「聞く」ということ

明化の教育
5月号(第423号)
平成27年4月30日
文京区立明化小学校
校長 溝畑 直樹
「聞く」ということ
-よい聞き手となるために-
校長
溝畑
直樹
左の写真をご覧ください。4月15日、1年2組
の教室で、野亦先生の話を聞く女の子の姿です。
その力強く、凛々しい後ろ姿は、
「私は今、先生のお
話をしっかり聞こうとしているのです。」と無言のう
ちに私たちに語りかけてくるようです。
おそらく、この少し前、先生からこのような話が
あったのだろうと思います。
「背中を伸ばして、手は
膝の上、話している先生の方に顔とおへそを向けて。
お話はそうやって聞くのですよ。」
このようにして聞かれると、話し手も一生懸命、相手のことを考えながら話そうとしま
す。そうしないと聞いている人に何だか申し訳ないような気持ちになるのです。そして、
話の中身だけでなく、自分の心も一緒に受け止めてもらったような気持ちになるのです。
立場を替えて。子供が話しているとき、私たち大人はどのようにその話を聞いているで
しょう。背中を伸ばして、手は膝の上…とまではいかなくても、今やっていることを止め
て、子供の話を聞こうとしているでしょうか。また、「聞く」ためには自分の感情を抑え
なければなりません。自分の考えと異なる意見が出てきた時に、不満に思って途中で話を
さえぎったり、聞かなくなったりするようでは、聞いていることにはなりません。
「よい話し手はよい聞き手が育てる」といわれます。子供たちに聞く力を育てるために
は、私たちがまず聞ける大人になりたいものです。子供たちの話を途中でさえぎって自分
の考えを話してしまうことは親子だけでなく、先生と子供との間にもありそうです。「人
の話とはこのように聞くのです。」というよいモデルが身近にあれば、聞く力は確実に育
ってくると信じています。
また、北欧のある地方では、誰かが話しかけて、他の誰かがそれに答える、つまり普通
の会話の間に、深呼吸一つ分くらいの「間(ま)」があるそうです。今、日本で会話をし
ている時にこの位の間が空くと、かなりの違和感があります。「どうしてすぐに答えてく
れないのだろう」「気を悪くさせてしまったのかしら」など、いろいろ考えてしまうよう
な時間です。高度情報化社会に慣れてしまった私たちは、すぐに反応することを「良きこ
と」にしてしまいがちです。子供と話すときには、その時間の流れを少しゆっくりにする
必要もあるでしょう。せかさず、ゆったりと思いをすべて話させてあげてください。
いずれ大きくなれば、なかなか自分のことは親に話さなくなります。「あのさ…。」とポ
ツリと話しかけてくる今のうちに、きちんと子供の話を受け止めましょう。それは思いの
外、子供にとって大きな力となるのです。
■□ 着任しました ■□
5月1日より特別支援教育担当指導員として重政 克成(しげまさ かつなり)が着任します。
よろしくお願いいたします。