ピエゾ素子 ・電圧を加えると変形する材料 圧電材料 例、PZT(Pb(Zrx, Ti1−x)O3、チタン酸ジルコン酸鉛 ・STMでは、探針の位置制御、走査、粗動機構に使用 通常のSTMで使われ ている円筒ピエゾに 比べ、小さめ ピエゾ素子 例:探針位置制御・走査用の円筒ピエゾ素子(左図) 富士セラミクス社製 圧電素子 C-63 圧電定数 d31= -165×10 -12 [m/V] @室温 動径方向に分極 単位電界あたりの伸び率 内側の電極に電圧Vを加えたときの縦(z) 方向の伸びは ∆z=d31・E・l E: 素子に加わる電界=印加電圧/厚さ(0.5mm) l : 素子の長さ(9mm) 左図の素子の場合、計算すると、 -3.0nm×V となる(負号は「縮む」の意味)。 ピエゾ素子 粗動機構(Panタイプウォーカー) 例:探針位置制御・走査用の円筒ピエゾ素子(左図) 富士セラミクス社製 圧電素子 C-63 圧電定数 d31= -165×10 -12 [m/V] @室温 外側の+xの電極に電圧V、-xの電極に電圧 -V加えたときの横(x)方向の変位は ∆x ~ ∆z ・l /D D: 素子の直径(3mm) l : 素子の長さ(9mm) 計算すると、左図の素子の場合、 9 nm×V となる。 ・動きが確実 変位量が決まっている 推進力がある 中心ロッドをしっかり保持できる ・それぞれの積層ピエゾに対して 独立に電極を付け、駆動する 必要あり ピエゾ素子は外枠か ら、バネで押さえる (バネの調整が重要)。 注:上記の値は室温での値。ヘリウム温度では圧電 定数が1/4から1/6になるので、変位も小さくなる。 1 積層ピエゾ素子 白矢印は 分極の方向 慣性駆動機構 注:実際には上下にも電極が付いているはず。 試料 例:慣性駆動・Panタイプ用の積層ピエゾ素子(上図) 富士セラミクス社製 圧電素子 C-63 圧電定数 d15= 530×10 -12 [m/V] @室温 上下の電極に電圧Vを加えたときの横(x)方向のずれは ∆x=n・d15・E・h=n・d15・V E: 素子に加わる電界=印加電圧/厚さ(0.5mm) h : 素子の長さ(0.5 mm)、n : 積層枚数(6枚) 計算すると、上図の素子の場合、3.0 nm×V となる。 駆動機構(慣性駆動機構) 駆動機構(インチウォームタイプ) ・Panタイプと構造が似ている。 ・変位量が摩擦に依存 ・推進力弱い ・6つの積層ピエゾに対して一電極 でOK ピエゾ素子は外枠か ら、バネで押さえる (バネの調整が重要)。 ・尺取り虫方式 ・変位量が確実 ・保持力強い ・すり合わせが厳密 低温には向かない 2 駆動機構(Besocke (Beetle)タイプ) ・慣性駆動で坂を上り下り ・XY移動も可能 ・3点支持かつコンパクトで剛性 (共振周波数)が高い STMにおける除振 ・探針試料間の振動を小さく することが最も重要 *振動の少ない場所に設置 *外部からの振動を遮断し、 探針試料間への振動伝達 を抑える ・除振台、バネ吊り、ダン パー(オイルダンパー、渦電 流ダンパー)… ẏ が無いと強制振動の式。 振動伝達を記述する式 mx + γ ( x& − y& ) + k ( x − y ) = 0 除振台を動かすか(強制)、 床を動かすか(伝達)の違い。 結果はほぼ等しい。 除振台・バネ吊り *床が振動したときに、除振台はどう 振動するか、 *バネ吊りしたSTMはどう振動する か? m: 除振台の質量、 k: バネ定数、 γ : 粘性係数 速さに比例して働く力の係数 エネルギー損失に寄与 * STMの台が振動した場合、探針・ 試料間距離はどう変化するか? (この場合、xに対してy-xがどう 変化するか考える) STM探針 ↑y 試料 ↑x STMユニット台 Leiden Probe Microscopy 3 渦電流ダンパー 渦電流ダンパー B: 円筒形磁石表面での 磁束密度 ρ: 金属板の抵抗率 t: 金属板の厚さ 相対速度Vxのときに、働く粘性力は F = −C0 B 2πa 2t ρ Vx 強い磁石(SmCo5)、 抵抗率の低い金属 (Cu)で厚い板が良い。 (C0はa/b、d/bに依存する定数) 磁場中で導体の速さに比例 した力(減速させる)が働く オミクロン M Okano, et al.; J. Vac. Sci. Technol., A5 3313 (1987). mx + γ ( x& − y& ) + k ( x − y ) = 0 角振動数ω(=2πf、f は振動数)を用いて、x = Xe iωt −iφ 、 y = Yeiωt として解くと、ω0 = k / m として 強制振動では、分子のiγωの項が無い X= mω02 + iγω Y m(ω02 − ω 2 ) + iγω ・Q値が高すぎると共鳴での振動が顕著 ・Q値が小さすぎると高周波での除振特性が悪くなる → Q値を適切な値に設定する必要あり。 1 + (ω / Qω0 ) 2 [1 − (ω / ω ) ] + (ω / Qω ) 2 2 0 ・共振周波数以下では、除振効果はない。 ・共振周波数よりも周波数が高くなるにつれて除振特性が良い → 共振周波数の低い除振台・バネ吊りほど良い。 