第3章 3-1 秩父地域水道の現状と将来見通し 水需要の推計 秩父地域の給水人口は、平成 25 年度実績 104,311 人と比較して、平成 47 年度高 位推計で約 77,000 人、平成 77 年度高位推計で約 44,000 人とそれぞれ約 26%減、約 58%減という予測になっています。 また、一日平均給水量の推計においても、平成 25 年度実績 43,461m3/日と比較し て、平成 47 年度高位推計で約 30,000m3/日、平成 77 年度で約 21,700m3/日とそれぞ れ約 31%減、約 50%減にという予測になっています。 4⽔道事業体 給⽔⼈⼝ (⼈) 120,000 4⽔道事業体⾼位推計 100,000 4⽔道事業体低位推計 4⽔道事業体実績 80,000 60,000 40,000 20,000 0 H17 H22 4⽔道事業体 ⾼位推計(⼈) H27 H32 H25 低位推計(⼈) - 104,311 対H25実績⽐ H42 H37 104,311 対H25実績⽐ H37 - H47 H52 H47 H57 H62 H57 H67 H72 H67 H77 H77 89,731 77,033 64,874 53,809 0.860 0.738 0.622 0.516 43,991 0.422 89,001 76,412 64,359 53,387 43,653 0.853 0.733 0.617 0.512 0.418 ※ 平成 17 年度に、秩父市、吉田町、大滝村、荒川村が市町村合併した。 ※ 平成 19 年度から簡易水道を経営統合したため、簡易水道分の人口は、平成 19 年度から含まれる 図 3-1 秩父地域の給水人口の推移 4⽔道事業体 (m3 /⽇) 70,000 ⼀⽇平均給⽔量 4⽔道事業体⾼位推計 60,000 4⽔道事業体低位推計 50,000 4⽔道事業体実績 40,000 30,000 20,000 10,000 0 H17 H22 4⽔道事業体 ⾼位推計(m3 /⽇) 対H25実績⽐ 低位推計(m3 /⽇) 対H25実績⽐ H27 H32 H25 43,461 - 43,461 - 図 3-2 H37 H42 H37 H47 H52 H47 H57 H62 H57 H67 H67 H72 H77 H77 35,327 30,064 26,971 24,158 0.813 0.692 0.621 0.556 0.498 32,611 25,784 21,209 17,173 13,697 0.750 0.593 0.488 0.395 0.315 秩父地域の給水量の推移 構想-7 21,658 3-2 施設の更新・耐震化 水道施設は、創設当初から急激な水需要の増加に対応するために、拡張を続け てきました。それらの水道施設は、更新時期を迎えます。現状では、未耐震化施設 の浄水施設、配水池、基幹管路などが多数あり、今後は耐震化と併せた、更新を行 うことが必要になります。 図 3-3 は、秩父地域の水道施設に対して法定耐用年数で更新する場合、短期間で 多額の更新費がかかることから、先進地事例等を参考とし独自に設定した更新基準 年数(法定耐用年数の約 1.5 倍)を用いて更新費を推計した結果を示しています。 法定耐用年数を用いた場合、平成 27 年度から平成 77 年度までの 51 年間に発生 する更新費の総額は約 1,751 億円であるのに対して、この更新基準年数を用いた場 合の更新費の総額は約 1,036 億円であり、その差額は約 715 億円になります。また、 一年当たりの更新費は約 20.3 億円であり、これは、4水道事業体の建設改良費約 12 億円(平成 23~25 年度の平均値)の約 1.7 倍に相当します。 さらに、既に更新基準年数を超えた施設や設備が約 254 億円相当あるため、当 面は現状の建設改良費よりも多くの投資が見込まれることから、今後の更新費の確 保が課題になります。 