「JCOAL/CCT ロードマップ 第 3 版」 (2014 年 1 月) 平成 26 年 1 月 一般財団法人 石炭エネルギーセンター 技術開発委員会 目 次 は じ め に ..................................................................... 1 第1章 背 景 ................................................................. 2 1-1. ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー ( CCT) ロ ー ド マ ッ プ の 目 的 .................... 2 1-1-1. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版 ....................................... 2 1-1-2. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版 ....................................... 3 1-1-3. NEDO/CCT ロ ー ド マ ッ プ .............................................. 4 1-1-4. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 ....................................... 6 1-2. CCT を 取 り 巻 く 世 界 の 動 向 ................................................ 6 1-2-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 世 界 動 向 ....................................... 6 1-2-1-1.IEA に よ る 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 見 方 .............................. 6 1-2-1-2. 米 国 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向 ................................. 7 1-2-1-3. 欧 州 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向 ................................. 8 1-2-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 世 界 動 向 ....................................... 8 1-2-2-1. 世 界 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 ......................................... 8 1-3. CCT を 取 り 巻 く 国 内 の 動 向 ................................................ 9 1-3-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 国 内 の 動 向 ..................................... 9 1-3-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 国 内 の 動 向 .................................... 10 1-4. 石 炭 資 源 の 動 向 ........................................................ 10 第2章 CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 の 作 成 ......................................... 12 2-1. 前 提 と な る 考 え 方 ...................................................... 12 2-1-1. 今 後 の 見 通 し ..................................................... 12 2-1-1-1. 一 次 エ ネ ル ギ ー に お け る 石 炭 需 要 と 比 率 ............................ 12 2-1-1-2. エ ネ ル ギ ー 源 別 電 力 需 要 中 の 石 炭 の 構 成 比 .......................... 12 2-1-1-3. 環 境 負 荷 低 減 ................................................... 12 2-1-2. 政 策 目 標 ......................................................... 13 2-1-2-1. CO 2 削 減 目 標 .................................................... 13 2-1-2-2. エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 .............................................. 13 2-1-2-3. 革 新 的 エ ネ ル ギ ー ・ 環 境 戦 略 ...................................... 13 2-1-2-4. 日 本 再 興 戦 略 ................................................... 14 2-1-3. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 施 策 の 位 置 付 け .................................. 15 2-1-4. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系 .................................. 15 2-1-4-1. 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化 ............................................ 16 2-1-5-2. 低 品 位 炭 利 用 ................................................... 18 2-1-5-3. 環 境 対 策 ....................................................... 20 2-1-6. 今 後 の 検 討 ....................................................... 21 2-2. CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 に つ い て ......................................... 21 2-2-1. 石 炭 火 力 の 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化 ...................................... 21 2-2-1-1. 石 炭 火 力 発 電 技 術 ............................................... 21 2-2-1-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 ............................................. 22 2-2-1-3. CO 2 回 収 技 術 .................................................... 22 2-2-2. 低 品 位 炭 の 多 用 途 利 用 .............................................. 22 2-2-2-1. 改 質 炭 利 用 技 術 ................................................. 22 2-2-2-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 ............................................. 22 2-2-2-3. 石 炭 火 力 発 電 技 術 ............................................... 22 2-2-3. 環 境 対 策 ......................................................... 22 2-3. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ................................................. 23 図 2-3-1 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 中 長 期 開 発 ) ............................. 23 図 2-3-2 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 コ ス ト 化 ) ............................. 24 図 2-3-3 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 品 炭 チェーンの 確 立 ) ....................... 25 2-4. 個 別 技 術 .............................................................. 26 第3章 ま と め .............................................................. 81 技術開発委員会 委 員 名 簿 .................................................... 83 はじめに 石炭は、その供給安定性、価格安定性の観点から世界の一次エネルギーにおいて重要 な役割を担うものであり、今後もその位置付けは変わらないと考えられる。我が国におい ては、石炭火力発電の燃料(一般炭)としてエネルギー供給の約 4 分の 1 を占め、また製 鉄用原料(原料炭)としても不可欠であり、その重要性は高い。 現 在 我 が 国 で は 、 2011 年 の 東 日 本 大 震 災 に 起 因 し た 原 子 力 発 電 比 率 の 縮 減 等 を 受 け て、政府によるエネルギー基本計画の見直しが行われている。その中では、依然として地 球 温 暖 化 対 策 に よ る CO 2 削 減 が 重 要 な 課 題 で あ り 、 石 炭 に お い て は 、 石 炭 火 力 発 電 に よ る 石炭の一層の効率的利用は必要不可欠な課題である。当該課題を含めて我が国が有してい る ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー ( CCT) は 世 界 を リ ー ド す る も の で あ り 、 今 後 の 技 術 開 発 は常に進むべき方向を明確にしていく必要がある。 本 ロ ー ド マ ッ プ は 、 基 本 的 に 2050 年 で の CO 2 ゼ ロ エ ミ シ ョ ン 化 を タ ー ゲ ッ ト と し て お り 、 今 後 の CCT 開 発 の 指 針 ・ 開 発 技 術 の 骨 格 を 示 し 、 CCS を 含 む 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化 技 術、低品位炭の多用途化技術、環境対策技術の総合的な開発促進を目的として作成するも のである。 1 第1章 背景 1-1. クリーンコールテクノロジー(CCT)ロ ー ド マ ッ プ の 目 的 2011 年 の 東 日 本 大 震 災 に 起 因 し た 原 子 力 発 電 比 率 の 低 下 及 び 地 球 温 暖 化 対 策 と し て の CO 2 削 減 の 両 面 か ら 、政 府 は 抜 本 的 な エ ネ ル ギ ー 基 本 戦 略 の 見 直 し を 行 っ て い る が 、石 炭 火 力発電をはじめとした石炭の一層の効率的利用は必要不可欠な課題であり、我が国が世界 を リ ー ド し て い る ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー( CCT)は 常 に 進 む べ き 方 向 を 明 確 に し て い な け れ ば な ら な い 。 こ の 見 地 に 立 ち 、 一 般 財 団 法 人 石 炭 エ ネ ル ギ ー セ ン タ ー ( JCOAL) は 、 技 術 開 発 委 員 会 に お い て 、 CCT ロ ー ド マ ッ プ を 下 記 の 目 的 で 作 成 し て い る 。 1) 官 民 学 共 同 で の CCT 開 発 の 推 進 に よ り 、 我 が 国 へ の 資 源 安 定 供 給 に 資 す る 石 炭 利 用 産業の持続的発展という基本理念を目指す。 2)環 境 対 策 、石 炭 資 源 確 保 を ベ ー ス と し て 、今 後 の 石 炭 技 術 開 発 を 取 り 巻 く 動 向 を 念 頭 に 置 い て 、 特 に 事 業 者 に と っ て の 2050 年 ま で の CCT 開 発 の 道 筋 を 一 葉 で 網 羅 的 に 示 す。 3)個 表 に お い て 、CCT 開 発 の 現 状 と 課 題 を 示 し 、将 来 に 向 け た 技 術 開 発 の あ る べ き 方 向 性を示す。 4) 国 の 主 導 で 推 進 す べ き プ ロ ジ ェ ク ト の 候 補 を 発 掘 ・ 抽 出 し 、 政 策 提 言 へ と 結 び つ け る。 1-1-1. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版 は 、2010 年 度 に 作 成 さ れ た 。こ の 第 1 版 は、10 年 間 ごとに 4 世 代 に区 切 り、環 境 制 約 としてグローバルな CO 2 削 減 率 と、資 源 制 約 として瀝 青 炭 や石 油 ・天 然 ガスが供 給 タイトとなると予 測 される年 代 を示 し、それぞれの世 代 を「高 効 率 ハイブリッド世 代 」、 「低 炭 素 化 世 代 」、「ゼロエミッション世 代 」、「サ ス テ ナ ビ リ テ ィ 世 代 」としている。技 術 カテゴリは、 「燃 焼 ・ガス化 」、「低 品 位 炭 」、「CCS」、「石 炭 ガス・炭 鉱 」、「製 鉄 」に区 分 している。 「低 炭 素 化 世 代 」では、酸 素 製 造 や CO 2 分 離 にコストが大 幅 に低 くなると期 待 されている膜 分 離 技 術 が実 用 化 されると予 測 し、これらを導 入 した技 術 を「Ad(Advanced)」として示 している。「ゼロエ ミッション世 代 」、「サ ス テ ナ ビ リ テ ィ 世 代 」では、CCS の実 用 化 ・普 及 が進 み、高 効 率 のプラント との組 み合 わせが主 流 になって行 くシナリオである。「低 品 位 炭 」開 発 は、2030 年 以 降 に目 玉 とな る開 発 項 目 は提 示 していない。「製 鉄 」は、2030 年 以 降 の「COURSE50」プロジェクト以 降 の技 術 課 題 までは提 示 していない。 これらの我 が国 の技 術 開 発 課 題 について、海 外 普 及 を図 って行 くために各 国 で必 要 とされる課 題 を示 している。マップの上 部 に石 炭 技 術 開 発 を取 り巻 く国 内 環 境 を示 している(図 1-1-1) 。 2 出 典 : 平 成 22 年 度 3 回 JCOAL 技 術 開 発 委 員 会 (2011 年 3 月 ) 図 1-1-1 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版 1-1-2. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版 は 、 2011 年 度 に 、 JCOAL 技 術 開 発 委 員 会 を 中 心 メ ン バ ー とするワーキンググループにより、第 1 版を見直したものである。見直しの主要な理由と 背景は、 ① 2011 年 3 月 に発 生 した大 震 災 後 の大 規 模 な環 境 変 化 を踏 まえた見 直 し。 ② COP17(2011 年 12 月 )、豪 州 褐 炭 ロ ー ド マ ッ プ 、NEDO 石 炭 利 用 分 野 の ロ ー ド マ ッ プ の ロ ー リング、新たに作成されるエネルギー基本計画などを盛り込む。 ③ CCS 技 術 開 発 と 今 後 CCS 実 施 に 向 け て 我 が 国 が ど う す べ き か を 記 載 す る 。 であり、以上を背景に第 2 版を作成した。実際には、豪州褐炭ロードマップ、新たなエネ ルギー基本計画は、第 2 版作成までには完成せず、これらは盛り込まれていない。 第 2 版 は 、第 1 版 と 同 様 に 、10 年 間 単 位 で パ ラ ダ イ ム シ フ ト が 起 こ る と し て 、各 時 代 に お い て 実 用 化 さ れ て い る べ き 技 術 と し て 各 々「 高 効 率・CCS・ク リ ー ン 燃 料 」、 「 高 効 率・CCS・ 安 価 CTL」、「 CCS 付 IGFC の 高 効 率 化 」、「 化 学 製 品 の 原 料 転 換 」 を 明 確 に 示 し て い る 。 技 術 カ テ ゴ リ は 、「 発 電 」、「 ク リ ー ン 燃 料 (化 学 原 料 )」、「 CCS(CCUS)」、「 製 鉄 」、「 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 」 と し て い る ( 図 1-1-2)。 3 出 典 : 平 成 23 年 度 3 回 JCOAL 技 術 開 発 委 員 会 (2012 年 3 月 ) 図 1-1-2 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版 1-1-3. NEDO/CCT ロ ー ド マ ッ プ CCT 関 連 ロ ー ド マ ッ プ と し て 、 2011 年 度 に 独 立 行 政 法 人 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構( NEDO)に よ り 作 成 さ れ た「 石 炭 利 用 技 術 分 野 の 技 術 ロ ー ド マ ッ プ 」 1 が あ る 。こ の ロ ー ド マ ッ プ で は 、 石 炭 利 用 技 術 を、①石 炭 火 力 発 電 技 術 (燃 焼 技 術 等 )、②石 炭 火 力 発 電 技 術 (ガス化 技 術 等 )、③産 業 用 石 炭 利 用 技 術 、④環 境 負 荷 低 減 技 術 、⑤石 炭 開 発 技 術 の 5 つに 分 類 している。 さらに、個 々の技 術 開 発 ごとに現 状 や市 場 導 入 時 期 、実 際 の技 術 動 向 を詳 細 調 査 し、2035 年 頃 までの導 入 や技 術 開 発 の動 向 についてロードマップ化 している。実 際 の石 炭 利 用 技 術 動 向 を詳 細 に調 査 し、各 々の事 実 をロードマップに落 とし込 んで整 理 している(表 1-1-1)。 当 該 ロードマップが、石 炭 利 用 分 野 に関 わる技 術 をおおよそ網 羅 的 に掲 上 し、ファクトに基 づいて 技 術 開 発 のスタンダードな道 筋 を示 しているのに対 し、一 方 、JCOAL/CCT ロードマップでは、前 述 のとおり、より事 業 者 にとって指 針 となるように所 要 のテーマに依 って具 体 的 な目 標 値 、試 験 名 称 などをプロットするものとしており、そのようなデマケーションをとっている。 1 平 成 23 年 度 ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー 推 進 事 業 「 エ ネ ル ギ ー を 取 り 巻 く 環 境 変 化 と 今 後 の CCT 技 術 開 発 の あ り 方 に 関 す る 検 討 」 4 表 1-1-1 NEDO ロードマップの個 別 技 術 分類 個別技術 超 々 臨 界 圧 発 電 技 術 (A-USC) 石炭火力発電技術 次世代粉砕技術 (燃 焼 技 術 等 ) 低品位炭燃焼技術 バイオマス・石炭ハイブリッド発電技術 石 炭 ガ ス 化 複 合 発 電 技 術 (IGCC) 石炭火力発電技術 石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 発 電 技 術 (IGFC) (ガ ス 化 技 術 等 ) 次世代高効率石炭ガス化発電技術 (A-IGCC、 A-IGFC 等 ) CO 2 循 環 型 IGCC 高効率酸素製造技術 石 炭 部 分 水 素 化 熱 分 解 技 術 (ECOPRO) 産業用石炭利用技 二 塔 式 ガ ス 化 炉 に よ る 褐 炭 利 用 技 術 (TIGAR) 術 高効率褐炭乾燥技術 褐炭高度利用技術 石炭・重質油等からの代替天然ガス製造技術 石炭ガス化コプロダクション技術 自然エネルギーを付加した石炭ガス化技術 低品位炭からの粘結材・代替強粘結炭製造技術 低品位炭のコークス原料化技術 低 品 位 炭 改 質 技 術 ( UBC) 褐炭改質技術 低 品 位 炭 流 体 化 技 術 (HWT) 石炭付加バイオマス燃料製造技術 石炭液化技術 無 触 媒 石 炭 乾 留 ガ ス 改 質 技 術 ( COG 改 質 技 術 ) 石 炭 利 用 CO 2 回 収 型 水 素 製 造 技 術 (HYPR-RING) 環境負荷低減技術 CO 2 炭 層 固 定 化 技 術 (ECBM) 微 粉 炭 酸 素 燃 焼 技 術 (OXY-FUEL) CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 (ケ ミ カ ル ル ー ピ ン グ ) 微 粉 炭 火 力 ( 排 ガ ス ) か ら の CO 2 回 収 技 術 ( Post-Combustion) 石炭ガス化からの CO 2 回 収 技 術 ( Pre-Combustion) 環 境 負 荷 物 質 の 低 減 ・ 活 用 技 術 ( StepCCT) 製 鉄 プ ロ セ ス 等 か ら の CO 2 回 収 ・ 固 定 技 術 (COURSE50) 革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電技術 水素製造・輸送技術 水素タービン 石炭高度選炭技術 石炭開発技術 石炭資源総合評価高度化技術 石炭高度生産技術 5 1-1-4. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 前 述 の 既 存 の 3 つ の CCT ロ ー ド マ ッ プ を 踏 ま え 、第 3 版 を 作 成 す る 。見 直 し の 主 要 な 背 景は以下の通り。 ① シェール革 命 により、米 国 は 2020 年 までには、天 然 ガスの純 輸 出 国 となる見 通 し。米 国 炭 ( PRB 炭 )の太 平 洋 市 場 への輸 出 の始 動 。化 石 燃 料 市 場 、石 炭 市 場 の軟 化 の見 通 し 。 ② 中 国 、イ ン ド 並 び に 東 南 ア ジ ア の 急 速 な 経 済 成 長 を 背 景 と し た 石 炭 火 力 発 電 所 開 発 計画の推進。 ③ PM2.5 は じ め と す る NOx、 SOx 等 の 環 境 規 制 強 化 の 動 き 。 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 の 内 容 は 、 事 業 実 施 者 ( 企 業 、 研 究 機 関 等 ) の 今 後 の 技 術開発の指針となるもの、あるいは事業実施者のシーズが見えるものとする。また技術分 類としては、高効率化、使用炭種・性状拡大、多様化への対応、再生可能エネルギー、環 境負荷低減との共生等を目指した技術開発の道筋を示すものである。さらに、当該第 3 版 ではこれら技術の土台となる背景を出来るだけ明示することとする。 