燕市立燕東小学校学校だより 平成 27 年 7 月 6 日 No.7 ひたすら聴く、ひたすら待つ 教務主任 五十嵐 真紀子 河合隼雄(かわいはやお 1928-2007)さんを知っていますか。河合さんは臨床心理学者 の第一人者で文化庁長官も務められ、数々の名言を残しました。例えば、「人の心などわ かるはずがない」「物が豊かになると子育てが難しくなる」「世の中には下手な子育てはあ っても、どんな子にもあてはまる“よい子育て”というものはありません」などです。河 合さんのカウンセリングの核心は、何もしないことに全力をかける、つまり、ひたすらク ライアント(相談者)が動き出すまで「ひたすら聴く、ひたすら待つ」姿勢で理解を深め るのだそうです。 先日、この「ひたすら聴く、ひたすら待つ」という意味を再認識する機会を得ました。 PTA教養部主催の教育講演会(講師:関崎智弥様)でのことです。親子関係をキャッチ ボールにたとえ、子どもが投げたボールの色と違う色のボールを親が投げているから親子 関係が悪くなるという話を聞き、はっとしました。思い当たる節が多々あったからです。 お子さんが、「雨だから学校へ行きたくない。」と言 子: 雨だから学校へ行きたくない。 ったらどのように答えますか。学校に行く気になるよ 親: 行きたくないんだね。 うにいろいろ提案したり、説得したりするのではない 子: うん。だって、服が濡れるんだもん。 でしょうか。提案や説得よりも、「能動的な聴き方」 親: 服が濡れるのが嫌なんだね。 が効果的だそうです。右のように、親が子どもが言っ 子: うん。わたしの傘、小さいの。 た言葉を繰り返したり、自分の言葉に言い換えたり、 親: じゃあ、お母さんの傘を使う? 子どもの気持ちをくんだりすることで、子どもは自分 子: 使っていいの? の気持ちを分かってもらえた!と満足するのだそうで (その後、お母さんの傘は借りずに登校 す。余計なことを言わなくても、聴き方ひとつで、子 したそうです。) ども自身が問題を解決することができるのでしょう。 さて、講演会後、さっそく高校生の息子に「能動的な聴き方」を試してみました。いつ もより会話が続き、楽しい気分になりました。 相手の言葉を聞き、相手の気持ちをくむことは、親子関係だけでなく、上司と部下、教 師と子ども、夫婦、友人関係など様々な人間関係をよりよいものにすることができます。 「ひたすら聴く、ひたすら待つ」姿勢で相手の理解を深めることが肝心です。関崎さん は、「親子の心のかけ橋に雑草が生えていませんか。ひび割れていませんか。石が転がっ ていませんか。」と問いかけました。みなさんの心のかけ橋はどうでしょうか。丈夫なか け橋を築きたいものです。
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