年度別施設更新費⽤(更新基準に基づいた更新ペース) 超えた施設及び 300 費⽤は平成25(2014)年価格 電気 機械 250 管路 200 建築 更新費⽤(億円) 設備 254 億円 150 更新基準年数 1,500 1,036 億円 ⼟⽊ 1,800 1,200 更新基準年数累積額 法定耐⽤年数累積額 900 100 600 50 300 0 更新費累積額(億円) 既に更新基準を H27 H29 H31 H33 H35 H37 H39 H41 H43 H45 H47 H49 H51 H53 H55 H57 H59 H61 H63 H65 H67 H69 H71 H73 H75 H77 0 建 築 ⼟ ⽊ 管 路 機 械 電 気 計 (億円) (億円) (億円) (億円) (億円) (億円) 法定耐⽤年数(A) 54.9 139.4 923.8 188.2 444.8 1,751.0 更新基準年数(B) 43.2 46.0 491.9 131.2 323.9 1,036.3 ( A-B )の 差 額 11.7 93.3 431.9 56.9 120.9 714.7 ※ 土木・建築、機械・電気:「水道事業の再構築に関する施設更新費用算定の手引き、H23.12、 厚生労働省健康局水道課」やメーカーヒアリング調査等を用いて算定 ※ 管路:マッピングシステムデータと上記の手引きの工事単価を用いて算定 図 3-3 秩父地域の更新需要の推移 構想-8 法定耐⽤年数 1,751 億円 3-3 経営状況 料金回収率は、供給単価(水を売る単価)を給水原価(水を作る単価)で割った 値であり、事業の経営状況の健全性を示す指標の1つといえます。料金回収率が 100%を下回っている場合、水道にかかる費用が料金で回収されていないことを意 味します。 図 3-4 には、平成 23 年度から平成 25 年度の料金回収率の推移を示します。全国 平均や同規模事業体の料金回収率は 100%を達成しているのに対し、秩父地域の料 金回収率は、4水道事業体ともに 100%を下回っており、経営状況は厳しいといえ ます。 また、図 3-5 の有収水量の推移を見ると、平成 25 年度実績 34,149m3/日と比較し て、平成 47 年度高位推計で約 28,000m3/日、平成 77 年度で約 20,000m3/日とそれぞ れ約 19%減、約 41%減にという予測になっており、今後は、水需要の減少による 大幅な収益減や施設の更新等に要する費用の増加が見込まれることから財源の確 保が課題になります。 料⾦回収率(%) 120 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 ⼈⼝1-3万⼈ 17 18 100 80 60 40 20 0 秩 ⽗ 市 横 瀬 町 ⼩⿅野町 H23 皆野・⻑瀞 H24 全 ⼈ ⼝ H25 ⼈⼝3-10万⼈ H23全国平均 ※ 全国平均は、水道技術研究センターの中央値(50%)を採用 図 3-4 料金回収率 4⽔道事業体 (m3 /⽇) 45,000 有収⽔量 4⽔道事業体⾼位推計 40,000 4⽔道事業体低位推計 35,000 4⽔道事業体実績 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 H17 H22 4⽔道事業体 ⾼位推計(m3 /⽇) 対H25実績⽐ 低位推計(m3 /⽇) 対H25実績⽐ H27 H32 H37 H25 34,149 - 34,149 - 図 3-5 H42 H47 H37 H52 H47 H57 H62 H57 H67 H72 H67 H77 H77 30,730 27,749 24,895 22,298 0.900 0.813 0.729 0.653 0.585 28,362 23,798 19,576 15,850 12,642 0.831 0.697 0.573 0.464 0.370 有収水量の推移 構想-9 19,991 3-4 水道サービス 秩父地域の1箇月当たり家庭用料金(20m3)について、全国平均や同規模事業体 と比較すると、皆野・長瀞上下水道組合はやや高く、秩父市は平均並みで、横瀬町 と小鹿野町は低いことがわかります。 また、有収水量1m3 当たりの費用構成を見ると、減価償却費の占める割合が全 国平均と比べて高く、これは、秩父地域の大部分が山岳地域であるため、小規模な 浄水場や増圧施設等が点在していることや給水エリアが広く、人口密度が低いため、 一人当たりの管路延長が長くなるなどの地域の特徴が考えられます。 さらに、4水道事業体の1箇月当たり家庭用料金(20m3)を比較すると、秩父市 で 3,080 円、横瀬町で 2,700 円、小鹿野町で 2,150 円、皆野・長瀞上下水道組合で 3,340 円であり、秩父地域内では、最大で 1,190 円の格差が見られます。 