1-2. CCT を 取 り 巻 く 世 界 の 動 向 1-2-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 世 界 動 向 1-2-1-1.IEA に よ る 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 見 方 IEA は 、 中 国 、 イ ン ド 及 び ア ジ ア の 経 済 成 長 国 の エ ネ ル ギ ー 需 要 の 伸 び を 支 え る エ ネ ル ギー源として、福島問題を契機とした原子力の不確実性、再生可能エネルギー開発に更に 時 間 が か か る こ と 等 も 踏 ま え 、石 炭 が 一 次 エ ネ ル ギ ー の 主 役 で あ る と し て い る 。2000 年 か ら の こ の 10 年 間 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 供 給 の 伸 び で は 、石 炭 の 1,300Mtoe に 対 し 、原 子 力 、石 油 、ガ ス 、再 生 可 能 の 合 計 で 1,400Mtoe で あ り 、石 炭 が こ の 伸 び の 約 半 分 を 占 め て い る が 、 その主な用途は石炭火力発電である。 今 後 も 石 炭 の 使 用 増 に 伴 い 、 特 に 中 国 及 び イ ン ド の CO 2 排 出 量 が 増 加 す る が 、 2035 年 に は 、 中 国 の 人 口 当 た り の 排 出 量 が OECD 諸 国 並 み に な る と 考 え ら れ て お り 、 CO 2 排 出 の 最 も 高 い 石 炭 を こ の ま ま 使 い 続 け る と 、 1990 年 比 で CO 2 排 出 総 量 は 約 75%の 増 加 に な る と 予 測している。 従 っ て IEA で は 、 図 1-2-1 に 示 す よ う に 、 主 要 CO 2 排 出 源 で あ る 石 炭 火 力 発 電 に 関 し 、 現 状 世 界 平 均 値 の 1,400g-CO 2 /kWh か ら 、 最 先 端 実 用 技 術 で あ る USC,IGCC を 適 用 し た 場 合 に 45%削 減 の 743g-CO 2 /kWh、 さ ら に 開 発 が 進 み 2030 年 で は 50%削 減 の 669g-CO 2 /kWh と い う目標を掲げている。ここまでは石炭火力発電技術の進化による高効率化であるが、更な る 削 減 は 、排 出 さ れ た CO 2 自 体 を 削 減 す る 技 術 が 必 要 で 、CCS が そ れ ま で に 実 用 化 に 至 っ て い る 事 が 求 め ら れ る 。 た だ し 、 IEA 2 に よ る と 、 地 球 温 暖 化 ガ ス の 増 加 防 止 策 と し て 、 こ れ ら石炭火力発電技術の効率化の寄与は約 5 割で、その他にも老朽火力の廃止、メタンの採 掘過程での放出削減等の対策も併せて必要であると見ている。 2 World Energy Outlook, ”Redrawing the Energy-Climate Map”, (2013) 6 出 典 :「 Global Coal Developments and Climate Change Policy in 2012」、 IEA Clean Coal Centre、 2012 図 1-2-1 石 炭 火 力 発 電 に お け る CO 2 削 減 目 標 1-2-1-2. 米 国 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向 現在、米国では、石炭火力に対して、州大気汚染規定、水銀・大気有害物質基準が課 せられている。さらに、発電所の新規発生源業績基準の規制が検討されている。 既存発電所には、大気汚染に係わる環境規制をクリアするための高額な投資が必要に な り 、 新 規 発 電 所 に は CCS が 必 要 と な る 厳 し い CO2 排 出 基 準 が 定 め ら れ て お り ( 455gCO2/kWh)、 今 年 6 月 に は オ バ マ 大 統 領 が 、 地 球 温 暖 化 防 止 に 向 け た 以 下 の 新 し い 行 動 計 画 を発表した。 ・オ バ マ 大 統 領 の 新 し い 行 動 計 画 は 、2020 年 に ’ 05 年 対 比 で 温 暖 化 ガ ス 排 出 量 を 17%削 減 す る 従 来 の 路 線 を 改 め て 約 束 す る も の で 、国 内 発 電 所 の 排 出 基 準 の 導 入 が ひ と つ の 焦点となっている。 ・ 「新設発電所への排出規制」 :2013 年 9 月 ま で に 新 規 制 案 を 公 表 し 、パ ブ リ ッ ク コ メ ン ト手続きを経て、速やかに規制を実行する。 ・「 既 設 発 電 所 へ の 排 出 規 制 」: 2014 年 6 月 ま で に 新 規 制 ガ イ ド ラ イ ン の 提 案 を 公 表 し 、 2015 年 6 月 ま で に 最 終 版 を 確 定 さ せ る 。 ・ 上 記 以 外 に も 、 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー に よ る 発 電 を 2020 年 ま で に 倍 増 さ せ る 、 輸 送 部 門 で の 重 量 車 両 へ の 2018 年 以 降 の 新 た な 燃 費 規 準 の 制 定 等 20 項 目 以 上 に 及 び 政 策 を打ち出した。 7 1-2-1-3. 欧 州 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向 欧 州 で は 、 大 気 汚 染 防 止 に 関 し て 、 大 型 燃 焼 施 設 指 令 ( Large Combustion Plant Directive (LCPD))に よ り 、 老 朽 火 力 発 電 所 に 対 し て 、 使 用 制 限 を 設 け 、 2016 年 以 降 の 廃 止 を 求 め て い る 。 温 暖 化 効 果 ガ ス 排 出 に 関 し て 、 EU 全 体 で 目 標 を 揚 げ て い る と と も に 、 国 別 に 対 策 を 行 っ て お り 、 英 国 で は 、 CCS を 設 置 し な い と 最 新 鋭 の 石 炭 火 力 で も 達 成 で き な い 新 基 準 ( 450g-CO 2 /kWh) を 設 け て い る 。 2013 年 内 に 法 案 可 決 の 見 通 し で あ る 。 そ の た め 、 2015 年 か ら 2020 年 に か け て 、 欧 州 で も 石 炭 火 力 の 電 力 使 用 量 の 減 少 が 予 想 さ れ る 。 1-2-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 世 界 動 向 1-2-2-1. 世 界 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 諸 外 国 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 は 、日 本 に 比 べ 低 く 、か つ 、ド イ ツ 、中 国 を 除 く と 低 い レ ベルに停滞している傾向が支配的である。これは、ドイツ、中国の場合、高効率プラント の商業的導入が相応に進んでいるのに比べ、他の諸国においては、高効率プラントへの切 換えが停滞していることによるものと考えられる。また、石炭火力キャパシティが圧倒的 に 大 き い 米 国 、中 国 、イ ン ド の 3 ヵ 国 の 平 均 発 電 効 率 が 、日 本 に 比 べ 5~ 15%下 廻 っ て い る こ と は 、 CO 2 排 出 量 削 減 を 図 っ て い く 上 で 大 き な ネ ッ ク で あ る 。 出 典 : 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 石 炭 課 講 演 資 料 、 CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2013 図 1-2-2 各国石炭火力平均効率の推移 次 に 、世 界 の 化 石 燃 料( 石 炭・天 然 ガ ス・石 油 )の 総 CO 2 排 出 量 に 占 め る 石 炭 火 力 CO 2 排 出 量 が 、 今 後 い か に 推 移 す る か を IEA ア ウ ト ル ッ ク で 見 る 。 2010 年 302 億 ト ン の 総 CO 2 排 出 量 が 2030 年 412 億 ト ン に 増 大 す る 中 で 、 石 炭 火 力 CO 2 排 出 量 は 、 90 億 ト ン か ら 140 億 8 ト ン へ 、 そ の ウ ェ イ ト は 30%か ら 34%へ と い ず れ も 増 大 す る ( 図 1-2-3)。 こ の 数 値 か ら し て も 、 石 炭 火 力 に よ る CO 2 エ ミ ッ シ ョ ン を 如 何 に 削 減 し て い く か が 、 温 暖 化 解 決 へ の 極 め て 重 要 な ク リ テ ィ カ ル ・パ ス の 一 つ で あ る こ と か 明 ら か で あ る 。 出 典 : WEC 講 演 資 料 、 JCOAL 会 長 講 演 ( 原 典 : IEA WEO2012) 図 1-2-3 世 界 の 発 電 と CO 2 排 出 の 見 通 し ( IEA WEO2012 現 行 政 策 シ ナ リ オ ) 1-3. CCT を 取 り 巻 く 国 内 の 動 向 1-3-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 国 内 の 動 向 我が国の二酸化炭素排出量のうち、エネルギー分野が98%を占めている。また、直接 排出量ではエネルギー転換部門、間接排出量では産業部門が最も多く、それぞれ34%、 35%を占めている。 一 方 、燃 料 別 で は 、石 油 等 が 4 0 % 、石 炭 等 が 3 6 % を 占 め て い る 。石 炭 等 に つ い て は 、 約4.3億トンのうち約2億トンが発電所からの排出となっており、発電効率の向上等に よって如何にこの部分の排出量を低減するかが課題となっている。 出典:温室効果ガス排出・吸収目録 図 1-3-1 2010 年 度 部 門 別 二 酸 化 炭 素 排 出 量 及 び 燃 料 別 二 酸 化 炭 素 排 出 量 9 1-3-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 国 内 の 動 向 我が国のベース電源として石炭火力を使い続けるためにも継続的なクリーンコールテク ノ ロ ジ ー の 開 発 が 必 要 で あ る 。 図 1-3-2 に 既 存 の USC と 開 発 が 進 め ら れ て い る よ り 高 効 率 の 発 電 シ ス テ ム と そ れ ら の CO2 低 減 割 合 を 示 し た 。 今 後 更 な る 高 効 率 化 を 目 指 し て 、 鋭 意 開発が進められているところである。 出 典 :「 石 炭 火 力 か ら の CO2 排 出 削 減 」 JCOAL/CCT-WS 2010 年 7 月 電 源 開 発 ( 株 ) 図 1-3-2 高 効 率 石 炭 火 力 発 電 の 発 電 効 率 と CO2 低 減 割 合 1-4. 石 炭 資 源 の 動 向 図 1-4-1 及 び 図 1-4-2 に 石 炭 を 含 む 化 石 燃 料 の 可 採 年 数 及 び 資 源 量 を 示 す 。石 炭 は 、化 石燃料の中で、供給安定性、経済性の面で最も信頼性が高い燃料資源である。石炭の可採 埋 蔵 量 は 2011 年 末 時 点 で 、 約 8,600 億 ト ン で あ り 、 可 採 年 数 も 112 年 と 石 油 の 54 年 、 天 然 ガ ス の 64 年 に 比 べ 、 約 2 倍 で あ る 。 石 油 や 天 然 ガ ス も 近 年 は 採 掘 技 術 の 進 歩 か ら シ ェ ールオイル・シェールガスといった非在来型も加わり採掘年数の大幅増が期待されている が、石炭も同様に採炭技術の進歩や低品位炭活用技術の進歩により、可採埋蔵量は更に増 加していく。また、賦存地域も石油や天然ガスのように中東といった一部地域に偏ること なく分散しており、地政学的リスクが小さい。従って、特に日本のように国内資源が乏し く、その殆どを海外からの輸入に依存せざるを得ない国にとっては、石炭はエネルギーセ キュリティ面での貢献度が高い。 10 出 典 : BP 統 計 2012 図 1-4-1 各一次エネルギーの可採年数 ま た 、全 石 炭 埋 蔵 量 の 約 半 分 の 4,000 億 ト ン が 我 が 国 で 使 用 さ れ て い な い 亜 瀝 青 炭 及 び 褐炭であり、現在は経済面、安全面等からすぐに輸入使用することにはならない。しかし 我が国が基盤技術として蓄積、保有している乾燥、改質、ガス化、液化等の展開及び実用 化先として低品位炭産炭国における事業展開が期待される。 出 典 : コ ー ル ノ ー ト 2008 よ り 一 部 改 編 ( 原 典 : WEC2007) 註 : 可 採 埋 蔵 量 の 合 計 8,474 億 ト ン に つ い て BP 統 計 2012 で は 8,609 億 ト ン 図 1-4-2 世界の石炭埋蔵量概念図 11 第2章 CCT ロー ド マ ッ プ 第 3 版の 作 成 2-1. 前 提 と な る 考 え 方 前 章 の 背 景 を 受 け て 、 さ ら に JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 に お い て 各 個 別 技 術 の 開発目標のもととなる今後の見通しや政策目標は以下のとおり。 2-1-1. 今 後 の 見 通 し 2-1-1-1. 一 次 エ ネ ル ギ ー に お け る 石 炭 需 要 と 比 率 ○ 世 界 の 石 炭 使 用 量 は 、 1990 年 京 都 議 定 書 基 準 年 の 約 22 億 toe( 石 油 換 算 ト ン ) は 、 2010 年 に お い て 約 35 億 toe と 約 13 億 toe の 伸 び を 示 し 、 IEA ワ ー ル ド ・ エ ネ ル ギ ー ・ ア ウ ト ル ッ ク 2012 で は 、 2035 年 の 予 測 使 用 量 は 約 42 億 toe に 達 し 、 2010 年 か ら 非 OECD 諸 国 を 中 心 に 約 7 億 toe 拡 大 す る と の 見 通 し 。 ○ こ れ を 一 次 エ ネ ル ギ ー の 構 成 比 で 見 る と 25~ 27%と な り 、 石 炭 は 極 め て 安 定 し た 割 合 で消費され続けると予想される。 2-1-1-2. エ ネ ル ギ ー 源 別 電 力 需 要 中 の 石 炭 の 構 成 比 ○ 世 界 石 炭 火 力 に よ る 発 電 量 は 1990 年 の 約 4 兆 4,000 億 KWh( 4,400TWh) が 、 2010 年 に は 約 8 兆 8,000 億 KWh(8,800TWh)に 増 大 し 、 2035 年 に は 現 状 の 約 1.4 倍 で 、 約 12 兆 1,000 億 KWh(12,100TWh)に 達 す る と 見 込 ま れ る 。 ○ 世 界 総 発 電 量 中 に 占 め る 石 炭 火 力 の 構 成 比 は 、1990 年 37%、2010 年 41%、2035 年 33% と お よ そ 35~ 40%の 幅 の 中 で 推 移 し て い る ( IEA WEO 2012)。 ○ こ の 石 炭 火 力 発 電 量 の 安 定 的 な 増 大 傾 向 は 、石 炭 の 有 す る 長 期 安 定 性 、経 済 的 安 定 性 に加え、石炭火力のベース電源としての機能的信頼性に由来していると考える。 ○ 今 後 、 日 本 で 原 子 力 は 新 設 さ れ ず に 、 既 設 の み 運 転 継 続 。 2040 年 に は ゼ ロ と な る 。 図 2-1-1 日本の発電所リプレース予測 これらのことから、石炭火力発電における技術開発課題として、更なる高効率化は優先 度が高いといえる。 2-1-1-3. 環 境 負 荷 低 減 欧 米 で は 、火 力 発 電 電 力 量 あ た り の 硫 黄 酸 化 物( SOx)、窒 素 酸 化 物( NOx)の 排 出 量 が 高く、また、中国やインドなど環境対策が不十分なまま発展している国々では大気汚染が 12 大きな問題となっている。 一 方 、我 が 国 の 石 炭 火 力 は SOx、NOx、燃 焼 灰 等 の 汚 染 物 質 除 去 技 術 に 関 す る 技 術 開 発 が 進み、欧米との比較においても、高い技術水準を保有している。前述の問題解決の一助と なるべく、日本の最先端環境技術の積極的な海外展開を図る必要がある。 図 2-1-2 火 力 発 電 電 力 量 あ た り Sox、 NOx 排 出 の 国 際 比 較 2-1-2. 政 策 目 標 2-1-2-1. CO 2 削 減 目 標 我 が 国 は 2020 年 ま で に 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 を 2005 年 比 3.8% 減 と す る 。 ( 2013 年 11 月 地球温暖化対策本部) 2-1-2-2. エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 現在、新しいエネルギー基本計画の作成が進められているところ。原子力の位置づけの 如何に伴い今後の石炭火力の役割がどのように設定されるかが注目される。 因 み に 、現 行 の エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画( 平 成 22 年 6 月 、閣 議 決 定 )に お い て は「 我 が 国 の 高効率石炭火力の海外展開を進めつつ、国内での高効率石炭火力発電技術の開発・実証・ 運 転 を 官 民 挙 げ て 推 進 す る 」、 「 IGCC 等 の 高 効 率 化 と CCS の 技 術 開 発 を 推 進 す る と と も に 、 こ れ ら の 技 術 を 合 わ せ 、 石 炭 火 力 発 電 等 か ら の CO 2 を 分 離 ・ 回 収 ・ 輸 送 ・ 貯 留 す る ゼ ロ ・ エ ミ ッ シ ョ ン 石 炭 火 力 発 電 の 実 現 を 目 指 す 」、「 未 利 用 資 源 で あ る 亜 瀝 青 炭 ・ 褐 炭 等 の 低 品 位炭を、地球環境に配慮していきながら有効利用することが、世界的な資源エネルギー需 給の安定に不可欠」等の提言あり。 2-1-2-3. 革 新 的 エ ネ ル ギ ー ・ 環 境 戦 略 革 新 的 エ ネ ル ギ ー ・ 環 境 戦 略 ( 平 成 24 年 9 月 、 閣 議 決 定 ) に お い て 、「 石 炭 火 力 発 電 に 13 ついては、原発への依存度低減を進める上で、ベース電源としてより一層重要な役割を果 たす。また、海外での導入が進む見通しでもあり、我が国の高い環境性能を有する石炭火 力を海外で展開する。これにより、地球温暖化対策の国際貢献を進める」等の提言あり。 2-1-2-4. 日 本 再 興 戦 略 日 本 再 興 戦 略 -JAPAN is BACK-( 平 成 25 年 6 月 、閣 議 決 定 )に お い て 、 「高効率火力発電 を 徹 底 活 用 し 、エ ネ ル ギ ー コ ス ト を 低 減 さ せ る 。 ( 略 )先 進 技 術 開 発 を 加 速 し 、世 界 最 高 水 準の効率を有する火力発電を我が国で率先して導入するとともに、世界へ積極的に展開す る 。」、「 石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 発 電 ( IGFC) に つ い て 、 2025 年 ま で に 技 術 を 確 立 し 2030 年 代 の 実 用 化 を 目 指 す ( 発 電 効 率 : 現 状 39% 程 度 → 改 善 後 55% 程 度 )。」 等 の 提 言 あ り 。 2-1-2-5. 環 境 負 荷 低 減 水 銀 に 関 し て 、 2013 年 10 月 に 「 水 銀 に 関 す る 水 俣 条 約 」 が 締 結 さ れ 、 水 銀 排 出 、 使 用、移動に関する包括的な制約が国際的な流れとなっている。我が国では、 ・ 大 気 : 0.00004mg/m3 以 下 ・ 水 質 : 0.0005mg/L 以 下 の環境基準が既にあるが、水俣条約では石炭火力発電所が大気環境への主要発生源とし て 規 制 対 象 と な っ て い る 。 こ れ に 先 立 ち 北 米 で は 2013 年 3 月 に MATS( Mercury and Air Toxics Standards) が 施 行 さ れ 、 ・ 2016 年 度 よ り 0.013 lb/GWh( 0.0059kg/GWh) と発電量当たりの規制が始まることとなった。 14 2-1-3. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 施 策 の 位 置 付 け 一方、クリーンコール技術施策の企画立案の観点から、当該分野は「エネルギー・環境 政策」及び「産業政策」の二つの政策の柱に基づいて、それぞれの背景・状況から課題を 分析し必要な対応を抽出し、技術に係るクリーンコール施策の目的を明確化している(図 2-1-3)。 石 炭 利 用 に 伴 う 環 境 負 荷 の 低 減 、エ ネ ル ギ ー セ キ ュ リ テ ィ ー の 確 保 等 を 目 的 と し た 、 「石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化 」、 「 低 品 位 炭 の 多 用 途 利 用 」、 「 海 外 へ の 技 術 展 開・貢 献 」、 「環 境対策」等のクリーンコール技術の開発は、我が国の環境及び政策上極めて重要な施策で あり、これらを具体的なプロジェクトとして立案し有機的に進めて行く必要がある。 図 2-1-3 クリーンコール技術施策の位置付け 2-1-4. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系 上 述 の と お り 社 会 的 責 務 で あ る CO 2 削 減 、 今 後 の エ ネ ル ギ ー 需 給 の 見 通 し 、 我 が 国 発 電 構成における石炭火力のベース電源としての重要性等を考えると、経済性や供給安定性に 優れた石炭利用の拡大は必須の課題である。 し か し な が ら 、 こ れ も 上 述 の と お り 、 石 炭 は CO 2 排 出 が 多 い こ と 、 更 な る 安 定 供 給 が 必 要 な こ と 、CO 2 以 外 で も 環 境 へ の 影 響 が 大 き い こ と 等 か ら 、そ れ ら 課 題 を 克 服 す る 形 で ク リ ー ン コ ー ル 技 術 の 開 発 を 進 め て い か な け れ ば な ら な い 。つ ま り「 高 効 率 化・低 炭 素 化 」、 「低 品 位 炭 利 用 」、「 環 境 対 策 」 と い う 大 き な ニ ー ズ に 沿 っ た 開 発 が 目 標 と な る 。 図 2-1-4 に 示 し た と お り 、 地 球 温 暖 化 対 策 の CO 2 削 減 目 標 や エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 等 で 示 された政策目標を達成するためにクリーンコール技術開発の分野において果たすべき課題 が あ り 、 そ れ ら を 達 成 す る た め の 開 発 目 標 が 大 き く 「 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化 」、「 低 品 位 炭 15 利 用 」、「 環 境 対 策 」 の 3 つ と な っ て い る 。 これらの開発目標の下に複数の技術開発テーマが存在し、随時並行的に進められている。 個々の技術開発は上位目標の達成を目指すものとして最小単位にブレークダウンしたもの であり、一つ一つの成果が連携して最終的に上位目標を実現する道筋を示さなければなら ない。それぞれのテーマによる成果が有機的に連携するように現実的なメルクマール(目 標に向けた中間的な指標)を設定する。 それぞれの開発目標における現時点でのメルクマールとその考え方について、以下に述 べる。 今後の見通し ・石炭需給動向 ・環境負荷低減 政策目標 ・CO2削減目標 ・エネルギー基本計画 ・日本再興戦略 等 等 経済性、安定供給性に 優れる石炭利用の拡大 は必要不可欠 各分野におけるメ ルクマールを設定 課題 CO2多排出、さらなる安定供給、環境への影響 開発目標 高効率発電・低炭素化 図 2-1-4 低品位炭利用 環境対策 クリーンコール技術開発目標の体系と問題 2-1-4-1. 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化 石炭火力発電の高効率化については、定量的な発電効率の目標値が示されスケジュール に 沿 っ て 技 術 開 発 が 進 め ら れ て い る 。 微 粉 炭 火 力 に 関 し て は 、 SC か ら USC、 更 に は A-USC と い う 一 連 の 高 効 率 条 件 を 目 指 す 方 向 で あ り 、 石 炭 ガ ス 化 複 合 発 電 ( IGCC) に お い て も 高 効 率 化 と 派 生 技 術 と し て の IGFC の 開 発 が 期 待 さ れ る 。