昭 和46年8月20目 343 S-typhLmuriumに よ る菌 血 症 に つ い て 公立学校共済組合東海中央病 院 外 1. 科 飯 田 夫 は じめ に わ れ わ れ が 昭 和42年4月 ∼46月3月 まで に下 痢 で,赤 痢 ル モ ネ ラ菌 を 分 離 培 養 し た 件 数 は21件 で あ る.そ の 内 訳 に つ い て は 赤 痢 菌(sonnei flexnel 5件)8件,S-typhosa 1件,S-typhi-murium 腸 炎 治 療 中 に,口 吐,全 谷 ハ)入 口 敏 夫 現 症:顔 院 時所 見 . 面 蒼 白,無 120/minute微 弱,血 欲 状,貧 血 状 を 呈 す.脈 圧 最 高80∼70,検 3件, 表1 検 査成 績(入 4件,S-enteritidis 8件 で あ る.特 渇,嘔 検 査室 入 院. 症 患 者 か ら 検 便 を 行 な つ た 数 は251件 菌,サ 忠 院時) に潰 瘍 性 大 身 倦 怠,嗄 声等を 主 訴 と した 患 者 に つ い て血 液 培 養 を行 なつ た と こ ろ,S-typhi-muriumが 分 離 培 養 され 本 菌 に よ る 菌 血 症 と考 え ら れ る症 例 を 経 験 した. 一 般 に1)S-typhi-muriumは い わ ゆ る 急 性 胃腸 炎 の 原 因 と し て 重 要 で あ り,人 に チ フ ス性 疾 患 を 起 こ さ な い と考 え ら れ て い る. ま た 国 内 の 文 献 を 調 査 し て も,杉 「Salmonella-thompson」,上 松4)ら に よ る 「Sal- monella-montevideo」,井 muriumに 上2)ら に よ る 「S-tyhi- よ る 敗 血 症 」(1971)の 度 で,S-typhi-muriumに な く,興 林3)ら に よ る 報 告 が あ る程 よ る菌 血 症 は 極 め て 少 味 あ る症 例 と考 え られ る.そ の臨 床 所 見 と細 菌 学 的 検 索 の 概 要 に つ い て 報 告 す る. 2. 臨床所見 ,59才,♂,職 イ)既 業:農 往 歴 昭 和37年:十 二指腸潰瘍 昭 和44年6月:胃 昭 和45年3月 潰瘍手術 ∼4月16日:潰 退 院 後 通 院 治 療 中,他 ロ)現 瘍 性 大腸 炎 入院 特 記 事 項 な し. 症 歴. 昭 和45年9月19日 渇,嘔 表2. 治 療 及 び熱 型 業 吐,全 朝 食 後30分 程 し て,下 身 倦 怠,嗄 声,脈 痢,口 拍 緊 張 弱 い,血 圧 (注)矢 最 高80∼70程 度 の シ ョ ッ ク 状 態 とな り,9月21日 印=S-typht-murium検 出 拍 査成績は 感 染 症 学 雑誌 344 表1に 院後 の経 過 . 熱 型 お よ び 治 療 は 図2の 10月2日 腋 下 に 棒 状 の 熱 感,疼 硬 結 を 認 め た.5日 が,効 東 芝 製 サ ル モ ネ ラ因子 血 清 に よる血 清 学 的 検 査 通 りで あ る. の結 果 は下 記 の通 りで あ る. まで大 腸 炎治 療 の為 サ ラ ゾ ピ リンを使 用 し て き た が,右 間AB-PCを 果 な く1日2gの 0混 合 ス ラ イ ド凝 集 反 応(+) 痛 の強 い B混 合 ス ラ イ ド凝 集 反 応(+) 使 用 し て きた H抗 原:b(-)i(-)で ケ フ レ ックス に ご移 行,2 2. 日)便 レ の方 法 で3回 継 代 培 養 す る事 に よ り運 動 の活 発 な 菌 を選 択 した. この1菌を普 通 寒 天 培 地 に分 離 培 養 し,そ の集 落 養 に よ つ てS-typhi- 検 出 し た. に つ い て,H抗 昭 和45年10月5日(17病 ャ ボ トル1号,2号 日)血 液 培 養,カ 液 平 板,SS,BTBに れ た. 養 ○ ヴ ィダ ー ル反 応(発 病 後20日 経 過 した 時 点 の よ る分 離 培 養 に お 純 培 養 と して 検 出 され 成 績 で あ る). た。 如 く,カ ル チ ャ ボ トル1号 ら分 離 さ れ た 菌 はSalmonella標 お よ び2号 準 株(愛 か の は 本 人 の み で あ つ た.4人 腸 チ フス 菌A抗 原 80倍 腸 チ フス菌B抗 原 80倍 腸 チ フスー 菌O抗 原 Vi抗 原(バ レラ ップ菌v形) 知 衛 研) と 同 様 な 培 養 所 見 を 示 し て い る. な お 家 族 調 査 を 行 な つ た が,下 応 は検 査 で き なか つ た が,退 の 家 族 に つ い て,便 天 培 地:分 地:分 子=イ 子=乳 院 後19日 経 過 した 時 点 の 血 清 と 分 離 菌 との 凝 集 反 応 は4倍 で あつ 表3 各 種 分離 株 の 生物 学 的性 状 SIM培 40倍 20倍 以下 な お 入 院 中 の患 者 血 清 と患 者 分 離 菌 との凝 集 反 痢 症 状 を訴 えた か ら セ レ ナ イ ト増 菌 培 養 法 で,S-typhi-muriumの (注)TSI寒 原 の因 子 血 清 で凝 集 反 応 を み る と 今 ま で凝 集 を 示 さな か つ た “i”に凝 集 が 認 め ら ルチ の 何 れ に も,37℃48h培 い て,S-typhi-muriumが レギ ー 天 培 地 の何 の 培 養,セ 地,BTB寒 れ に お い て も,37℃18h培 表3の 原 は い ず れ も陰性 で あ つ た.