されている
テープシステムのデータ転送速度は継続的に増加しており、高
精細動画等、大容量・高転送速度が必要なコンテンツのアーカ
イブをサポートしてゆく。
テープシステムの信頼性は非常に高く、メディアは30年以上の
アーカイブ寿命を持つ。
TCOを低減できる低コストで高性能なストレージ
29
Thank you!
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