ま た 、発 生 し た CO 2 は CCS に よ る 削 減 が 期 待 さ れ る が 、 そ の CO 2 分 離 ・ 回 収 技 術 は 燃 焼 方 式 も 考 慮 し て 技 術 の 最 適 化 を 図 る 必 要があり、これからの課題となっている。我が国における石炭火力発電技術の高効率化の 目 標 及 び CO 2 排 出 量 削 減 に 向 け た 石 炭 火 力 の 排 出 原 単 位 の 状 況 に つ い て 図 2-1-5 及 び 図 21-6 に 示 す 。 16 図 2-1-5 ゼロエミッションを目指す我が国の石炭火力発電技術 出 典 :産 業 競 争 力 会 議 フ ォ ロ ー ア ッ プ 分 科 会 ( エ ネ ル ギ ー ) 資 料 5-4、 平 成 25 年 11 月 エ ネ 庁 図 2-1-6 火 力 発 電 形 態 別 の CO 2 排 出 量 出 典 : 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 石 炭 課 講 演 資 料 、 CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2013 ( 注 記 : 図 中 の CO 2 排 出 原 単 位 は 出 典 中 の 算 定 条 件 に 基 づ く 代 表 値 で あ り 、 個 別 技 術 の 性 能 は 運 転 条 件 、 発 電 設 備 の 仕 様 、 燃 料 の 質 等 に よ っ て 幅 が あ る と 考 え る べ き 。) また、低 炭 素 化 については、2008 年 7 月 の「低 炭 素 社 会 づくり行 動 計 画 」において、革 新 的 技 術 開 発 のロードマップの着 実 な実 行 が提 言 されており、高 効 率 発 電 技 術 開 発 の推 進 とともに、CO 2 の 分 離 ・回 収 技 術 によって低 コスト化 を促 進 し、最 終 的 にはゼロエミッション石 炭 火 力 の実 現 を目 指 すこととしている。 17 分 離 ・回 収 コストについては、現 状 の 7,000~8,000 円 /t・CO 2 (設 備 費 4,000 円 /t・CO 2 、燃 料 費 2,000 円 /t・CO 2 、固 定 費 1,000 円 /t・CO 2 、変 動 費 500 円 /t・CO 2、 出 典 :Cost Performance Baseline for Fossil Energy Plants DOE/NETL-2010/1397)から、2020 年 には高 性 能 アミン吸 収 ・ 固 体 吸 着 剤 法 により 3,000 円 /t・CO 2 (設 備 費 1,800 円 /t・CO 2 、燃 料 費 800 円 /t・CO 2 、固 定 費 250 円 /t・CO 2 、変 動 費 150 円 /t・CO 2 )程 度 に、さらに 2030 年 には高 性 能 アミン吸 収 ・固 体 吸 着 剤 法 ・膜 分 離 法 により 1,000 円 /t・CO 2 (設 備 費 650 円 /t・CO 2 、燃 料 費 200 円 /t・CO 2 、固 定 費 100 円 /t・CO 2 、変 動 費 50 円 /t・CO 2 )以 下 とすることが目 標 となっている。また、CO 2 分 離 ・回 収 のエネルギーについては、現 状 2.5GJ/t・CO 2 程 度 であるので、2020 年 頃 までに 1.5GJ/t・CO 2 程 度 まで低 減 し、さらに 2030 年 までに 1.0GJ/t・CO 2 程 度 まで下 げることを目 標 とする。 CO2分離回収コスト削減目標 (円/t・CO2) (GJ/t・CO2) 8000 CO2分離回収エネルギーの削減目標 3 7000 2.5 6000 5000 2 現行アミン吸収 4000 1.5 3000 2000 現行アミン吸収 1 高性能アミン吸収 固体吸着剤法 高性能アミン吸収 固体吸着剤法 0.5 1000 高性能アミン吸収 固体吸着剤法 膜分離法 0 2014 2020 図 2-1-6 2025 高性能アミン吸収 固体吸着剤法 膜分離法 0 2014 2030 2020 2025 2030 我 が 国 の CO 2 分 離 ・ 回 収 技 術 に よ る 削 減 量 目 標 2-1-5-2. 低 品 位 炭 利 用 現在、我が国は石炭のほとんどを輸入に依存している。主な輸入国は、オーストラリア と イ ン ド ネ シ ア で 、 2012 年 は 、 そ れ ぞ れ 1 億 1,500 万 ト ン (約 60% )、 3,500 万 ト ン (約 20% )を 輸 入 し て い る 。し か し 、近 年 は 産 炭 国 で あ る 中 国 や イ ン ド が こ れ ら の 国 か ら 多 く の 石炭を輸入するようになり、今後その輸入量は増加することが予想されており、我が国が 将来にわたって安定的にオーストラリアやインドネシアから良質な石炭を輸入できるかど うかが懸念されている。 また、世界の石炭埋蔵量のうちの約半分は、低品位炭と言われる亜瀝青炭及び褐炭であ り、このような低品位炭の利用はこれまでは山元における発電利用に留まっていた。しか し、例えば、我が国の低品位炭利用技術を導入することで、石炭を輸送してより広範な地 域で利用できることを可能にしたり、また、低品位炭をガス化することで、発電のみなら ず化学原料、肥料等への利用拡大をすることにより、低品位炭の生産地域の経済発展を促 進することとなる。 ここで我が国の低品位炭利用技術の推進におけるメルクマールとして2つの試算を行 った。一つは、技術の導入により産炭国の需給緩和を図り、我が国への安定供給に資する もの。もう一つは、技術の導入により安価な低品位炭の我が国への持込、利用を促進する もの。 前者については、自国生産の瀝青炭を自国内消費しているインドネシアにおいて、我が 国 の 低 品 位 炭 利 用 技 術( JCF、UBC 等 )を 導 入 す る こ と に よ り 、我 が 国 を 含 む 石 炭 輸 入 国 向 18 けに瀝青炭を振り向けるという想定であり、インドネシア石炭協会による、現行の国内消 費量、輸出量の予測に対して、以下の設定条件により試算を行った。 ・我 が 国 の 低 品 位 炭 利 用 技 術 の 導 入 に よ り 、イ ン ド ネ シ ア 国 内 消 費 の 石 炭( 現 行 は 、ほ ぼ全て瀝青炭)すべて低品位炭に入れ替わる。 ・インドネシアで生産される瀝青炭はすべて輸出に回す。 ・新 輸 出 量 と は:イ ン ド ネ シ ア の 国 内 消 費 を 全 量 褐 炭 (改 質 炭 )と し 、そ れ に 相 当 す る 分 の瀝青炭を輸出に振り向けた場合の輸出量。 そ の 結 果 、 2015 年 に 1.2 億 ト ン 、 2020 年 に 1.8 億 ト ン 、 2025 年 に 3 億 ト ン 、 2030 年 に 4 億トンの輸出余力が発生するとの試算が得られた。この輸出余力は、わが国の年間石炭 消 費 量 を は る か に 上 回 る 量 で あ り 、我 が 国 の 安 定 供 給 に 大 き く 貢 献 す る も の と 考 え ら れ る 。 12.0 億 トン 9.55 億 トン 8.0 億 トン 6.8 億 トン 6.55 億 トン 4.85 億 トン 5.0 億 トン 3.6 億 トン 3.0 億 トン 1.8 億 トン 1.25 億 トン 4.0 億 トン 出 典 : Indonesia Coal Handbook 図 2-1-7 イ ン ド ネ シ ア の 石 炭 需 給 予 測 (現 行 ) (百万トン) 1400 輸出余力:4億トン 1200 1200 輸出余力:3億トン 955 1000 800 600 400 輸出余力:1.8億トン 680 655 輸出余力:1.2億トン 496 485 361 800 200 0 2015 2020 2025 輸出量 2030 新輸出量 出 典 : Indonesia Coal Handbook 統 計 デ ー タ を 元 に JCOAL 作 成 図 2-1-8 イ ン ド ネ シ ア の 石 炭 需 給 予 測 (低 品 位 炭 利 用 技 術 適 用 ) 19 また、後者については、技術導入により産炭国の低品位炭を我が国に持ち込む想定を、 豪州を例として、以下の設定条件により試算した。 ・目 標 と な る 石 炭 価 格 設 定 は 2014 年 1 月 の Argus/McCloskey's Coal Price Index(API)、 及 び Argus/Coalindo Indonesian Coal Index( ICI) の 価 格 イ ン デ ッ ク ス を 参 考 と し た。 ・ 改 質 の 対 象 と な る 原 炭 ( ビ ク ト リ ア 褐 炭 ) の 性 状 値 3 は 、 2,600kcal/kg、 水 分 60% 、 価 格 10USD/ton と し た 。 ・改 質 技 術 に よ る 品 質 向 上 値 は 、改 質 技 術 に よ り 水 分 減 量 分 だ け 石 炭 炭 素 分 の 重 量 が 増 加するため、相対的に発熱量が増加すると仮定した。 我 が 国 の あ る 技 術 は 、 改 質 後 の 水 分 を そ れ ぞ れ 35% 、 20% 、 10% 、 0% に 低 減 す る も の で あ り 、こ れ ら の 技 術 を 適 用 す る と 上 記 原 炭 の 発 熱 量 は そ れ ぞ れ 、4,225、5,200、5,850、 6,500 kcal/kg に 増 加 す る 。 こ れ ら と 同 程 度 の 発 熱 量 を 有 す る 瀝 青 炭 の 価 格 よ り 低 く な る ことを目標として、技術開発、導入を進める必要があり、引き続き適当なメルクマールを 設 定 し て い く 必 要 が あ る ( 図 2-1-10)。 例 え ば 、 低 品 位 炭 を 油 ス ラ リ ー 中 で 加 熱 し 水 分 を 除 去 す る UBC 技 術 は 、 褐 炭 が 瀝 青 炭 の 熱 量 等 価 以 下 と な る よ う に 改 質 す る 技 術 で あ り 、 現 在 の と こ ろ 総 コ ス ト が 58~ 72US/ton と な っ ており、さらなる低コスト化及び安定化を目指して技術実証を進めている。 120 ;石炭価格、API, Argus/McCloskey’s Coal Price Index, 豪州、2014年1月 ;石炭価格、ICI, Argus/Coalindo Indonesia Coal Index, 尼国、 2014年1月 価格 (USD/ton FOB) 100 ;Upgrading of Brown Coal (UBC) 80 72;褐炭原炭価格15U$/t時のUBC総コスト 72 58;褐炭原炭価格10U$/t時のUBC総コスト 60 58 改質炭 40 20 出典;低品位炭改質技術研究開発プロジェ クト 事後評価検討会 H22年12月 褐炭 0 2000 改質効果 3000 4000 5000 6000 7000 発熱量 (kcal/kg) 出 典 : JCOAL 作 成 図 2-1-10 豪州の石炭価格への波及効果 2-1-5-3. 環 境 対 策 我が国の厳しい環境規制の下で開発が進められてきた環境負荷物質低減技術は、今後各 国において規制強化が進む際に、その対策技術のデファクトスタンダードとなる可能性が 高い。ただし、規制が施行され対象となり得る国、対象となる規制物質等は未だ限定的で あり、明示的にメルクマールを設定し抜本的な問題解決を目指すには、ニーズや技術の発 掘、整理等、現状把握の段階も含めた検討が必要である。 3 CCT ワークショップ 2009 20 2-1-6. 今 後 の 検 討 中 間 的 な メ ル ク マ ー ル の 設 定 は 、技 術 開 発 を 体 系 と し て 進 め て 行 く 上 で 不 断 の 精 査 が 必 要 で あ る 。 そ の た め に は 、 我 が 国 の 技 術 の シ ー ズ 、 他 国 の 技 術 開 発 動 向 、 世 界 的 な CO2 対 策 ・ CCS 等 の 方 針 、 産 炭 国 の 国 情 等 の 検 討 要 素 が 多 く 、 継 続 的 に フ ォ ロ ー し て い か な け れ ばならない。 今 後 は 、上 記 の 状 況 も 踏 ま え 、さ ら に ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系 の 内 容 を 精 査 し、中間的なメルクマールをより定量的に精緻化し、また上位目標の達成に向けて不足の 部分を補完する技術開発や実証事業を必要なタイミングで導入していかなければならない。 2-2. CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 に つ い て 当 該 マ ッ プ に 取 り 上 げ た 26 の 個 別 技 術 は 、 平 成 24 年 3 月 NEDO に よ り 作 成 さ れ た 「 石 炭利用技術分野の技術ロードマップ」等をベースに、現時点で実際に企業や研究機関が取 り組んでいる個別の技術開発について、例えば、試験の名称、目標値、規模等をマップ上 に具体的に記載し、目標に向けて進んでいる状況が示されるように作成した。 ま た 、 収 集 し た CCT 個 別 情 報 を 整 理 す る 過 程 で 、 技 術 開 発 の 実 証 、 商 用 化 を 目 指 し て 研究開発を進める中でフェーズや目的の違いによってグルーピングされるものを、これら の違いに基づき下記の3通りの整理により大分類した。 ① 技術完成までにさらに開発課題が残されている個別技術 図 2-3-1 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 個 別 技 術 ( 中 長 期 開 発 ) 参 照 ② 技術開発自体は完了しているが、実用化のために更なる低コスト化が必要な個別技 術 図 2-3-2 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 個 別 技 術 ( 低 コ ス ト 化 ) 参 照 ③ ビジネスチェーンの構築に関する個別技術 図 2-3-3 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 個 別 技 術 ( ビ ジ ネ ス チ ェ ー ン の 確 立 ) 参 照 また、これら3つの整理結果のそれぞれについて石炭火力の高効率化・低炭素化、低 品位炭の多用途利用、環境対策に中分類した。 これらの中分類のそれぞれの内容について以下に説明する。 2-2-1. 石 炭 火 力 の 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化 石 炭 火 力 の 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化 は 、 石 炭 火 力 発 電 技 術 、 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 、 CO2 回 収 技術の3つに小分類した。 これらの小分類のそれぞれの内容について以下に説明する。 2-2-1-1. 石 炭 火 力 発 電 技 術 日 本 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 は 、 USC で 蒸 気 温 度 600℃ 、 発 電 端 効 率 43% HHV と 世 界 最 高 レ ベ ル を 達 成 し て い る 。 こ の USC の 蒸 気 温 度 700℃ を 実 現 し A-USC に 置 き 換 え れ ば 、 石 炭 の 消 費 量 及 び CO 2 の 発 生 量 と も に 10%以 上 抑 制 で き る と 考 え ら れ て お り 、 耐 熱 材 料 や 機 器 の開発が進められている。 21 既 存 石 炭 火 力 発 電 技 術 に 比 べ 熱 効 率 が 高 く CO 2 排 出 量 の 大 幅 な 低 減 が 見 込 ま れ る IGCC ( 石 炭 ガ ス 化 複 合 サ イ ク ル 発 電 ) 技 術 開 発 や 、 IGFC( 石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 サ イ ク ル 発電)技術開発も行われている。 2-2-1-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 日 本 の 製 鉄 技 術 は 世 界 最 先 端 の 水 準 に あ り 、省 エ ネ ル ギ ー も 極 限 に 達 し て お り 、こ れ 以 上 の CO2 削 減 を 狙 う べ く 、 従 来 製 鉄 プ ロ セ ス を 抜 本 的 に 見 直 し 、 水 素 に よ る 鉄 鉱 石 の 還 元 と 高 炉 ガ ス か ら の CO2 分 離 回 収 に よ る 30%の CO2 削 減 を 2030 年 頃 に 実 用 化 す る べ く 目 指 し ている。 2-2-1-3. CO 2 回 収 技 術 2050 年 で の CO 2 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 化 を タ ー ゲ ッ ト と し た CO2 回 収 技 術 は 、 酸 素 燃 焼 、 ケ ミ カ ル ル ー ピ ン グ 、 CO 2 循 環 型 IGCC 技 術 等 、 多 岐 に わ た る 分 野 で の 技 術 開 発 が 世 界 中 で 進 められており、技術力立国日本の真価を試される好機であるとの視点から精力的な取り組 みが進んでいる。 2-2-2. 低 品 位 炭 の 多 用 途 利 用 低品位炭の他用途利用は、改質炭利用技術、産業用石炭利用技術、石炭火力発電技術の 3つに小分類した。これらの小分類のそれぞれの内容について以下に説明する。 2-2-2-1. 改 質 炭 利 用 技 術 高水分・低発熱量で自然発火性から従来対象外とされてきた褐炭や亜瀝青炭等の未利 用低品位炭を加熱抽出或いは水素化等の改質技術によってコース製造用粘結炭等のコーク ス配合用等(ハイパーコール、褐炭高度利用等)に資源化する技術を開発している。 2-2-2-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 褐炭のように揮発分の割合が多く比較的ガス化が容易であるが限定的にしか使用され て い な い 未 利 用 低 品 位 炭 を ガ ス 化 し ( TIGAR、 ECOPRO 等 )、 燃 料 、 化 学 原 料 な ど 、 天 然 ガ ス、石油の代替とする技術開発を行っている。 2-2-2-3. 石 炭 火 力 発 電 技 術 高水分・低発熱量で自然発火性が高いため、利用が限定されている褐炭や亜瀝青炭等 の 未 利 用 低 品 位 炭 を 低 コ ス ト で UBC、 JCF 等 に 改 質 あ る い は 液 状 化 し て 、 産 炭 国 内 或 い は 日本国内市場に供給することを目的に技術開発を行っている。 2-2-3. 環 境 対 策 石 炭 利 用 に 伴 う 環 境 面 へ の 影 響 に つ い て は 、 他 の 化 石 燃 料 に 比 べ CO 2 発 生 量 が 多 く 、 ま た 、燃 焼 に 伴 い SOx、NOx、石 炭 灰 等 の 地 域 環 境 へ の 影 響 物 質 を 発 生 す る た め 、今 後 の 石 炭 利用に関しては、石炭灰、有害微量成分除去等の環境汚染対策技術の更なる開発と活用を 行っている。 22 2-3. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 国内展開技術 (大分類:中長期開発) 中分類 海外展開技術 2014 小分類 石炭火力 発電技術 ② IGFC 実用化(700℃級) 実証試験 (大崎CG) IGCC実証 (大崎CG) 産業用 石炭利用 技術 23 CO2回 収技術 ⑥ COURSE50 産業用 石炭利用 技術 環境負荷 低減技術 商用化(<10%混合) 実証試験 実用化開発 O2-CO2 ガス化炉試験 CO2循環 クローズド試験 300MW実証試験 ⑧ ケミカルルーピング 反応塔 構造検討 30MWPP試験 100MW 実証試験 ⑨ 酸素燃焼 ⑩ Post-Combustion CO2回収 実証試験 ベンチ 試験 ⑭ ハイパーコール 実証試験 ⑮ 自然エネルギ-付加 したCCT 実証試験 ⑯ TIGAR 実証試験 ⑰ ECOPRO 実証試験 ⑱環境負荷物質低減 (B、Se) JIS/ISO化 商用化 商用化 商用化 CO2転換利用試験 ⑬高効率褐炭乾燥 商用化 商用化 実証試験 実証試験 商用化(>10%混合) 商用化 パイロット規模 総合技術開発 ⑦ CO2循環型 IGCC ⑫褐炭高度利用 低品位炭の 多用途利用 商用化 商用化(GT1700℃、700℃AUSC開発後) ⑤ フェロコークス ⑪ CO2転換利用 改質炭利 用技術・ 実用化(800℃級) ③ A-IGCC ④ ABC 環境対策 2050 2040 技術分野と個別技術 ① A-USC 石炭火力の 高効率化・ 低炭素化 2030 2020 小規模CO2転換利用 商用化 商用化 PP試験 商用化 商用化 商用化 商用化 低減技術、利用技術 図 2-3-1 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 中 長 期 開 発 ) 大規模CO2転換利用 国内展開技術 海外展開技術 (大分類:低コスト化) 中分類 2014 技術分野と個別技術 小分類 ⑲ USC 石炭火力の 高効率化・ 低炭素化 2020 2015 石炭火力 発電技術 現地メーカー提携による市場橋頭堡確保 21 バイオマス石炭ハイブリッド (微粉炭混焼) 22 UBC 500-600MW 250MW 40.5%(HHV) ⑳ IGCC 46~48%(HHV) 5cal%混合 (混合粉砕) 20~50cal%混合 (専用粉砕) 産炭国で商用プラント建設、運転による技術普及 経済的低灰分・低硫黄分燃料を 日本に輸入 24 低品位炭の 多用途利用 石炭火 力発電 技術 23 JCF・HWT 24石炭ガス化スラグ 有効利用 環境対策 環境負 荷低減 技術 25 水銀対応型乾式脱硫 26 水銀除去触媒 実証試験 商用化 たいさく JIS化試験 商用化 海外での技術信頼性の確立(実証) 米国、EUなど水銀規制対象地域への売込み 図 2-3-2 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 コ ス ト 化 ) 国内展開技術 海外展開技術 2014 2020 2030 2050 2040 技術分野と個別技術 低品位炭チェーンの確立 27 水素チェーン確立 28 SNGチェーン確立 水素輸送 試験 低コスト SNG製造 技術開発 褐炭ガス化 水素製造 試験 小規模 トータル実証 小規模 トータル実証 大規模実証試験 大規模実証試験 25 図 2-3-3 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 品 炭 チェーンの 確 立 ) 商用化 商用化 2-4. 個 別 技 術 当 該 マ ッ プ に 取 り 上 げ た 26 の 個 別 技 術 に つ い て 、1.技 術 開 発 概 要 等 、2.技 術 開 発 状 況 等 及 び 3.技 術 開 発 、ま た は 、成 果 普 及 の た め に 何 が 必 要 か の 項 目 で 構 成 さ れ る 個 別 技 術 表 を 整理し、以下に示す。 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ① 超 々臨 界 圧 発 電 技 術 (A-USC) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 株 式 会 社 IHI,ABB 日 本 ベーレー株 式 会 社 ,新 日 鐵 住 友 金 属 工 業 株 式 会 社 , 株 式 会 社 東 芝 ,バブコック日 立 株 式 会 社 ,株 式 会 社 日 立 製 作 所 ,富 士 電 機 シ ステムズ株 式 会 社 ,三 菱 重 工 業 株 式 会 社 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・A-USC とは、Advanced Ultra-Supercritical の略 で 700℃超 臨 界 圧 発 電 システ ムを意 味 する。最 新 の通 常 火 力 発 電 では、蒸 気 温 度 は約 600℃のところ、AUSC では、蒸 気 条 件 を 700℃以 上 にすることで、大 幅 な効 率 向 上 を可 能 にす る。主 蒸 気 圧 力 35MPa、主 蒸 気 温 度 700℃、再 熱 蒸 気 温 度 720℃/720℃の二 段 再 熱 蒸 気 条 件 の A-USC プラントでは、46%以 上 の送 電 端 効 率 [HHV 基 準 ] が期 待 できる。 必要性 ・CO 2 排 出 量 削 減 による地 球 温 暖 化 防 止 対 策 に貢 献 するために、既 存 の石 炭 火 力 発 電 技 術 に比 べ、大 幅 な削 減 効 果 が期 待 できる高 効 率 発 電 技 術 を開 発 する必 要 がある。 