STM技術面H27

ピエゾ素子
・電圧を加えると変形する材料 圧電材料
例、PZT(Pb(Zrx, Ti1−x)O3、チタン酸ジルコン酸鉛
・STMでは、探針の位置制御、走査、粗動機構に使用
通常のSTMで使われ
ている円筒ピエゾに
比べ、小さめ
ピエゾ素子
例:探針位置制御・走査用の円筒ピエゾ素子(左図)
富士セラミクス社製 圧電素子 C-63
圧電定数 d31= -165×10 -12 [m/V] @室温
動径方向に分極
単位電界あたりの伸び率
内側の電極に電圧Vを加えたときの縦(z)
方向の伸びは
∆z=d31・E・l
E: 素子に加わる電界=印加電圧/厚さ(0.5mm)
l : 素子の長さ(9mm)
左図の素子の場合、計算すると、
-3.0nm×V となる(負号は「縮む」の意味)。
ピエゾ素子
粗動機構(Panタイプウォーカー)
例:探針位置制御・走査用の円筒ピエゾ素子(左図)
富士セラミクス社製 圧電素子 C-63
圧電定数 d31= -165×10 -12 [m/V] @室温
外側の+xの電極に電圧V、-xの電極に電圧
-V加えたときの横(x)方向の変位は
∆x ~ ∆z ・l /D
D: 素子の直径(3mm)
l : 素子の長さ(9mm)
計算すると、左図の素子の場合、
9 nm×V となる。
・動きが確実
変位量が決まっている
推進力がある
中心ロッドをしっかり保持できる
・それぞれの積層ピエゾに対して
独立に電極を付け、駆動する
必要あり
ピエゾ素子は外枠か
ら、バネで押さえる
(バネの調整が重要)。
注:上記の値は室温での値。ヘリウム温度では圧電
定数が1/4から1/6になるので、変位も小さくなる。
1
積層ピエゾ素子
白矢印は
分極の方向
慣性駆動機構
注:実際には上下にも電極が付いているはず。
試料
例:慣性駆動・Panタイプ用の積層ピエゾ素子(上図)
富士セラミクス社製 圧電素子 C-63
圧電定数 d15= 530×10 -12 [m/V] @室温
上下の電極に電圧Vを加えたときの横(x)方向のずれは
∆x=n・d15・E・h=n・d15・V
E: 素子に加わる電界=印加電圧/厚さ(0.5mm)
h : 素子の長さ(0.5 mm)、n : 積層枚数(6枚)
計算すると、上図の素子の場合、3.0 nm×V となる。
駆動機構(慣性駆動機構)
駆動機構(インチウォームタイプ)
・Panタイプと構造が似ている。
・変位量が摩擦に依存
・推進力弱い
・6つの積層ピエゾに対して一電極
でOK
ピエゾ素子は外枠か
ら、バネで押さえる
(バネの調整が重要)。
・尺取り虫方式
・変位量が確実
・保持力強い
・すり合わせが厳密 低温には向かない
2
駆動機構(Besocke (Beetle)タイプ)
・慣性駆動で坂を上り下り
・XY移動も可能
・3点支持かつコンパクトで剛性
(共振周波数)が高い
STMにおける除振
・探針試料間の振動を小さく
することが最も重要
*振動の少ない場所に設置
*外部からの振動を遮断し、
探針試料間への振動伝達
を抑える
・除振台、バネ吊り、ダン
パー(オイルダンパー、渦電
流ダンパー)…
ẏ が無いと強制振動の式。
振動伝達を記述する式
mx + γ ( x& − y& ) + k ( x − y ) = 0
除振台を動かすか(強制)、
床を動かすか(伝達)の違い。
結果はほぼ等しい。
除振台・バネ吊り
*床が振動したときに、除振台はどう
振動するか、
*バネ吊りしたSTMはどう振動する
か?
m: 除振台の質量、 k: バネ定数、
γ : 粘性係数
速さに比例して働く力の係数
エネルギー損失に寄与
* STMの台が振動した場合、探針・
試料間距離はどう変化するか?
(この場合、xに対してy-xがどう
変化するか考える)
STM探針 ↑y
試料
↑x
STMユニット台
