様式 3 学 位 論 文 要 旨 研究題目 (注:欧文の場合は、括弧書きで和文も記入すること) Increased horizontal shoulder abduction is associated with an increase in shoulder joint load in baseball pitching ( 投球動作における水平外転角度の増加は肩関節負荷を増加させる ) 兵庫医科大学大学院医学研究科 医科学専攻 高次神経制御系 整形外科学(指導教授 吉矢晋一 ) 氏 名 高木 陽平 【はじめに】総務省の報告によると本邦における野球人口は 150 万人以上であり、そのうち約 1 割の 15 万人以上が肩・肘関節に問題を抱えている。投球障害の牽引として多くがオーバーユース に起因すると言われる一方で、不適切な投球が障害を増加させると報告されている。しかしなが ら、投球動作と障害の関連についての全容は明らかでない。そこで、本研究では皮膚マーカを用 いた解析システムであるモーションキャプチャ・システムを使用し、投球動作の 3 次元解析を行 った。 【研究目的】一般に投球障害の症状のほとんどが加速相で発現するといわれ、特に肩最大外旋位 (以下 MER と略)時に痛みの訴えが多い。しかし、MER における肩関節に加わる剪断力と上腕の 肢位との関係は明らかでない。そこで、MER 時の肩関節に加わる力を推定し、上腕肢位との関係 を明らかにすることを目的とした。 【研究方法】対象は本研究に対し同意を得られた野球投手 213 名とした。平均年齢は 17.6 歳(8-38 歳)であった。内訳は小学生 29 人、中学生 50 人、高校生 64 人、大学生 21 人、社会人 33 人、プ ロ野球選手 16 人であった。投球動作の計測にはモーションキャプチャ・システムを用いた。被験 者の皮膚上から 36 箇所の解剖学的骨特徴点を触診により検出し,赤外光反射マーカを貼付した。 投球マウンド周辺に設置した 7 台の CCD カメラを用いて体表上に貼付した赤外光反射マーカの三 次元空間位置を計測した。解析結果から関節全体にかかる力である関節間力を推定し、上腕肢位 との関連を検討した。 【研究結果】MER 時の肩関節に加わる前後方向の関節間力と水平内転角度に有意な相関がみられ た(r=-0.63p<0.01)これは、水平外転角度が大きくなると肩関節前方への負荷が大きくなるこ とを示している。 【考察】以前の研究において MER では肩関節前方に強い負荷がかかると報告され、MER で発生す る肩関節の投球障害には特に肩関節前方の剪断力が関与していることが考えられる。本研究結果 では、その MER における肩関節前方関節間力の増加は、肩関節水平外転角度の増加と関連すると いう結果が得られた。投球時の MER における肩関節水平外転角度の増加は肩関節周囲の軟部組織 や関節唇の損傷を引き起こすとともに、肩関節前方の負荷を増加させ投球障害の原因となること が考えられる。これらから肩関節の障害予防を目的とした投球指導において、MER における水平 外転角度が 1 つの指標になると考えられた。
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