化学 京都女子大学 HP 用過去問題解説 12 月分

2010 京都女子大学
化学
HP 用過去問題解説
12 月分
化学
京都女子大学 HP 用過去問題解説 12 月分
今回の化学の問題は,2011 年度前期 A 方式(1 月 29 日)の大問Ⅳを取り上げました。有機化
合物の構造決定に関する問題です。有機化学についてはいろいろと覚えなければならないことが
多く,苦手と感じている受験生も多いのではないでしょうか。しかし,問題をよく読み,どのよ
うな現象が問われているのかが理解できれば,きちんと解くことができるはずなので,恐れるこ
とはありません。以下の解説をよく読んで,解法をしっかり身に付けましょう。
【設問及び解答方法】
有機化合物の構造決定では,問題をよく読み,その問題文のひとつひとつが“何を意味してい
るか?”を知ることが大切です。
以下は,問題の一部です。
『分子量が 122 で,分子式が CxHyOz で表されるベンゼン環を含む化合物がある。』
⇒
ベンゼン分子の分子量が 78 であることから,この化合物はベンゼン環を 1 個もつことがわか
ります。また,ベンゼン環をもつ化合物で一置換体であれば,側鎖の式量は 122-77=45,二置
換体であれば,側鎖の式量は 122-76=46 で表すことができます。
『この化合物 6.10g を完全燃焼させたところ,15.4g の二酸化炭素と 2.70g の水が生成した。』
⇒ 6.10g のこの化合物の物質量は(6.10/122)=0.05mol です。生成した 15.4g の二酸化炭素は
(15.4/44)=0.35mol,2.70g の水は(2.70/18)=0.15mol ですので,0.35mol の二酸化炭素に含まれ
る炭素原子は 0.35×1=0.35mol,0.15mol の水に含まれる水素原子は 0.15×2=0.30mol です。
よって,1mol の化合物に含まれる炭素原子は(0.35/0.05)=7mol,水素原子は(0.30/0.05)=6mol
であることがわかります。
ここまででわかることは,この化合物の分子式は C7H6Oz ということです。
分子量が 122 であることから酸素原子の数は(122-12×7-1×6)/16=2 であることがわかりま
す。
よって,この化合物の分子式は C7H6O2 です。
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問題文を読んで,できることはここまでですので,以下は設問毎に考えていきましょう。
(1) 上の解説をご参照ください。
(2),(3)
C7H6O2 で表せる化合物の燃焼反応は 2C7H6O2+15O2→14CO2+6H2O と表すことができます。
2C7H6O2 + 15O2 → 14CO2 + 6H2O 単位:mol
反応前
0.05
反応量 -0.05 -0.05×(15/2)
反応後
0
0
0
+0.05×7 +0.05×3
0.35
0.15
よって,完全燃焼に必要な酸素の物質量は 0.05×(15/2)=0.375mol であることがわかります。
(4)
C7H6O2 のうち C6 はベンゼン環を構成する炭素となるので,側鎖の炭素原子は 1 個である
ことが分かります。
この場合,水素原子は側鎖に 1 つしか存在しないため,この構造は次のようなものになります。
つまり,この C7H6O2 には不飽和結合が 1 つ存在することがわかります。
また,二置換体であることを考えて,酸素原子が導入される場所を矢印で示すと,次のように
4 種類の構造が考えられます。
よって,これらを構造式で表すと,次のようになります。
これらに,一置換体の構造を含めて 5 種類の構造を描くことができます。
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(5) (4)の化合物のうちで,塩化鉄(Ⅲ)水溶液で呈色反応が起こらないのは,以下の 2 つです。
【安息香酸】
【ギ酸フェニル】
ここで,加水分解できるのは【ギ酸フェニル】です。
(a)
加水分解生成物で還元性を示す物質はギ酸となります。
(b)
加水分解ができない物質は安息香酸です。このカリウム塩を,過マンガン酸カリウムから生成
するには,ベンゼン環にアルキル基が結合したものとなりますが,それらの中で分子量が小さい
ものは,炭素原子数が最もすくないものとなって,トルエンであることがわかります。
ベンゼンは C6H6 で表される環状の分子です。この分子量は 78 ですが,水素原子が他の原子,
または,原子団によって置換されると,ベンゼン環の式量が減少します。
一置換体では
二置換体では
ベンゼン環の式量は
ベンゼン環の式量は
78-1=77
78-1×2=76
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【勉強方法のアドバイス】
有機化合物の構造を決定する際には,よく問題文を読み,そこでどのような反応が起きている
かを見きわめることが大切です。もちろんある程度の暗記も必要ですが,今回解説した問題のよ
うに分子式を決定して問題を解くとなると,暗記だけで正解を導くことはできません。
また,有機化学においては,分子式を決定するための方法(元素分析など)や分子量を決定す
るための方法(比重法,気体の状態方程式の利用,浸透圧法,沸点上昇法,凝固点降下法など)
をマスターしておく必要があります。市販の問題集などを使って,しっかりと演習を積み重ねま
しょう。こうした経験の積み重ねこそが,合格への最大のポイントになります。
もう入試本番も間近ですが,この時期には学校でも有機化学の学習が終わっているでしょうか
ら,これまで勉強してきた理論化学,無機化学,有機化学を満遍なく見直していきましょう。特
に理論化学では,過去問を利用して頻出問題をどんどん解いていくとよいと思います。解き方の
パターンを身に付けることです。無機化学や有機化学については,問題文中に出てくる用語を見
ただけでそれに関連する知識が頭に湧き起ってくるようになるまで,もう一度確認作業を行い,
知識の定着を図りましょう。
また,健康管理ということも受験勉強の一部です。風邪などひかないよう,体調には十分注意
し,規則正しい生活を送って,万全の態勢で入試に臨んでください。
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