Leiden Probe Microscopy
3
渦電流ダンパー
渦電流ダンパー
B: 円筒形磁石表面での
磁束密度
ρ: 金属板の抵抗率
t: 金属板の厚さ
相対速度Vxのときに、働く粘性力は
F = −C0
B 2πa 2t
ρ
Vx
強い磁石(SmCo5)、
抵抗率の低い金属
(Cu)で厚い板が良い。
(C0はa/b、d/bに依存する定数)
磁場中で導体の速さに比例
した力(減速させる)が働く
オミクロン
M Okano, et al.; J. Vac. Sci. Technol., A5 3313 (1987).
mx + γ ( x& − y& ) + k ( x − y ) = 0
角振動数ω(=2πf、f は振動数)を用いて、x = Xe iωt −iφ 、 y = Yeiωt
として解くと、ω0 = k / m として
強制振動では、分子のiγωの項が無い
X=
mω02 + iγω
Y
m(ω02 − ω 2 ) + iγω
・Q値が高すぎると共鳴での振動が顕著
・Q値が小さすぎると高周波での除振特性が悪くなる
→ Q値を適切な値に設定する必要あり。
1 + (ω / Qω0 ) 2
[1 − (ω / ω ) ] + (ω / Qω )
2 2
0
・共振周波数以下では、除振効果はない。
・共振周波数よりも周波数が高くなるにつれて除振特性が良い
→ 共振周波数の低い除振台・バネ吊りほど良い。
m 2ω04 + γ 2ω 2
X
=
2
Y
m (ω02 − ω 2 ) 2 + γ 2ω 2
=
除振台・バネ吊り
2
0
Q = mk γ = mω0 / γ は、Q値と呼ばれる無次元量
Q値が高いと共振周波数での振幅が強くなる(共振・共鳴)
ω >> ω0 では、 X / Y = ω0 / Qω
での減衰は高くなる
・自由振動の振幅は、一周期ごとに exp(-π/Q) だけ減少
(振動するたびに振幅が半分ずつに減少する場合,Q値は~4.5)
となるので、Q値が高いと高周波
4
振動伝達を記述する式
Y−X =
Y−X
=
Y
− mω 2
m(ω − ω ) + iγω
2
0
[1 − (ω
2
全体の伝達関数
Y
STM探針 ↑y
試料
↑x
1
]
/ ω ) 2 + (ω0 / Qω ) 2
・床から除振台(バネ吊り)への振動
の伝達関数と、除振台から探針・試料
間距離への伝達関数の積で与えられ
る。(共振周波数の差が大きい場合)
STMユニット台
2
0
・探針・試料間の共振周波数を高める
ことが重要(小さく、コンパクトにする)
X / Y の式で、ω/ω0をω0/ωで
置き換えた式にほぼ等しい。
探針・試料間の共振周波数は
数kHzから数十kHz
D. W. Pohl, IBM J. Res. Develop. 30, 417 (1986).
STMにおけるフィードバック制御
におけるフィードバック制御
変数t (時間)、小文字
ラプラス変換
定義
input
vi(t)
output
vo(t)
+
-
ポイント
・正しく追随するか?
(定常偏差は小さいか)
・追随は安定か?
(発振しないか)
F (s) = ∫
+∞
0
f (t )e − st dt
F ( s) = L[ f (t )]
例. ステップ関数のラプラス変換
gain, filter,
integral ...
入力の例:
ステップ等の高さの変化
変数s、大文字
記述法
0 (t < 0)
u (t ) = 
1 (t ≥ 0)
f (t )
L[u (t )] = 1 / s
unit step function
1
0
t
出力の例: 探針の高さの変化
- ラプラス変換
- 伝達関数
- フィードバック制御序論
- STMにおけるフィードバック制御
5
ラプラス変換のさまざまな性質
(1) 線形性
(2) 微分
