1204 小型垂直軸風車によるダクト排気流発電に関する基礎的研究 Fundamental Study on Duct-Flow Power Generation by a Small-Sized Vertical Axis Wind Turbine ○正 学 原 高垣 豊(鳥取大), 雄大(鳥取大院), 学 古郷 川西 昇平(鳥取大院) 誠(鳥取大 4 年) Yutaka HARA, Tottori University, 4-101 Koyama-Minami, Tottori-shi, Tottori, 680-8552 Japan Shohei KOGO, Tottori University, 4-101 Koyama-Minami, Tottori-shi, Tottori, 680-8552 Japan Katsuhiro TAKAGAKI, Tottori University, 4-101 Koyama-Minami, Tottori-shi, Tottori, 680-8552 Japan Makoto KAWANISHI, Tottori University, 4-101 Koyama-Minami, Tottori-shi, Tottori, 680-8552 Japan Key Words: Vertical Axis Wind Turbine, Duct Generation, Wind Energy 1. 緒言 商業施設や工場の排気ダクトから排気される流体エネル ギーを利用して小型風車で発電を行うダクト発電と呼ばれ る未利用エネルギーの回収方法が存在する.しかし,風車が ダクトに及ぼす影響が明らかになっていないため,ダクト発 電の有効性については賛否両論がある.本研究では,排気ダ クトの代わりに小型風洞を使用し,排気口(風洞吹出口)か らの風車位置を様々に変えて風車特性と排気口風速の計測 を行った.風車設置位置と排気流体エネルギーの損失の関係 を明らかにし,ダクト発電の有効性を検証する. 2. 実験装置 本研究で使用した実験装置の模式図を図 1 に示す.排気ダ クトとして,一辺 0.65m の正方形ノズルを有した吹出型風洞 を用いた.供試風車は,キャンバー翼を持ったバタフライ風 車とした.風車ロータの最大半径は R = 0.2 m,ロータ高さは H = 0.3 m である.受風面積は A = 0.117 m2 であり,風洞吹出 口面積 A0 = 0.4225 m2 に対する閉塞率は A/A0 = 0.277 である. 風車ロータの詳細な形状については文献(1)を参照して頂き たい. 図 1 に示すように,供試風車を2つのベアリングで鉛直に 保持し,トルク検出器(小野測器:SS-005)を介してインバー タ制御の誘導モータ(三菱電機:SF-JR 0.75kW)に接続して一 定速度で回転させる.風車特性を計測する際に,風洞吹出口 断面の中心位置にピトー管を設置し風速を計測した.風車の トルク,回転数,およびピトー管風速は同時計測し,A/D 変 換機(タートル工業:TUSB-0412ADSM-SZ)を使って PC に取 り込んでいる.なお,床面からロータ中心まで,および吹出口 中心までの高さ(1.4 m)は一致させている. 3. 実験方法 本研究では,基準風速を 6 m/s とし,すべての計測におい て,風洞送風機のインバータ周波数を 58.2 Hz に固定した. 図 2 に座標系と風車ロータの設置位置(黒丸の記号) を示す. 吹出口に対する風車の位置を変えて行う風車特性計測は,X 軸上(Y = 0)の 5 箇所と X = 0.5, 0.75 m における位置の計 17 箇 所では 5 回ずつ実施した。残りの位置(18 箇所)では特性計測 は2回ずつ実施した.どの位置における計測でも風車特性の 再現性は良好でありデータのばらつきは小さかった.以下の 考察では,風車特性については複数回の計測の平均を用いる. 上述の風車特性計測時には,吹出口断面の中心部のみの風 Fig. 1 Experimental setup Fig. 2 Installation positions of wind turbine 速を計測しているが,これとは別に,風車を取り外した状態 と風車を(X, Y) = (0.5, 0.0), (0.75, 0.0), (1.0, 0.0)の各位置に設 置した状態で,ピトー管を風洞吹出口断面内で移動して,風 速分布を計測した.ピトー管の移動間隔は 0.1 m とし,7 点 ×7 点=49 点の位置で風速計測を行った. P PFE WT PFE 0 (1) ここで,PFE0 は風車ロータを取り除いた状態における風洞(ダ クト)から排出される流体の運動エネルギーであり,本研究 の場合は,風速分布の計測から PFE0 = 66.6 (W)である.PWT は風車の出力であり,ΔPFE は風車を回転させながら計測した 風速分布から求まる排出流体の運動エネルギーの PFE0 から の減少分で定義される風洞(ダクト)のエネルギー損失である. 