1 調査概要

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調査概要
市内中小製造業(主に製造業)における IT 化の実態をより詳細に把握する
ためアンケート調査を実施した。
調査の概要は以下のとおりである。
■調査方法
企業への訪問による聞き取り調査。
■調査期間
平成 14 年 11 月下旬∼平成 15 年2月中旬。
■調査対象
アンケート調査結果より,IT 化に関心を持ち,積極的に推進している企
業を抽出。
■対象件数
25 件
■調査内容
会社概要,IT 化の概要,IT 化の経緯,IT 化の今後の方向,IT 導入に関
する問題点 等。
なお,本調査の一部には調査員の力量不足を補完するため,
「川崎市地域 IT
推進協議会」の委員3名が順次同行した。
次ページ以降に調査結果を掲載する。
ムダの削減,社内改革の推進に IT 化を有効活用
事業所名
所在地
業務内容
最上テック㈱
中原区下沼部
従業員数
24 名
応対者
鈴木社長
大型配電盤の設計,製作。電機メーカーや鉄鋼メーカー等工場で使用される大型
配電盤を得意とする。
業 務 概 要 等
■主たる設計・製造は山形工場で
・平成 4 年に山形工場を設立。設計・製造部門として,売上の 75∼80%を担っている。従業
員 24 名のうち約半数が山形工場の社員。
・現在,売上の約 70%を大手電機メーカーに依存。その他は大手鉄鋼メーカーなど。
■特別高圧用配電盤を得意とする
・配電盤の 9 割は,6KV まで。当社では,30000KV など特別高圧用の配電盤(特高盤)の製作
が可能だ。
・特高盤の製作ができるのは,日本では 30 社程度しかない。安全性などの面で,技術と実績
を要する難しい仕事だ。最近では,風力発電所用の配電盤などを請け負った。
・配電盤製作より仕事として多くなってきたのが,配電盤の改修に関わる業務だ。当社では
10 名ほどの改修部隊がおり,改修専門で全国を飛び回っている。改修の仕事は,他社設計
の配電盤を扱うため,それなりのノウハウを要する難しい仕事だが,利益率は製造よりもよ
い。
・その他,パソコンをシーケンサーの代用として使うための,制御ソフトの開発を行っている。
■創業後前期初めて売上減,だが今期は持ち直しそう
・創業 31 年だが,前期は初めて売上が前期比 18.5%減と落ち込んだ。今期は比較的大きな受
注が見込めそうなので,前々期程度まで盛り返すことができそうだ。
・景気は相変わらず低迷しているが,工場などの設備は一定程度の周期で更新しなければ維持
できなくなる。もう設備更新時期が限界に来つつある工場が多いとみられるため,それに伴
う需要は必ずあるはず。これからは受注が増えるものと期待している。
■社内改革断行でムダを削減
・景気の悪化を見越して,98 年ごろから社内改革を断行した。ムダをできるだけ少なくし,
数名のリストラも行った。社内のムダを探すため,主婦の社員の意見をどんどん採り入れた。
・IT 化の推進も,社内改革の流れの中で行った。
・こうした一連の社内改革は 01 年ごろから,徐々に効果を上げてきたが,社員の意識改革は
今一つという感じだった。
■社員のさらなる意識改革を目指す
・そこで昨年 6 月に,社員の意識改革をさらに進めるため,社長以下全社員の給料カットを行
った。意識改革をしっかりしたものにするため,今年は正念場となるだろう。
I T 化 の 概 要
■人材育成のため得意先へ出向させた人材が IT 化の大きな戦力に
・将来にわたって会社を維持していくためには,技術力の維持・向上と同時に未来につなげら
れるしっかりした考え方を持った人材を育成する必要がある。こうした考えから,12∼13
年前から 4 名の社員を得意先の大手電機メーカーに出向させた
・4 名のうち 2 名は,IT に精通した人材として,その後の IT 化にとって大きな戦力となって
いる。LAN の構築や ISDN の導入など,IT 化の提案を積極的に行ってくれる。
