学級経営 ここ が 知りた い う思います。 今回は、それらを育む学校という環境をどう整えるか、 すぐれた成果を挙げた実践校に学びます。 先 生 方の声から 見えてくるもの 体方策を整理して紹介します。 学 校が﹁一枚 岩 ﹂になるための具 前述の依佐美中の実 本稿では、 践・研究を中心に振り返りながら、 本誌19・20号では教師と子ども、子ども同士の関係づくりを考察しました。 著書に 『時々、オニの心 が出る子どもにアプローチ 学校が するソーシャルスキル・ トレーニング』、 『 時々、オニの心 が出 る子どもにアプローチ2 気になる子に伝わる言葉の 番付 表( 』明治図書) 、 『 教室でできる特別支援教育 子どもに学 んだ 「王道」 ステップ ワン・ツー・スリー』 (文溪堂) 、編著書に 『気になる子への支援のワザ』、 『 気になる子の保護者への 支援術』 (教育開発研究所) 、 『 特別支援教育に生かせるカ ウンセリング』 (ぎょうせい) 、 ほか多数。 ﹁ 全 校 共 通の実 践・研 究に向かう 平 成 年 月の研 究 発 表 会 後 、依 佐 美 中の 先 生 方 に 対 し 、 で 、そ れ ほ ど 負 担 を 感 じ る いう 短い時 間で 取 り 組 むの ●﹁よさっぴタイム﹂は 分と すばらしい実 践を 実 現し た 学 校のひみつ いちばん関心をもってい 私が今、 るのは、学 校 現 場 との﹁ 共同 実 践 に携わる者 として、あらためて私 は幸せだなと感じています。 これらの学 校には共 通 点があ ります。それは、学校が﹁一枚岩﹂ となった実 践・研 究が展 開されて いただくことで、 私の中に﹁仲間意 に、ある一定の期 間かかわらせて る学校に出合うことがあります。 るために、﹁ 苦 戦 ﹂を強いられてい 価値観 一人ひとり異なる経験、 をもつ教 師 集 団が﹁一枚 岩 ﹂とな いたということです。 識 ﹂が生 まれま す 。そして、研 究 研 究 ﹂です 。子 どもたち、先 生 方 を 終 えたあ との達 成 感・充 実 感 家族が登山をするとき、 例えば、 父親が日帰りでの登山を考え、 母 が 他の何 ものにも 代 えられない ただいたことは、 私にとって大きな 佐美中︶ に4年 間かかわらせてい 本 誌 号にて紹 介した愛 知 県 刈谷市立依佐美中学校︵以下、 依 結局、 どういう行程なのか見通し 行 きたいとは思 わないでしょう 。 であっても、子 どもは登 山になど ﹁頂上に登る﹂というゴールは同じ 親が途中一泊しての登山を考え、 財 産 となり ました。大 学 教 員に がもてず、両 親の言い争いばかり ほどすばらしいからです。 なって8年、 これまで、各地の学校 が聞こえてしまうからです。 中 学 校、 石川 県 小 松 市 立 蓮 代 寺 小学校、 同 員弁東 小学校、 同 藤原 北小学校、 三重県いなべ市立山郷 続けるならば、 子どもの成長は足 ぞれのやり方で子どもの前に立ち じであっても、個々の教 師がそれ 学 校の実 践・研 究 も同じです。 ﹁子どもを育む﹂というゴールは同 両親の考えがまとまらなければ、 と﹁共同実践研究﹂に取り組んで 小 学 校、 三重 県 亀 山 市 立 神 辺 小 踏みをし、歩みのあ との達 成 感・ き ました。愛 知 県 岡 崎 市 立 矢 作 学 校、 三重 県 東 員 町 立 城 山 小 学 充実感は、 子どもも教師も十分に 先 生 方の声にある﹁ 主 題 全 体 会で各部会の話し合いの場と発表 の場を設け、 職員の意識を高め共 通 理 解を図ることができた﹂ ﹁各 部 会の話し合い、報 告 という 流れ で、 トップダウンではなく自分たち なれた﹂という声が、 そのことを物 で実 践 を 創 り あ げている意 識に ●﹁よさっぴタイム﹂を時間割 語っています。 