夏季における霞ヶ浦を通る海風前線の特徴 環境気象気候研究室

夏季における霞ヶ浦を通る海風前線の特徴
環境気象気候研究室
5207086
薬師寺珠姫
<要旨>
本研究では、茨城県南部における海風の進入過程を観測を通じて明らかにすると同時に、
より広域の気象場との関係を調べた。研究対象地域は茨城県・千葉県北部・埼玉県東部で、
研究対象期間は 2010 年 7 月~8 月とした。観測は茨城県南部の霞ヶ浦周辺で行い、主とし
て鹿島灘からの海風の特徴を調べた。
まず、茨城県南部の霞ヶ浦周辺で観測を行った結果から気温の急低下、風向の東風系へ
の変化、風速の急増加が起きた日を海風日として抽出した。海風日は観測期間の 2 カ月の
間に 8 事例あり、これらの事例において海風前線の通過時に、気温は 0.4~4℃ほど急激に
低下し、風向は東風系の一定風向に変化し、また、風速は 1.5~2.5m/s 増加した。観測結
果から計算された海風の進入速度は、1.5~4.0 m/s であった。また、8 事例において同様
に AMeDAS データを用いて解析を行った。この解析例では、気温は 0.2~2.5℃低下し、風
向は東風系の一定風向に変化し、風速は 0.5~2.5m/s 増加した。AMeDAS のデータ解析から
求めた海風前線の進入速度は、茨城県北部、茨城県南部、千葉県北部では異なっていた。
茨城県北部では遅く、千葉県北部では速くなり、南北での違いが明らかになった。茨城県
北部での速度は 1.4~5.6m/s、茨城県南部では、3.0~10.0m/s、千葉県北部では、5.2~
11.6m/s であった。観測地域における観測結果と AMeDAS データで海風速度を比べると観測
から求めた海風速度の方が若干遅い傾向がみられた。これは、AMeDAS データの読み取り最
低精度や時間平均の問題があるためと考えられる。海風の進入範囲は茨城県北部では笠間、
茨城県南部では下妻、千葉県北部では、我孫子まで進入していた事例が多かった。
観測から求めた茨城県南部での海風の進入速度は過去の研究結果よりも遅くなってい
た。その原因として館野の 850hPa での上空の風をみると、上空の風向は主として西よりで
あることから、東よりの海風は進入速度が遅くなったと考えられる。また、茨城県北部は
300m 以上の山々があるために速度が遅くなり、茨城県南部、千葉県へと南になるにつれ平
坦な地形になっていくために海風の速度は速くなったため南北での違いが見られたと考え
られる。
キーワード:気象観測、海風、海風前線、気温、風向・風速