(2015 年 12 月号掲載) 賃金引き上げ・人員確保などに関する調査 ~県内企業アンケート~ 群馬経済研究所主任研究員 ~要 齊藤由香 約~ 1. 当研究所は 2015 年5~6月、県内企業を対象に ①賃金引き上げの状況、②人員確保 をめぐる問題、等に関するアンケート調査を行った。以下は、その結果の概要である。 2. 回答企業の7割は、定期昇給等を含む「賃金引き上げ」を実施済か今後実施する意向 である。 3. 賃金引き上げの内容をみると、8割強が「定期昇給」を、5割前後が「ベースアップ」 や「夏のボーナスの増額支給」を、「行った(行う)」と回答している。 4. 賃金引き上げの理由には、 「企業業績」、 「人員の確保」、 「世間の動向」等が挙がってい る。 5. 人員に「不足感がある」とする企業は4割強に達し、また、2014 年度の離職者が前年 度比「増えた」は2割強となっている。なお、離職理由では、 「転職」が最も多く、次 いで、「定年退職」、「業務への不適合」などが多い。 6. こうした人員不足に対して企業は求人を増やしているが、募集の対象となっているの は、主に「既卒・転職者(同業経験者)」、「新卒者」、「既卒・若年転職者」である。 7. 人員を確保する上で特に問題を感じることでは、 「求人難」や採用した人員の「教育・ 戦力化」が挙がっている。 8. 今回の調査によれば、人材不足のなか、企業は人員補充や教育・戦力化に困難を抱え ている。人材養成に時間がかかることを考えると、業務に習熟する人材の流出を食い 止めることが先決であり、そのためには、賃金や勤務条件の見直しが必要かもしれな い。 9. また、離職者が増えた主な理由には「定年退職」も挙がっている。一般に、健康寿命 が延びているなか、来年5月末までに現政権が「日本一億総活躍プラン」を策定する 予定ともなっている。能力や意欲のある高齢者の活躍を図るために、定年退職時期の 延長や定年退職制度の抜本的な見直しを行うことも、企業にとって、有効な人員確保 対策となりうるのではないだろうか。
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