Astro-Hへの期待 広島大学宇宙科学センター 吉田道利 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 1 X線ガンマ線観測に何を期待するか • 熱い宇宙の姿を見る • 非熱的宇宙の姿を見る • 動的な宇宙の姿を見る 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 2 Astro-H イラスト 池下章裕氏/提供 JAXA 2種類の望遠鏡と4つの検出器 • 広い波長域をカバー • 硬X線での撮像 X線マイクロカロリメーター • 高波長分解能X線分光 • 軟ガンマ線での偏光観測 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 3 X線マイクロカロリメーター • 1996年、某研究会での某先生(X線研究者)の言葉 「次の衛星にはマイクロカロリメーターというものが搭載される。 これで、X線コミュニティはようやくastrophysicsができるようにな る」 • Astro-Eの悲劇(2000) • 復活のAstro-E2 「すざく」へ(2005) • すざくXRSのヘリウム消失 カロリメーター観測不能 に(第二の悲劇) • Astro-H X線マイクロカロリメーター SXS • 20年以上にわたる苦難のはてにSXSがある その成功を祈らずにはいられない 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 4 X線精密分光への期待 • 輝線・吸収線の分解本質的に新しい情報 • ガス運動 • ガス組成 • ガス励起・放射機構 • 上記3つの関連 物理の理解へ さまざまなサイエンスはWhilte papersに詳細に書かれている。 ここでは、私のやってることにかこつけた与太話を 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 5 X線精密分光で探るスターバー ストウィンド • スターバーストウィンド中の高温(T~107K)ガスの 運動学 • これまで詳細な運動は明らかでなかった • 軟X線放射と可視輝線放射の形態的相関→共通の放 射機構、異なる温度のガスの共存→衝撃波による局所 的放射? • アウトフロー物質のさまざまな物質相の運動 • 冷たい分子ガス(電波)、暖かい分子ガス(赤外)、中性ガス (可視紫外)、暖かい電離ガス(可視紫外) • これに高温ガスの運動が加わる スターバーストウィンドにおける物質運動の全容がわ かる 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 6 ダストも忘れずに M82のHα偏光分光観測 (すばるFOCAS) 偏光輝線から散乱体 (=ダスト)の運動を求 める ダスト 2015/3/18 光源 7 Dust kinematics in the M82 wind (Yoshida+ in prep.) 加速! Yoshida+ 2011 加速! 減速か? 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 8 分子ガス(Walter+ 2002) とHα偏光データの比較 低速度領域は分子ガス stream(黄色コントア)に 重なっている 加速部分がアウトフローを 直に見ている M82のウィンド中では ダストが加速されている! 2015/3/18 9 スターバーストウィンドの暖かい電離ガス ULIRG NGC6240の巨大ウィンド (田中寿志修論; Yoshida+ in prep.) NGC6240 可視輝線ガスと高温ガス(~1 keV)の 形態に良い相関あり 高温ガスの運動・化学組成はどうなっているのか? 10 スターバーストウィンドのさまざま な物質相の運動学 • ダスト (偏光->大きなダスト PAH->小さなダスト) • 分子ガス 10 – 103 K • 中性ガス 102 – 103 K • 暖かい電離ガス 104 – 105 K • 高温電離ガス 106 – 107 K Astro-H SXS 2015/3/18 依然、最も熱いウィンド成分 (T~108K)については謎が 残るが・・・ 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 11 AGN統一的描像への挑戦 • 果たして我々の信じているものは実在するのか? エンジンはBHか? BLRとは何か? 吸収トーラスとは? ジェットとは? AGNウィンドとは? そもそも、このような 構造はユニバーサル なのか? Astro-Hに期待する 2015/3/18 わしの学生時代から全然変わってへんやんけ・・・ 12 Type2 AGNの反射成分の詳細 分光と時間変動 NLR? トーラス? BLR ? 降着円盤 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション SXSで反射成分の 詳細分光モニター 三つの成分の時 間変動から内部 構造に迫れないか 13 セイファート2型銀河NGC4388の反 射成分がAstro-Hでどう見えるか Astro-H white paper (arXiv:1412.1177) NGC4388と言えば・・・ 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 14 NGC4388のまわりの広がったHα放射ガス (Yoshida+ 2002) この人たち おとめ座銀河団中で銀河団 ガスとの相互作用で剥ぎ取 られたガス (ram pressure stripping) 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 15 剥ぎ取られたガスの経路に沿って低温のX線ガスが分布 剥ぎ取られたガス質量~5×108 M◉ 2015/3/18 Gu+ 2013 16 銀河からのガス剥ぎ取り(ram pressure stripping)と銀河団ガス • 近傍銀河団のICM運動と化学組成 • ガスストリッピング中の銀河とICM運動、化学組成 の関係 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 17 かみのけ座銀河団での思いがけない発見 「火の玉(fireball)」銀河RB199 (Yoshida+ 2008) RB199 延びるHαフィラメント 2015/3/18 若い星からなるフィラメント 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 18 調子に乗って探したら 19 Abell1367でもこんなのが net Hα (Boselli & Gavazzi 2015; Yagi+ in prep.) Astro-Hでこうした現場でのX線分光・撮像観測が 進められることを期待する 20 機動的観測 • 突発天体・時間変動天体の地上との同時観測・ 連携観測 • J-GEMとの連携 • AGN • X線連星 • 重力波源 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 21 J-GEM: Japanese Collaboration for GravitationalWave Electro-Magnetic Follow-up Observation • 最新の重力波望遠鏡(KAGRA、Advanced LIGO, Advanced Virgo)によって検出されるであろう重力 波の電磁波対応天体のフォローアップ • 既存の日本の可視・赤外・電波望遠鏡の突発観測 ネットワーク 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 22 Searching for EM counter part is crucial for understanding the nature of GW sources Metzger & Berger 2012 The most promising GW sources NS-NS merger 2015/3/18 23 望遠鏡と観測装置 1. Kanata Telescope: 