・昨年,インターネットを導入。メーリングアドレスは社員全員に配付。消耗品以外の物品,
たとえば棚やクーラーなど社内の備品は,インターネット通販を利用して購入している。
・ホームページは現在作成中だが,当社の場合売り上げ増にはつながらないと思う。当社の技
術レベルの高さを理解してもらうためには,相手の技術理解力が必要。どうしても限定され
た人しか対象にできないためだ。
・製造部門(山形)に CAD 導入済み。本社との図面のやりとりは ISDN 回線を使用。
I T 化 の 経緯
■コンピュータに慣れるためまずパソコンを 1 台導入
・平成 2∼3 年ごろ,社員をコンピュータに慣れさせるため,100 万∼120 万円程度を費やして
パソコンを 1 台導入した。当時のパソコンは,自分でプログラムを組むことが前提となって
おり,まともなアプリケーションは出回っていなかった。購入したパソコンにも簡単な表計
算ソフトが付属している程度だったため,実用的には全く役に立たなかった。
・平成 6∼7 年ごろ,山形工場に CAD システムを導入した。顧客の要請によるもので,ソフト
だけで 200 万円程度だった。この時,IT に強い人材を外部から山形工場で採用した。
・社内改革の流れの中で,電話や FAX の更新の必要が生じ,パソコンの導入や LAN の構築,ISDN
の敷設などを行った。
■3 年前 ISDN 導入で山形工場との通信でのデータ交換を実現
・ISDN の導入は 3 年前。それまでフロッピディスクで行っていた山形工場との図面のやりと
りを通信で行いたかったためだ。
■2 年半ほど前から社長が本格的にパソコンに取り組み始める
・社長が本格的にパソコンに取り組み始めたのは 2 年半ほど前から。
「パソコンとは何だろう」
という疑問がずっと以前からあり,実際に触ってみないと良し悪しの判断ができないと思っ
たため。
・まず Excel で表の作成を学んだ。やっているうちに面白くなってきた。事務の女性にも勧め,
業務を Excel でやるように仕向けた。
・女性事務員も最初はとまどっていたようだが,ご主人が大手電機メーカーの社員であるため,
いろいろと聞きながら熱心に学んでくれたようだ。意外な早さでマスターし,業務の Excel
化に取り組んでくれた。今では自社内で業務分析を行えるほどになったため,それまで顧問
契約していたコンサルタントとの契約をやめることができた。
■タイムカードと給与計算をリンクさせたシステムを導入
・その後,タイムカードと給与計算システムをリンクさせたシステムを導入し,現在まで使用
している。これは,山形工場のタイムカードリーダーから入力されたタイムカードデータが,
パソコンを経由しオンラインで本社の給与計算システムに出力されるというもの。
・データ入力と給与計算の手間が多いに削減され,また給与査定に情の入り込む余地がなくな
I T 化 の 今後の方向
ったため,導入効果には満足している。
・パソコンなどに関する社員のスキルは,もうほぼ十分だ。IT 化そのものについても,十分
で今はとくにやるべきことはないと思っている。
・今後は自社でプログラム開発を行っていければと考えている。
I T 導入に関する問題点
・議事録や売上,月次決算等の文書事務を統合的に行えるソフトが欲しい。
その他
■まずは新技術に取り組む姿勢が大事
・社長として,新しい技術に取り組む姿勢が大事だと思う。IT 化推進もそのひとつだ。新技
術に取り組む姿勢そのものがなければ,IT 化も進みようがない。
■「攻めないと守れない」常に攻める姿勢が重要
・企業経営者として,次世代に如何に繋ぐかということを常に念頭に置いている。ただし,攻
めないと守れない厳しい経営環境に置かれていることは間違いない。攻める姿勢を失わない
よう肝に銘じている。
・パソコンは記憶媒体,事務用機器として非常に有用だと思う。
ヒアリング調査報告 No.17
技術部長が,プログラミング・社内研修