以 上 の所 見 か ら鞭 毛 の発 育 が 悪 い為 と考 え,ク 昭 和45年9月21日(第3病 後,血 で あ るが,H抗 細菌学的検査 養. ナ イ ト増 菌 培 地,SS培 muriumを あ る. 上 記 の如 くH抗 原 に凝 集 を認 め れ ば 同定 も可 能 日 目 に は 熱 は 下 降 し46病 日 を も つ て 退 院 し た. イ)培 第8号 検 出 に努 めた が,陰 性 で あつ た. ロ)血 清 学 的 検 査 示 し た 如 くで あ る. ニ)入 第45巻 糖 分 母=ブ ン ドー ル 反 応 糖,白 分 母=運 ドウ 糖 動 性. 345 昭 和46年8月20日 た. で な く,血 ハ)感 受 性 試 験 液 中 よ り分 離 培 養 さ れ た も の と 考 え, S-typhi-muriumに よ る 菌 血 症 と 診 断 し た. 糞 便,血 液 か ら分 離 され た 菌 の感 受 性 試 験(デ ィ ス ク法)は 5. 全 く同1じ成 績 で あ る.CM(+++) る菌 血 症 の 一 例 に こつ い て,臨 (++)CER(+++)KM(+++)な お岐阜県衛生研 身 倦 怠,嗅 声 等 を 主訴 と した患 者 の 糞 便 か ら, S-typhi-muriumが 検 出 され,17病 日 目にS-typhi- 文 1) れ わ れ は再 度 生 物 学 的 性 清 学 的 性 状,形 態 等 再 吟 味 した.然 589, 昭 和36年 菌 も,全 く同 じ性 状 を示 した.し た が つ てわ れ わ 献 臨 床 診 断 微 生 物 学, 朝 倉 書 店, (1961) 井上 3) 感 染 症 学 雑 誌. Vol.45, No.129, 昭 和46 杉 林 篤 之 ほ か: Salmonella-thompson感 4) (1968). 上 松 一 郎 ほ か: 1例, し カル 何 れ の培 地 か ら検 出 され た 佐 々 木 正 五 ほ か: 2) と して 重 要 で あ り,人 に チ フス症 を起 こ さな い と チ ャ ボ トル1号,2号 た 確 認 して い た だ い ま す. で あ る.分 離 培 養 され た菌 は,急 性 胃腸 炎 の原 因 状,血 釈 法)等 た だ き ま した 大 阪 市 立 桃 山 病 院 谷垣 利 幸技 官 に 感謝 よる菌 血 症 が 発 生 した と思 わ れ る症 例 考 え られ て い る為,わ 受 性 試 験(稀 た 岐 阜 県 衛生 研究 所 後 藤 喜 一 技 官 及 び 文献 等 御 指 導 い 察 潰 瘍 性 大 腸 炎 治 療 中 の患 者 に,嘔 吐,口 渇,全 muriumに よ 検 索 の成 御 校 閲 を い た だ い た 永 田 育 也 教 授 に 感 謝 し ま す.ま 菌 種 の 同 定,感 るが,ほ ぼ 同一 の成 績 を 得 て い る. 床 経 過,菌 績 に つ い て 報 告 し た. 究所 に こお い て,希 釈 法 で 感 受 性 試 験 を 行 なつ て い 考 括 極 め て 稀 有 と 考 え て い るS-typhi-muriumに TC(+)SM(+)CoL(+++)PcA(++)ND 4. 総 勉 ほ か: S-typhi-murium敗 血 症 の1例, 日 本 伝 染 病 学 会 誌, Vol.42, 治 療, No.57 Salmonella-montevideo診 (1971) 染症の No.7, 207 断 と (3) 166∼170. れ は,こ れ らの菌 に つ い て外 部 か ら混 入 した も の Bacteraemia Due to S-Typhi Murium Tadao IDA Department of Surgery, Tokai Chuo Hospital Toshio TANIGUCHI Department of Clinical Laboratory Tokai Chuo Hospital A case-report was presented as in incidence of bacteraemia due to S-typhi murium during the treatment of ulcerative colitis. The major symptoms consisted of thirst, vomiting, generalized fatigue and huskiness. The diagnosis was made by bacteriological blood culture to find S-typhi murium. Generally, S-- typhi murium may cause an acute gastroenteritis without any thphoid symptom in man, and in the past only several cases were reported in Japan. findings and bacteriological procedures. In this paper the detailed description was made as to clinical し
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