1.5m optical-infrared telescope of Hiroshima University, Japan • HOWPol – optical imaging polarimeter and spectrograph. FOV=15’φ • HONIR – optical and near-infrared imaging spectrograph. FOV=10x10 arcmin2 2. Mini-TAO Telescope: University of Tokyo, Chile 1m optical-infrared telescope of • ANIR – Near-infrared camera. FOV=5x5 arcmin2 3. Kiso Schmidt Telescope: 1.05m Schmidt telescope of University of Tokyo. Location: Kiso Observatory, Japan • KWFC – optical wide-field camera. FOV=2.2x2.2 deg2 • CMOS camera – optical wide-field imager (under development). FOV=6x6 deg2 4. OAO-WFC: 0.9m infrared telescope of NAOJ., Japan • Wide field near-infrared camera. FOV=0.92x0.92 deg2 5. MITSuME Telescopes: 0.5m optical telescopes of NAOJ and TITech, Japan • Optical three-color simultaneous camera. FOV=0.5x0.5 deg2 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 24 望遠鏡と観測装置 6. IRSF: 1.4m infrared telescope of Nagoya University, South Africa • SIRIUS – near-infrared three-color simultaneous imager. FOV=7.7x7.7 arcmin2 7. Yamaguchi 32m Radio Telescope, 32m radio telescope of Yamaguchi University, Japan • 6.7 GHz, 8 GHz, 22 GHz radio receivers 8. Kyoto 3.8m Telescope: 3.8m optical-infrared telescope of Kyoto University, Japan. (under construction) • Optical imaging spectrograph with integral field spectroscopy unit (IFU) FOV=15x15 arcsec2 9. HinOTORI Telescope: 0.5m optical telescope of Hiroshima University, China (under construction) • Optical three-color simultaneous camera. FOV=0.45x0.45 deg2 10. MOA-II: 1.8m optical telescope of MOA collaboration, New Zealand • Optical wide-field camera. FOV=1.5x1.5 deg2 11. Subaru Telescope: 8.2m optical infrared telescope of NAOJ, Hawaii, USA. 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 25 Japan coordinated network for transients observation A part of the project “Multi-messenger Observations of GW sources” * collaborating with the KAGRA data analysis team * science cases: GRBs, supernovae, blazars, etc. Main features: 5 deg2 opt. imaging w/ 1m 1 deg2 NIR imaging w/ 1m opt-NIR spectroscopy w/ 1–8m opt-NIR polarimetry • 1m Kiso Schmidt telescope 6 deg2 camera 36 deg2 • • • ★ 50cm telescope (Hiroshima Univ. 2016) • 1.5m Kanata telescope 50cm MITSuME 91cm W-F NIR camera of NAOJ 1 deg2 NIR camera Yamaguchi 32m radio telescope ★ 3.8m telescope (Kyoto Univ. 2017) Subaru @Hawaii ★ ★ ★ IRSF (Nagoya Univ.) @ South Africa 2015/3/18 MOA-II (Nagoya Univ.) 天文学会春季年会 Astro-H特別セッション @ New Zeeland miniTAO (Tokyo Univ.) @ Chile 26 • J-GEMの主目的は重力波源の電磁波対応現象の 探査だが、ハイリスク・ハイリターン • しかし、J-GEMの実態は、地上の光学赤外電波の 観測ネットワーク • AGN、X線連星、ガンマ線バーストなどの突発天体 観測においてAstro-Hとの連携は重要 • 万が一、J-GEM(その他の観測ネットワーク)が重 力波源候補を見つけたら、Astro-Hを向けてね。 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 27 Astro-Hに期待すること • 優れたサイエンスの成果 White papers • 現時点でよく練られている。書いてあることだけですでにワ クワクするような結果が期待される。 • が、現在の延長という面がある(仕方ないのだが)。 • 優れたスペック、新しい波長域、新しい手法からは必 ず新しい「予想もしない」結果が出てくる 予想もしない結果を期待する • ユーザーサポート • 広いコミュニティに門戸を開く • フレキシブルな運用 • 他波長、マルチメッセンジャー連携観測 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 28 次に繋がるステップに • 光赤外コミュニティの悩み • すばるで手一杯で30mに出遅れた • すばる建設からの解放とサイエンスの追求 次を考える 余裕なし • 大学の実力向上と中小計画の進展 • TMT推進で何とか繋いでいるが・・・ • TMT計画も磐石ではない コミュニティの総力が必要 • スペース計画の推進も必要 • やはり余裕なし • TMTの次はどうする? 何も見えていない • 無理してでも別動部隊を立ち上げるか? 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 29 Astro-Hが優れた成果を生むことは自明 それに邁進する一方、 Astro-Hを次にどう繋げるか もまた、高エネルギー業界に閉じずに 考えていくべき課題 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 30 Astro-Hによる素晴らしい 科学的成果を胸躍らせて 待っています。 もちろん、私も微力ながらそれに参加し、 興奮を共有できることを願っています。 2015/3/18 天文学会春季年会Astro-H特別セッション 31
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