ことで、 学校を挙げて行ってい る感覚になった。 元 中 学 校 長である門 脇 氏 は、 勤務校の実践が﹁一枚岩﹂ になった ﹁してみせる﹂ 自ら 生徒、 教職 訪問してくださり、 経 験を振り 返り、 ﹁ 学 校 には 校 長、 教頭とは別に中堅の旗振り役 が必要です。先頭に立って、 額に汗 す るベテランが 必 要です ﹂︵ ※ ︶ と 述べていま す 。依 佐 美 中では、ま さにその ﹁旗振り役﹂が教務主任、 からこそ 、その背 中 を 見 続 け た 研 究 主 任であり、 その他﹁ 額に汗 意識づける 依 佐 美 中が﹁チーム依 佐 美 ﹂と して動 くことができるようになっ 若手が育ち、﹁一枚岩﹂となり得た せる﹂ことを日 常 的に行っていた する﹂ ベテランの先生方が﹁してみ たのは、 リーダーである校 長 先 生 のでしょう。 された﹁主題全体会﹂ の存在が大 の声かけとともに、 定期的に開催 1常に ﹁チーム○○﹂ と ● 学 校 が﹁一枚 岩 ﹂ に なるための具体 方 策 員に心から接してくださった。 ● 曽 山 先 生が何 度 も 当 校 を 2管理職、 ミドルリーダーが、 ● 全校一斉で行った に組み込み、 三つ。これを全員が徹底した。 きいと思われます。 校等々、 いずれもすばらしい学校、 ●どんなに忙しいときでもや は得がたいのではないか⋮ 私はそ ● 校 長 をはじめ、上の立 場の ると決めた﹁よさっぴタイム﹂ 子どもたち、先 生 方でした。教 育 方 が 忙 しい中 がんばっている ついていこうと思えた。 ●ベテランの先 生 方の研 究に 対 する前 向 きな姿 勢が若 手 の先生たちに影響を与えた。 ことがで き た 理 由 ﹂を 問 うアン ことなく継続可能であった。 ●﹁よさっぴタイム﹂の内 容が シンプルで、誰 もが 行 える 手 軽なものだった。 ●現職研修で我々自身がソー シャルスキル・トレーニング ︵SS T︶ の楽しさを実感できた。 ●4月のスタート時に研究方 針を全職員で確認し、﹁よさっ ぴタイム﹂のやり 方 を皆で体 験する研修を行った。 ●﹁よさっぴタイム﹂ のルールは に継続して取り組んだ。 曽山 和彦 のがよく 見 えたので、自 分 も 名城大学大学院 大学・学校づくり研究科および教職センター 教授 ケートへのご 協 力 をいた だ き ま した。以下は回答の一部です。 ●校長の ﹁みんなでやろう﹂と いう声がとても励みになった。 ● 主 題 全 体 会で各 部 会の話 し 合いの場 と 発 表の場 を 設 け、 職員の意識を高め共通理 解を図ることができた。 ● 各 部 会の話し合い、報 告 と トップダウンでは いう 流れで、 な く 自 分たちで実 践 を 創 り あげている意識になれた。 20 20 * 学校が『一枚岩』 になるための具体方策 学校が『一枚岩』 になるための具体方策 * 21 10 1 3 26 そやま かずひこ*群馬県桐生市出身。東京学芸大学卒業、 秋田大学大学院修士課程修了、 中部学院大学大学院博士 課程修了。博士 (社会福祉学) 東京都、秋田県の養護学校教諭、秋田県教育委員会指導 主事、管理主事、名城大学准教授を経て現職。学校心理 士。ガイダンスカウンセラー。上級教育カウンセラー。学校に おけるカウンセリングを考える会代表。 10 学校が『一枚岩』 になるための 具体方策 2 ※門脇將元『心得て候』飛鳥出版室 1998年 66p ここ が 知りた い 学級経営 の5時限目の前、10分間を活用して主に担任が実施するもの により進められます。 で、3つのルール「お願いします&ありがとう」 「うなずいて聴 一方、SGEは、主に実存主義、ゲシュタルト理論をベースに く」 「指示をしっかり聴く」にのっとり、4人グループで行うこと した「感情の教育」 であり、 「インストラクション (言語教示)→エ を基本としています。 