目 標 ・第 1 目 標 :主 蒸 気 温 度 700℃超 /再 熱 温 度 700℃超 級 の実 証 プラント開 発 (650~700℃級 の材 料 の高 強 度 化 、大 型 化 開 発 を加 速 し、基 礎 技 術 確 立 する 必 要 あり)。 ・第 2 目 標 :主 蒸 気 温 度 800℃/再 熱 温 度 800℃級 の実 証 プラント開 発 。 効 果 ・高 灰 融 点 石 炭 の高 効 率 発 電 、発 電 技 術 の多 様 化 とリスク分 散 、既 設 石 炭 発 電 技 術 の有 効 活 用 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・ボイラ:材 料 開 発 、材 料 製 造 性 検 証 ・タービン:材 料 開 発 ・高 温 弁 :構 造 、要 素 、材 料 開 発 現 状 ・ボイラ:高 温 長 期 材 料 試 験 ・タービン:高 温 長 期 材 料 試 験 今 後 ・ボイラ:実 缶 試 験 ・タービン:回 転 試 験 ・高 温 弁 :確 認 試 験 ・実 証 機 検 証 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・コスト低 減 :従 来 のフェライト系 材 料 については適 用 限 界 温 度 の向 上 可 能 性 の更 なる見 極 め、素 材 そのものが極 めて高 価 なオーステナイト系 材 料 については、原 材 料 、加 工 ・溶 接 など の製 造 コストの引 下 げや使 用 箇 所 の縮 小 化 、更 には耐 久 性 、信 頼 性 を確 認 しつつ、安 価 な他 材 料 の開 発 等 コスト低 減 化 に向 けた技 術 開 発 が必 要 。 ・負 荷 運 用 性 の向 上 :高 圧 化 に対 しては、材 料 の高 度 化 または厚 肉 構 造 とすることで対 処 でき 26 るが、耐 圧 部 肉 厚 増 加 に伴 う熱 容 量 の増 大 と温 度 差 制 約 の拡 大 により、起 動 時 間 の長 期 化 や負 荷 変 化 率 の低 下 が懸 念 される。このため全 体 システム制 御 手 法 の開 発 により、起 動 性 や 負 荷 応 答 性 に優 れたUSC の開 発 が必 要 。 ・長 期 信 頼 性 :高 強 度 材 そのものの開 発 とともに、その高 強 度 材 の溶 接 構 造 が研 究 の中 核 と なっていることから、その長 期 信 頼 性 が最 重 要 。 出 典 : 先 進 超 々臨 界 圧 火 力 発 電 実 用 化 要 素 技 術 開 発 の概 要 について(平 成 22年 11月 9日 ) 株 式 会 社 IHI,ABB日 本 ベーレー株 式 会 社 ,住 友 金 属 工 業 株 式 会 社 ,株 式 会 社 東 芝 ,バブコック日 立 株 式 会 社 ,株 式 会 社 日 立 製 作 所 ,富 士 電 機 システムズ株 式 会 社 ,三 菱 重 工 業 株 式 会 社 27 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ② 石 炭 ガス化 燃 料 電 池 複 合 発 電 技 術 (IGFC) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 大 崎 クールジェン株 式 会 社 、中 国 電 力 株 式 会 社 、電 源 開 発 株 式 会 社 、 株式会社日立製作所 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・石 炭 ガス化 燃 料 電 池 複 合 発 電 システムは、酸 素 吹 1 室 2 段 旋 回 流 ガス化 炉 を用 いて石 炭 をガス化 することにより、燃 料 電 池 、ガスタービンおよび蒸 気 ター ビンの 3 種 の発 電 形 態 を組 み合 わせて、トリプル複 合 発 電 を行 うものである。 実 現 すれば 55%以 上 の送 電 端 効 率 が可 能 となり、CO 2 排 出 量 も既 設 の石 炭 火 力 発 電 と比 較 して、最 大 30%低 減 することが見 込 まれる高 効 率 発 電 技 術 で ある。 必要性 ・CO 2 排 出 量 削 減 による地 球 温 暖 化 防 止 対 策 に貢 献 するために、既 存 の石 炭 火 力 発 電 技 術 に比 べ、大 幅 な削 減 効 果 が期 待 できる高 効 率 発 電 技 術 を開 発 する。 目 標 ・最 終 目 標 として、送 電 端 効 率 55%(LHV)/53%(HHV:参 考 値 )を実 現 し、これ により従 来 の石 炭 火 力 発 電 技 術 に比 べ CO 2 排 出 量 を約 30%削 減 する。 効 果 ・送 電 端 効 率 55%(LHV)/53%(HHV:参 考 値 )を実 現 することで、 ① CO 2 排 出 量 削 減 ②発 電 コスト削 減 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・50t/d, 150t/d パイロットプラントによる技 術 開 発 と要 素 技 術 開 発 。 現 状 ・大 崎 クールジェン第 1 段 階 166MW 酸 素 吹 IGCC 実 証 機 建 設 中 。 今 後 ・大 崎 クールジェン第 2 段 階 CO2 分 離 ・回 収 型 IGCC 実 証 試 験 。 ・ 〃 第 3 段 階 CO2 分 離 ・回 収 型 IGCC 実 証 試 験 。 ・商 用 機 へのスケールアップ。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・IGFC に適 した CO 2 分 離 ・回 収 方 式 を選 定 し、実 証 試 験 を確 実 に実 施 する必 要 がある。 ・IGFC に適 したガスクリーニング技 術 と高 温 型 燃 料 電 池 を開 発 する必 要 がある。 28 別紙 IGCC プロセスフロー 出 典 :独 立 行 政 法 人 新 エネルギー・産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 http://www.nedo.go.jp (一 財 ) 石 炭 エネルギーセンター http//www.jcoal.or.jp パンフレット「日 本 のクリーン・コール・テクノロジー」 出 典 :大 崎 クールジェン(株 ) WEB サイト http://www.osaki-coolgen.jp/ (2013.12.08) 29 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ③次 世 代 高 効 率 石 炭 ガス化 発 電 技 術 (A-IGCC) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 東 京 大 学 、(一 財 )電 力 中 央 研 究 所 、(一 財 )エネルギー総 合 工 学 研 究 所 、 (一 財 )石 炭 エネルギーセンター他 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・高 効 率 の石 炭 発 電 技 術 として、IGCC や IGFC の開 発 が行 われているが、現 在 のガス化 技 術 では、石 炭 の一 部 を燃 焼 して形 成 した高 温 場 で石 炭 をガス化 す るため、発 電 効 率 の低 下 を招 いている。そこで、発 電 効 率 を飛 躍 的 に向 上 す るために、石 炭 を低 温 でガス化 し、ガス化 に必 要 な熱 は高 温 ガスタービンや燃 料 電 池 の排 熱 を蒸 気 として再 生 利 用 する、「エクセルギー再 生 型 次 世 代 ガス 化 高 効 率 発 電 システム(Advanced-IGCC/IGFC)」が提 唱 されている。 必要性 ・地 球 温 暖 化 の観 点 から、石 炭 利 用 に際 して発 生 する CO 2 をできるだけ少 なくす ることが求 められている。排 出 する CO 2 を回 収 ・貯 留 する技 術 も検 討 されてい るが、最 も生 産 性 に寄 与 できる形 で CO 2 削 減 ができる方 法 は、できるだけ高 効 率 化 することであり、その方 策 を追 求 することは大 いに意 義 がある。 目 標 ・現 在 、高 効 率 石 炭 発 電 技 術 として、石 炭 ガス化 複 合 サイクル発 電 (IGCC)や 石 炭 ガス化 燃 料 電 池 複 合 サイクル発 電 (IGFC)の開 発 が行 われているが、さ らに高 効 率 を目 指 した石 炭 ガス化 による発 電 システム、すなわち石 炭 を可 能 な限 り低 温 でガス化 し、そのガス化 に必 要 な熱 は、高 温 ガスタービン又 は燃 料 電 池 の排 熱 を再 生 利 用 するエクセルギー再 生 システムにより、エネルギー転 換 効 率 を飛 躍 的 に向 上 (送 電 端 効 率 65%(HHV)/約 68%(LHV、参 考 値 )以 上 ) させるシステムとして、次 世 代 高 効 率 石 炭 ガス化 発 電 技 術 (A-IGCC)が位 置 づ けられている。 効 果 ・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に比 べ CO 2 発 生 量 を約 30%削 減 する効 果 がある。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・NEDO「次 世 代 高 効 率 石 炭 ガス化 技 術 開 発 」にて平 成 24 年 度 まで低 温 ガス化 技 術 、プロセス最 適 化 検 討 等 を実 施 。 現 状 ・システム検 討 今 後 ・実 用 化 には IGCC や IGFC の技 術 を基 盤 として、さらに高 度 な技 術 が求 められ ることから、本 格 的 な市 場 導 入 時 期 は 2040 年 前 半 を想 定 している。 ・触 媒 利 用 によるより低 温 での高 効 率 石 炭 ガス化 技 術 ・高 温 ガスタービンや高 温 燃 料 電 池 から石 炭 ガス化 に必 要 な排 熱 の回 収 技 術 (エクセルギー再 生 システム化 )のコンパクト化 ・ガスタービンの高 温 化 と蒸 気 サイクルの高 温 高 圧 化 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・A-IGCC の実 現 には、幅 広 い周 辺 技 術 の進 展 が不 可 欠 である。とりわけ石 炭 ガス化 技 術 は 全 体 の発 電 効 率 を左 右 する重 要 な技 術 であることから、より一 層 の効 率 向 上 に向 けた研 究 開 発 が望 まれる。さらに、基 礎 研 究 開 発 を進 展 させるには、機 械 工 学 、材 料 工 学 、計 算 機 科 学 、燃 焼 工 学 等 、幅 広 い学 術 分 野 の知 見 を集 積 した検 討 が必 要 である。 30 別紙 図1 エクセルギー再 生 次 世 代 ガス化 による複 合 発 電 の概 念 (A-IGCC) (出 典 :07.2009 次 世 代 高 効 率 石 炭 ガス化 技 術 開 発 中 間 評 価 資 料 ) A-IGCC/IGFC 乾式ガスクリーニング 図2 A-IGCC, A-IGFC の送 電 端 効 率 (HHV ベース)見 通 し (出 典 : 07.2009 次 世 代 高 効 率 石 炭 ガス化 技 術 開 発 中 間 評 価 資 料 ) 31 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ④石 炭 ・バイオマス共 利 用 発 電 技 術 (ABC) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 ㈱IHI、荏 原 製 作 所 ㈱、JCOAL、電 中 研 他 2. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・ABC とは、Advanced coal Biomass Co-utilization の略 で石 炭 をバイオマス あるいはバイオマス由 来 の燃 料 と一 緒 に利 用 することでバイオマス単 独 で 利 用 するよりも高 効 率 な発 電 システムを狙 う。具 体 的 には、実 用 化 済 みの 微 粉 炭 バイオマス直 接 混 焼 利 用 を除 く、共 ガス化 による IGCC や IGFC で の利 用 やボイラ等 のバイオマス変 換 システムとの統 合 利 用 を目 指 す。 ・従 来 は利 用 が難 しかった高 水 分 、高 塩 分 、低 粉 砕 性 等 の低 質 バイオマスの 有 効 利 用 も石 炭 と共 利 用 により可 能 とすることでバイオマス調 達 先 の裾 野 を拡 大 する。 必要性 ・CO2 排 出 量 削 減 による地 球 温 暖 化 防 止 対 策 に貢 献 するために、既 存 の 石 炭 火 力 発 電 技 術 に比 べ、相 当 の削 減 効 果 が期 待 できる低 炭 素 な発 電 技 術 を開 発 する必 要 がある。 目 標 ・技 術 目 標 :ABCをバイオマスエネルギー比 率 8-10%以 上 で実 用 化 する。 ・第 1実 用 化 目 標 :ABC発 電 プラントを2-3箇 所 で実 現 して、8-10%相 当 のエ ネルギーをバイオマスから得 る仕 様 とする。さらに、高 水 分 針 葉 樹 が多 い北 海 道 や東 北 地 方 の大 規 模 森 林 資 源 と一 体 となったバイオマス安 定 調 達 シス テムの整 備 。 ・第 2 実 用 化 目 標 :、10%超 のエネルギーをバイオマスから得 る仕 様 の ABC プラントを全 国 、全 電 力 会 社 に普 及 させる。 効 果 ・バイオマス利 用 エネルギー相 当 分 が低 炭 素 に直 結 する。バイオマス単 独 利 用 設 備 に対 して高 効 率 発 電 が可 能 。バイオマス利 用 拡 大 により国 内 森 林 資 源 の保 護 、育 成 、地 域 活 性 化 に貢 献 する。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・ABC ガス化 :石 炭 バイオマス共 ガス化 技 術 の基 礎 開 発 ・ABC 用 ガス化 :バイオマスガス化 技 術 は小 規 模 で実 用 化 済 み 現 状 ・ABC ガス化 :3 塔 式 ABC ガス化 技 術 要 素 開 発 中 ・ABC 用 ガス化 :バイオマス主 体 の ABC ガス化 小 規 模 実 証 試 験 実 施 中 今 後 ・ABC の実 用 化 に向 けたスケールアップ開 発 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・IGCCの普 及 とそれに続 く、高 効 率 化 以 外 の低 炭 素 化 技 術 開 発 への支 援 ・バイオマス利 用 によって事 業 性 が有 利 になる制 度 設 計 ・バイオマス資 源 の保 護 、育 成 、地 域 活 性 化 に関 する省 庁 間 の連 携 32 大 分 類 :中 長 期 開 発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑤資源対応力強化のための革新的製銑プロセス(フェロコークス) 開発者 小分類 産業用石炭利用技術 JFE スチール株 式 会 社 、新 日 鐵 住 金 株 式 会 社 、株 式 会 社 神 戸 製 鋼 所 1. 技 術 開 発 の目 標 、必 要 性 、効 果 概 要 ・高 炉 内 還 元 反 応 の 高 速 化・低 温 下 機 能 を 発 揮 す る 革 新 的 製 銑 プ ロ セ ス( 低 品 位 炭 と 低 品 位 鉄 鉱 石 の 混 合 成 型・乾 留 に よ り 生 成 さ れ る コ ー ク ス 代 替 還 元 剤 :フ ェ ロ コ ー ク ス ) 及 び そ の 操 業 プ ロ セ ス を 開 発 し 、 製 銑 プ ロ セ ス の 省エネルギーと低品位原料利用拡大の両立を目指す革新的技術の開発を 行う。 必要性 ・我 が国 鉄 鋼 業 界 は、長 期 的 かつ安 定 的 な原 料 調 達 が重 要 課 題 で、中 長 期 的 に大 幅 な CO 2 排 出 削 減 が求 められており、この課 題 解 決 のための実 用 化 技 術 となりうる。 目 標 ・現 行 高 炉 最 大 操 業 に 対 し て 約 1 0 % の 省 エ ネ ル ギ ー の 実 現 。 ・高 品 位 炭 の 使 用 割 合 を 現 在 の 約 6 割 か ら 約 4 割 ま で 低 減 し 、 低 品 位 炭 の 利用拡大を実現。 ・フ ォ ロ コ ー ク ス の 品 質 目 標 : 強 度 指 数 (DI) ≧ 8 2 、 反 応 性 (JISRI)≧ 5 0%。 効 果 ・低 品 位 石 炭 、鉄 鉱 石 を活 用 でき、資 源 確 保 戦 略 に寄 与 。また、フェロコークス は、成 形 、乾 留 によりコークス中 に金 属 鉄 を分 散 させた高 炉 原 料 。 ・金 属 鉄 が高 炉 での還 元 反 応 速 度 を速 めるため、従 来 よりも少 ないコークス量 で 酸 化 鉄 を還 元 でき、CO 2 排 出 量 の大 幅 削 減 と省 エネルギーを実 現 できる。 2.技 術 開 発 状 況 、開 発 ステージ、ステータス 過 去 ・2009~2011年 PP 規 模( 30t/d)で の フ ェ ロ コ ー ク ス 製 造 プ ロ セ ス( 30 t /d ) 技 術 開 発 、 高 炉 評 価 技 術 開 発 ・2012~2013年 フ ェ ロ コ ー ク ス 長 期 安 定 製 造 技 術 開 発 、実 高 炉 で の 短 期 試験、数式モデルによる効果試算 現 状 ・2013年 11月 中 規 模 実 証 試 験 に む け た 検 討 今 後 ・2020年 初 実 機 高 炉 への実 証 的 導 入 ・2025年 導入普及 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・中 規 模 実 証 機 の開 発 には多 額 の設 備 投 資 が必 要 であり、一 民 間 企 業 の負 担 で実 施 するのは 困 難 。劣 質 炭 の利 用 、石 炭 資 源 戦 略 につながる公 的 な支 援 が必 要 。 33 別紙 フェロコークス製造プロセス概要 高炉では、通常のコークスの一部を「フェロ コークス」に置き換えて使用します。操業中の 高 炉 内 で は 、 一 酸 化 炭 素 ( CO) に よ る 鉄 鉱 石 (焼結鉱)の還元反応の進行により、二酸化 炭 素 ( CO 2 ) が 発 生 し て い ま す 。「 フ ェ ロ コ ークス」内部に含まれている超微粒の金属鉄は、 こ の CO 2 が コ ー ク ス ( C) と 反 応 し 還 元 ガ ス ( CO) を 再 生 成 す る 反 応 ( C+ CO 2 = 2CO) の触媒(*1)となり反応速度を大幅に向上 さ せ ま す 。 そ の 結 果 、 CO 濃 度 が 上 昇 し 、 鉄 鉱 石(焼結鉱)の還元反応は低温度でも進行する ようになり、少ないコークスで酸化鉄の還元が で き 、 還 元 材 比 の 大 幅 な 低 減 が 期 待 で き 、 CO 2 排出削減、省エネに寄与します フェロコークス製造プロセスフロー 出 典 :JFE スチール株 式 会 社 の WEB サイトから 34 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 ・低 炭 素 化 小分類 産業用石炭利用技術 個別技術名 ⑥環 境 調 和 型 製 鉄 プロセス技 術 開 発 (COURSE 50) 開発者 新 日 鐵 住 金 株 式 会 社 、JFE スチール株 式 会 社 、株 式 会 社 神 戸 製 鋼 所 、日 新 製 鋼 株 式 会 社 、新 日 鉄 住 金 エンジニアリング株 式 会 社 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・高 炉 で使 用 するコークス製 造 時 に発 生 する高 温 のコークス炉 ガスに含 まれる水 素 を増 幅 し、コークスの一 部 代 替 に当 該 水 素 を用 いて鉄 鉱 石 を還 元 する技 術 (高 炉 からの CO 2 排 出 削 減 技 術 )を開 発 する。 ・また、高 炉 ガスから CO 2 を分 離 するため、製 鉄 所 内 の未 利 用 排 熱 を活 用 した 革 新 的 な CO 2 分 離 ・回 収 技 術 (高 炉 からの CO 2 分 離 回 収 技 術 )を開 発 する。 必要性 ・日 本 の製 鉄 技 術 は世 界 最 先 端 の水 準 にあり、省 エネルギーも極 限 に達 してい る。これ以 上 の CO 2 削 減 を狙 うには、本 技 術 開 発 のような製 鉄 プロセスの抜 本 的 な見 直 しが必 要 である。 目 標 ・水 素 による鉄 鉱 石 の還 元 と高 炉 ガスからの CO 2 分 離 回 収 により、総 合 的 に約 30%の CO 2 削 減 を図 る。 ・2030年 頃 までに実 用 化 を目 指 す。 効 果 ・鉄 鋼 業 は、我 が国 の CO2 発 生 量 の約 15%を占 めているが、鉄 鋼 業 からの CO 2 の約 7割 が高 炉 を用 いた製 鉄 プロセスから発 生 している。本 技 術 開 発 によ り、日 本 全 体 の CO2 排 出 量 の大 幅 な削 減 (現 状 の3%分 )が可 能 である。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2008~2012年 (フェーズ1 STEP1) 水 素 による鉄 鉱 石 還 元 と高 炉 ガスからの CO 2 分 離 回 収 等 の要 素 技 術 開 発 。 現 状 ・2013~2017年 (フェーズ1 STEP2) ミニ試 験 高 炉 を主 体 として「水 素 還 元 と CO 2 分 離 回 収 を統 合 した総 合 技 術 開 発 」 (試 験 高 炉 建 設 (3 ヵ年 )+試 験 高 炉 操 業 (2ヵ年 ) 今 後 ・2020~2030年 (実 用 化 開 発 ) 2030 年 までに実 用 化 開 発 を終 了 させ、経 済 的 な CO2 貯 留 に関 するインフラ 整 備 が確 保 されれば、実 機 化 できるようにする。 (高 炉 関 連 設 備 の更 新 タイミングを踏 まえ、2050 年 頃 の普 及 を目 指 す) 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・水 素 還 元 高 炉 プロセスでの要 素 技 術 (水 素 などにより鉄 鉱 石 還 元 、コークス炉 ガス改 質 、高 強 度 コークス製 造 )の確 立 。 ・経 済 的 な CO 2 分 離 回 収 プロセスの確 立 (2,000 円 /t-CO2)。 ・試 験 高 炉 (10m3 規 模 )を用 いて、水 素 による鉄 鉱 石 の還 元 と高 炉 ガスからの CO 2 分 離 回 収 の 技 術 を用 いて、約 30%の CO 2 削 減 な基 本 プロセスを確 立 する。 ・本 技 術 は、CO 2 貯 留 と一 体 で実 用 化 されるものであるので、CO 2 回 収 ・貯 留 を実 現 するよう、 CO 2 貯 留 場 所 、CO 2 貯 留 のインセンティブ政 策 等 での国 の施 策 が必 要 。 35 別紙 COURSE50の概 要 (CO2 Ultimate Reduction in Steelmaking process by Innovative technology for cool Earth 50) 出 典 :「環 境 調 和 型 製 鉄 プロセス技 術 開 発 」 (COURSE 50) 事 業 評 36 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑦CO 2 循 環 型 IGCC 開発者 小分類 CO 2 回 収 技 術 (一 財 )電 力 中 央 研 究 所 、九 州 大 学 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・IGCC 発 電 システムから排 出 される CO2 の一 部 を再 循 環 させ、酸 素 燃 焼 ガスタ ービンの作 動 媒 体 として用 いるとともに、酸 素 を加 えてガス化 炉 の酸 化 剤 として 用 いることにより、CO2 を回 収 する石 炭 ガス化 発 電 システムの効 率 を大 幅 に向 上 できる CO2 回 収 型 高 効 率 IGCC システムを開 発 する。 ・本 システムでは、排 ガスの大 半 が CO2 となるので分 離 設 備 が不 要 となること、 再 生 熱 交 換 器 の採 用 により CO2 を主 成 分 とする GT 排 ガスからの排 熱 回 収 が 効 果 的 になること、CO2 そのものがガス化 剤 としてガス化 炉 内 の反 応 促 進 に寄 与 することなどから、CO2 回 収 後 も高 い送 電 端 効 率 (42%HHV)が達 成 できる。 必要性 ・温 室 効 果 ガスの発 生 を抑 制 する技 術 が求 められており、IGCC による高 効 率 化 による抑 制 のみならず、ゼロエミッションを達 成 すべく、IGCC から CO2 を効 率 よ く回 収 するシステムを開 発 することが求 められている。 目 標 ・CO 2 回 収 後 も 42%HHV の送 電 端 効 率 を達 成 する。 