L[ af (t ) + bg (t )] = aL[ f (t )] + bL[ g (t )]
L[ f ′(t )] = sL[ f (t )] − f (0+ )
L[ f ′′(t )] = s 2 L[ f (t )] − sf (0+ ) − f ′(0)
(3) 時間シフト
L[ f (t − a )] = e − as L[ f (t )]
(4) ...
これらの性質を駆使すると、いろいろな問題(微分方程式)
が簡単に解ける。
6
例: RC filter (一次のフィルター
一次のフィルター)
一次のフィルター
スイッチを入れてからの電圧 vo(t) を計算する
解きたい微分方程式
v0 (t ) + Ri = vi (t )
R
i (t ) = Cdvo (t ) / dt
∴
C
v0 (t ) + CRdvo (t ) / dt = vi (t )
E0
vo(t)
vi(t)
I(t)
ラプラス変換すると、
L[v0 (t ) + CRdvo (t ) / dt ] = (1 + CRs ) L[v0 (t )]
L[vi (t )] = L[ E0u (t )] = E0 / s
u(t): ステップ関数
E0
∴ L[v0 (t )] =
s (1 + CRs )
vo(t)
E0
∴ v0 (t ) = E0 (1 − e − t / CR )
CR: 時定数
t
伝達関数
input
vi(t)
bm
system
output
vo(t)
d m vo (t )
d m−1vo (t )
+ bm −1
+ L + b0vo (t )
m
dt
dt m −1
n
d vi (t )
d n−1vi (t )
= an
+ am−1
+ L + a0vi (t )
n
dt
dt n −1
両辺をラプラス変換すると
L[vo (t )] =
an s n + an−1 s n −1 + L + a1 s + a0
L[vi (t )]
bm s m + bm−1s m−1 + L + b1s + b0
F (s ) : システムの伝達関数
Vo ( s) = F ( s ) • Vi ( s )
7
いろいろな要素の伝達関数
ブロック・ダイアグラム
input
(1) 比例
output
例: 増幅器
F (s) = K p
(2) 積分
(3) 微分
1
F (s) =
sTI
F ( s ) = sTD
(4) 時間遅れ
vo (t ) = vi (t − T )
(6) 二次のフィルタ
ω
F1(s)
output
Vo(s)
F2(s)
F1 ( s) • F2 ( s)
output
Vo(s)
カスケード接続
input
Vi(s)
vo(t)
vi(t)
output
+ Ve(s)
Vf(s)
 Vo ( s ) = F1 ( s ) • Ve ( s )
Vo(s) V ( s ) = F ( s ) • V ( s )
 f
2
o
F1(s)
V ( s ) = V ( s ) − V ( s )
i
f
 e
F2(s)
2
n
s 2 + 2ζω n s + ω n2
Vo(s)
input
Vi(s)
例: 強制振動
d 2vo (t )
dv (t )
+ 2ζωn o + ωn2 vo (t ) = ω n2 vi (t )
dt 2
dt
input
Vi(s)
F ( s ) = e − sT
(5) 一次のフィルタ 例: RC フィルタ
1
F (s) =
1 + sT
F (s) =
F(s)
Vi(s)
Vo ( s ) =
分母はループゲイン+1
F1 ( s )
Vi ( s )
1 + F1 ( s ) F2 ( s )
ステップ入力に対する応答
input
output
F(s)
Vi(s)
ステップ入力
A
Vi ( s) =
s
Vo(s)
A
F (s)
s
A

