高精度電解加工システムの開発

開発項目
「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/革新的設計生産技術
次世代型
高性能電解加工機の研究開発」
「平成26年度
委託先名
~
平成27年度のうち平成26年度分中間年報」より抜粋
静岡理工科大学
1. 研究開発の内容及び成果等
(1)高 精 度 電 解 加 工 プ ロ ト 機 の 仕 様 検 討
超 硬 合 金 等 の 難 加 工 材 料 を 加 工 す る た め に 必 要 な 電 源 の 仕 様 を 検 討 し た 。加 工 実 験 の た め
の 実 験 装 置 を 製 作 し 、各 種 工 作 物 材 料 に 対 し て 加 工 実 験 を 行 っ た 。こ の 結 果 を 基 に 、プ ロ ト
機 の 電 源 仕 様 を 決 定 し た 。ま た 、電 解 加 工 の 加 工 性 能 に 影 響 を 与 え る 電 解 液 の フ ラ ッ シ ン グ
についても、実験装置を製作して仕様を検討した。
超 硬 合 金 の 電 解 加 工 は 過 去 の 研 究 で 、速 い 加 工 速 度 を 得 る こ と が で き 非 常 に 可 能 性 の あ る
技 術 で あ る こ と が 示 さ れ た が 、一 方 で 解 決 す べ き 多 く の 課 題 も 残 っ て い た 。そ の 中 で も 重 要
な 問 題 で あ る Co の 溶 出 現 象 を 防 止 で き る か ど う か に つ い て 、 ま ず 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果
電 解 液 中 に CoCl 2 を 添 加 す る こ と で Co イ オ ン 濃 度 を 増 し 、 両 極 性 電 源 で 加 工 を 行 う こ と で 、
超 硬 合 金 の 品 質 劣 化 な く 、加 工 を 行 え る こ と を 示 す こ と が で き た 。ま た 、電 解 液 の フ ラ ッ シ
ン グ を 行 え る 実 験 装 置 を 製 作 し 、電 解 液 の フ ラ ッ シ ン グ 流 量 や 加 工 時 の 電 流 密 度 が 加 工 面 に
与 え る 影 響 に つ い て 調 べ た 。そ の 結 果 、超 硬 合 金 の 電 解 加 工 に お い て 、Co の 溶 出 に よ る 材 料
の 品 質 劣 化 な く 、目 標 と す る 加 工 速 度 で 加 工 で き る 可 能 性 を 示 せ た( 図 1 )。以 上 の 結 果 よ
り、電解加工プロト機に必要な、電源仕様、電解液フラッシング仕様を明確にできた。
図1
加工面表面の元素分析結果
( 従 来 電 解 液 で あ る NaCl 電 解 液 を 用 い て 加 工 し 場 合 は 硬 合 金
成 分 の Co が 減 少 し て い る ( 品 質 劣 化 ) が 、 CoCl2 を 添 加 し た
電解液では品質劣化がない。)
次 に 、加 工 し た 超 硬 合 金 の 成 分 で あ る W( タ ン グ ス テ ン )と Co( コ バ ル ト )を 回 収 す る 方
法 、お よ び 、電 解 加 工 を 安 定 的 に 継 続 す る 方 法 に つ い て 検 討 し た 。言 う ま で も な く 、超 硬 合
金 の 成 分 で あ る W と Co は 貴 重 な 希 少 金 属 で あ る 。 従 来 、 (特 に 放 電 加 工 で )加 工 さ れ て 除 去
さ れ た 材 料 は 、 粉 末 状 に な り 、 廃 棄 さ れ て い た 。 今 年 度 、 W を CaWO 4 と い う W の 精 錬 工 程 で
得 ら れ る 利 用 し や す い 形 で 回 収 す る 方 法 を 示 す こ と が で き た 。 ま た 、 Co は 電 析 さ せ る こ と
で Co と し て 回 収 で き る こ と を 示 し た 。 そ れ に 伴 い 、 加 工 を 安 定 的 に 継 続 す る こ と が で き る
可能性を示すことができた。
(2)プ ロ ト 機 の 設 計 製 造
静 岡 理 工 科 大 学 で 実 施 し た プ ロ ト 機 の 仕 様 検 討 の 結 果 を 反 映 し 、プ ロ ト 機 の 機 械 仕 様 を 検
討し、3 軸駆動のプロト機の機械本体を設計した。
プ ロ ト 機 の 機 械 本 体 は 、形 彫 放 電 加 工 機 を 流 用 す る こ と と し 、形 彫 放 電 加 工 機 に 改 造 を 加
え て 、電 解 加 工 機 プ ロ ト 機 に 必 要 な 機 能 を 付 加 し た 。 X 、Y 、Z の 軸 を 持 ち 、加 工 液 の フ ラ
ッ シ ン グ を 行 う た め の 電 解 液 循 環 装 置 を 搭 載 し て お り 、2015 年 3 月 に 静 岡 理 工 科 大 学 に 設 置
し た 。 来 年 度 以 降 、 電 解 加 工 を 行 う た め の ピ ー ク 電 流 200A 程 度 の 両 極 性 の パ ル ス 電 流 を 発
生させることができる電源装置を製作し、機械に組み込む計画である。
(3)微 細 電 解 加 工 実 験 装 置 の 設 計 製 造
微 細 形 状 の 加 工 を 行 う た め の コ ン パ ク ト な 電 解 加 工 実 験 装 置 を 設 計 し た 。従 来 の 工 作 機 械
本 体 を 流 用 し 、改 造 を 加 え る こ と で 、微 細 加 工 試 験 が 行 え る 小 型 電 解 加 工 試 作 機 と す る 。本
年度は、試験機の機械部分を製作した。(図2)
図2
微細電解加工実験装置
2. 成果(当該年度分についてのみ記載)
(1) 研究発表・講演(口頭発表も含む)
発表年月日
発表媒体
発表タイトル
発表者
平成26年
電気加工学会全国大
超硬合金の電解加工に関
諸井孝行、植松政人、
12月4日
会2014
する研究
後藤昭弘、齋藤長男、
(講演論文集、口頭発
他
表)
平成26年
電解加工研究委員会
超硬合金の電解加工に関
12月15日
(口頭発表)
する研究
平成27年
精密工学会2015春季
超硬合金の電解加工に関
後藤昭弘、諸井孝行、
3月17日
大会
する研究
植松政人、齋藤長男、
-電解液フラ
(講演論文集、口頭発 ッシングの影響―
後藤昭弘
他
表)
平成27年
電気加工学会誌
超硬合金の電解加工に関
後藤昭弘、諸井孝行、
投稿済査読中
(学術論文)
する研究(第1報)-Co
植松政人、齋藤長男、
の溶出防止の方法-
他