効 果 ・現 状 の石 炭 火 力 発 電 システムに CO 2 回 収 装 置 を設 置 し、CO 2 回 収 を行 う場 合 は 2~3 割 の効 率 低 下 と発 電 の高 コスト化 が必 至 であるが、本 システムの実 現 により、効 率 の低 下 は最 小 限 に留 められ、かつコストへの影 響 も極 めて少 ない システムが実 現 できる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・基 礎 試 験 装 置 や PDTF による反 応 速 度 評 価 試 験 などにより酸 素 - CO 2 ガス化 基 本 性 能 試 験 を実 施 。 ・3t/d 小 型 ガス化 炉 により CO 2 富 化 がガス化 性 能 に及 ぼす影 響 を評 価 。 ・数 値 シミュレーションにより実 機 規 模 酸 素 - CO 2 ガス化 炉 における運 転 条 件 、 炉 形 状 などの影 響 を検 討 。 ・本 システムの技 術 課 題 であった乾 式 ガス精 製 における炭 素 析 出 抑 制 策 を検 討 し、効 率 低 下 を 0.2%未 満 に抑 える対 策 案 を示 した。 ・実 機 をにらんだシステム全 体 の課 題 抽 出 と実 現 性 向 上 に向 けたシステム改 良 の検 討 (実 機 FS)。 現 状 ・ベンチ規 模 試 験 に向 けた試 験 設 備 の設 計 検 討 。 ・本 システムのガスタービンを想 定 した基 礎 燃 焼 試 験 。 ・実 機 FS を受 けたシステム改 良 の結 果 、1,300℃級 GT+再 生 熱 交 換 器 +乾 式 ガ ス精 製 で構 成 されるシステムで送 電 端 効 率 40%HHV が達 成 されることを確 認 した。 今 後 ・1,500℃級 GT の採 用 などにより,さらなる効 率 向 上 を図 る。 ・ベンチ規 模 、パイロット規 模 、実 証 規 模 とステップを踏 み 2030 年 代 後 半 商 用 37 化 を目 指 す。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・O2- CO 2 吹 きガス化 炉 技 術 の確 立 ・CO 2 循 環 クローズド GT 技 術 の確 立 ・乾 式 ガス精 製 システムの大 型 化 ・2,000t/d 級 の大 規 模 実 証 別紙 CO 2 回 収 型(循 環型 )高 効率 IGCC システムの概 念 CO 2 回 収 型(循 環型 )高 効率 IGCC システムの概 略フロー図 出 典 :JCOAL/CCT ワークショップ 2013 「CO 2 回 収 型 高 効 率 IGCC」(一 財 )電 力 中 央 研 究 所 大分類 : 中長期開発 38 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑧ CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 (ケミカルルーピング) 開発者 小分類 CO 2 回 収 技 術 中分類 バブコック日 立 株 式 会 社 、(一 財 )エネルギー総 合 工 学 研 究 所 、(一 財 )石 炭 エ ネルギーセンター 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・ケミカルループを利 用 した化 学 燃 焼 技 術 とは、媒 体 の化 学 変 化 を介 して、燃 料 を O 2 ガス(空 気 )と直 接 接 触 させることなく、熱 や燃 料 ガスに転 換 し、CO 2 を分 離 する方 法 である。石 炭 を燃 料 としたら、空 気 分 離 の必 要 がなく、CO 2 を回 収 し てもプラント効 率 が低 下 しない、高 効 率 の石 炭 火 力 発 電 が期 待 される。 ・EU、米 国 では 2020 年 以 降 の CO 2 削 減 に貢 献 する燃 焼 技 術 として 1-3MWth 規 模 のパイロットを建 設 し、実 用 的 な技 術 開 発 を進 めることを検 討 している。 ・化 石 エネルギーの少 ない我 が国 にとって省 エネルギー型 の CCS は将 来 の重 要 技 術 として位 置 付 け、CCS の実 施 動 向 に合 わせた開 発 が必 要 である。 必要性 ・化 石 燃 料 の燃 焼 ガスからの CO2 削 減 が求 められているが、回 収 することによ る効 率 低 下 が著 しい。石 炭 火 力 では、発 電 効 率 が 10%程 度 低 下 すると言 われ ている。CO2 を本 質 的 に回 収 することが可 能 な技 術 が求 められている。 目 標 ・CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 を商 業 化 することにより、CO 2 回 収 付 超 超 臨 界 (USC)発 電 と比 較 してそれ以 上 の高 効 率 化 を可 能 とするものである。 効 果 ・CO 2 回 収 があっても発 電 効 率 が低 下 しなく、CCS ある従 来 型 石 炭 発 電 技 術 (IGCC)より、発 電 コストを 2-3 円 /kwh 以 上 低 くする効 果 がある。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・東 京 工 業 大 学 の石 田 愈 先 生 が初 めて提 案 し、ベンチスケール装 置 を用 いてキ ャリアと天 然 ガスとの反 応 試 験 を行 い、原 理 を確 認 した。 現 状 ・海 外 で CO 2 回 収 可 能 な石 炭 利 用 技 術 として研 究 開 発 が進 められてきた。 ・既 に、欧 米 では、数 MW のパイロット試 験 研 究 を展 開 している。 今 後 ・CO 2 回 収 可 能 石 炭 利 用 技 術 として、平 成 26 年 度 から、要 素 研 究 、ベンチ試 験 、パイロット試 験 を実 施 し、2030 年 頃 に商 用 化 を目 標 として研 究 開 発 を計 画 している。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・反 応 性 、経 済 性 を備 えた酸 素 キャリアの開 発 。 ・反 応 塔 構 造 の確 立 。 ・発 電 とその他 の総 合 利 用 方 法 の開 発 。 ・最 適 な酸 素 キャリア、反 応 装 置 の開 発 に加 え幅 広 い CO 2 輸 送 、貯 留 (CCS)の進 展 が不 可 欠 である。 39 別紙 石炭等の燃焼反応と金属酸化物の酸化反応を起こす二つ反応器 を組み合わせ、発電等に必要な熱を発生するとともに、燃焼排ガス を高濃度CO2とすることができる新たな石炭火力技術である。 蒸気 NN22 熱回収器 蒸気 集塵器 Fe2O3 煙突 サイクロン 燃料反応塔 従来技術(アミン吸収 法、酸素燃焼法)では CO2分離設備を付けると 空 気 石炭 発電効率が大幅に低下 反 して、送電量が20~25% 応 も減少しますが、CLCでは、 塔 効率低下がほとんど発 生しないため、送電量も 給水 ほとんど減少しない。 蒸気 空気 圧縮器 蒸気 Fe3O4 脱水器 CO2 灰 発電単価、 円/kWh 灰 CO2 回収率, % CLCの発電単価は、SCPCやIGCCのCO2回収率が低い場合は高くなるが、CO2回収 率が高くなると(60%以上)、SCPC、IGCC、Oxyfuelのいずれに対しても有利になる。 2012-2013 2014-2015 FS調査 開発予算(億円) 研究開発内容 主な技術課題 解決 0.3 2016-2018 要素研究 ベンチ試験 0.5 2012-2013 技術、市場調査 ロードマップ作成 1 1 3 3 2 実証プラント試験 2019-2022 試験によるプロセス効率、環 境、周辺設備性能の確認 2016-2018 熱自立条件反応、循環の 確認 各要素技術確定 キャリアの確定 2023-2026 パイロット試験 100 2014-2015 要素技術研究 技術選定 キャリア調査 2019-2022 ベンチ試験による プロセス条件の確定 600MWCFBC 実証 パイロット試験による プロセス条件の検証 A-USC実用 商業化 400 2023-2026 プラント試験による運転性、 信頼性、経済性評価 プラント性能、信頼性 経済性実証 CCS IGFC 出 典 :NEDO「CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 に関 する検 討 」平 成 24年 度 報 告 書 40 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑨微 粉 炭 酸 素 燃 焼 技 術 (OXY-FUEL) 開発者 小分類 CO 2 回 収 技 術 電 源 開 発 株 式 会 社 、株 式 会 社 IHI、三 井 物 産 株 式 会 社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・酸 素 燃 焼 は燃 焼 用 空 気 から酸 素 を分 離 し、その酸 素 で直 接 石 炭 を燃 焼 させ、 排 ガス中 の CO 2 濃 度 を 90%以 上 に高 め排 ガスをそのまま回 収 でき有 効 なシステ ムとして期 待 されている。 ・現 在 、豪 州 カライドにおいて、30MWe 規 模 の実 証 運 転 が実 施 されている。 必要性 ・地 球 温 暖 化 の観 点 から、石 炭 利 用 に際 して発 生 する CO 2 をできるだけ少 なくす ることが求 められている。その最 も大 規 模 に実 現 できる技 術 として、CO 2 を回 収 ・貯 留 する技 術 があり、本 微 粉 炭 酸 素 燃 焼 技 術 はその石 炭 を利 用 した CO 2 回 収 技 術 の一 つである。現 在 のところ、経 済 性 的 に有 効 であることや、実 証 プ ラントが稼 動 しており、より実 現 性 の高 いものである。 目 標 ・酸 素 燃 焼 の実 現 性 は酸 素 製 造 コストにかかっており、極 力 安 価 な酸 素 製 造 法 が必 要 である。そのために、酸 素 燃 焼 を採 用 した発 電 所 の CCS による追 加 所 内 動 力 を、プラント効 率 で 10 ポイント以 下 とする。 ・プロセス全 体 として、98%の CO 2 回 収 率 の達 成 が目 標 の目 安 となる。 ・酸 素 製 造 装 置 から排 出 される N2 を有 効 活 用 することによる、経 済 的 メリットの 創出。 効 果 ・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に比 べて、CO 2 排 出 量 を約 95%削 減 する効 果 がある。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・1973年 酸 素 燃 焼 の実 用 新 案 ・1989~2000年 基 礎 研 究 およびプラント試 設 計 ・2004~2007年 日 豪 共 同 での豪 州 を対 象 とした検 討 ・2008~2012年 日 豪 共 同 でのカライドプラントにおける詳 細 設 計 、機 器 製 造 、既 設 改 修 、試 運 転 現 状 ・2012~2014年 カライドプラント実 証 試 験 ・2008~2013年 貯 留 サイトおよび貯 留 層 評 価 今 後 ・2014年 ・2014~2015年 ・2014~2017年 ・2020年 酸 素 燃 焼 CO 2 の貯 留 注 入 試 験 実 施 カライドプロジェクト成 果 まとめ 商 用 規 模 プラント案 件 発 掘 、FS/FEED の実 施 酸 素 燃 焼 プラント商 用 化 実 現 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・革 新 的 な酸 素 製 造 技 術 の開 発 :コストおよび必 要 動 力 の半 減 。また、ケミカルルーピングを用 いた酸 素 製 造 装 置 不 要 な酸 素 燃 焼 プラントの開 発 。 ・酸 素 燃 焼 プロセスの高 効 率 化 :A-USC 技 術 の適 用 。 ・全 体 プロセス(ASU、ボイラ、CO 2 回 収 装 置 )のインテグレーションによる高 効 率 化 ・低 コスト化 。 ・ラボスケールから実 機 までのスケールアップのための各 プロセスの標 準 化 及 びシステムシミュ レーション技 術 。 41 ・CO 2 回 収 貯 留 には、社 会 の受 容 、法 的 整 備 が必 要 となる。そして、CO 2 排 出 削 減 では、地 球 規 模 の取 組 みが必 要 であり、政 府 主 導 での対 応 が望 まれる。 ・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に比 しコスト増 は避 けられないため、経 済 的 な公 的 インセンティブの 創 出 が課 題 。 ・酸 素 燃 焼 プロセスでは、CO 2 を回 収 できると同 時 に、大 量 の N2 が排 出 されており、これを有 効 利 用 することは、経 済 的 インセンティブを創 出 することになる。よって、石 炭 利 用 、CO 2 貯 留 (も しくは利 用 )、N2 の利 用 となる市 場 発 掘 が成 果 普 及 の一 つのキーとなる。 別紙 酸 素 燃 焼 を用 いた CO2 回 収 プロセスの概 念 出 典 :JCOAL/CCT ワークショップ 2012 「プロジェクト紹 介 カライド酸 素 燃 焼 プロジェクト」電 源 開 発株式会社 42 大分類 : 中長期開発 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑩Post-Combustion(石 炭 燃 焼 後 CO2 回 収 技 術 ) 開発者 小分類 CO2 回 収 技 術 重 工 メーカー及 びエンジニアリング会 社 、電 源 開 発 株 式 会 社 、(一 財 )石 炭 エ ネルギーセンター 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・石 炭 を大 量 に使 用 している石 炭 火 力 発 電 所 や製 鉄 所 から排 出 されている CO2 を分 離 回 収 する技 術 を開 発 する。現 在 、もっとも現 実 的 な技 術 として、 アミン吸 収 法 、チルドアンモニア法 等 があるが、現 状 では消 費 エネルギーが 大 きく、コスト高 であるので、大 幅 な消 費 エネルギーの削 減 とコストの低 減 が求 められている。 ・膜 分 離 法 や固 体 吸 着 剤 による方 法 等 も開 発 されており、よりエネルギー消 費 が少 なく、コストも安 い技 術 が必 要 である。 必要性 ・地 球 温 暖 化 の観 点 から、石 炭 利 用 に際 して発 生 する CO 2 をできるだけ少 な くすることが求 められている。その中 で、発 電 システムから排 出 する CO 2 を 回 収 ・貯 留 する技 術 について IEA は全 CO2 排 出 量 のうち 2020 年 に 3.1% 削 減 、2035 年 には 17%削 減 を期 待 するほど重 要 視 している。商 用 プラント として大 規 模 に CO2 を分 離 回 収 する方 法 としてのアミン吸 収 や膜 分 離 技 術 が世 界 各 国 で開 発 されている。 ・開 発 ターゲットとして、大 幅 なコストダウンやシステムの最 適 化 、使 用 するア ミンの最 適 化 などを追 求 することにより発 電 所 所 内 率 を大 幅 に削 減 するこ とが求 められている。 目 標 ・ポストコンバッション技 術 の実 現 性 は、消 費 エネルギーの削 減 にかかってお り、ポストコンバッションの所 内 負 荷 率 を 10%以 下 とすることを目 標 とする。 効 果 ・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に比 べて CO 2 発 生 量 を最 大 で 90%削 減 する効 果 が 期 待 される。また、CO2 削 減 割 合 は任 意 の値 とすることが可 能 である。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・MHI、東 芝 、日 立 製 作 所 、新 日 鉄 住 金 エンジニアリング等 が、パイロット規 模 (10~30t/d)までの試 験 を実 施 し、将 来 の実 プラントへの適 用 の可 能 性 を確 認 している。 現 状 ・MHI は米 国 サザンカンパニーと共 同 で石 炭 火 力 発 電 所 からのアミン吸 収 法 によるCO2 分 離 回 収 試 験 (500t/d)を実 施 している。 今 後 ・大 型 実 証 試 験 (1000~3000t/d)を 2020 年 頃 に開 始 し、消 費 エネルギーとコ ストの大 幅 な削 減 を実 証 し、本 格 的 な市 場 導 入 時 期 は 2030 年 頃 を想 定 している。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・低 コスト・大 容 量 のポストコンバッションによる CCS の実 現 ・革 新 的 なアミン吸 収 液 、あるいはまく分 離 法 の開 発 ・大 気 に放 出 されるアミン吸 収 液 の挙 動 研 究 ・分 離 CO2 の地 中 注 入 が許 容 される不 純 物 濃 度 の決 定 とその達 成 のための低 コスト設 備 の実 現 。 43 なお、 ・CCS に関 する世 界 で標 準 的 な各 種 法 整 備 、基 準 整 備 が必 要 ・PA をとることが CCS の世 界 共 通 の最 重 要 課 題 であり、そのための世 界 的 な協 力 が必 要 44 大分類 : 中長期開発 小分類 CO 2 回 収 技 術 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑪-1 CO 2 転 換 利 用 (CO2 からのプラスチック製 造 技 術 開 発 「CO 2 化 学 的 固 定 化 技 術 」) 開発者 三井化学株式会社 1.技 術 開 発 概 要 等 概要 ・工 場 から排 出 される CO 2 と自 然 エネルギーによって水 から得 られる水 素 を合 成 してメタノールを製 造 し、プラスチック等 の化 学 製 品 に利 用 する。 ・CO 2 の固 定 化 に繋 がり、大 気 中 CO2 の削 減 になる。 必要性 ・地 球 温 暖 化 の一 因 とされ、削 減 が求 められている CO 2 を原 材 料 として用 い、高 騰 で代 替 品 の開 発 が急 務 とされている原 油 の代 替 原 料 となりうるメタノールを 生 成 できる。「CO 2 削 減 」と「原 油 代 替 品 生 成 」の達 成 が可 能 となる。 目 標 ・工 場 等 から排 出 される CO 2 と水 の光 分 解 などから得 られる水 素 からメタノール を合 成 し、その得 られたメタノールから石 油 化 学 製 品 (ポリエチレンやプラスチッ クス)を製 造 すること。 効 果 ・技 術 開 発 が進 み、採 算 の取 れるレベルで大 規 模 に展 開 できるようになれば、環 境 問 題 と資 源 不 足 問 題 の両 方 を解 決 できるようになる。 2.技 術 開 発 状 況 、開 発 ステージ、ステータス 過 去 ・1990~1999 年 に NEDO 委 託 事 業 (化 学 的 CO 2 固 定 化 プロジェクト)に参 画 し、 メタノール合 成 の高 活 性 触 媒 の開 発 に取 り組 んだ。その後 、触 媒 の改 良 を進 めてきた。 現 状 ・2010 年 3 月 をめどに実 用 化 技 術 確 立 を目 指 して、2008 年 に実 証 パイロット設 備 の建 設 に着 手 した(三 井 化 学 大 阪 工 場 )。2009 年 2 月 に完 成 。投 資 額 は約 15 億 円 。 ・三 井 化 学 は光 触 媒 で水 を水 素 と酸 素 に分 解 する技 術 も開 発 中 。 今 後 ・商 用 化 を目 指 す。 3.技 術 開 発 、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・低 コスト化 (従 来 の天 然 ガスからメタノールを製 造 するより 2~3 倍 かかる)。 ・CO 2 排 出 量 取 引 制 度 の導 入 。 45 別紙 CO 2 化 学 的 固 定 化 の概 念 図 出 典 : 三 井 化 学 ( 株 ) WEB サ イ ト よ り http://jp.mitsuichem.com/release/2008/2008_0825.htm (2013.12.08) 46 大分類 : 中長期開発 小分類 CO 2 回 収 技 術 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑪-2 CO 2 転 換 利 用 (CO2 原 料 からの芳 香 族 ポリカーボネート合 成 技 術 開発者 旭 化 成 ケミカルズ株 式 会 社 1. 技 術 開 発 概 要 等 概要 ・芳 香 族 ポリカーボネート製 造 において、CO 2 を原 料 として合 成 する技 術 であ り、従 来 法 に比 べて安 全 な上 、CO2 固 定 化 に繋 がる。 必要性 ・大 規 模 に実 用 化 されれば CO 2 の固 定 化 に貢 献 する。 ・ホスゲン法 ポリカーボネートは、有 毒 なホスゲンを使 用 するため、環 境 へ与 える影 響 が大 きいため、ホスゲンを用 いずに、効 率 良 く、安 全 ・安 価 にカルボ ニル基 を導 入 する技 術 開 発 が必 要 。(ホスゲンとは炭 素 と酸 素 の化 学 物 COCl 2 。毒 性 の高 い気 体 ) 目 標 ・CO 2 は化 学 原 料 として反 応 性 が乏 しいことを除 けば、安 価 で、大 量 に排 出 さ れ、安 定 で、毒 性 ・悪 臭 がない。したがって、CO 2 を原 料 とする新 規 な非 ホス ゲン法 ポリカーボネート製 造 プロセスを開 発 することが目 標 。 効 果 ・CO 2 を材 料 として利 用 し、ポリカーボネートに取 り込 むため大 気 中 CO 2 の削 減 に貢 献 できる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・安 全 なカルボニル基 導 入 剤 として、ジフェニルカーボネートからポリカーボネ ートを製 造 する方 法 (溶 融 重 合 法 )が普 及 。この環 境 の中 、旭 化 成 ケミカル ズではジフェニルカーボネートの製 造 プロセスの革 新 を進 めてきた。 ・旭 化 成 ケミカルズは 1980 年 代 より、CO2 ケミストリーに取 組 んできた。 ・CO 2 の難 反 応 性 は触 媒 やプロセスの革 新 で克 服 できるという見 地 から、CO 2 の有 効 利 用 検 討 を継 続 。 現 状 ・世 界 で初 めて CO 2 原 料 のジフェニルカーボネート工 業 化 に成 功 。2002 年 よ り台 湾 で初 の商 用 機 稼 働 中 。 今 後 ・独 自 の溶 融 重 合 法 と組 み合 わせたポリカーボネート製 造 プロセス技 術 (別 紙 のプロセス図 参 照 )を世 界 の多 くの企 業 へライセンスし、安 全 で環 境 に優 しい溶 融 重 合 法 ポリカーボネート製 造 プロセスの拡 大 に貢 献 していく。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・高 性 能 化 、低 コスト化 、製 造 設 備 の小 型 化 、現 地 適 合 技 術 開 発 。 ・相 手 国 の行 政 官 や技 術 者 に必 要 な技 術 や知 識 を伝 える。 ・国 際 的 な資 金 協 力 による設 備 の普 及 促 進 。 ・当 該 技 術 の普 及 を後 押 しするような導 入 国 の環 境 基 準 の見 直 しへの働 きかけ。 47 別紙 副 生 CO 2 を原 料 とする新 規 な非 ホスゲン法 ポリカーボネート製 造 プロセス 出 典 :「二 酸 化 炭 素 の直 接 利 用 最 新 技 術 」出 版 社 :エヌ・ティー・エス; 初 版 (20133/04) 48 大分類 : 中長期開発 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 中分類 改質利用技術 個別技術名 ⑫ビクトリア褐 炭 高 度 利 用 技 術 (褐 炭 高 度 利 用 ) 開発者 九 州 電 力 株 式 会 社 他 石 炭 ユーザー、九 州 大 学 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・豪 州 ビクトリア州 に豊 富 に賦 存 する(約 700億 トン)高 水 分 、高 自 然 発 火 性 、低 灰 分 という特 徴 を有 する褐 炭 を日 本 で活 用 できるように現 地 で改 質 し、安 全 に日 本 に運 び発 電 燃 料 として利 用 。 必要性 ・日 本 における高 品 位 炭 調 達 の困 難 化 、ベース電 源 用 燃 料 として石 炭 の重 要 性 の高 まりなどから、低 品 位 炭 の長 期 安 定 利 用 に資 する技 術 の開 発 が必 要 。 目 標 ・日 本 の電 力 会 社 等 の既 存 の火 力 発 電 所 にて使 用 できる改 質 炭 を豪 州 ビクトリア 州 にて製 造 。 効 果 ・NOx、SOxなどの有 害 物 質 排 出 低 減 、石 炭 灰 の大 幅 削 減 、低 廉 かつ安 定 した 発 電 燃 料 の供 給 。