vo (t ) = L−1[Vo ( s)] = L−1  F ( s) 
s


Vo ( s ) =
sをjωに置き換える。
参考: 周波数伝達関数
vi (t ) = Ai e
jωt
output: vo (t ) = Ai e
jωt
input:
ここで、jは虚数単位。電気
系では、電流iとの混乱をさ
けるため、 jを用いる。
F ( jω )
8
二次のフィルターのステップ応答
F (s) =
ω
s + 2ζω n s + ω n2
Vo ( s) =
ωn2
1
2
s s + 2ζω n s + ω n2
二次のフィルターのステップ応答
2
n
除振のところでも出てきて
いる強制振動の式
2
ζ は振動減衰比。
Q=1/2ζ の関係がある。
ラプラス変換の表から
ω d ≡ ω n 1 − ζ , φ ≡ tan
2
−1
振動減衰
(0 < ζ < 1)
臨界減衰
(ζ = 1)
1−ζ 2 )ω n t

ζ
+ 1 −

1−ζ 2

 − (ζ +
e


1−ζ 2 )ω n t
output

e −ζω nt
sin(ωd t + φ )
1 −
1− ζ 2



−ω t
1 − (1 + ωnt )e n
vo (t ) = 

 1 
 −( ζ −
ζ
e
1 − 1 +
2 
 2 
1− ζ 




 (ζ > 1)

過減衰
( 1−ζ /ζ )
time
2
STMにおけるフィードバック制御
におけるフィードバック制御 (1)
フィードバック制御の利点
noise
input
Vi(s)
N(s)
+
-
H(s)
G(s)
RC
filter
+
+
output
G( s)
H (s)
Vi ( s) +
N (s)
1 + G( s)
1 + G (s)
ループゲインG(s) が十分大きいとき、
-
tunnel current
current amp.
log
amp.
amp.
integral
1
Vo ( s ) − Vi ( s) =
G ( s)
注意:
(2) ノイズに対する安定性
1
倍になる。
G ( s)
少々G(s)がふらついたとしても
HV
amp.
piezo
expand
output
Vo(s)
Logアンプは、高さの変化に
対して指数関数的に変化す
るトンネル電流の変化を、線
形にするため挿入
入力: 高さの変化(nm)
偏差:制御により設定し
たい値と出力値とのズレ
(1) 制御性の良さ
偏差
+
Vi(s)
分母はループゲイン+1
Vo ( s) =
input
Vo(s)
tunnel
current
log
amp.
piezo
expand
出力: 探針の高さの変化(nm)
は、カットオフ周波数が1~5kHzのローパスフィルター成分を持っている。
フィードバック制御では、最も周波数の低いフィルターが重要になるので
1
1 + sT inst を加える。ここで Tinst=1/f0 で、 f0 は最も低いカットオフ周波数。
9
フィードバック回路の例
STMにおけるフィードバック制御
におけるフィードバック制御 (2)
tunnel
current
current
amp.
log
amp.
amp.
integral
HV
amp.
(
 8mφ 
I = A exp
h  = A exp 10.25 nm −1 eV −1/ 2 φ h
2
 h

V = 109 I
)
 V 
Vo = Gl log i  = Gl log e • 10.25 φ h + const
 Vconst 
Ga
1
sTint eg
GH
piezo
expand
GP (nm/ V)
1
1 + sT
1
1 + sTinst
Y. Hasegawa, Ph.D. thesis (1991).
STMにおけるフィードバック制御
におけるフィードバック制御 (3)
STMにおけるフィードバック制御
におけるフィードバック制御(4)
におけるフィードバック制御
Tinteg ≥ 4G0Tinst
全て掛け合わせると、ループゲインは
1
1
G ( s ) = G0
sTinteg 1 + sTinst
* G0 を大きくすると、フィードバック制御の効果を増す。
注意: G0は、仕事関数、つまり表面の状態にも依存する
ステップ入力に対する応答は、
F ( s) =
ωn2
G ( s)
= 2
1 + G ( s) s + 2ζω n s + ωn2
二次のフィルターの式
ω n2 = G0 / Tinteg Tinst
ζ = Tinteg / 4G0Tinst
安定な制御のための条件は、
ζ ≥1
* 発振している状態からTinteg を増やしていき、共鳴発振が止まるまで
大きくする。
注意: Tinteg は探針応答の時定数ではない。
探針応答の時定数は~ Tinteg/G0.となる。
例えば、G0=1000 で finst=5kHz とすると、 finteg は~5Hzに設定される.
臨界減衰から過減衰
Tinteg ≥ 4G0Tinst
10