廃棄物の資源化①竹コンポストの開発

廃棄物の資源化①竹コンポストの開発-福島県の復興をサポート
日本各地で放棄竹林が問題になっています。竹林の適正管理には、竹の間引きが必須ですが、放射性
物質による汚染が深刻化している福島県の放棄竹林では、竹幹の放射性セシウム濃度が高いことから
大量の廃棄物処理が課題となっていました。そこで、間引竹を煮沸処理によって放射性セシウムを低減
化する小松崎らの技術シーズ
1)
を導入して放棄竹林を整備することでタケノコの増収をはかりながら、間
伐竹材を再資源化する研究を行っています。このプロジェクトでは福島県内の民間会社との共同研究と
して二本松市内の放棄竹林を整備し、タケノコの生産を再開させるだけでなく、これまで廃棄物として処
分されていた竹材を副資材をいれてコンポストにし、有用な農業資材として製品化することをめざしていま
す。
1) 二本松市内から採取した竹を粉砕・パウダー化した後煮沸処理することで、放射性セシウム量が
74%低減した。さらに竹粉に米ぬかなどの副資材を混和させ発酵させた結果、原材料のみに比
べて放射性セシウム量を 70%低減した。同手法を福島県内のハウス内で実施したが、冬季におい
ても十分な発酵温度を確保し、放射性セシウム量が基準値を大幅に下回る発酵竹粉コンポストの
作成に成功した。これらのコンポストは、従来法に比べて十分な作物養分をもち優れた特性を保持
することが明らかとなった。
煮沸なし+米ぬか+好気性発酵
煮沸あり+米ぬか+好気性発酵
竹のみ、煮沸なし+好気性発酵
竹のみ、煮沸あり+好気性発酵
煮沸なし+米ぬか+嫌気性発酵
煮沸あり+米ぬか+嫌気性発酵
竹のみ、煮沸なし+嫌気性発酵
竹のみ、煮沸あり+嫌気性発酵
図:異なる処理をしたコンポストを4つの割合(0g, 50g, 100g, 200g)で入れたコマツナの栽培試験結果
今後の展開:福島の復興事業として開始したプロジェクトですが、放棄竹林の問題を解決するためにも、
発酵竹粉コンポストの効果を広く知っていただき、実用化・製品化に関心のある企業・団体とのマッチング
を希望します。
廃棄物の資源化②廃棄食品残渣の肥料品質価値の解明とその利用拡大
日本では年間約 1700 万トンの食品廃棄物が排出されています(一人あたり 134kg/年)。食品廃
棄物のリサイクル方法のひとつとしてメタン発酵処理がありますが、県内にあるバイオガスプラントから発生
するメタン発酵残さを有用な堆肥として再資源化するための共同研究を日立セメント株式会社と行って
います。現行の食品廃棄物のメタン発酵後に乾燥・発酵させた堆肥は重度の臭気をもち、扱いにくいた
め、他の有機資材と混ぜ込んでにおいを抑えること、その出来上がった堆肥の利用特性を明らかにするこ
とを目的としています。廃棄物として処理されていた食品残渣の堆肥に副資材として、同じ食品廃棄物
であるコーヒーかすを使って脱臭できないか調べてみました。ローストし、粉に挽かれたコーヒーは多孔質で
悪臭の元となるアンモニア吸着作用が期待できます。このプロジェクトではコーヒーかす等を混合してコンポ
ストにし、重度の臭気を抑え、有用な農業資材として製品化することを目指しています。
1) 臭気調査
日立セメントより持ち込まれた食品廃棄物残さの堆肥(通称 HI コンポスト)に有機資材のコーヒーかすを混ぜただ
けの物、コーヒーかすと混合し 2 週間発酵させた物、芝を混ぜ込んだ物、キトサンを混ぜ込んだ物を HI コンポストの
み、コーヒーかすのみの 6 種類のにおいを検査した結果、コーヒーかすを混ぜ込んだ物の臭気強度が大幅に低減す
ることがわかりました。
臭気指数
コーヒー粕コンポスト(発酵2週間)
コーヒー粕コンポスト
コーヒー粕のみ
放線菌コンポスト
芝コンポスト
HIコンポスト
0
200
400
600
800
1000
2) 発酵温度
コーヒー粕を混ぜ込んだ堆肥をハウスの中で発酵させ温度変化を 2 週間かけ計測したところ、平均温度が 49.3℃、
最高温度が 62.0℃なり、発酵・熟成するのに十分な温度を維持できました。
今後の展開:このコーヒー粕の堆肥が作物の成長にどのような影響を与えるか調査してゆき、HIコンポストが製
品化できる条件を探っていきます。HIコンポストを利用してみたい農家の方やHIコンポストの販売を希望する企
業とのマッチングを期待しております。
連絡先:茨城大学農学部付属フィールドサイエンス教育センター
小松崎 将一
Email: [email protected]
TEL: 029-888-8707