シリーズ 商圏分析と立地診断[第12回] 出退店の傾向を ライフスタイル特性で分析 今月はホームセンター(HC)の出退店の傾向を、 GIS(地図情報システム)を使って分析する。 技研商事インターナショナル(株)発行の『マンス している某ファストフード店の出退店分析を参考に、 2014 年に出退店した HC(出店 119 店、閉店 46 店。 移転、業態転換を含む)の地域特性を分析した。 (田中) リーレポート/別冊 GSI・店舗分析 _ 総合編』に掲載 地図データ提供:国際航業(株)/資料提供:技研商事インターナショナル(株) 「繁華街型」と「郊外型」が ほぼ半数 これをもう少し詳しく分析するた 出店数 閉店数 純増数 めに、店の半径 1 キロ圏の夜間人口 郊外型 60 21 39 下の地図は、2014 年に出退店し と昼間人口算出。夜間人口の方が多 繁華街型 59 25 34 た HC の分布図。マル印が出店、サ い店を「郊外型」 、昼間人口の方が 合計 119 46 73 ンカク印が閉店を示している。地図 多い店を「繁華街型」として、2 つ を見たままの大雑把な印象では、関 のタイプに大別したのが右の表。出 ここからさらに「居住者プロファ 東・近畿・九州の都市部に集中して 店数・閉店数ともに、ほぼ半分の数 イリングデータ」を使用して、各店 出店しているように見える。 値に分かれている。 に地域特性を付与していく。 図1 58 ● 2015:05 シリーズ 商圏分析と立地診断[第 12 回] 表1 「居住者プロファイリングデータ」 っている。この出退店数には移転も 人口比率では 9.23%がこのクラス は、国勢調査データの中からライフ 含まれているため、出店も多いが閉 ターに属している。クラスターは全 スタイルなどに関連深い 60 項目(年 店も多いという結果になったものだ 部で 30 あるので、平均値は 3.3%。 齢別人口、世帯構成、住居、職業な と思われる。ただ、単なる撤退では つまりこのクラスターは、平均の 3 ど)を分析し、日本全国を 30 の地 なくスクラップ&ビルドをしている 倍弱の構成比を占めていることにな 域特性に分類したクラスターデー ことと、純増が 3 店あることから、 る。 タ。各クラスターの特性は表 1 の通 り。 出退店数を 30のクラスターに分類 「近郊型老夫婦」が繁華街型の HC 年齢別の人口分布では 65 ∼ 69 歳 にとっては重要なクラスターである を筆頭に 55 歳以上の高齢者の構成 ことが分かる。 比が平均よりも高いことが分かる。 一方で郊外型のデータをみると、 世帯人数は 2 ∼ 3 人、年収は 300 ∼ やはり「近郊型老夫婦」クラスター 400 万円がもっとも平均値よりも高 が出店・閉店ともにもっとも店数が い。貯蓄は 300 ∼ 1,000 万円の層が 住者プロファイリングデータ」別に 多い。11 店が出店して 4 店が閉店、 平均よりやや低く、4,000 万円以上 出店と閉店の数をまとめたもの。表 純増は 7 店だ。 「近郊型老夫婦」は が平均よりやや高いものの、ほぼ全 中に昼間型としてあるのが繁華街型 郊外型 HC にとっても重要なクラス 国平均と等しい数値といえる。また の店(表 2 と図 2) 、同じく夜間型と ターだ。 住宅特性は一戸建ての持ち家比率が 表 2 ∼ 3 お よ び 図 2 ∼ 3 が、 「居 してあるのが郊外型の店(表 3 と図 3) 。 繁華街型の店では、「近郊型老夫 高く、共同住宅かつ借家の比率が少 出店も閉店も多い 「近郊型老夫婦」 婦」のクラスターが出店、閉店とも ではこの「近郊型老夫婦」とはど にもっとも店数が多い。出店数が のようなクラスターなのか。それを 11 店、閉店数が 8 店で純増 3 店とな 示したのが図 4。 ないことが分かる。 一戸建て向けの住設やガーデニン グ、高齢者向けサービスが重要な地 域と思われる。 