「クォーター・アワー・ウォッチ」(略称 QHW)の活用資料 ㈱コムフレンド → 「楽しみにしているコーヒーブレイクの時間まで、もうすぐだ!」 砂時計のように、時間の経過に伴い●液晶表示が消えていくことで残り時間が 直感的にわかります。 ◎機能概要 QHW は内部時計を持っており、セットしたカードの時刻と現在時刻との差を黒丸液晶ドッ ト●(以下●)で表示します。2 時間以上残り時間がある時は、8 個全ての●が表示され、 15 分経過毎に 1 つずつ●が消えていきます。セットした時刻になり、全ての●が消えると アラーム音と●の点滅が 1 分間続いて知らせます。カードを本体から外すと OFF になりま す。 ◎特長 「メモ・デイプランナー」や、 「Cozyx24 ウォッチ I 型」が、一日のスケジュールを全て見 通しながら、今が一日の中でどのあたりで、その時間帯には何があるかを伝えることがで きる時計であるのに対して、QHW はある一つの事柄に絞っているため、伝えたいことがら がわかりやすくなります。 また、単4乾電池 3 本で動作しますので、携帯して持ち歩くことができます。 使用する人が自分のペースに合わせて使え、カード 1 枚だけを使って、あるひとつの事柄 だけを思い出すという単なる忘れを防ぐための使い方から、何枚ものカードによって自立 した生活プランを立てるという使い方まで、幅広い使い方ができます。 あらかじめスケジュールに合わせてカードを準備しておけば、QHW 本体へのカードの着脱 はワンタッチでできるので、使用者本人が自分で着脱できます。カードの着脱が電源の ON/OFF になっており、他に余計なボタンなどはないので、とても簡単に使えます。使用 者本人が自分自身で使えることで、自信をもち、自立的な行動につながり、生活が落ち着 いていきます。 ◎困っている状況・解決したい状況 自閉症や知的障害者には、例えば休憩時間はいつなのかとか、家に帰るのはいつなのかと かいう質問を非常に頻繁にして、本人も周囲の人も落ち着かない状態であることがよく見 られます。ある行動までどれくらいの時間があるかがわからないために、何時間も前から 待っていたり、あるいは別の事柄には遅れてきたりします。時間に対して大きな不安やス トレスを感じている状況。 ◎使用目的・目標 時間がわかることで、時間に対するストレスを減らし、ある行動をとる前に何時間も前か ら待たなくてもよいようにする。 あとどれぐらいで何があるかがわかって、受け身ではなく自立的に行動できるようになる。 ◎使用方法 機器の導入には、使用者にとって楽しみな事柄・使用者自身が得をする状況から使います。 理由は、機器に興味をもってもらう、機器が自分にとって役に立つものと体感し、強く実 感してもらうためです。決して支援者側の都合や使用者の嫌いなことから使わないで下さ い。機器が自分の嫌なことをさせるものだと思い、機器を拒否してしまいます。 まず、例えば楽しみにしているコーヒーブレイクまでの時間がわかるようにします。使用 者の理解できるレベルに合わせて、コーヒーの写真、イラスト、シンボル、文字のいずれ か、あるいは組み合わせてピクチャーカードに貼ります。写真・イラスト・シンボル・文 字の選択は、使用者がふだん使用しているスケジュールでの表記と同じものを使うと理解 がスムーズです。よって、QHW の導入の前提として、日常的にその人が理解できているス ケジュールを表など目で見てわかるようにして提示していることが重要です。 スケジュール例 8時 バスに乗って 作業所へ出かける 10 時 木工作業をする 12 時 昼ごはんに ラーメンを食べる 13 時 花の世話をする 15 時 コーヒーブレイク・休憩 17 時 家に帰る 導入時に時間の経過と●液晶表示が消えていくこととの因果関係を理解し、全て●が消え ると目的の楽しみな事柄:コーヒーブレイクがあると体感するのに、最初は1つ●液晶表 示が点灯している 15 分前、あるいは2つ点灯している 30 分前ぐらいから使います。 ☆QHW は、①「次にする事柄が、今からどれぐらいなのかを伝える使い方」の他に、 ②「今している事柄が何で、それを後どれぐらいするのかを伝える使い方」があります。 併用すると混乱するので、どちらかの使い方をします。 ②「今している事柄が何で、それを後どのぐらいするのかを伝える使い方」の例 今していること=「木工作業」 後どのぐらいするのか=「QHW ●4 つ分」 スケジュール表と対応させて、スケジュール表には、今している事柄を赤枠などでマーキ ングしておくとわかりやすいです。次のスケジュールになったら赤枠も次のスケジュール 上に動かします。 ◎効果 例えば、大好きなスポーツの TV 番組がある時は、それが午後であるのに午前中から TV の 前に座り込んで何もしない対象者が QHW を使用したところ、まだ大分時間があることを 理解し、他のことも安心してするようになりました。 カードは、1~2 枚から使い始め、徐々に使いこなせるようになるのに、障害の程度等により 普通は 1~6 ヶ月ぐらいの期間を必要とします。 平均的なカードの利用枚数は 5~10 枚ぐらいです。 大切なことは、使用者本人が自分のスピードに合わせて使いこなすところにあります。 「そろそろ昼食の時間だ」などとわかるようになり、自信を深め、一日の行動の枠組みが しっかりして、まわりの支援者に依存することが少しずつ減っていきました。 良い効果を得るには、使用者自身が生活状況の中で良い変化を経験すること、使いたい事 柄を自分で選択できることが重要です。モチベーションが高いことが成功につながりやす いです。 ~QHW を活用して~ 自閉症児の M 君を指導する特別支援学校の先生と、 M 君のご両親の声をご紹介いたします。 特別支援学校の S 先生の声 今していることを何時までするのか、楽しみにしていることが何時に始まるのかというこ とがわかると、生活を今より以上に楽しむことが出来るのはないでしょうか。 自閉症の人や知的障害のある人たちに接していると、今していることをいつまでするのか がわからないことが原因で、一般的に受け入れられない逸脱した行動をしてしまうことが 多いことに気がつきます。目で見てわかるように活動を整えてみたり、時計に印を付けて みたり、タイマーを使ったりして過ごしている時間に見通しをもつことが出来るようにす る努力をしてきた人も少なくないと思いますが、時間のわからない子どもに時計を持たせ るという発想はなかなか持てなかったのではないでしょうか?「時計の針を読むことさえ できればアナログの時計を持たせることができるのだが、デジタルの時計では次の時間ま での見通しが持ちにくいし・・・」と考えたことのある人も多いと思います。 自閉症の M 君は、QHW を身につけることによって、時間の見通しを持つことが出来るよ うになりました。M 君はそれまで、何時までにするのかわからないことが原因で、大きな パニックを何度も起こしたことがありました。その度に周囲にいる子どもたちを避難させ、 割れたガラスの破片を片付けていたものです。ところが、この時計をスケジュールと一緒 に使うことが出来るようになって、M 君のパニックは激減したのです。QHW に表示され た黒丸液晶表示●をみて、見通しを持つことが出来るようになったからだと考えています。 今では、自分で活動のカードを替えながら、自分でスケジュールの管理をすることが出来 るようになってきています。 M 君のご両親の声 自閉症の息子は、時計を読むことはできるのですが、残り時間を計算することが出来ず、 「待 つ」ということがとても苦手な子でした。「QHW」を使い始めてから、●の数で残り時間 を自分なりに納得することが出来るようで、その見通しが彼に安定を与えているようです。 家庭内でのいろいろな行事など、自分だけの都合で動けない時などに、残り時間を伝える ことが出来る「QHW」は、我が家の必需品です。
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