ヶ月当たり家庭用料金( 0 ) 1箇⽉当たりの家庭⽤料⾦(20m3) 4,000 3,500 4,000 3,000 3,500 料⾦(円/20m3) 2,500 3,000 2,000 2,500 1,500 2,000 1,000 500 1,500 0 1,000 秩 父 市 500 0 横 瀬 町 小 鹿野 町 皆野・長瀞 全 人 口 人口1‐3万人 人口3‐10万人 H26実績 秩 ⽗ 市 横 瀬 町 H23平均 ⼩⿅野町 皆野・⻑瀞 全 ⼈ ⼝ H26実績 H26実績 H23平均 H23平均 ※ 全国平均は、水道技術研究センターの中央値(50%)を採用 図 3-6 上水道における1箇月当たりの家庭用料金(円/20m3) 有収⽔量1m3当たりの費⽤構成 300 単価(円/m3) ⼈⼝1-3万⼈ ⼈⼝3-10万⼈ その他 250 受⽔費 200 減価償却費 ⽀払利息 150 薬品費 100 修繕費 50 0 動⼒費 ⼈件費 秩 ⽗ 市 横 瀬 町 ⼩⿅野町 皆野・⻑瀞 全国平均 出典 : 平成 24 年度水道統計調査 図 3-7 有収水量1m3 当たりの費用構成 構想-10 3-5 管理体制 管理体制は、経理や料金業務の営業系、浄配水施設の運転管理や維持管理等の工 務系に分類されます。以下に、その特徴を示します。 1)営業系管理体制 ①経理 経理業務は、出納に関することや会計事務などについて、担当職員数は違い ますが、1事業体を除いて同一の会計システムを使用しています。 ②料金 ・料金収納 料金収納は、口座振替納付を基本としていますが、取り扱い金融機関や納 付期限、コンビニエンスストアによる納付など4水道事業体でそれぞれ異な ります。また、クレジットによる支払いは、4水道事業体において、現状で 対応していません。 表 3-1 秩 ⼝ 納 付 座 ⽗ 市 横 瀬 町 ⼩⿅野町 皆野・⻑瀞 替 10 10 5 8 納 5 3 3 2 取 り 扱い ⾦ 融 機関 11 10 8 8 コ ン ビ ニ エ ン スス トア 21 - - - ク レ ジッ ト ⽀ 払い - - - - 窓 振 収納対応状況 ⼝ 収 ※⼝座振替、取り扱い⾦融機関の単位:⾦融機関数 ※窓⼝収納の単位:箇所数 ※コンビニエンスストアの単位:会社数 ・受付、検針業務 水道の開始・中止・異動届の受付及び処理の方法や委託の有無、検針期間 など4水道事業体でそれぞれ異なります。 2)工務系管理体制 秩父地域における維持管理業務の現状は、4水道事業体7つの地区で管理され ています。その内訳は、秩父市の旧秩父市、旧吉田町、旧大滝村、旧荒川村の4 つの地区と横瀬町、小鹿野町、皆野・長瀞上下水道組合の3つの地区になります。 その維持管理の特徴は、次に示すとおりです。 構想-11 ① 浄配水施設の運転管理や維持管理 運転管理業務の大部分は、4水道事業体とも職員直営で実施しています。業 務の一部は委託していますが、巡視・点検等の簡易的な業務がほとんどであり、 緊急時は少ない職員で対応するため、苦慮している状況です。 また、皆野・長瀞上下水道組合は浄水場運転のため、職員が夜間も対応して います。 ②遠方監視システム 4水道事業体とも主要な浄水場にはテレメータや遠方監視設備が整備されて いますが、監視できる項目は異なります。また、遠方監視設備が整備されてい ない小規模な施設については、定期的な巡視をせざるを得ない状況です。 ③故障・漏水対応 台風等の大雨や落雷等による停電などの故障対応については、職員直営で当 番制をとっており、その体制は4水道事業体でそれぞれ異なります。また、漏 水対応については、職員が対応している事業体もあります。 ④水質検査(毎日、毎月) 全項目検査は4水道事業体とも委託していますが、採水方法については状況 が異なります。また、毎日検査は、4水道事業体とも直営及び委託で実施して います。 ⑤給水装置の受付 給水装置の受付業務は、設計や審査を行います。また、書式は4水道事業体 でそれぞれ異なっています。 3)危機管理体制 ①緊急時対応 4水道事業体でそれぞれ「緊急時対応マニュアル」等が策定されているが、 その内容は様々です。また、4水道事業体間において災害時等の応援協定は明 確に結ばれていません。 ②バックアップ体制 管路事故や浄水場停止などの対応方法について、一部の水道事業体を除き災 害時等に各浄水場給水エリア間で相互に水の融通ができるシステムが整備され ていません。 