2015:05 ● 59 表2 図2 表3 図3 (いわゆるニューファミリー層)が ラスター(図 6)も、繁華街型の出 多いことが分かる。またこの図表に 店が 6 店、閉店は 2 店の純増 4 店と、 「ガテン系ニューファミリー」の はないが、第二次産業従事者が多い もっとも店数を増やしている。また クラスター(図 5)は、繁華街型の 地域でもある。年収は 300 ∼ 700 万 郊外型では、出店が 3 店に対して閉 出店が 6 店と二番目に多い。閉店は 円が多く、貯蓄は 1,000 ∼ 4,000 万 店は 0 店、純増は 3 店となっている。 2 店と少ないため、純増ではもっと 円の比率が高い。住宅特性はおおむ いずれも閉店数が少ないということ も多い 4 店となっている。一方郊外 ね全国平均だが、民営の借家比率が は、スクラップ&ビルドが必要な古 型では 3 店が出店して 4 店が閉店し 高くなっている。 い店が少ないということだ。すなわ 繁華街型の出店が多い 「ガテン系ニューファミリー」 ており、1 店マイナスとなっている。 マンションなどの集合住宅向けの ち、ここ何年かで見直されてきた新 このクラスターは、特に繁華街型 住設や室内園芸、アウトドアやレジ しい地域特性と言えるのではないだ HC にとって重要な地域特性を持っ ャー、ベビー・キッズ用品などの需 ろうか。 ていると思われる。 要が高い地域だと思われる。 ない。年齢別人口は、0 ∼ 9 歳と 30 人口 比 率 は 5.66 %。 年 齢 別 人 口 では 0 ∼ 14 歳と 25 ∼ 44 歳が多く、 かつ世帯人数では 3 ∼ 4 人が多いこ とから、小さい子供を持つ核家族層 60 ● 2015:05 人口比率は 2.88%と平均よりも少 閉店の少ない 「都市型ニューファミリー」 「都市型ニューファミリー」のク ∼ 39 歳の比率が突出して高い一方 で、50 歳以上の比率が低い。前項 の「ガテン系ニューファミリー」よ シリーズ 商圏分析と立地診断[第 12 回] りもさらに年齢が若いニューファミ 図4 リー層だ。 世帯人数は 3 ∼ 4 人。年収は 300 ∼ 400 万円の比率が突出して高い。 貯蓄は 500 万円以下が多く、一戸建 てや持ち家の比率も低い。 郊外型で閉店の多い 「近郊ニューファミリー(低所得)」 「近郊ニューファミリー (低所得)」 のクラスター(図 7)は、繁華街型 では出店 1 店、閉店 0 店の純増 1 店 図5 だが、郊外型では出店 2 店、閉店 3 店で 1 店マイナスとなっている。特 に郊外型では、似ている地域特性を 持つ「近郊ニューファミリー(高所 得)」が出店 4 店、閉店 0 店の純増 4 店なので、店数が減っていること に少し違和感がある。閉店している 3 店はいずれも過小規模の HC なの で、スクラップ&ビルドの途中なの ではないかと思われる。 人口比率は 6.64%と、平均のほぼ 図6 倍。年齢別人口は「都市型ニューフ ァミリー」ほど極端ではないものの、 0 ∼ 9 歳の小さな子供を持つニュー ファミリー層が多いことが分かる。 世帯人数ではファミリー層だけで なく、単身世帯が平均よりも多い。 年収では 300 ∼ 400 万円が、貯蓄で は 300 万円未満がそれぞれ平均を大 きく上回っているため、低所得層が 多いということが分かる。住宅は一 戸建ておよび持ち家が低いのは他の 図7 ニューファミリー層と同じだが、長 屋建や共同住宅の比率が高いことが 特徴だ。 今回の分析は出退店したすべての HC を対象としたので、さまざまな 売場面積や得意部門の店が混在して しまっている。各社で傾向分析をす る場合には、これらをさらに細分化 すると今後の出店に参考となるデー タが取れる筈だ。 2015:05 ● 61
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