3目的達成に向けた手段は ● ﹁シンプル・おもしろい・ ものとする ためになる﹂ はかつて病 弱 養 護 学 校に勤 私 務していたとき、 生徒の ﹁関係づく り﹂ のために、 構成的グループ・エン カウンター ︵SGE︶を活用した学 級 活 動 を 行ったことがあ り まし た。当時、 私の頭の中には、﹁エンカ ウンターは絶対におもしろいし、 た めになる﹂という考えのみがあり、 ﹁シンプル﹂という視点は抜け落ち ていました。その結果、 人とのかか わりが苦 手な生 徒には心 理 的な 負担を与え、 教材等の準備に多く の時 間 を割かれた私 自 身、 アップ ハーサル(実行)→フィードバック (評価)」 という一連の流れ 人が一人でもいるとチームは機能 じ まないのでやり ません﹂という まったのに、﹁私はそのやり方がな ﹁ 今 年はこ 話し 合いを 通して、 れをやっていき ましょう!﹂と決 耳に届いたこともあります。そう にはなじまない﹂という声が、 私の ていたわけではありません。 ﹁自分 依佐美中の先生方も全員が最 初から﹁よさっぴタイム﹂に賛成し うミドルリーダーが先 頭に立 ち、 ﹁ 毎 週 月 曜日5時 限 目 開 始 前の ども 理 解、授 業づく り 等々、 さま 月 開 催の公 開 研 究 会に向 け 、子 できたといえるでしょう。 枚岩﹂ への一歩 を踏み出 すことが 分 間 を使い、全 校一斉に実 施 ﹂ という 枠 をつくったからこそ、 ﹁一 ました。その席では、 お互いが主張 が始 まるのですから、 ﹁さ すがに には、全 員での意 見のすり合わせ たが、 ある一定の期 間を経たあと のような教 師 集 団ではあ り まし ﹁ 特 別 支 援 教 育 ﹂という 自らの専 培われた﹁生徒指導﹂ ﹁教育相談﹂ 身、 これまでの研究や実践によって 育 成に関 心をもっています。私 自 もが、 よりよい学校づくり、 子ども 大 学 教 員、教 育 委 員 会 関 係 者 等、教 育に携 わる者であれば、誰 し合い、意見が平行線のままでま 先生方はプロ!﹂と思いました。 門分野を活かし、 学校の役に立ち とまらないこともしばしば⋮。そ 皆 が 足 並 み を そろえる と、 ﹁チーム﹂という 車のスピードは加 たいという思いが強くあります。 5外部の専門家を活用する ● ざまに意 見 交 換をする場をもち 主任を務めたときでした。毎年6 私が﹁チーム﹂の力 を強 く 感じ たのは、 かつて大 学 附 属 校で研 究 した中、教 務 主 任、研 究 主 任 とい ています。 いう 流れがあったと、今、振り 返っ 論・技法を、生徒の実態に応じて組み合わせながら行う活動 速 し ま す 。附 属 校には、 ﹁やると ᔅߕᰴߩ㗄⋡߆ࠄ⾰ࠍߒ߹ߒࠂ߁ ᔅߕᰴߩ㗄⋡߆ࠄ⾰ࠍߒ߹ߒࠂ߁ 等で学 校 を 訪 問 する際 、校 長や 研究主任の先生方に、﹁必要なら ば、 どうぞ、 私の口を使ってくださ い。先 生 方の考 え をお 伝 えし ま す﹂と話すことがあります。 専門性によって裏づけられた言 葉は、 より 重い響 き を伴って伝 わ りやすく、﹁一枚岩﹂ づくりへの背中 のひと押しになることでしょう。 私 が、依 佐 美 中の実 践に共 同 研究者として4年間かかわらせて ④「皆はうなずき名人だね」 (フィードバック) という展開となります。 という展開になります。 う (シェアリング) お声をかけてください。 役に立てることがあれば、 いつでも 提供できたでしょうか⋮。私でお ﹁一枚岩﹂になるヒントを少しでも とめてみました。皆さんの学 校が 依佐美中とのかかわりの 以上、 中で学んだことを、私の言 葉でま ***** でしょうか。 に積極的に声をかけてみてはどう いただいたように、外 部の専 門 家 じた?」