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・ 2009 年 度 ~ 2012 年 度 基盤技術検討、経済性 1 次評価、事前技術検証。 現 状 ・ 2013 年 度 国 内 において豪 州 ビクトリア褐 炭 を使 用 して改 質 プロセス技 術 のパ イロット試 験 を実 施 中 。 今 後 ・今 後 の計 画 は現 在 取 組 んでいるパイロット試 験 結 果 を踏 まえた上 で策 定 される 予 定 であり、現 状 は以 下 のとおり想 定 。 ・2014 年 度 以 降 パイロット試 験 結 果 を踏 まえた技 術 検 討 及 びプレFS ・2015 年 度 以 降 大規模実証機設計 ・2016 年 度 以 降 大規模実証試験 ・2018 年 以 降 商用化 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・逼 迫 する石 炭 供 給 、価 格 上 昇 への適 応 。 ・技 術 開 発 課 題 (乾 燥 乾 留 の経 済 性 、輸 送 ・貯 蔵 ・安 全 性 技 術 の確 立 、輸 送 可 能 な改 質 炭 形 状 作 りこみ他 、パイロット試 験 結 果 に基 づき課 題 抽 出 )の解 決 。 ・ 日 ・ 豪 両 政 府 主 導 によ る関 連 イン フラ ( 実 証 時 及 び 商 用 時 の 改 質 炭 の積 出 ・ 貯 蔵 ・ 輸 送 設 備 、サイト、鉄 道 、道 路 、荷 役 港 湾 、船 舶 等 )の整 備 。 ・豪 州 政 府 における褐 炭 技 術 開 発 方 針 の明 確 化 ・安 定 化 及 び開 発 支 援 。 ・現 地 エンジニアリングと事 業 運 営 のFS。 ・現 地 調 達 リソース(技 術 員 等 の人 件 費 、資 材 費 など)の適 正 化 。 ・現 地 開 発 関 連 法 規 の対 応 (騒 音 、煤 塵 など厳 格 化 する環 境 への対 応 ・準 備 )。 49 別紙 技 術 スキーム概 要 日本で利用 豪州ビクトリア州で実施 熱 〔原料〕 褐炭 炭 (原炭) 乾留ガス 熱 熱 乾 燥 乾燥炭 乾 乾 燥 乾留 乾留炭 装置 装 装置 燃 燃焼 焼装 装置 置 熱 発 発電 電 〔製品〕 成型 装置 〔研究開発領域〕 出 典 :九 州 電 力 株 式 会 社 提 供 資 料 50 動力(電気) 改質炭 一般炭代替品 (火力発電) 大 分 類 :中 長 期 開 発 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 個別技術名 ⑬高 効 率 褐 炭 乾 燥 開発者 小分類 改質炭利用技術 三菱重工業株式会社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・現 在 、褐 炭 焚 き石 炭 火 力 では、褐 炭 をミルで粉 砕 し乾 燥 させながらボイラーに 投 入 する。褐 炭 中 の水 分 は炉 内 で水 蒸 気 となり、そのまま系 外 に放 出 され蒸 発 時 の潜 熱 が損 失 となる。 ・そこで、水 蒸 気 を流 動 化 ガスとして利 用 する蒸 気 流 動 層 乾 燥 システムにより、 褐 炭 を乾 燥 させるとともに、発 生 した蒸 気 は潜 熱 回 収 システムで圧 縮 し、飽 和 蒸 気 温 度 を上 げることにより乾 燥 システムに利 用 する高 効 率 褐 炭 乾 燥 システム を開 発 する。 必要性 ・従 来 利 用 されているボイラ高 温 燃 焼 ガスを利 用 する乾 燥 方 式 では潜 熱 ロスに よる排 ガス損 失 が大 きく、発 電 効 率 が低 い。また同 乾 燥 方 式 は IGCC システム に適 用 ができないことから、大 型 化 に適 した高 効 率 の褐 炭 乾 燥 システムの開 発 が必 要 。 目 標 ・大 容 量 化 -乾 燥 容 量 :120t/h 以 上 商 用 規 模 を想 定 500MW クラスのガス化 炉 と組 み合 わせた場 合 120h/h x 4 = 480t/h の 4 系 列 構 成 。 ・高 効 率 化 -潜 熱 回 収 率 :50%以 上 褐 炭 から発 生 した水 蒸 気 の保 有 する潜 熱 を 50%以 上 回 収 する。 効 果 ・高 効 率 褐 炭 乾 燥 システムは、従 来 の褐 炭 焚 微 粉 炭 火 力 発 電 プラントにおい て、ボイラ上 流 側 に設 置 することにより、発 電 効 率 を大 きく向 上 させることが可 能 になる。 ・IGCC の場 合 、最 新 のガスタービンとの組 み合 わせが可 能 となり、発 電 効 率 を 50%(HHV ベース)程 度 まで向 上 することが見 込 まれる。これにより、褐 炭 の消 費 量 及 び CO 2 発 生 量 を大 きく低 減 することが可 能 になる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2009~2010年 、基 礎 試 験 1 t/d、ベンチスケール試 験 装 置 の設 計 。 ・2010年 、 ベンチスケール試 験 装 置 10 t/d の作 成 。 ・2011~2012年 、ベンチスケール試 験 、実 証 試 験 200 t/d F/S。 ・2013年 、 豪 州 褐 炭 焚 き発 電 所 での実 証 試 験 の提 案 を行 うも豪 州 側 等 との調 整 が出 来 ず。 現 状 ・褐 炭 焚 き IGCC 建 設 の目 論 見 浮 上 を待 ち、高 効 率 褐 炭 乾 燥 実 証 試 験 を当 該 国 で実 施 を計 画 する。 今 後 ・実 証 規 模 (200t/d)での大 容 量 実 機 へのスケールアップ技 術 の確 認 。および運 転 制 御 方 法 の確 立 。 ・設 備 全 体 における自 然 発 火 に対 する安 全 性 の確 保 。 ・潜 熱 回 収 を含 むシステム最 適 化 による運 転 コストの低 減 。 51 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・褐 炭 産 炭 国 での実 証 試 験 の機 会 提 供 と実 機 へのスケールアップ技 術 の確 立 。 ・産 炭 国 での褐 炭 利 用 に対 するインセンティブ付 与 。 (発 電 利 用 の場 合 、FIT(電 力 買 取 価 格 の優 遇 )、CO2 排 出 量 低 減 に対 するクレジット付 与 な ど) ・産 炭 国 での周 辺 インフラ整 備 推 進 (送 電 網 の整 備 や、乾 燥 褐 炭 そのものを販 売 する場 合 の輸 送 ルート整 備 など) 別紙 高 効 率 褐 炭 乾 燥 システムフロー 出 典 :三 菱 重 工 技 報 Vol.48 No.3 (2011) 52 大分類 : 中長期開発 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 個別技術名 ⑭低 品 位 炭 からの製 鉄 コークス用 粘 結 材 製 造 技 術 (ハイパーコール) 開発者 小分類 産業用石炭利用技術 株式会社 神戸製鋼所 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・鉄 鋼 用 原 料 炭 は資 源 量 が限 られており、特 に強 粘 結 炭 の価 格 は高 止 まり の状 態 にある。コークス強 度 を保 ちながら、強 粘 結 炭 の使 用 量 低 減 を可 能 にするコークス製 造 用 の低 灰 分 粘 結 材 (ハイパーコール)を、安 価 な石 炭 火 力 用 一 般 炭 を 原 料 と し て 、 加 熱 溶 剤 抽 出 に よ って 製 造 す る 技 術 を 開 発 す る。 必要性 ・製 鉄 コークス製 造 用 原 料 石 炭 確 保 の視 点 から、高 品 位 の強 粘 結 炭 の利 用 量 を低 減 し、一 般 炭 、非 微 粘 炭 利 用 量 を増 加 することが可 能 な粘 結 材 が要 求 されていくと予 想 される。 目 標 ・粘 結 材 としての強 粘 結 炭 使 用 量 低 減 効 果 が大 きく、経 済 性 に優 れた製 品 を 製 造 する技 術 を確 立 する。 効 果 ・製 鉄 用 コークスに適 応 できる石 炭 種 を拡 大 できるとともに、高 強 度 コークス 製 造 を実 現 することによりコークス使 用 量 を削 減 し、製 鉄 での CO 2 削 減 に寄 与 する。市 場 規 模 として、製 鉄 用 コークス原 料 炭 4,000 万 トン/年 のうち改 質 による粘 結 材 使 用 量 を 5%として、200 万 トン/年 に相 当 する。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2002 年 ~2007 年 ハイパーコール小 型 連 続 製 造 装 置 (石 炭 処 理 量 0.1t/d) によりハイパーコールを連 続 的 に製 造 可 能 であることを実 証 した(高 効 率 燃 焼 技 術 開 発 事 業 )。コークス配 合 炭 へ 5~10%添 加 することにより配 合 炭 の 特 性 が改 良 され、非 微 粘 結 炭 を 50%配 合 してもコークス品 質 が保 たれること を試 験 炉 で検 証 した。 ・2008 年 ~2012 年 改 質 COG 雰 囲 気 下 での鉄 鉱 石 還 元 に使 用 できる高 強 度 コークスを製 造 する技 術 開 発 を実 施 (COURSE50 事 業 )。 現 状 ・反 応 性 を制 御 した高 強 度 コークス製 造 技 術 開 発 を実 施 中 (COURSE50 事 業 )。 ・パイロットプラントでのハイパーコース製 造 実 証 試 験 、ハイパーコール添 加 コ ークスの大 規 模 実 証 試 験 に向 けた活 動 を実 施 中 。 今 後 ・パイロットプラント規 模 (石 炭 処 理 量 10~30t/d)を用 いた、商 用 機 へのスケ ールアップ技 術 の確 立 およびハイパーコール添 加 コークスの大 規 模 実 証 試 験。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・スケールアップ技 術 開 発 のためのパイロットプラント建 設 、実 証 試 験 (ハイパーコール製 造 、 コークス製 造 )への公 的 資 金 支 援 。 ・産 炭 国 との技 術 面 ・制 度 面 を含 む包 括 的 な良 好 関 係 の構 築 。 53 別紙 ハイパーコール製 造 プロセス 出 典 :JCOAL 石 炭 技 術 会 議 2005 年 講 演 資 料 54 大分類 : 中長期開発 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 個別技術名 ⑮自 然 エネルギーを付 加 した CCT 開発者 小分類 産業用石炭利用技術 バブコック日 立 株 式 会 社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・石 炭 火 力 に自 然 エネルギー(太 陽 熱 )を付 加 することにより、化 石 燃 料 の消 費 量 を抑 制 しながら安 定 した電 力 を確 保 する技 術 を開 発 する。我 が国 では太 陽 熱 利 用 は家 庭 用 の温 水 器 への利 用 普 及 が中 心 であるが、直 達 日 射 量 の比 較 的 小 さい我 が国 でも利 用 可 能 な太 陽 熱 集 熱 器 の開 発 を行 い、化 石 燃 料 火 力 とハイブリットさせることにより、化 石 燃 料 火 力 の安 定 した電 源 確 保 の元 で、再 生 可 能 エネルギーの導 入 拡 大 を図 ることができる。 必要性 ・太 陽 熱 (再 生 可 能 )の弱 点 は不 安 定 エネルギーであることであり、また化 石 燃 料 火 力 の弱 点 は CO 2 排 出 量 が多 いことである。しかし、化 石 燃 料 火 力 と自 然 エ ネルギーを融 合 することにより、両 社 の弱 点 をカバーしひいては再 生 可 能 エネ ルギーの利 用 拡 大 に繋 がる。 ・我 が国 で経 済 的 合 理 性 のある技 術 開 発 が出 来 れば、直 達 日 射 量 の高 い海 外 の立 地 では優 位 に立 ちインフラ輸 出 の拡 大 に繋 がる。 目 標 ・我 が国 でも利 用 可 能 な太 陽 熱 集 熱 設 備 の開 発 中 。 効 果 ・石 炭 火 力 の利 用 と併 せて、高 品 質 な安 定 した再 生 可 能 エネルギーの利 用 拡 大 が出 来 る。また、将 来 この技 術 を転 用 し太 陽 エネルギーを化 学 エネルギーに転 換 して次 世 代 液 体 燃 料 を製 造 するとともに、CO 2 の利 用 ・回 収 を図 ることを目 的 とした技 術 開 発 に繋 がり、更 なる地 球 温 暖 化 防 止 に貢 献 できる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・集 光 装 置 についての基 礎 試 験 装 置 を製 作 し、低 コスト型 の集 光 装 置 が可 能 か どうかの確 認 人 試 験 を実 施 した。 現 状 ・1MWth規 模 の試 験 装 置 の計 画 を行 っている。 今 後 ・2020 年 には商 用 機 を出 せるよう試 験 研 究 を推 進 する予 定 。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・自 然 エネルギー、特 に太 陽 エネルギーを利 用 するには、豪 州 のように豊 富 なリソースがある国 との技 術 提 携 関 係 強 化 が有 効 である。 55 別紙 出 典 :バブコック日 立 (株 )提 供 資 料 56 大 分 類 :中 長 期 開 発 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 個別技術名 ⑯二 塔 式 石 炭 ガス化 炉 による褐 炭 利 用 技 術 (TIGAR) 開発者 小分類 産業用石炭利用技術 株 式 会 社 IHI 1. 技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・褐 炭 のように揮 発 分 の割 合 が多 く、比 較 的 ガス化 が容 易 な低 品 位 炭 は、低 温 ・大 気 圧 条 件 でのガス化 が可 能 である。 ・本 技 術 は循 環 流 動 層 技 術 をベースに、低 品 位 炭 だけでなくバイオマス等 多 種 の低 品 位 燃 料 に対 応 でき、導 入 も容 易 な低 温 ・大 気 圧 のガス化 プロセスであ る。 必要性 ・褐 炭 は水 分 が多 く、自 然 発 火 性 が高 いため、利 用 方 法 は限 定 的 である。褐 炭 等 の低 品 位 な石 炭 は、インドネシア、ドイツ、オーストラリア等 広 範 囲 に賦 存 し ており、埋 蔵 量 は全 石 炭 の半 分 を占 める。従 って日 本 だけではなく、世 界 的 な エネルギーセキュリティの観 点 からも褐 炭 等 の低 品 位 炭 の効 率 的 な利 用 技 術 の開 発 が必 要 。 目 標 ・燃 料 (原 料 )の適 用 範 囲 が広 く、褐 炭 だけではなく、バイオマスも同 時 にガス化 することが可 能 で、燃 料 、化 学 原 料 等 の天 然 ガス、石 油 の代 替 とし、加 えて、 CO2 排 出 量 の低 減 にも寄 与 する。 効 果 ・褐 炭 を有 する産 炭 国 に本 技 術 を導 入 すれば、未 利 用 低 品 位 炭 を国 内 で使 用 し、高 品 位 炭 は輸 出 するなど価 値 の最 大 化 が可 能 で、資 源 の有 効 利 用 にも貢 献 できる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2004~2005年 褐 炭 ガス化 研 究 開 発 実 施 ・2005~2006年 0.1 トン/day ベンチ試 験 実 施 ・2009~現 在 現 状 ・2012~ 6 トン/day パイロット炉 で 700 時 間 超 のガス化 試 験 実 施 インドネシア肥 料 工 場 の管 轄 する工 業 団 地 内 に実 証 機 (50 トン/day)を設 置 。 今 後 ・2014~2015年 50t/day の実 証 炉 から、300~1,000t/d 商 用 へのスケ ールアップの確 認 及 び数 種 のインドネシア褐 炭 による性 能 確 認 。 ・比 較 的 低 温 のガス化 であるため、ガス化 に際 しタールが発 生 するが、これを処 理 ・精 製 するプロセスの同 規 模 実 証 機 で性 能 、運 用 を確 認 。さらに、ガス化 炉 側 での発 生 抑 制 技 術 および他 の処 理 技 術 の研 究 開 発 を行 う。 ・実 証 運 転 を通 して、高 い運 用 性 、信 頼 性 をアピール。 3.技 術 開 発 、開 発 済 技 術 の普 及 のために何 が必 要 か、何 をして欲 しいか 57 ・低 廉 価 値 の低 品 位 炭 に付 加 価 値 を付 ける技 術 を開 発 しても、低 品 位 炭 価 格 が上 昇 しては、 事 業 として成 立 しなくなる。したがって、低 価 格 で安 定 した褐 炭 供 給 体 制 の確 保 (輸 送 路 確 保 ,近 隣 住 民 対 応 などの褐 炭 供 給 のインフラ整 備 )を希 望 する。 ・資 源 保 護 等 の理 由 により低 品 位 炭 利 用 事 業 の自 由 が制 限 されると事 業 の魅 力 が薄 れる。こ のように、低 品 位 炭 利 用 技 術 の開 発 意 欲 が薄 れないような制 度 支 援 が必 要 である。 褐 炭 ガス化 (TIGAR)の概 要 褐 炭 ガス化 (TIGAR)製 品 の適 用 先 出 典 :JCOAL/CCT ワークショップ 2012 「二 塔 式 ガス化 炉 (TIGAR)インドネシアでの実 証 プロジェ クトへ向 けて」(株 )IHI 58 大 分 類 :中 長 期 開 発 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 個別技術名 ⑰石 炭 部 分 水 素 化 熱 分 解 技 術 (ECOPRO) 開発者 小分類 産業用石炭利用技術 新 日 鉄 住 金 エンジニアリング株 式 会 社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・本 技 術 は、石 炭 ガス化 (部 分 酸 化 )反 応 と熱 分 解 反 応 を組 合 わせた高 効 率 な 石 炭 転 換 技 術 であり、枯 渇 傾 向 にある石 油 ・天 然 ガスから誘 導 されている化 学 原 料 や燃 料 の石 炭 による補 完 ・代 替 、及 びエネルギー・環 境 問 題 の解 決 に 貢 献 することを目 的 とした技 術 である。 ・本 技 術 は 褐 炭 等 の 低 品 位 炭 の ガ ス 化 に よ る メ タ ン ( 代 替 天 然 ガ ス ) 製 造 に向いた技術であり、産炭国で本技術によりメタンを製造し、産炭国や 近 隣 国 へ の エ ネ ル ギ ー 需 給 緩 和 を 図 る と と も に 、日 本 に 代 替 天 然 ガ ス と して輸入することも可能である。 必要性 ・産 炭 国 の未 利 用 な低 品 位 炭 ・低 品 質 炭 から、クリーンな燃 料 や高 付 加 価 値 な 化 学 原 料 を製 造 し、産 炭 国 のエネルギー需 給 緩 和 や環 境 対 策 、及 び我 が国 へのエネルギーの安 定 供 給 確 保 に繋 げるために本 技 術 が必 要 である。 目 標 ・産 炭 国 で本 技 術 の実 証 試 験 (石 炭 処 理 規 模 200~500t/d)を実 施 し、世 界 最 高 のエネルギー効 率 (85%以 上 )の達 成 を目 指 すとともに、低 品 位 炭 ・低 品 質 炭 原 料 の適 応 性 、スケールアップ技 術 や SNG・化 学 原 料 製 造 技 術 の確 立 、CO 2 分 離 回 収 技 術 を確 立 する。 ・実 証 段 階 を経 て、産 炭 国 への商 用 設 備 の普 及 を図 り、産 炭 国 のエネルギー需 給 緩 和 と環 境 対 策 を実 現 する。 効 果 ・未 利 用 な低 品 位 炭 ・低 品 質 炭 が有 効 活 用 できることから、省 資 源 化 や製 造 コ ストの低 減 が図 れる。 ・エネルギー効 率 が高 いことから、二 酸 化 炭 素 排 出 削 減 に効 果 がある。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2003 年 ~2008 年 にパイロットプラント(石 炭 処 理 規 模 20t/d)による試 験 を実 施 し、開 発 目 標 である世 界 最 高 のエネルギー効 率 達 成 の目 処 と長 時 間 連 続 運 転 (1,000 時 間 )を達 成 。 ・2010 年 に豪 州 ビクトリア州 において日 豪 協 力 による実 証 スキーム構 築 に向 け たプレ FS を実 施 。 現 状 ・2012 年 より、中 国 のユーザー候 補 企 業 との実 証 スキーム構 築 に向 けた検 討 を 実施中。 今 後 ・2014 年 より、中 国 のユーザー候 補 企 業 との実 証 に向 けた FS やパイロットプラ ントによる候 補 炭 の試 験 を実 施 し、2015 年 からの実 証 設 備 建 設 の着 手 、2018 年 の実 証 完 了 を目 指 す。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・実 証 試 験 による技 術 的 優 位 性 (高 効 率 、低 品 位 炭 利 用 )の確 証 と低 コスト化 の実 現 。 ・産 炭 国 との具 体 的 商 業 プロジェクトへの導 入 を前 提 とした中 国 ガス化 事 業 者 との連 携 による 技 術 実 証 の推 進 。 59 別紙 ECOPRO(高 効 率 熱 分 解 石 炭 ガス化 )プロセスの概 要 、原 理 出 典 :JCOAL/CCT ワークショップ 2011/6/30 「高 効 率 石 炭 ガス化 技 術 の開 発 と低 品 位 炭 活 用 へ の適 用 」新 日 鐵 エンジ(株 )・千 代 田 化 工 建 設 (株 ) 60 大分類 : 中長期開発 中分類 環境対策 個別技術名 ⑱環 境 負 荷 低 減 技 術 (B、Se) 開発者 小分類 環境負荷低減技術 (一 財 )電 力 中 央 研 究 所 、出 光 興 産 株 式 会 社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・燃 焼 排 ガス中 のホウ素 (B)、セレン(Se)のモニター方 法 の確 立 と、低 減 方 法 の 開 発 及 びその JIS/ISO 化 必要性 ・石 炭 火 力 排 ガスに含 まれるガス状 金 属 のうち、ハロゲン、水 銀 と並 んでホウ素 (B)、セレン(Se)は揮 発 し易 く、その環 境 影 響 が懸 念 されている。現 在 これら 元 素 の測 定 方 法 の JIS 化 、ISO 化 が進 行 中 である。 ・また、石 炭 火 力 発 電 所 の排 水 は水 質 汚 濁 防 止 法 の適 用 を受 け、複 数 の微 量 物 質 が規 制 対 象 とされている。 ・湿 式 脱 硫 装 置 は排 ガス中 のガス状 の微 量 物 質 も捕 集 するが、それらが脱 硫 排 水 に移 行 し、排 水 処 理 の負 担 となる場 合 が生 じており、処 理 の困 難 なホウ素 、 セレンへの関 心 が高 い。 ・また石 炭 灰 や脱 硫 副 製 品 である石 膏 、汚 泥 等 にも微 量 物 質 は含 まれ、有 効 利 用 や埋 め立 て等 の際 の懸 念 材 料 になる場 合 があり、低 減 対 策 が必 要 である。 目 標 ・燃 焼 排 ガス中 のホウ素 (B)、セレン(Se)のモニター方 法 の確 立 と、低 減 方 法 の 開発。 効 果 ・燃 焼 排 ガス中 のホウ素 (B)、セレン(Se)の低 減 。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2005-2013 ゼロエミッション石 炭 火 力 技 術 開 発 プロジェクト「石 炭 利 用 プロセス における微 量 成 分 の環 境 への影 響 低 減 手 法 の開 発 微 量 成 分 の高 精 度 分 析 手 法 の標 準 化 に資 するデータ蓄 積 と燃 焼 プロセスにおけるプラント内 挙 動 の 解 明 」にてモニタリング手 法 開 発 を行 ってきた。 ・排 ガス中 の粒 子 状 ホウ素 、セレンは電 気 集 じん装 置 で、電 気 集 じん装 置 を通 過 したガス状 ホウ素 、セレンは、ほぼ全 量 湿 式 の脱 硫 装 置 で捕 集 されることが 判 明 した。また、燃 焼 過 程 において石 炭 中 のセレンは全 量 揮 発 し、ホウ素 は溶 融 灰 に取 り込 まれ、一 部 揮 発 しないことが明 らかとなった。基 礎 試 験 の結 果 、 石 炭 から揮 発 したガス状 ホウ素 は燃 焼 排 ガス中 で、石 炭 灰 中 の未 燃 分 とマグ ネシウム分 に取 り込 まれ石 炭 灰 に移 行 すると考 えられた。 現 状 ・JIS/ISO 化 検 討 中 。 今 後 ・ホウ素 (B)、セレン(Se)測 定 法 の JIS/ISO の確 立 と、低 減 方 法 の開 発 。 ・JIS:JISK0083-2006 への追 加 (セレン化 合 物 ) ・ISO:WD ISO17211(Selenium)を TC146 にて DIS 化 (2014)予 定 3. 