名古屋大学法科大学院(名大ロースクール)について

名古屋大学法科大学院(名大ロースクール)について
名古屋大学法科大学院(以下、「名大 L.S.」と略称する)の特徴の一つは、なんといっても
実務基礎科目群の充実だろう。名大 L.S.が実務基礎科目を重視するのは、社会で通用する、社
会の役に立つ法律実務家を養成したいからだ。
弁護士など法律実務家は、単に法律を知っているだけでは、困っている人の力になることは
できない。医者が医学知識だけでは病気を治せないのと同様に、弁護士も法律知識だけでは、
紛争を解決し、紛争を予防することはできない。ましてや、依頼者に満足してもらうためには、
単に物事を法的に解決するだけでは不十分なこともある。医者が、病気を治すのではなく、患
者を治療するのと同様に、弁護士も、依頼者に向き合い、依頼者が本当に求めていることを理
解し、依頼者が満足するような解決を志向しなければならない。
先日も、このような相談があった。大学生の長男を交通事故で亡くした両親からの相談だ。
深夜、長男の運転する乗用車が、狭い横道から進入してきた大型トラックと衝突して、長男が
即死したという事故だ。トラックの運転手は、長男のスピード違反が原因だと主張し、トラッ
ク運転手は不起訴になった。両親は、トラック運転手の説明に納得できないし、どうしてこん
な事故が起きて、長男が死ななければならなかったか理解できない。長男の死を受け入れるこ
とができないのだ。このような両親に、弁護士はどうようなことをアドバイスしたらよいのだ
ろうか。両親の目の前で、電卓を叩いて、損害賠償額を計算するのだろうか。
名大 L.S.では、社会で通用する実務家を養成するために様々なメニューを用意している。た
とえば、エクスターンシップの授業では、2年終了時(既修者コースでは1年終了時)に、法
律事務所に学生を2週間派遣し、弁護士と行動を共にしてもらって、実際の実務を体験しても
らっている。法律事務所で、実際の紛争を見、困っている人の生の声を聞き、ありのままの姿
を見てもらうのだ。我々弁護士も、実務の現場で多くのことを学び、依頼者から多くのことを
教えられ、依頼者の信頼に応えることの厳しさと喜びを知り、実務家として成長していく。学
生にも、実務の現場で、多くのことを感じてもらい、多くのことを考えてもらいたいと期待し
ている。
紛争処理に本当に役に立つ法律は、机上のトレーニングで身につかない。法律は、実際に自
分で何回も使ってみなければ、うまく使いこなせないのだ。子供の頃、自転車の乗り方をどう
やって覚えたか思い出して欲しい。何回もコケながらチャレンジを繰り返し、とにかく自分の
体で勘所をつかんだはずだ。自転車の乗り方の本を何冊も読んだからといって、自転車にうま
く乗れるようにはならないだろう。
名大 L.S.では、このような観点から、ロイヤリングや模擬裁判にも力点を置いている。学生
の行ったシミュレーションやロールプレイのやりとりは、ビデオ撮影され、その場で確認する
ことができる。学生は、これまで学んできた法律知識がいかに不十分で、実際の紛争解決や実
際の法廷の現場で役に立たないことを知ることになる。自分の未熟さを知った学生は、もう一
度これまでの学習を見直し、大いに発奮することになるだろう。また、トヨタ自動車法務部と
も連携し、最先端の企業法務や渉外取引の実務を体験することもできる。
名大 L.S.では、このような様々なメニューを用意し、ここで学ぶ学生たちに「血も涙もある」
法曹になってほしいと熱い期待を寄せている。我々教授陣は、社会の様々な紛争で苦しみ、悩
み、困っている人の力になれるような、そして、社会の不条理や不正義と戦う熱いハートを持
った君を待っている。