m 2ω04 + γ 2ω 2 X = 2 Y m (ω02 − ω 2 ) 2 + γ 2ω 2 = 除振台・バネ吊り 2 0 Q = mk γ = mω0 / γ は、Q値と呼ばれる無次元量 Q値が高いと共振周波数での振幅が強くなる(共振・共鳴) ω >> ω0 では、 X / Y = ω0 / Qω での減衰は高くなる ・自由振動の振幅は、一周期ごとに exp(-π/Q) だけ減少 (振動するたびに振幅が半分ずつに減少する場合,Q値は~4.5) となるので、Q値が高いと高周波 4 振動伝達を記述する式 Y−X = Y−X = Y − mω 2 m(ω − ω ) + iγω 2 0 [1 − (ω 2 全体の伝達関数 Y STM探針 ↑y 試料 ↑x 1 ] / ω ) 2 + (ω0 / Qω ) 2 ・床から除振台(バネ吊り)への振動 の伝達関数と、除振台から探針・試料 間距離への伝達関数の積で与えられ る。(共振周波数の差が大きい場合) STMユニット台 2 0 ・探針・試料間の共振周波数を高める ことが重要(小さく、コンパクトにする) X / Y の式で、ω/ω0をω0/ωで 置き換えた式にほぼ等しい。 探針・試料間の共振周波数は 数kHzから数十kHz D. W. Pohl, IBM J. Res. Develop. 30, 417 (1986). STMにおけるフィードバック制御 におけるフィードバック制御 変数t (時間)、小文字 ラプラス変換 定義 input vi(t) output vo(t) + - ポイント ・正しく追随するか? (定常偏差は小さいか) ・追随は安定か? (発振しないか) F (s) = ∫ +∞ 0 f (t )e − st dt F ( s) = L[ f (t )] 例. ステップ関数のラプラス変換 gain, filter, integral ... 入力の例: ステップ等の高さの変化 変数s、大文字 記述法 0 (t < 0) u (t ) = 1 (t ≥ 0) f (t ) L[u (t )] = 1 / s unit step function 1 0 t 出力の例: 探針の高さの変化 - ラプラス変換 - 伝達関数 - フィードバック制御序論 - STMにおけるフィードバック制御 5 ラプラス変換のさまざまな性質 (1) 線形性 (2) 微分 L[ af (t ) + bg (t )] = aL[ f (t )] + bL[ g (t )] L[ f ′(t )] = sL[ f (t )] − f (0+ ) L[ f ′′(t )] = s 2 L[ f (t )] − sf (0+ ) − f ′(0) (3) 時間シフト L[ f (t − a )] = e − as L[ f (t )] (4) ... これらの性質を駆使すると、いろいろな問題(微分方程式) が簡単に解ける。 6 例: RC filter (一次のフィルター 一次のフィルター) 一次のフィルター スイッチを入れてからの電圧 vo(t) を計算する 解きたい微分方程式 v0 (t ) + Ri = vi (t ) R i (t ) = Cdvo (t ) / dt ∴ C v0 (t ) + CRdvo (t ) / dt = vi (t ) E0 vo(t) vi(t) I(t) ラプラス変換すると、 L[v0 (t ) + CRdvo (t ) / dt ] = (1 + CRs ) L[v0 (t )] L[vi (t )] = L[ E0u (t )] = E0 / s u(t): ステップ関数 E0 ∴ L[v0 (t )] = s (1 + CRs ) vo(t) E0 ∴ v0 (t ) = E0 (1 − e − t / CR ) CR: 時定数 t 伝達関数 input vi(t) bm system output vo(t) d m vo (t ) d m−1vo (t ) + bm −1 + L + b0vo (t ) m dt dt m −1 n d vi (t ) d n−1vi (t ) = an + am−1 + L + a0vi (t ) n dt dt n −1 両辺をラプラス変換すると L[vo (t )] = an s n + an−1 s n −1 + L + a1 s + a0 L[vi (t )] bm s m + bm−1s m−1 + L + b1s + b0 F (s ) : システムの伝達関数 Vo ( s) = F ( s ) • Vi ( s ) 7 いろいろな要素の伝達関数 ブロック・ダイアグラム input (1) 比例 output 例: 増幅器 F (s) = K p (2) 積分 (3) 微分 1 F (s) = sTI F ( s ) = sTD (4) 時間遅れ vo (t ) = vi (t − T ) (6) 二次のフィルタ ω F1(s) output Vo(s) F2(s) F1 ( s) • F2 ( s) output Vo(s) カスケード接続 input Vi(s) vo(t) vi(t) output + Ve(s) Vf(s) Vo ( s ) = F1 ( s ) • Ve ( s ) Vo(s) V ( s ) = F ( s ) • V ( s ) f 2 o F1(s) V ( s ) = V ( s ) − V ( s ) i f e F2(s) 2 n s 2 + 2ζω n s + ω n2 Vo(s) input Vi(s) 例: 強制振動 d 2vo (t ) dv (t ) + 2ζωn o + ωn2 vo (t ) = ω n2 vi (t ) dt 2 dt input Vi(s) F ( s ) = e − sT (5) 一次のフィルタ 例: RC フィルタ 1 F (s) = 1 + sT F (s) = F(s) Vi(s) Vo ( s ) = 分母はループゲイン+1 F1 ( s ) Vi ( s ) 1 + F1 ( s ) F2 ( s ) ステップ入力に対する応答 input output F(s) Vi(s) ステップ入力 A Vi ( s) = s Vo(s) A F (s) s A vo (t ) = L−1[Vo ( s)] = L−1 F ( s) s Vo ( s ) = sをjωに置き換える。 