技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・モニタリング手 法 の確 立 までの技 術 開 発 支 援 。 ・除 去 技 術 の開 発 。 ・除 去 物 質 の利 用 技 術 の探 索 の為 の支 援 。 61 大 分 類 : 低 コスト化 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑲ 超 々臨 界 圧 発 電 技 術 (USC) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 株 式 会 社 IHI、株 式 会 社 東 芝 、バブコック日 立 株 式 会 社 、株 式 会 社 日 立 製 作 所 、三 菱 重 工 業 株 式 会 社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・USC とは、Ultra-Supercritical の略 で 593℃以 上 の超 々超 臨 界 圧 発 電 システ ムを意 味 する。世 界 の通 常 火 力 発 電 では、蒸 気 温 度 は超 臨 界 圧 (SC)や亜 臨 界 圧 (Sub-SC)が主 流 であり約 500℃台 のところ、USC では、蒸 気 条 件 を 600℃ 以 上 にすることで、大 幅 な効 率 向 上 を可 能 にする。主 蒸 気 圧 力 25MPa、主 蒸 気 温 度 600℃、再 熱 蒸 気 温 度 600℃の一 段 再 熱 蒸 気 条 件 の USC プラントで は、42%の送 電 端 効 率 [HHV 基 準 ]が期 待 できる。 必要性 ・USC は SC/Sub-SC に比 べて燃 費 が良 く、CO 2 排 出 量 削 減 による地 球 温 暖 化 防 止 対 策 に貢 献 するために、今 後 は世 界 各 国 において建 設 される石 炭 火 力 の 主 流 になると予 想 される。我 が国 メーカーの USC プラント輸 出 を促 進 するため には、欧 米 や中 国 等 のメーカーに打 ち勝 って受 注 を獲 得 する必 要 があり、その ためには設 備 コストの低 減 が必 要 。 目 標 ・海 外 USC 市 場 での競 争 力 確 保 。 効 果 ・USC プラント輸 出 とその後 の保 守 メンテによるメーカーの売 上 高 への貢 献 。 ・USC プラント輸 出 先 の新 興 国 や産 炭 国 での CO 2 削 減 への貢 献 。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・USC 技 術 の実 用 化 、国 内 電 力 会 社 への普 及 。 現 状 ・海 外 市 場 への受 注 活 動 展 開 、現 地 メーカーとの提 携 による市 場 橋 頭 堡 確 保 、 低 コスト化 開 発 ・検 討 (設 計 標 準 化 、モジュール化 、海 外 生 産 、海 外 調 達 強 化 など)。 今 後 同上 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・案 件 発 掘 段 階 での公 的 支 援 。 ・政 府 による受 注 活 動 支 援 。 ・国 内 老 朽 事 業 用 火 力 の USC への更 新 推 進 (一 定 規 模 の建 設 機 会 の維 持 )。 ・国 際 金 融 機 関 による融 資 の内 容 の充 実 。 62 世 界 の石 炭 火 力 建 設 計 画 出 典 :World Resources Institute Webサイト http://www.wri.org/resources/datavisualizations/proposed-coal-fired-plants-installed-capacity-mw株 式 (2013.12.08) 世 界 の石 炭 火 力 建 設 計 画 (単 位 MW) 出 典 :World Resources Institute 63 大 分 類 :低 コスト化 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 ⑳石 炭 ガス化 複 合 発 電 技 術 (IGCC) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 三菱重工業株式会社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・石 炭 から生 成 した可 燃 性 ガスを燃 料 としてガスタービンを回 して発 電 し、さらに その排 熱 を使 って蒸 気 タービンを回 して 2 度 目 の発 電 を行 う方 式 で、既 存 の石 炭 焚 き火 力 発 電 と比 較 して約 20 パーセントも発 電 効 率 を高 められるシステム。 必要性 ・エネルギーセキュリティの確 保 及 び地 球 温 暖 化 対 策 の観 点 から石 炭 の有 効 利 用 と高 い環 境 適 合 性 を実 現 するため、既 存 の石 炭 火 力 発 電 技 術 に比 べ熱 効 率 が高 く二 酸 化 炭 素 排 出 量 の大 幅 な低 減 が見 込 まれる石 炭 ガス化 複 合 発 電 技 術 (IGCC)の開 発 が必 要 である。 目 標 ・商 用 機 目 標 として、送 電 端 効 率 46~48%(HHV)を実 現 し、これにより従 来 の石 炭 火 力 発 電 システムより単 位 発 電 量 あたりCO 2 排 出 量 を約 2 割 程 度 削 減 (石 油 火 力 とほぼ同 等 )する。 ・中 長 期 目 標 として、CO 2 回 収 との組 み合 わせ、IGFCへの展 開 。 効 果 ・低 灰 融 点 炭 の有 効 利 用 (適 用 炭 種 拡 大 による石 炭 価 格 交 渉 力 向 上 )、産 炭 国 での低 品 位 炭 利 用 (高 品 位 炭 輸 入 量 確 保 )などによるエネルギーセキュリティ の確 保 。 ・効 率 化 による石 炭 消 費 量 の低 減 、二 酸 化 炭 素 排 出 量 の削 減 。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2t/dPDU, 200t/d パイロットプラント, 24t/d 試 験 炉 による技 術 開 発 と要 素 技 術 開発。 現 状 ・実 証 機 250MW 試 験 では、石 炭 使 用 量 が 500MW 級 商 用 機 の 1/2 規 模 の実 証 機 を建 設 し、信 頼 性 、熱 効 率 、環 境 性 、炭 種 適 合 性 、経 済 性 を確 認 した。 ・同 時 に、500MW 級 商 用 機 試 設 計 を実 施 し低 コスト化 の見 通 しを得 た。 ・250MW 実 証 機 は 2013 年 3 月 に常 磐 共 同 火 力 勿 来 発 電 所 10 号 機 として商 用運転開始。 今 後 ・500MW 級 商 用 機 へのスケールアップによる低 コスト化 の実 現 ・CO 2 回 収 実 証 試 験 (適 用 プラント未 定 )、 ・別 途 開 発 中 の SOFC との組 み合 わせによる IGFC システム研 究 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・更 なる発 電 効 率 の向 上 (スケールアップ、GT高 温 化 ) ・利 用 可 能 炭 種 拡 大 (多 炭 種 設 計 、亜 瀝 青 炭 /褐 炭 ほか) ・運 用 柔 軟 性 /設 備 信 頼 性 の更 なる向 上 (高 出 力 変 化 率 ほか/長 期 的 な経 年 劣 化 評 価 ) ・海 外 へのインフラ輸 出 の整 備 、 ・二 国 間 クレジットなどの適 用 による海 外 展 開 支 援 64 IGCC フロー IGCC 実 証 機 IGCC 開 発 の歴 史 出 典 :三 菱 重 工 業 (株 )WEB サイト http://www.mhi.co.jp/discover/story/project02/index.html より (2013.12.08) 65 大 分 類 : 低 コスト化 中分類 石 炭 火 力 の高 効 率 化 ・低 炭 素 化 個別技術名 21 バイオマス・石 炭 ハイブリッド発 電 技 術 (微 粉 炭 混 焼 ) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 三 菱 重 工 業 株 式 会 社 、株 式 会 社 IHI、バブコック日 立 株 式 会 社 他 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・木 質 バイオマスを粉 砕 して高 比 率 で微 粉 炭 と炉 内 混 焼 することで、石 炭 火 力 か ら排 出 される化 石 燃 料 起 源 の炭 酸 ガス量 を削 減 する。 必要性 ・石 炭 を燃 料 とする発 電 所 において、カーボンニュートラルな燃 料 として期 待 され ている国 内 の未 利 用 バイオマス資 源 (林 地 残 材 等 )を利 用 する木 質 バイオマス 混 焼 発 電 をすることによって CO 2 排 出 抑 制 につながる。日 本 の発 電 事 業 では 石 炭 火 力 発 電 の依 存 率 が高 まっており、温 室 効 果 ガス(CO 2 )発 生 量 の削 減 が 課 題 となっている。 目 標 ・バイオマス混 焼 率 5cal%以 上 (混 合 粉 砕 )、20~50cal%(専 用 粉 砕 。 効 果 ・木 質 バイオマスの混 焼 量 は、140万 kW発 電 所 における石 炭 との重 量 比 で1% 程 度 (年 間 最 大 1.5万 トン)の混 焼 率 で年 間 1万 トン程 度 のCO 2 排 出 抑 制 につな がる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・混 合 粉 砕 法 で 3cal%、専 用 粉 砕 法 で 17cal%まで実 用 化 済 み。 現 状 ・混 合 粉 砕 法 及 び単 独 粉 砕 法 開 発 による混 焼 率 向 上 開 発 。 ・高 混 合 率 における安 定 燃 焼 技 術 、運 用 技 術 の開 発 。 ・効 率 的 なバイオマス燃 料 形 状 および効 率 的 な燃 料 収 集 システムの開 発 。 今 後 ・混 焼 率 のさらなる向 上 。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・バイオマス安 定 調 達 の確 保 への支 援 政 策 。 ・バイオマス利 用 へのインセンティブ強 化 政 策 。 別紙 木 質 バイオマス混 焼 システム概 略 系 統 図 (丸 太 状 で受 け入 れる場 合 の例 を示 す) 出 典 「バイオマスエネルギーの高 度 利 用 技 術 」三 菱 重 工 技 報 Vol.40 No.4(2003_7) 66 出 典 : NEDO 「バイオマス専 用 粉 砕 方 式 による既 設 微 粉 炭 焚 きボイラでの混 焼 技 術 の実 用 化 開 発 (実 施 者 :バブコック日 立 )」 出 典 :「微 粉 炭 火 力 の木 質 バイオマス高 比 率 混 焼 技 術 の開 発 」IHI 技 報 Vol.52 No.4 ( 2012 ) 67 大 分 類 :低 コスト化 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 個別技術名 22 低 品 位 炭 改 質 技 術 (UBC) 開発者 小分類 石炭火力発電技術 株式会社 神戸製鋼所 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・高 水 分 ・低 発 熱 量 で自 然 発 火 性 が高 く利 用 が限 定 される褐 炭 や亜 瀝 青 炭 の有 効 利 用 を目 的 とした技 術 。 ・低 品 位 炭 を粉 砕 し灯 油 等 の軽 質 油 と混 合 し、油 スラリー中 で加 熱 し水 分 を除 去 。さらに少 量 添 加 されたアスファルト等 の重 質 油 を低 品 位 炭 内 の細 孔 や表 面 に付 着 させ、自 然 発 熱 を防 ぎ、水 分 の再 吸 収 を抑 制 し、瀝 青 炭 同 等 の発 熱 量 と安 定 性 に優 れた改 質 炭 とする技 術 。 必要性 ・低 品 位 炭 は石 炭 資 源 の半 分 を占 める。改 質 技 術 適 用 で低 品 位 炭 利 用 の促 進 はエネルギー資 源 の有 効 化 、我 が国 への石 炭 供 給 安 定 化 。 目 標 ・産 炭 国 に本 技 術 を導 入 、経 済 的 な低 灰 分 、低 硫 黄 分 の燃 料 を製 造 し日 本 に輸 入 する。加 えて、褐 炭 産 出 国 において山 元 褐 炭 生 焚 発 電 に代 えて高 効 率 、低 CO 2 排 出 の山 元 UBC 発 電 を導 入 することにより、当 該 国 の褐 炭 有 効 利 用 に寄 与 する。 効 果 ・日 本 の石 炭 供 給 国 として重 要 なインドネシア石 炭 のほとんどは低 品 位 炭 で、し かも低 灰 分 、低 硫 黄 分 の環 境 に優 れた性 状 を有 していることから、本 技 術 を導 入 することで石 炭 供 給 安 定 化 、多 炭 種 適 応 、灰 処 理 減 等 に貢 献 する。また、燃 焼 効 率 の向 上 により、CO 2 削 減 にも効 果 がある。褐 炭 産 出 国 での山 元 UBC 発 電 の導 入 により、その一 般 炭 需 要 を抑 制 しわが国 の石 炭 輸 入 の安 定 化 に貢 献 する。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2009~2010年 、実 証 プラントでの製 品 により実 機 ボイラ等 の燃 焼 性 を確 認 し、概 ね目 標 を達 成 。 ・‘10年 迄 に大 型 実 証 プロジェクトで 4,000 時 間 超 の運 転 実 績 有 り、約 5万 トンの 褐炭改質。 ・プロセスの安 定 運 転 性 、スケールアップ技 術 の確 立 、実 機 ボイラでの改 質 炭 の 燃 焼 試 験 で高 い燃 焼 性 及 びハンドリング性 の評 価 等 を実 施 し、商 用 化 に向 け た技 術 を確 立 。 ・褐 炭 産 出 国 での山 元 UBC 発 電 についても UBC パウダーの燃 焼 試 験 を実 施 、 USC での使 用 が可 能 なことを確 認 。 現 状 ・’11年 以 降 、商 業 プラント建 設 、運 転 による技 術 の普 及 を実 現 すべく展 開 中 。 ・輸 出 用 のブリケット、山 元 発 電 用 のパウダー(ブリケット化 なし)の二 種 類 の商 業 化 を目 指 している。プラントコストの低 減 について一 定 の目 処 をつけつつある。 今 後 ・更 なる低 コスト化 の実 現 と産 炭 国 で商 用 プラント建 設 、運 転 による技 術 普 及 。 ・インドネシアの試 験 プラント等 においてプロセス改 善 活 動 を継 続 実 施 。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 ために何 が必 要 か ・低 コスト化 の実 現 ・エネルギー政 策 対 話 等 G-G ベースのミーティングでの UBC プラント輸 出 プロモーション。 68 ・改 質 技 術 の適 用 国 であるインドネシア等 における低 品 位 炭 へのロイヤルティ軽 減 、優 遇 税 制 等 のインセンティブの導 入 や、CDM 適 用 への支 援 。 ・商 業 化 推 進 のための公 的 ファイナンスの供 与 。 別紙 低 品 位 炭 改 質 プロセス(UBC プロセス)の概 要 <UBC プロセスフロー> ●製 品 と用 途 ・ ・UBC パウダー - 改 質 直 後 の状 態 - 水 分 0% - 隣 接 発 電 所 に直 接 供 給 する 高効率発電燃料 - 既 存 褐 炭 生 焚 発 電 に比 べ 20%程 度 の CO2 排 出 削 減 ・UBC ブリケット - 長 距 離 輸 送 用 にブリケット化 - 水 分 8% (屋 外 貯 蔵 ・輸 送 のため水 分 は平 衡 値 となる) - 一般炭代替燃料 低 品 位 炭 改 質 の原 理 低 品 位 炭 改 質 の原 理 出 典 :第 1回 低 品 位 炭 改 質 技 術 研 究 開 発 プロジェクト事 後 評 価 検 討 会 「低 品 位 炭 改 質 技 術 研 究 開 発 の概 要 について」経 済 産 業 省 資 源 エネルギー庁 資 源 ・燃 料 部 石 炭 課 財 団 法 人 石 炭 エネルギーセンター 2010 年 12 月 15 日 69 大 分 類 : 低 コスト化 中分類 低 品 位 炭 の多 用 途 利 用 個別技術名 23 低 品 位 炭 流 体 化 技 術 (JCF・HWT) 開発者 小分類 産業用石炭利用技術 日揮株式会社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・褐 炭 等 の低 品 位 炭 を、それ自 体 が保 有 する水 分 を利 用 して輸 送 やハンドリン グが容 易 な水 スラリー状 の流 体 とする技 術 。 ・水 スラリーはそのまま燃 焼 するばかりでなく、石 炭 ガス化 等 の原 料 としても使 用 できる。 必要性 ・JCF プロセスは、亜 瀝 青 炭 、褐 炭 などの低 品 位 炭 (LRC)を、高 温 高 圧 水 (熱 水 )を用 いた改 質 法 (HWT: Hot Water Treating)により転 換 するプロセス。少 量 の添 加 剤 を加 えて水 スラリー化 燃 料 にすることが可 能 。 ・低 品 位 炭 は埋 蔵 量 が大 きく、低 品 位 炭 の欠 点 を克 服 し利 用 できれば、我 が国 のエネルギー安 定 供 給 に大 きく寄 与 する。 目 標 ・JCF は、LRC の持 つ固 体 ハンドリングの欠 点 (自 然 発 火 、炭 塵 飛 散 等 )を克 服 し、貯 蔵 ・輸 送 ・燃 焼 で重 油 並 みのハンドリング性 を可 能 とする。 効 果 ・安 価 な低 灰 分 の低 品 位 炭 から製 造 した石 炭 スラリーを我 が国 に運 搬 すること が可 能 となる。また、現 地 での石 油 または天 然 ガス代 替 、将 来 的 には湿 式 石 炭 ガス化 炉 に導 入 して SNG、メタノールなどの製 品 の製 造 、スラリーエンジンへの 適 用 も視 野 に入 れている。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・1995~1996年 3,500t/年 パイロットプラント試 験 完 了 現 状 ・2010~2014年 10,000t/年 デモンストレーション試 験 中 (カラワング、イン ドネシア) ・2010~2014年 今 後 商 業 化 F/S 実 施 中 (製 造 サイド、ユーザーサイド) ・2014~2015年 デモプラントに発 電 設 備 を増 設 して発 電 実 証 を行 う。 ・2016~2017年 商 業 化 (目 標 ) ・商 業 化 原 料 石 炭 の絞 り込 み、プラントのスケールアップ、燃 料 の安 定 製 造 及 び 安 定 発 電 (燃 料 としての信 頼 性 向 上 ) 3. 技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・低 コスト化 により、コスト競 争 力 ある石 炭 水 スラリー製 品 生 産 の達 成 。 ・インドネシアでは石 炭 スラリー燃 料 はまだ実 用 化 されておらず、政 府 においてボイラー燃 料 とし ての登 録 、標 準 化 。 ・石 油 、ガス代 替 につながるエネルギー政 策 自 体 に関 わる大 型 案 件 は、民 間 レベルの FS 結 果 のみで具 現 化 することが難 しく、インドネシア政 府 の指 導 、アドバイスが必 要 。 ・低 品 位 炭 産 炭 国 の豪 州 やインドネシア炭 が対 象 となるので、これらの国 との技 術 協 力 関 係 整 備 が望 まれる。 ・原 料 ソースである低 品 位 炭 の権 益 確 保 が望 ましい。 70 別紙 JCF プロセスの概 要 出 典 ;日 揮 (株 )ホームページ、http://www.jgc.co.jp/jp/04tech/04coal/jcf.html 出 典 ;JCOAL/CCT ワークショップ 2012「低 品 位 炭 の熱 水 改 質 技 術 」 日 揮 (株 ) 71 大 分 類 : 低 コスト化 中分類 環境対策 個別技術名 24 石 炭 ガス化 スラグ有 効 利 用 開発者 小分類 環境負荷低減技術 クリーンコールパワー研 究 所 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・高 効 率 発 電 技 術 である IGCC の実 用 化 の推 進 が見 込 まれる中 、IGCC 石 炭 ガ ス化 炉 から排 出 されるスラグの有 効 活 用 の方 向 付 けが重 要 である。 必要性 ・地 球 温 暖 化 の観 点 から、石 炭 利 用 に際 して発 生 する CO 2 をできるだけ少 なくす ることが求 められており、今 後 高 効 率 発 電 技 術 である IGCC の実 用 化 が想 定 さ れる。また、現 時 点 で250MW 級 IGCC が商 業 運 転 している他 、平 成 28年 度 からは新 たに OCG プロジェクトからのスラグも排 出 されてくる。近 年 セメント製 造 量 の低 下 によりセメント原 料 としての有 効 利 用 については、拡 大 は難 しい状 況 であり、セメント原 料 以 外 の有 効 利 用 方 策 を確 立 する必 要 がある。 目 標 ・土 木 建 築 用 資 材 として、大 量 に需 要 のある砂 、砕 石 等 の代 替 資 材 として広 く 活 用 できるように、石 炭 ガス化 スラグの特 性 を整 理 し代 替 材 としての機 能 改 善 技 術 を開 発 し、各 種 法 令 へ合 致 させ石 炭 ガス化 スラグの規 格 化 を行 う。 効 果 ・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に比 べて CO 2 発 生 量 を約 20%削 減 する IGCC 技 術 の 導 入 障 壁 の解 消 効 果 がある。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・1983~1988年 噴 流 床 IGCC 技 術 の FS 2t/d BP 試 験 (横 須 賀 )、基 本 プ ロセス開 発 ・1985~1996年 200t/d パイロットプラント(勿 来 ) ・1997~2012年 250MW 実 証 プラント 現 状 ・2013年 常 磐 共 同 火 力 で商 用 開 始 (250MWW) 今 後 ・2017年 大 崎 クールジェン運 転 開 始 (170MW) ・2020年 代 初 頭 福 島 IGCC 運 転 開 始 (500MW×2:計 画 中 ) 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・IGCC 技 術 は、日 本 固 有 の技 術 として官 民 一 体 となり昭 和 50年 代 から開 発 が進 められてきた 技 術 であり、現 在 実 証 試 験 まで成 功 裏 に進 捗 してきた。導 入 にあたっては、排 出 されるスラグ が有 効 活 用 されることが、前 提 となっており廃 掃 法 等 の改 正 を含 め、関 連 法 規 、規 格 基 準 の 整 備 が必 要 となる。 ・現 在 商 用 運 転 中 の常 磐 共 同 火 力 から排 出 されているスラグは、主 にセメント原 料 と再 生 路 盤 材 の一 部 材 料 として有 効 利 用 されている。 ・従 来 からセメント2次 製 品 、舗 装 材 等 へスラグを砂 の一 部 代 替 材 として、使 用 可 能 な見 通 しを 得 ているが、規 格 化 されていないものは自 治 体 等 の標 準 仕 様 書 に記 載 できないため実 用 化 には至 ってない。 72 <発電出力当たり体積は半減> 舗 装 材 へのスラグの適 用 例 コンクリート二 次 製 品 へのスラグの適 用 例 出 典 : 平 成 18年 JCOAL クリーンコールセミナー 「 石 炭 ガス化 複 合 発 電 (IGCC)実 証 機 プ ロジェクトの進 捗 状 況 」 クリーンコールパワー研 究 所 73 大 分 類 : 低 コスト化 中分類 環境対策 個別技術名 25 水 銀 対 応 型 乾 式 脱 硫 技 術 開発者 小分類 環境負荷低減技術 ジェイパワー・エンテック株 式 会 社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・活 性 コークスを用 いた乾 式 排 煙 処 理 で、脱 硫 、脱 硝 、脱 塵 、脱 ダイオキシンとと もに水 銀 除 去 を行 う。商 標 名 「ReACT」。 必要性 ・2013 年 10 月 に「水 銀 に関 する水 俣 条 約 」が締 結 され、石 炭 火 力 発 電 、産 業 用 ボイラも大 気 への水 銀 発 生 源 としてリストアップされたため、排 出 量 低 減 が必 須 の課 題 となってきた。またこれに先 立 ち北 米 では 2013 年 3 月 に MATS(Mercury and Air Toxics Standards)規 制 が施 行 され、石 炭 火 力 発 電 所 には 2016 年 度 より 0.013 lb/GWh(1.2 lb/TBtu)と発 電 量 当 たりの規 制 が始 まる事 となった。 ・我 が国 では既 に各 石 炭 火 力 で脱 硝 ・脱 硫 ・煤 塵 プラントが完 備 されており、現 状 は規 制 に対 応 出 来 ているとの認 識 であるが、特 にスペースの限 られた都 市 型 発 電 プラントにおける総 合 排 煙 処 理 プロセスとして期 待 が大 きい。 目 標 ・我 が国 では水 銀 に対 する大 気 基 準 は存 在 するが、発 電 所 や産 業 用 等 個 別 の 規 制 では無 いが、海 外 での売 込 の為 には、MATS 規 制 をクリアするという触 れ 込 みが必 要 。 効 果 ・都 市 型 発 電 プラントにおける省 スペース多 目 的 排 煙 処 理 として有 効 。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・1995年 竹 原 二 号 機 へ導 入 。 ・2005年 、三 井 鉱 山 /JPOWER でジェイパワー・エンテック(株 )設 立 。 現 状 ・国 内 脱 硫 プラントに採 用 。 今 後 ・海 外 での水 銀 廃 棄 基 準 に合 わせた除 去 性 能 及 び、回 収 技 術 の組 合 せでの提 案 。海 外 での技 術 信 頼 性 の確 立 。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・更 なる低 コスト化 の実 現 (耐 用 年 数 、活 性 コークス再 生 など)。 ・水 銀 回 収 技 術 の改 良 、特 に 2016 年 以 降 需 要 本 格 化 。 ・相 手 国 の水 銀 規 制 に対 応 した技 術 提 案 。 74 別紙 乾 式 脱 硫 プロセス(ReACT)の概 要 ■吸 着 工 程 吸 着 塔 には、活 性 コークス(AC)が充 填 されており、硫 黄 酸 化 物 、窒 素 酸 化 物 、ダストを処 理 します。 硫 黄 酸 化 物 は、硫 酸 、または吸 着 塔 の前 段 で注 入 されたアンモニアと反 応 してアンモニア塩 となり、吸 着 塔 内 の活 性 コークスに吸 着 されます。 窒 素 酸 化 物 はアンモニアと活 性 コークスの触 媒 作 用 で還 元 さ れて窒 素 になります。 排 ガス中 のダストは、吸 収 塔 で捕 集 ・分 離 されます。 活 性 コークスは次 に再 生 工 程 へ送 られます。 a)脱 硫 反 応 SO2+1/2O2+H2O → H2SO4 <アンモニア共 存 時 > SO2+1/2O2+H2O+NH3 → NH4HSO4 SO2+1/2O2+H2O+2NH3 → (NH4)2SO4 b)脱 硝 反 応 NO+NH3+1/4O2 → N2 + 3/2H2O (触 媒 反 応 ) NO+NHx-AC → N2 + H2O + OH-AC (ACの表 面 官 能 基 による脱 硝 ) ■再 生 工 程 吸 着 塔 で硫 黄 酸 化 物 を吸 着 した活 性 コークスは、再 生 塔 に送 られて 400〜500℃で加 熱 再 生 された 後 、再 び吸 着 塔 に送 られて循 環 利 用 されます。 H2SO4 → H2O+SO3 NH4HSO4 → (NH4)2SO4 → H2O+SO3+NH3 H2O+SO3+2NH3 SO3+ C(AC) → SO2+1/2CO2 (ACの賦 活 ) 3SO3+ 2NH3 → N2+3SO2+3H2O (アンモニアの分 解 ) 出 典 : ジェイパワー・エンテック(株 )HP より 75 大 分 類 : 低 コスト化 中分類 環境対策 個別技術名 26 水 銀 除 去 触 媒 技 術 開発者 小分類 環境負荷低減技術 バブコック日 立 株 式 会 社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・脱 硝 装 置 における SCR 触 媒 は以 前 から水 銀 を酸 化 する能 力 があることが 知 られていた。同 触 媒 の脱 硝 性 能 を維 持 した上 で水 銀 酸 化 性 能 を高 める 事 により、水 銀 酸 化 を加 速 し、電 気 集 塵 機 、脱 硫 装 置 における除 去 効 率 を 向 上 させた。 必要性 ・2013 年 10 月 に「水 銀 に関 する水 俣 条 約 」が締 結 され、石 炭 火 力 発 電 、産 業 用 ボイラも大 気 への水 銀 発 生 源 としてリストアップされたため、排 出 量 低 減 が必 須 の課 題 となってきた。またこれに先 立 ち北 米 では 2013 年 3 月 に MATS(Mercury and Air Toxics Standards)規 制 が施 行 され、石 炭 火 力 発 電 所 には 2016 年 度 より 0.013 lb/GWh(1.2 lb/TBtu)と発 電 量 当 たりの規 制 が始 まる事 となった。 ・我 が国 では既 に脱 硝 ・脱 硫 ・煤 塵 プラントが完 備 されており、現 状 は規 制 に 対 応 出 来 ているとの認 識 であるが、海 外 発 電 所 で対 応 の必 要 があるプラン トへは積 極 的 に売 込 を図 っている。 目 標 ・我 が国 では水 銀 に対 する大 気 基 準 は存 在 するが、発 電 所 や産 業 用 等 個 別 の規 制 では無 いが、海 外 での売 込 の為 には、MATS 規 制 をクリアするという 触 れ込 みが必 要 。 効 果 ・発 電 プラントにおける総 合 環 境 技 術 として既 存 SCR 触 媒 の入 れ替 えだけで 水 銀 除 去 も対 応 可 能 となる。 2.技 術 開 発 状 況 概 要 等 過 去 ・2004~2007年 、触 媒 開 発 。 現 状 ・~実 証 プラントでの製 品 により実 機 プラントでの試 験 を重 ね、おおむね目 標 を達 成 。 ・北 米 では複 数 の受 注 達 成 。 今 後 ・産 炭 国 での水 銀 廃 棄 基 準 に合 わせた除 去 性 能 及 び、回 収 技 術 の組 合 せ での提 案 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・更 なる低 コスト化 の実 現 (耐 用 年 数 、触 媒 再 生 など)。 ・水 銀 回 収 技 術 の改 良 。 ・相 手 国 の水 銀 規 制 に対 応 した技 術 提 案 。 76 大 分 類 : 低 品 位 炭 チェーンの確 立 中分類 - 小分類 個別技術名 27 水 素 チエーン確 立 開発者 川崎重工業株式会社 - 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・低 廉 な褐 炭 を原 料 として、水 素 製 造 プラント(褐 炭 前 処 理 、褐 炭 ガス化 及 び水 素 精 製 技 術 )で水 素 を製 造 し、長 距 離 輸 送 に適 した液 体 水 素 の形 態 で日 本 へ輸 送 する、なお、分 離 された CO 2 は圧 縮 して貯 留 する。こうして、褐 炭 を CO 2 フリー燃 料 に転 換 して日 本 に持 ち込 む。 必要性 ・CO 2 排 出 量 を 2050 年 に 80%削 減 するには水 素 の大 幅 な輸 入 拡 大 が必 要 である。 目 標 ・2030 年 時 点 での日 本 CIFコストを 30 円 /Nm3。 効 果 ・自 主 エネルギー(褐 炭 権 益 含 む)調 達 向 上 と CO2 排 出 量 削 減 の両 目 標 を達 成 できる。さらに、水 素 産 業 の競 争 力 強 化 を図 ることができる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・2010~2013年 パイロット水 素 チェーン概 念 設 計 、商 用 化 水 素 チェーン FS。 ・褐 炭 から水 素 製 造 、水 素 液 化 、水 素 輸 送 ・貯 蔵 、水 素 ガスタービン等 の利 用 技 術 の研 究 開 発 。 現 状 ・水 素 チェーン技 術 の確 立 、資 金 、事 業 者 を構 築 中 。 今 後 ・2014~2019年 パイロットチェーンの設 計 、建 設 ・水 素 製 造 (10t/day)・水 素 液 化 (10t/day)、 ・水 素 輸 送 船 (200t)・水 素 発 電 所 (7MW) ・2017年 国 内 で、水 素 輸 送 船 の水 素 揚 荷 ・積 荷 試 験 開 始 ・2019年 日 本 -豪 州 間 でパイロットチェーン運 転 開 始 ・2020~2024年 実 証 チェーンの設 計 、建 設 ・水 素 製 造 (770t/day)・水 素 液 化 (770t/day) ・水 素 輸 送 (11,000t) ・水 素 発 電 所 (650MW) ・2025年 実 証 チェーン運 転 開 始 ・2030年 商 用 水 素 チェーン運 転 開 始 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・褐 炭 から水 素 製 造 プラント開 発 : ・褐 炭 前 処 理 技 術 (原 料 褐 炭 予 乾 燥 ・含 有 水 分 有 効 利 用 ) ・褐 炭 ガス化 技 術 (豪 州 褐 炭 への適 応 最 適 化 ) ・水 素 精 製 技 術 (CCS及 び水 素 液 化 に対 応 したシステム最 適 化 ) ・水 素 液 化 技 術 :高 効 率 、大 型 化 ・液 化 水 素 輸 送 ・貯 蔵 技 術 :ローディングシステム、低 ボイルオフ、大 型 化 の技 術 ・水 素 輸 送 船 やローディングシステム等 、各 種 液 水 機 器 の規 格 作 り 77 別 紙 CO2 フリー水 素 チェーンの概 要 図1 CO2フリー水素チェーンの概要(パイロットチェーンと実証チェーン) 図 2 豪 州 政 府 及 びビクトリア州 政 府 が推 進 するカーボンネット計 画 と接 続 褐炭前処理技術 ガス化炉のタイプ により①②に大別 褐炭 褐炭前処理 ①スラリー ②乾燥 ガス化技術 水素精製技術 CO, CO2, H2, H2O ガ ス 化 炉 H2O 脱塵・脱硫 酸素 酸素 分離 H2 CO2 , H2 シフト 反応器 空気 CO2 分離装置 CO2回収 CO2 貯留 灰分 図3 褐炭由来水素製造技術 出 典 :川 崎 重 工 業 社 (株 )提 供 資 料 78 水素 液化設備 大 分 類 : 低 品 位 炭 チェーンの確 立 中分類 小分類 個別技術名 28 石 炭 ガス化 合 成 天 然 ガス(SNG チェーン確 立 ) 開発者 三菱重工業株式会社 1.技 術 開 発 概 要 等 概 要 ・ 石 炭 を ガ ス 化 し た 石 炭 ガ ス を 精 製 し て 触 媒 合 成 に よ り 合 成 天 然 ガ ス ( SNG : Substituted Natural Gas)を製 造 するシステム。石 炭 として低 品 位 炭 、特 に褐 炭 を原 料 してガス化 することにより、これまで未 利 用 であった資 源 の活 用 がで きる。また、製 造 工 程 において排 出 される CO 2 を回 収 ・EOR/貯 留 を行 うことに より、SNG 利 用 時 の CO 2 排 出 低 減 が図 れる。 必要性 ・産 炭 国 の未 利 用 な低 品 位 炭 ・低 品 質 炭 から、クリーンな燃 料 である SNG を製 造 し、産 炭 国 のエネルギー需 給 緩 和 や環 境 対 策 、及 び我 が国 へのエネルギー の安 定 供 給 確 保 に繋 げるために本 技 術 が必 要 である。 目 標 ・製 品 SNGのターゲット価 格 は10US$/mmBtuである。 ・FS試 算 結 果 :CO 2 クレジット単 価 10ユーロ/t- CO 2 (= 15 $/t- CO 2 )程 度 を考 慮 し た場 合 、SNG価 格 はターゲットを下 回 る。 効 果 ・未 利 用 な低 品 位 炭 ・低 品 質 炭 が有 効 活 用 できることから、省 資 源 化 や我 が国 へのエネルギーの安 定 供 給 確 保 が図 れる。 ・製 造 工 程 において排 出 されるCO 2 を回 収 ・貯 留 を行 うことにより、SNG利 用 時 の CO 2 排 出 低 減 が図 れる。 2.技 術 開 発 状 況 等 過 去 ・インドネシアを対 象 とした FS を行 い、プラントの仕 様 検 討 を行 うと共 に、適 用 候 補 炭 であるインドネシア褐 炭 によるガス化 検 証 を完 了 した。 ・また、プロジェクトスキームの検 討 を行 い、現 地 政 府 の協 力 のもと、ステークホ ル ダ ー 候 補 の 石 炭 供 給 会 社 は 低 品 位 炭 の 長 期 供 給 、 SNG オ フ テ イ カ ー は SNG の長 期 引 取 り契 約 に興 味 を示 すものの、石 油 会 社 と CO 2 の引 取 りについ て合 意 形 成 に至 らず、プロジェクト実 施 はホールド。 現 状 ・CO 2 の引 取 りを前 提 としないプロジェクト実 施 について検 討 中 。 今 後 ・プロジェクトコスト低 減 を進 め、産 炭 国 での商 用 プラント建 設 、運 転 による技 術 普 及 を行 う。 3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何 が必 要 か ・更 なるコストダウン 量 産 効 果 によるガス化 炉 コストダウン。適 用 炭 種 に応 じたシステムの最 適 化 。 ・プロジェクトスキームの確 立 プロジェクト成 立 のためには、CO 2 、SNGのオフテイクの長 期 契 約 が必 要 であり、行 政 指 導 を含 めたインドネシア政 府 の取 り組 みが必 要 。 ・海 外 へのインフラ輸 出 の整 備 SNGパイプライン、CO 2 パイプライン等 の整 備 を含 めた、プロジェクトの支 援 。 79 別紙 図 1 インドネシア褐 炭 を利 用 した SNG 合 成 プラントのフロー例 図 2 インドネシア南 スマトラ島 における SNG 合 成 プラント候 補 サイト例 出 典 :三 菱 重 工 (株 )提 供 資 料 80 第 3 章 まとめ (1)石炭はその供給安定性、価格安定性から世界の一次エネルギーの主役であり、我が 国 に お い て も 一 次 エ ネ ル ギ ー の 約 2 割 を 担 っ て お り 、2011 年 の 東 日 本 大 震 災 に 続 く 原 子 力 発 電 比 率 低 下 及 び 地 球 温 暖 化 対 策 と し て の CO 2 削 減 の 両 面 か ら 、 政 府 は 抜 本 的 な エ ネ ル ギ ー 基 本 戦 略 の 見 直 し を 進 め て い る が 、石 炭 火 力 発 電 所 を は じ め と し た 石 炭 の 一 層 の 効 率 的 使 用 は 必 要 不 可 欠 な 課 題 で あ り 、我 が 国 が 世 界 を リ ー ド し て い る ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ( CCT)は 常 に 進 む べ き 方 向 を 明 確 に し な け れ ば な ら な い。 こ の 見 地 に 立 ち 、環 境 保 全 、石 炭 資 源 確 保 を ベ ー ス と し て 、今 後 の 石 炭 技 術 開 発 を 取 り 巻 く 背 景 を 念 頭 に 、2050 年 ま で の CCT 開 発 の 指 針・開 発 技 術 を 一 葉 で 網 羅 的 に 示 し 、 我 が 国 CCT 開 発 の 道 筋 を 示 し 、 開 発 促 進 を 目 的 と し て 本 ロ ー ド マ ッ プ を 作 成した。 ( 2 )IEA、欧 州 、米 国 等 で は 、二 酸 化 炭 素 排 出 規 制 強 化 の 動 き が 、具 体 的 排 出 基 準 を 挙 げ な が ら 進 ん で い る 。例 え ば 、IEA は 669 g- CO 2 /kWh、米 国 で は 455 g-CO2/kWh、英 国 で は 450 g- CO 2 /kWh の 排 出 規 制 値 で あ る 。 こ れ ら の 動 き に 対 し て 、石 炭 火 力 技 術 の 進 化 に よ る 高 効 率 化 で 対 応 す る が 、更 な る 削 減 は 、 排 出 さ れ た CO 2 自 体 を 削 減 す る 技 術 の 実 用 化 対 応 が 必 要 に な っ て く る 。 (3)石炭は上記の通り供給、価格安定性から、今後も極めて安定した割合(3割前後) で消費され続けると予想される。 環 境 負 荷 低 減 の ニ ー ズ は 今 後 と も 強 ま る 一 方 で 、 2013 年 末 の COP19 で の 我 が 国 の 排 出 量 削 減 目 標 値( 2020 年 ま で に 、排 出 量 を 2005 年 対 比 3.8%削 減 )へ 複 数 の 関 係国から失望感が表明された。 石 炭 は CO 2 排 出 量 が 多 い こ と 、更 な る 安 定 供 給 が 必 要 な こ と 、CO 2 以 外 で も 環 境 へ の 影 響 が 大 き い こ と か ら 、こ れ ら の 課 題 を 克 服 す る 形 で CCT の 開 発 を 進 め る 必 要 が あ る 。 従 っ て 地 球 温 暖 化 対 策 の CO 2 削 減 目 標 や エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 等 で 示 さ れ た 社 会 的 な 目 標 を 達 成 す る た め に CCT 開 発 の 分 野 に お い て 果 た す べ き 課 題 が あ り 、そ れ ら を 達 成 す る た め の 開 発 目 標 は 大 き く「 高 効 率 発 電・低 炭 素 化 」、 「 低 品 位 炭 利 用 」、 「環境対策」の3つとなっている。 ( 4 )ま ず 、「 高 効 率 発 電・低 炭 素 化 」に つ い て 。日 本 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 は 、USC で 蒸 気 温 度 600℃ 、発 電 炭 効 率 43%HHV と 世 界 最 高 レ ベ ル を 達 成 し て い る 。こ の USC の 蒸 気 温 度 700℃ を 実 現 し A-USC に 置 き 換 え れ ば 、 石 炭 の 消 費 量 及 び CO 2 発 生 量 と も に 10%以 上 抑 制 で き る と 考 え ら れ て お り 、 耐 熱 材 料 や 機 器 の 開 発 が 進 め ら れ て い る 。 既 存 石 炭 火 力 発 電 技 術 に 比 べ 熱 効 率 が 高 く 、 CO 2 排 出 量 の 大 幅 な 低 減 が 見 込 ま れ る IGCC(石 炭 ガ ス 化 複 合 サ イ ク ル 発 電 )技 術 開 発 や 、 IGFC(石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 サ イ ク ル 発 電 )技 術 開 発 も 期 待 さ れ て い る 。 一 方 、 2050 年 で の CO 2 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 化 を タ ー ゲ ッ ト と し た CO 2 回 収 技 術 は 、 酸 素 燃 焼 、ケ ミ カ ル ル ー ピ ン グ 、CO2 循 環 型 IGCC 等 、多 岐 に わ た る 分 野 で の 技 術 開 発が世界中で進められており、我が国においても勢力的に技術開発が進んでいる。 81 ( 5 )次 に 、 「 低 品 位 炭 利 用 」に つ い て 。高 水 分・低 発 熱 量 で 自 然 発 火 性 が 高 い た め 、利 用 が 限 定 さ れ て い る 褐 炭 や 亜 瀝 青 炭 等 の 未 利 用 低 品 位 炭 を 低 コ ス ト で UBC、 JCF 等 に 改 質 あ る い は 液 状 化 し て 、産 炭 国 内 或 い は 日 本 国 内 市 場 に 供 給 す る こ と を 目 的 に 技 術開発を完了し、商用化へ向けた低コスト化の検討が進んでいる。 加 え て 、 こ れ ら の 未 利 用 炭 を ガ ス 化 し ( TIGAR、 ECOPRO 等 )、 燃 料 、 化 学 原 料 等、天然ガス、石油の代替とする技術開発も進んでいる。 (6)3つ目の「環境対策」について。我が国の厳しい環境規制の下で開発が進められて きた環境負荷物質低減技術は、今後各国において規制強化が進む際に、その対策技 術のデファクトスタンダードとなる可能性が高い。ただし、規制が施行され対象と なり得る国、対象となる規制物質等は未だ限定的であり、明示的にメルクマールを 設定し抜本的な問題解決を目指すには、ニーズや技術の発掘、整理等、現状把握の 段階も含めた検討が必要である。 ( 7 )CO 2 削 減 目 標 や エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 等 で 示 さ れ た 社 会 的 な 目 標 を 達 成 す る た め に CCT 開発の分野において果たすべき課題があり、それらを達成するための3つの開発目 標について述べてきたが、これら 3 つの開発目標の下にいくつかの開発テーマが存 在し、それぞれのテーマが成果を上げることで上位目標を目指していくためには、 漫然と進めていくのではなく、それぞれの成果が有機的に連携するように技術のシ ーズ、時間軸等を考慮した現実的な中間的メルクマールを設定し、その達成を目指 していく必要がある。 (8)これらの中間的メルクマールの設定は、技術開発を体系として進めていく上で不断 の 精 査 が 必 要 で あ る 。そ の た め に は 、我 が 国 の 技 術 の シ ー ズ 、他 国 の 技 術 開 発 動 向 、 世 界 的 な CO 2 対 策・CCS 等 の 方 針 、産 炭 国 の 国 情 等 の 検 討 要 素 が 多 く 、継 続 的 に フ ォ ローしていかなければならない。 今 後 は 、上 記 の 状 況 も 踏 ま え 、さ ら に ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系 の 内 容 を精査し、中間的なメルクマールをより定量的に精緻化し、また、上位目標の達成 に向けて不足の部分を補完する技術開発や実証事業を必要なタイミングで導入し ていかなければならない。 82 技術開発委員会 委員名簿 委員長 九州大学 炭 素 資 源 国 際 教 育 研 究 センター 特 任 教 授 持田 勲 技術開発部 徳下 善孝 出光興産㈱ 販売部石炭・環境研究所 藤原 尚樹 新日鐵住金㈱ 技 術 開 発 本 部 プロセス研 究 所 プロセス技 術 部 小水流 広行 幹事長 電源開発㈱ 幹事 (一 財 )電 力 中 央 研 究 所 エネルギー技 術 研 究 所 燃 料 高 度 利 用 領 域 白井 裕三 ㈱ IHI 電力事業部 氣駕 尚志 川崎重工業㈱ 技術開発本部 原田 英一 バブコック日 立 ㈱ エネルギー本 部 四方 哲夫 三菱重工業㈱ エンジニアリング本 部 電 力 プロジェクト総 括 部 橋本 貴雄 三 菱 マテリアル㈱ 資 源 ・ リサイクル事 業 本 部 資 源 事 業 部 資 源 技 術 部 権田 哲夫 伊藤忠商事㈱ 石炭部 井川 拓人 宇部興産㈱ エネルギー・環 境 事 業 部 本郷 孝 JFEスチール㈱ 本 社 コークス技 術 部 花岡 浩二 新 日 鉄 住 金 エンジニアリング㈱ 戦 略 企 画 センター クリーンコール事 業 推 進 部 水野 正孝 ㈱神戸製鋼所 技 術 開 発 本 部 石 炭 エネルギー技 術 開 発 部 重久 卓夫 中国電力㈱ 電源事業本部 火力機械技術担当 国広 哲生 千代田化工建設㈱ 技 術 開 発 ユニット 環 境 技 術 開 発 セクション 服部 圭輔 電気事業連合会 技術開発部 山中 芳之 東京電力㈱ フュエル&パワー・ カンパニー火 力 部 火 力 エンジニアリングセンター 長 井 輝雄 ㈱ IHI エネルギー・ プラントセクター 小林 和典 日揮㈱ 電 力 ・ 水 事 業 推 進 部 JCF グループ 須山 千秋 ㈱ 日 立 製 作 所 電 力 システム社 火 力 事 業 部 IGCC 推 進 本 部 長崎 伸男 バブコック日 立 ㈱ 篠塚 昇 三 井 松 島 リソーシス㈱ 田中 務 三 菱 商 事 RtM ジャパン㈱ 一 般 炭 本 部 一 般 炭 ビジネスユニット 吉田 潤一 三菱重工業㈱ 技 術 総 括 本 部 イノベーション推 進 部 宮本 豊 釧 路 コールマイン㈱ 保安生産部 市原 義久 リオティントジャパン㈱ 須藤 照久 (一 財 )日 本 エネルギー経 済 研 究 所 電 力 ・ 石 炭 ユニット石 炭 グループ 佐川 篤男 双日㈱ 杉山 好隆 委員 技術開発室 エネルギー本 部 石炭・原子力本部 石炭開発部 (一 財 )エネルギー総 合 工 学 研 究 所 小野崎 正樹 ㈱ ケーコール/K-Coal Co.,Ltd. 牧野 英一郎 83 事務局 (一 財 )石 炭 エネルギーセンター 技 術 開 発 部 部長 柴田 邦彦 参事 原田 道昭 JAPAC 参事 吉村 宇一郎 事業化推進部 部長 大島 弘信 資源開発部 部長 上原 正文 技術開発部 CCT グループ長 橋本 敬一郎 部長代理 村上 一幸 上席調査役 牧野 啓二 課長 林 石英 職員 齊藤 智直 以上 84
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