構想-12 3-6 職員数の動向 4水道事業体の職員数は、平成 24 年度実績で事務系 26 人、技術・技能系 24 人 の計 50 人になります。図 3-8 の年齢構成別職員数を見ると、50 歳以上のベテラン 職員が約 50%を占めるのに対して、30 歳未満の若手職員が 4%と低く、職員年齢構 成のバランスが悪いことがわかります。 10年後には、約5割のベテラン職員が退職することになるため、水道事業体の 組織再構築が必要になります。また、ベテラン職員の減少に伴う技術水準の低下が 懸念されるため、技術の継承や水道技術職員の育成などの技術水準に努めるととも に、官民連携等も視野に入れた管理体制を構築することが必要になります。 これらの管理体制を構築するにあたっては、事務所の統廃合と合わせて考えるこ とが必要になります。 年齢構成別職員数(4⽔道事業体) 25歳未満 0⼈ 2⼈ 25歳以上 30歳未満 30歳以上 35歳未満 35歳以上 40歳未満 40歳以上 45歳未満 45歳以上 50歳未満 9⼈ 50歳以上 55歳未満 9⼈ 55歳以上 60歳未満 今後 10 年間で約 5 割 の職員が退職する 3⼈ 7⼈ 5⼈ 13⼈ 2⼈ 60歳以上 0 事務 5 技術 出典 : 平成 24 年度水道統計調査 図 3-8 年齢構成別職員数 構想-13 10 15 3-7 課題のまとめ 「3-1 水需要の推計」、「3-2 施設の更新・耐震化」、「3-3 経営状況」、 「3-4 水道サービス」、 「3-5 管理体制」、 「3-6 職員数の動向」について、 課題を整理します。その結果を表 3-1 に示します。 表 3-2 項 目 秩父地域における課題 課 題 ①水需要の推計 ■平成 25(2013)年度の一日平均給水量と比べて、平成 47(2035)年度 高位推計で約 31%、平成 77(2065)年度高位推計で約 50%、それぞれ 減少しており、施設利用率の低下とともに施設の非効率性が高くなっ てきています。 ②施設の更新・ 耐 震 化 ■今後、平成 27(2015)~平成 77(2065)年度 51 年間に発生する更新 等の費用の総額は 1,036 億円であり、1年当たり約 20.3 億円になりま す。これは4水道事業体の1年当たり建設改良費(平成 23~25 年度の 平均値)の約 1.7 倍相当になります。さらに、既に更新基準年数を上 回る施設・設備も 254 億円相当あるため、今後の更新費の確保が課題 になります。 ■人口の減少に伴う施設の統廃合やダウンサイジングの進め方(整備方 針)が課題になります。 ③経 営 状 況 ■料金回収率は4水道事業体とともに 100%を下回っており、現状では、 水道施設にかかる費用を回収できていない状況といえます。 ■平成 25(2013)年度の有収水量と比べて、平成 47(2035)年度高位推 計で約 19%、平成 77(2065)年度高位推計で約 41%、それぞれ減少し ており、将来における給水収益の減少が見込まれます。 ④水道サービス ■1箇月当たり家庭用料金(20m3)については、秩父市で 3,080 円、横 瀬町で 2,700 円、小鹿野町で 2,150 円、皆野・長瀞上下水道組合で 3,340 円になります。4水道事業体を比較すると、最大で 1,190 円の格差が 見られます。 ⑤管 理 体 制 (営業系管理体制) ■料金収納や検針業務の方法など、4水道事業体でそれぞれ異なります。 これらの課題については、事務所の統廃合と合わせて検討することが 必要になります。 (工務系管理体制) ■緊急時対応や施設の定期点検など、少ない職員数で対応に苦慮してい ます。 ■浄配水場の維持管理、緊急時対応の体制、水質検査の採取方法及び遠 方監視システムの監視項目など、4水道事業体でそれぞれ異なります。 (危機管理体制) ■4水道事業体でそれぞれ「緊急時対応マニュアル」等が策定されてい るが、その内容は様々です。また、4水道事業体間において災害時等 の応援協定は明確に結ばれていない。 ⑥職員数の動向 ■今後、10 年間で約 5 割のベテラン職員が退職するため、ベテラン職員 の減少に伴う技術水準の低下が懸念されます。 構想-14
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