No6

桐生南高校図書館発行
H27.10.7
蝶々夫人とエリス
フィギュアスケートの浅田真央選手がトリプルアクセ
ルをきめ、鮮烈な復帰を果たしました。そのフリーで使わ
れたのが、オペラ「蝶々夫人(Madame Butterfly)」で
す。
「蝶々夫人」は、1898 年アメリカの作家ジョン・ルーサー・ロングによって書かれ
た小説です。それを同じアメリカ人ディビッド・ベラスコが戯曲「蝶々夫人~日本の悲
劇 Madame Butterfly : A Tragedy of Japan」にしました(1900 年)。
他の用事でロンドンを訪れていたイタリアの作曲家プッチーニ が、その演劇を観
て非常に感動しオペラにします。そして、1904 年ミラノ・スカラ座でオペラ「蝶々夫
人」が初演され、何度かの改訂ののち、代表的な楽曲になったのです。
1900 年頃といえば、日本は明治中期、ヨーロッパ列強がアジア諸国に進出し、日本
も日清戦争(1894 年)
、日露戦争(1904 年)へと突入していきます。
「東洋」の「日
本」の「長崎」が舞台で、衣装の「きもの」も煌びやかで美しく、
「蝶々さん」が、夫の
帰りを待ちわびて歌うアリア「ある晴れた日に」は、ヨーロッパの人々の心を魅了し
ました。
あらすじ
【第1幕】
時は1890年代、舞台は長崎の港を見下ろす丘に立つ家。アメリカ海軍士官のピンカー
トンは、結婚仲介人ゴローの斡旋によって、現地妻として蝶々さんと結婚します。アメリ
カ総領事シャープレスが、ピンカートンの行為は軽率だと忠告しましたが、彼は聞く耳を
持ちません。
蝶々さんは武士の家に生まれましたが、父が切腹するなど没落して芸者となっていまし
た。このとき15才。結婚を心から喜んでいて、キリスト教に改宗までしました。しかし、
その改宗に怒った叔父の僧侶ボンゾが、結婚式に怒鳴り込み、他の親戚もあきれて帰って
しまいます。悲しむ蝶々さんでしたが、ピンカートンが彼女をなぐさめ、二人は初夜を過
ごしたのでした。
【第2幕】
結婚生活も束の間、ピンカートンがアメリカに帰ってしまって3年が経ちました。彼の帰
りをひたすら待つ蝶々さん。ある日、総領事シャープレスがピンカートンの手紙を持って
現れます。シャープレスはその手紙を蝶々さんに読んで聞かせようとしますが、ピンカー
トンの帰りを信じる蝶々さんを前に最後まで読むことができません。逆に、二人の間にで
きた3才の子を見せられ、ますます真実を話せなくなりました。シャープレスが帰ったあ
と、蝶々さんは長崎の港にピンカートンの所属する軍艦が入港したのを確認します。そし
て喜んで彼の帰りを待つのでした。
結局、一晩中寝ずに待っていましたが、彼は帰って来ません。朝、蝶々さんが子供と寝室
で休んでいると、ピンカートンとその妻ケートが訪ねてきます。女中のスズキから蝶々さ
んの思いを聞いたピンカートンは深く反省し、耐えられずそこから立ち去りました。直後
に蝶々さんが起きてきて、アメリカ人女性の姿を見たとき、彼女はすべてを悟ります。子
供を預かるというケートの申し出に、蝶々さんは彼が迎えに来るなら渡すと言いました。
そして、ピンカートンが駆けつけたときには、すでに彼女は父の形見の短刀で自害してい
たのでした。
「わかる!オペラ情報館
http://www.geocities.jp/wakaru_opera/madamabutterfly.html」より引用
参考文献:『オペラ鑑賞ガイド』(小学館)(本校図書館にあります。)
ところで、皆さん、このあらすじを読んで既視感にとらわれません
でしたか?
私は、森鴎外の『舞姫』を思い浮かべました。こちらは、舞台がドイ
ツ・ベルリンのため男女の役回りが逆転し、待つほうがエリス(16~
17 才)、捨てるほうが日本人留学生の太田豊太郎です。エリスは豊太
郎の子を生みますが、豊太郎の裏切りを知り、精神を病んでしまいま
す。奇しくも、鴎外が『舞姫』を発表したのは、1890 年でした。
(U)
文・絵
松本春野
原作 岩國哲人 (講談社)
終戦間もない出雲でのお話です。人々は助け合い、精一杯暮らしていました。
てつおは、戦争で父を亡くし、母が一人で子ども三人を育てていたため、てつおも小
学校から帰るとすぐ畑しごとを手伝いました。
5 年生になると、てつおは新聞配達をすることにしました。新聞を読みたかったので
すが、家には新聞をとる余裕がありませんでした。みはらのおじいさんは、てつおに新
聞を読みにおいでといってくれます。おじいさんが亡くなった後もおばあさんが、新聞
を読みにおいで、といってくれます。おばあさんの温かさが伝わってくるような優しい
絵が心を和ませてくれます。しかし、…。
人はこんなに大きな愛情をしめせるのだと、久しぶりに晴れやかな気持ちになりまし
た。さいごに思わず涙してしまいます。ひとりで、そっと、読んでください。(U)