等を問いかけ、お互いの気づきを分かち合 アップの状態に陥ったことが、 今も 苦い思い出 として 時々思い起こ されます。 本 誌 号にて紹 介した依 佐 美 中の﹁よさっぴタイム﹂は、﹁シンプ ル・おもしろい・ためになる﹂という 三拍 子がそろった活 動です。だか らこそ、 依佐美中の先生方が、﹁よ し、私 も!﹂と足 並みをそろえや すかったといえるでしょう。 4やると決めたことは ● 「よさっぴタイム」は、 この二つの集団カウンセリングの理 SSTは、主に行動理論をベースにした「行動の教育」であり、 しません。 全員で徹底する のねらいを統合した短時間グループアプローチ」のことです。 決めたことは文 句 を 言 わずにや ޔ╬ޠߩߥ߁ߘޔ∼߂߳ޟ ߁ߥߕߡ╵߃ࠍ⡬ߊ ٨╵߃ߦߊ߽ߩߪࡄࠬ1㧒ߟ߆ߟ⒟ᐲ㧓 ン後、 「どんな自分に気づいた?」 「体験して何を感 ٨⽶ߌߚੱߪޔ ⾰ޓߦ◲නߦ╵߃ࠆ 一方、SGEとして活用するならば、質問ジャンケ どうぞ ご覧 くださ い 曽山先生ホームページ・メールアドレスなど ● KAZU・和・POCKET HP http://www.pat.hi-ho.ne.jp/soyama/ e-mail ● [email protected] Blog ● Today's Pocket http://kazuencounter.blog.fc2.com/ きの分かち合い)」 という一連の流れにより進められます。 同じことを言うとしても、 校内 からの声 と外 部 からの声では響 ③質問ジャンケンを行う (リハーサル) 第4章 紙上再現 自尊感情とソーシャルスキルを育む授業 クササイズ(心理的課題を用いた演習)→シェアリング(気づ ル・トレーニング (SST) と構成的グループ・エンカウンター (SGE) る。その実践を経た上で、 年度末、 ②うなずいてみせる (モデリング) 第3章 です。 「よさっぴタイム」の活動は、各学級、毎週1回、月曜日 「インストラクション(言語教示)→モデリング(模範提示)→リ 22 * 学校が『一枚岩』 になるための具体方策 学校が『一枚岩』 になるための具体方策 * 23 きは大切だね」 と伝える (インストラクション) 教室でできる特別支援教育 実践 へのアプローチ B5変型判 120ページ 2色刷 本体1,600円+税 文溪堂 教室でできる特別支援教育 「王道」 ステップ1・2・3 ⾰ࠫࡖࡦࠤࡦ 「王道」 「 王道」ステップ ステ テップ ワン・ツー・ス スリ リー ワン スリー 「よさっぴタイム」 とは、依佐美中が考案した「ソーシャルスキ き方が違います。私は、校 内 研 修 子どもに学んだ ①「相手がうなずくと話しやすくなるでしょ? うなず 第2章 ߪ! ٨り㧒٤٤⋵٤٤Ꮢ╬㧓 ٨ⴕߞߡߺߚᄖ࿖ߪ! ٨ᅢ߈ߥ㘩ߴ‛ߪ! ٨ᅢ߈ߥ࠹ࡆ⇟⚵ߪ! ٨ᐲߩᣣᦐᣣߦߒߚߎߣߪ! ٨ᅢ߈ߥ⧓⢻ੱߪ! 教室で 教室でできる特別支援教育 室でできる特 室でで でで で ででき でき で できる きる特別支援教育 きる き きる特 る特別支 る特 る特別 特別支援 特 特別 別支援教 別支援 支援教育 支援 教育 教育 えば、 ターゲットスキルを「うなずき」 として、 第1章 「教室でできる特別支援教育」の 基本的な考え方 判型 ページ 定価 発行 質問ジャンケンをSSTとして活用するならば、例 Contents の進め方 質 問 ジ ャ ン ケ ン ٨ࠫࡖࡦࠤࡦߢൎߞߚࠄߟߛߌ⾰ߔࠆ ٨ࡍࠕߢ߁ᤨ㑆ߪ ⑽ޓ ٨ฬ೨ߩવ߃ޔ ߪޠߊߒࠈࠃޟ ޓᔅߕ⸒߁ 「軌跡」が「奇跡」を生む! 明日からでも 「教室でできる」 ! よさっぴタイム 皆で実践を検証する場をもつ﹂と 曽 山 先 生 著 書 の ご 紹 介 10 演習 20
© Copyright 2024 ExpyDoc