最適潮流計算の可視化

最適潮流計算の可視化
E98066
1.
はじめに
菅原
大介
[1]
近年, 電力需要の増加に伴い , 電源の大容量化
や電源から負荷の遠隔化により電力系統はますま
す大規模化している。この様な大規模な電力系統
に対して信頼性を確保した上でより経済的な運用
が求められている。また, 電力システムの最適な運
用方法の決定,拡充計画の立案のためには,送電
系統内の各点における電圧や電流などの分布を知
る事が重要となる。
そ の た め に 用 い ら れ る 最 適 潮 流 計 算 (OPF) は
様々な運用制約を満たす運用状態の中で,目的関
数(運用コストを最小にする等)を最良とする運用
状態を決定する計算であり,電力系統解析での必
要性と用途は極めて広いものである。
しかし,その解析計算の結果として得られる大
量のデータから系統の特徴を把握する事が困難で
ある。
そこで本研究において,潮流計算プログラムで
の計算を行ない,その計算結果から系統の特徴を
視覚的に把握するために可視化について検討を行
なった。
2.
最適潮流計算
指導教員
藤田
吾郎
表 1 最適潮流計算の目的関数と制約条件の内容
1. 燃料費最小化
目的関数
2. 送電有効電力ロス最小化
3. 送電無効電力ロス最小化
4. 調相設備量最小化
など
1. 母線電圧の範囲
2. 発電機有効電力出力の範囲
制約条件
3. 発電機無効電力出力の範囲
4. 調相設備量の範囲
5. 線路潮流の制約
など
本研究では, 図 1 に示す様な 3 機 9 母線電力系統
で計算を行なった。
Bus6
Bus5
[1] [2] [3]
最適潮流計算(OPF)は, 近年の急速な計算機性能
の向上や計算アルゴリズムの改良により, 欧米を
中心に実用化プログラムが開発されてきている。
特に,電力市場の自由化が進んでいる国々では, 電
力系統の計画・運用の問題に対して最適潮流計算
(OPF)を積極的に活用し,送電アクセスの解析や評
価への応用を検討している。
最適潮流計算(OPF)とは, 所定の負荷パターンと
系統パラメータに対して多数の等式と不等式から
なる制約条件を満足しながら,送電損失,調相設
備運用あるいは燃料コストなどの目的関数を最小
にする様にすべての変数を決定する非線形最適化
問題である。
表 1 に最適潮流計算(OPF)の目的関数と制約条件
の主な内容を示す。
Bus3
Bus2
図1
Bus1
Bus4
3 機 9 母線電力系統図
計算の順序は,
①初期状態
②発電機制約を考慮
③送電線制約を考慮
④送電線脱落時の場合
の順で行なった。
3.
可視化
計算において得られたデータ量は多いので, こ
れらを視覚的に捉える為に可視化を行なう。本研
究での可視化は, 表 2 に示す様な方法を用いた。
表2
円の半径
矢印の向き
ブランチの太さ
可視化における方法
ノードにおける発電量及び負荷
有効電力の流れる向き
有効電力の平均値
①∼④の状態の計算結果を可視化した図を図 2
∼図 5 に示す。
図 3 では送電線 2-4 と 3-5 に過負荷が生じてい
るため, 母線の色が他と比べて異なっている事が
分かる。また, 図 5 においては送電線脱落が起き
た場所によって脱落箇所が異なるが, この図では
送電線 1-2 が脱落した状態を表示した。
4.
①初期状態の可視化
過負荷
検討結果
初期状態から制約を加える, または事故が起き
る事によって, 発電機の発電量, 有効電力の変化
が円の半径や線の太さの変化で見て取れる。また
矢印の向きも変化している箇所があることが分か
る。
問題点としては, 可視化した図について発電量
や有効電力の数字の表示が見づらくなってしまっ
た点があげられる。
5.
図2
過負荷
図3
②発電機制約を考慮した状態の可視化
過負荷解消
まとめ
本研究では, 最適潮流計算プログラムでの計算
を行ない, またその結果を可視化する為のプログ
ラムを作成した。
今後は, この点について改善し更に図が見やす
くなるプログラムを検討したい。また, 発電量や有
効電力以外の値を表示出来る様にプログラムを作
成し, それらについても一目で把握できる様にし
たい。
文
過負荷解消
図4
③送電線制約を考慮した状態の可視化
献
[1] Allen J. Wood, Bruce F. Wollenberg,
“Power Generation,
Operation, and Control” , Wiley, (1996)
[2]
西川
一・三宮信夫・茨木俊秀,
『最適化』,岩波書店,
(1982)
[3]
関根泰次,『電力系統解析理論』,電気書院, (1971)
送電線脱落
図5
④送電線脱落時の可視化