参考: 周波数伝達関数 vi (t ) = Ai e jωt output: vo (t ) = Ai e jωt input: ここで、jは虚数単位。電気 系では、電流iとの混乱をさ けるため、 jを用いる。 F ( jω ) 8 二次のフィルターのステップ応答 F (s) = ω s + 2ζω n s + ω n2 Vo ( s) = ωn2 1 2 s s + 2ζω n s + ω n2 二次のフィルターのステップ応答 2 n 除振のところでも出てきて いる強制振動の式 2 ζ は振動減衰比。 Q=1/2ζ の関係がある。 ラプラス変換の表から ω d ≡ ω n 1 − ζ , φ ≡ tan 2 −1 振動減衰 (0 < ζ < 1) 臨界減衰 (ζ = 1) 1−ζ 2 )ω n t ζ + 1 − 1−ζ 2 − (ζ + e 1−ζ 2 )ω n t output e −ζω nt sin(ωd t + φ ) 1 − 1− ζ 2 −ω t 1 − (1 + ωnt )e n vo (t ) = 1 −( ζ − ζ e 1 − 1 + 2 2 1− ζ (ζ > 1) 過減衰 ( 1−ζ /ζ ) time 2 STMにおけるフィードバック制御 におけるフィードバック制御 (1) フィードバック制御の利点 noise input Vi(s) N(s) + - H(s) G(s) RC filter + + output G( s) H (s) Vi ( s) + N (s) 1 + G( s) 1 + G (s) ループゲインG(s) が十分大きいとき、 - tunnel current current amp. log amp. amp. integral 1 Vo ( s ) − Vi ( s) = G ( s) 注意: (2) ノイズに対する安定性 1 倍になる。 G ( s) 少々G(s)がふらついたとしても HV amp. piezo expand output Vo(s) Logアンプは、高さの変化に 対して指数関数的に変化す るトンネル電流の変化を、線 形にするため挿入 入力: 高さの変化(nm) 偏差:制御により設定し たい値と出力値とのズレ (1) 制御性の良さ 偏差 + Vi(s) 分母はループゲイン+1 Vo ( s) = input Vo(s) tunnel current log amp. piezo expand 出力: 探針の高さの変化(nm) は、カットオフ周波数が1~5kHzのローパスフィルター成分を持っている。 フィードバック制御では、最も周波数の低いフィルターが重要になるので 1 1 + sT inst を加える。ここで Tinst=1/f0 で、 f0 は最も低いカットオフ周波数。 9 フィードバック回路の例 STMにおけるフィードバック制御 におけるフィードバック制御 (2) tunnel current current amp. log amp. amp. integral HV amp. ( 8mφ I = A exp h = A exp 10.25 nm −1 eV −1/ 2 φ h 2 h V = 109 I ) V Vo = Gl log i = Gl log e • 10.25 φ h + const Vconst Ga 1 sTint eg GH piezo expand GP (nm/ V) 1 1 + sT 1 1 + sTinst Y. Hasegawa, Ph.D. thesis (1991). STMにおけるフィードバック制御 におけるフィードバック制御 (3) STMにおけるフィードバック制御 におけるフィードバック制御(4) におけるフィードバック制御 Tinteg ≥ 4G0Tinst 全て掛け合わせると、ループゲインは 1 1 G ( s ) = G0 sTinteg 1 + sTinst * G0 を大きくすると、フィードバック制御の効果を増す。 注意: G0は、仕事関数、つまり表面の状態にも依存する ステップ入力に対する応答は、 F ( s) = ωn2 G ( s) = 2 1 + G ( s) s + 2ζω n s + ωn2 二次のフィルターの式 ω n2 = G0 / Tinteg Tinst ζ = Tinteg / 4G0Tinst 安定な制御のための条件は、 ζ ≥1 * 発振している状態からTinteg を増やしていき、共鳴発振が止まるまで 大きくする。 注意: Tinteg は探針応答の時定数ではない。 探針応答の時定数は~ Tinteg/G0.となる。 例えば、G0=1000 で finst=5kHz とすると、 finteg は~5Hzに設定される. 臨界減衰から過減衰 Tinteg ≥ 4G0Tinst 10
© Copyright 2024 ExpyDoc