図 5 は 0.5 m X 1 m, Y 0 m の位置で求めた PWT, ΔPFE, および η のグラフである.X = 0.5 m では風洞(ダ クト)への影響が大きく,エネルギー回収率がマイナス となっているが,X = 0.75 m 以上では 2 % 程度と小さ いながらもプラスのエネルギー回収率が得られている. 0.2 0.1 Cp 0 −0.2 −0.3 0 Y direction 0.45m 0.3m 0.15m 0.0m −0.15m −0.3m −0.45m 0.5 6.5 Cp at λ=1.05 (Y=0m) 6.4 Wind speed at nozzle exit center 6.3 Cp 6.1 6 V (m/s) 6.2 0.1 5.9 0.05 5.8 5.7 5.6 0 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 5.5 1.5 X (m) Fig. 4 Dependence on the wind turbine installation position X (Y = 0) of the power coefficients Cp obtained at λ=1.05 (300 rpm) and the wind speeds V at nozzle exit center 4 PWT ΔPFE 3 η 2 1 0 −1 −2 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 1.5 X (m) Fig. 5 Wind turbine power output PWT measured near nozzle exit ( 0.5 m X 1 m, Y 0 m ), the loss ΔPFE of the fluid kinetic energy at the nozzle exit, and the energy recovery rate η calculated by Eq. (1) 5. 結言 本研究では,風洞吹出口に対する風車の相対位置を様々に 変えて風車特性と吹出口風速の計測を行い,ダクト発電の有 効性を調べた.以下に得られた知見をまとめる. (1) 風車回転方向に起因すると考えられる風車出力の Y 方向 に関する傾向は、風車設置位置が下流に行くと逆転する. (2) 風車位置が X = 0.5 m ではエネルギー回収率が負値にな ったが,X = 0.75 m 以上では約 2 % の回収率が得られた. X=0.5m −0.1 0.15 PWT (W), ΔPFE (W), η (%) 4. 実験結果および考察 図 3 に X = 0.5 m,Y = -0.45~0.45m における 7 箇所に風 車を設置した場合の出力特性(Cp:出力係数)を示す.横軸は 先端周速比 λ である.Y =±0.45 m では最大出力係数が小さ くなっているが,Y = -0.3~0.3 m の範囲では最大 Cp が 0.1 以上の高い出力特性が得られている.X = 0.5 m では,Y = 0.3 m の位置で,Y = -0.3 m の位置に比べて大きな出力が得ら れている.これは,風車の回転方向が図 2 に示したように時 計方向であることと,一般的なダリウス型の垂直軸風車では 翼が上流に向かって移動する部分で主要なトルク発生があ ることから説明ができる.しかし,図に示さないが,この Y 方向についての出力の傾向は,風車の設置位置が下流に行く にしたがって逆転する傾向がみられた.原因ははっきりとし ないが,風洞噴流の広がりが影響していると予想される. 風車が風洞噴流の中心線上(Y = 0)に設置される場合,供試 風車の最大出力はおおよそλ = 1.05 (300 rpm)のときに得ら れている.図 4 は風車を噴流中心線上に設置したときの λ = 1.05 における Cp と同時計測された風洞吹出口中心における 風速 V の X 位置依存性を示す.風車が吹出口近くに設置され た X = 0.5 m の場合には,多少の Cp の増加と大きな風速の減 少が明白であり,風車の存在が風洞(ダクト)に影響を及ぼし ていることがわかる. 風洞(ダクト)が排出する流体エネルギーから風車が回収す るエネルギーの割合を求めるため,次式(1)でエネルギー回収 率 η を定義する. 謝辞 本研究は,鳥取県環境学術研究等振興事業の補助を受 け実施されました.ここに明記し,謝意を表します. 1 1.5 λ Fig. 3 Power curves measured at X = 0.5 m 2 文献 (1) Hara, Y., et al., “Effects of Blade Section on Performance of Butterfly Wind Turbines as Double-Blade VAWTs”, Bulletin of the JSME, Journal of Fluid Science and Technology, (2015), (in press)
© Copyright 2024 ExpyDoc