「ブルーライトカットハードコート材 」 開発ストーリー

02
CASE STUDY
CASE STUDY
02
ハマタイト・電 材 技 術 部
苦難を乗り越え、コンセプトをカタチにする
横浜ゴムの技術の粋を集め、世界初の技術を開発
「ブルーライトカットハードコート材」
開発ストーリー
日々の積み重ねが、技術革新へとつながる
第一世代ブルーライトカットハードコート材がカタチに
横浜ゴムの技術の粋を極めた製品開発
現在、ブルーライトカット技術を利用した製品は市場
なった後も、ブルーライトカットハードコート材に関する
に数多く展開されている。他社の製品を調査してみると、
技術 ・ 製品開発は続けられ、当時の開発担当者から「青
同等のブルーライトカット性能で透明性が高く、黄色味
色光のみの反射はできないか?」というコンセプトが打ち
を抑制した製品が出始めてきている。しかし、詳細に分
立てられた。当時、どの企業・研究機関も「青色光の吸収」
析していくと、耐久性が著しく劣っていたり、高コスト
が技術開発のメインストリーム。そこに目をつけた担当者
な手法を採用していたりすることがわかる。ゆえに、性
こうしたブルーライトに対する世の中の認知度や対応
は、反射タイプであれば新たなコンセプトになり得るので
能、耐久性、コストを含めた総合的な評価では、横浜ゴ
策へのニーズが高まりつつある中誕生したのが、紫色光
はないかとひらめいた。日頃の研究 ・ 開発業務で数多の
ムの製品は差別化できていると考えている。その背景に
を選択的にカットする、第一世代ブルーライトカットハー
実験を繰り返し、さまざまな素材に触れ、要素技術を蓄
あるのが幅広い事業を展開している横浜ゴムの技術力の
ドコート材だ。このハードコート材は、実はブルーライト
積し、なおかつ開発の勘所を養ってきたことによる努力の
高さだ。
「青い光は何か悪いのか?」と不思議に思った方も多いと
カットを目指して開発を行っていたのではなく、他の開
賜物と言える。
思う。人の目に見える波長(可視光)は、大体380 ∼
発案件から生まれたものである。タッチパネルディスプ
2011年頃よりブルーライトカット眼鏡が市場に出始め、
第一世代ブルーライトカットハードコート材の「紫色
780nm程度と言われている。ブルーライトはその名の通
レイの表面に使用するフィルムには、屈折率の高い層と
そして、このコンセプトをカタチにしたのが、第二世代
光選択カット技術」。この技術では、コート材の配合に
り青色に見える波長のことで、380 ∼ 495nmの領域の
低い層を数百nmレベルの厚さでのコーティングが施され
ブルーライトカットハードコート材である。これは、ディ
横浜ゴム独自の技術があり、特許を取得している。特徴
ことを言う。日焼けなどの皮膚に影響する紫外線に近い
ている。そのフィルムの高屈折率層を開発のために、横
スプレイ内部から発する光線のうち、450nmを中心とし
としては、青色光カット率が20%以上でありながら無
波長であり、エネルギーが強いことが特徴である。朝の
浜ゴムではさまざまな化合物を評価 ・ 検討していた。そ
た青色波長をコーティング層で反射させカットすると同時
色透明性で光透過率が高く、光などに対して耐久性が強
目覚めのときなど、適切な時間に適切な量を浴びるには
れらの中に、ブルーライトの波長領域の短波長側380 ∼
に、ディスプレイ表面において自然光に含まれる青色光
いことが挙げられる。
良い光線だが、夜間に多量に浴びると時間の認識(体内
410nmを特異的にカットし、透明性が高く、着色も無い
の反射を利用し、青色を補うという仕組み。この複合技
時計)
が狂い、寝付けないなどの症状につながるのではな
化合物を発見したのだ。青色波長は380 ∼ 495nmの全
術により、ブルーライトカットと黄色味の低減を両立した。
いかと考えられている。これは10年ほど前に、人の目に
領域をカットすると光線が黄色くなるが、発見した化合
この画期的なメカニズムは横浜ゴムだけが保有する、世
は、「青色光選択反射技術」が応用されており、現在特
生体リズムをコントロールするための青色光受容体の存
物を利用すれば短波長側のみ選択的にカットすることが
界初の技術である。
許申請し、権利化される予定である。フィルムにUV硬
在が確認され、さまざまな研究が成されてきたこととも
でき、青色光を残すことで光線の黄色味を抑制すること
関連している。また、波長が短い光線は散乱しやすいた
ができる。この化合物をハードコート材に配合したのが、
そして、第二世代ブルーライトカットハードコート材
化で光の反射層をコーティングする技術は横浜ゴム独自
他社からも注目される新たな技術開発。当然、製品化
の技術であり、フィルムと反射層の密着性の確保などに
め、像のボケが発生しやすく、脳や眼の筋肉がピント調
横浜ゴムのブルーライトカットハードコート材開発のス
までの道のりは容易いものではなかった。
「青色光の反射」
も、横浜ゴムがこれまでに培ってきた技術が詰まってい
整を頻繁に行うため、眼精疲労の原因とも言われている。
タート地点である。
という画期的なコンセプトを打ち立てることも重要では
る。まさに横浜ゴムの技術の粋を集めた結果である。
あったが、実はコンセプトを具現化・製品化するため、生
図1 ブルーライトについて
産部門の社員と議論し、量産化の仕組みづくりを行う、
これが一番大変なところだった。とくに第一の課題となっ
ブルーライト
ブルーライト
500
ブルーライトカット
フィルム
600
700
目指すは市場に驚きを与える、
第三世代の製品化
100
を駆使し、乗り越えることができた。この他にも製品化に
現在はスマートフォンやパソコンのディスプレイへの
90
至るまでには、数多くの壁があったが、その都度力を合
応用が主流だが、家電のディスプレイ、LED照明やほか
80
透過率 /%
400
保には、大変苦労したが、横浜ゴムが持つ多様な技術力
380∼495nm
380∼495nm
350
た、ブルーライトカット成分のPETフィルムへの密着性確
他社ブルーライトカット
フィルムカット率 22%
70
60
50
30
第一世代
塗布 PET
カット率 23%
20
350
400
40
450
のLED光源への応用なども視野に入れた展開が始まって
いる。また、海外では子どものパソコン教育現場でのブ
ルーライトカットフィルムの導入やPTAのブルーライト
図2 青色光選択反射技術について
黄色
無色
わせ乗り越えてきたからこそ、コンセプトをカタチにする
ことができたのである。
4. 外からの青色光の
反射を取り込み、黄色味が低減
500
波長 /nm
550
カット製品の推薦があるなど、子どもをブルーライトから
守る動きも出てきている。こうした世の中のニーズがさら
3. 外からの青色光
600
に高まる中、技術面でも新しい材料が次々と研究され、
製品に応用しようという動きが出てきており、新たなコン
セプトを持った第三世代ブルーライトカットハードコート
コーティング層
380∼410nm を選択的にカットすることで、
黄色味を押さえます。
2. 裏面で
ブルーライトを反射
1. ディスプレイ
からの光
材も近いうちに市場へ投入されることとなるだろう。横
浜ゴムだからこそ実現できる、今までにない画期的な第
三世代の技術開発を目指していく。