本来感が高校生の心理的ストレス過程におよぼす影響 養護教諭 渡會 文映 はじめに このたび,山形大学大学院教育学研究科(教育心理 にも興味があり,また,精神的に健康な心理状態と自 尊感情やストレスとの関係を調べることにより,精神 学分野)において研修する機会に恵まれ,その集大成 的に健康な生徒を育てるために役立てることができ として修士論文を提出することになりました。調査に るのではないかと思い,あわせて調査することにしま 際しましては,先生方をはじめ生徒のみなさんにもご した。精神的に健康な状態を調べるために今回用いた 協力を賜り無事に提出することができました。お礼の のは,アドラー心理学における健康なパーソナリティ 意味も込めまして,ここに調査結果を報告したいと思 という考え方です。 岸見(2003, 2007)によると,アドラー心理学では, います。 近年,心理学の分野では,不登校やいじめをはじめ 精神的に健康であるために欠かせない条件を三つあ とするさまざまな問題行動の発生を,生徒が日常の学 げています。一つ目は, 「自己受容」です。アドラー 校生活で経験する心理的ストレスから考えようとす は「大切なことは何が与えられているかではなく,与 る研究が数多くみられます。たとえば,岡田(2002) えられているものをどう使うかである」と述べ,自分 は,中学生を対象にした調査で,ストレッサー(スト に与えられているものを好きになる,すなわち自分を レスを生じさせる刺激のこと)を受けたとき,情動反 受け入れることがまず必要であるとしています。二つ 応(怒り・不安・悲しみといった感情)がまず起こり, 目は, 「他者信頼」です。たとえ自分のことを受け入 続いて「攻撃」や「ひきこもり」などのストレス反応 れることができても,まわりの人は隙あれば私を陥れ (ストレッサーによる心身への影響のこと)が起こる ようとしている敵である,と考えていたのでは,健康 ことを明らかにしています。このほかにも,問題回避 的とはいえない,人々は私の「仲間」であると感じら 型のコーピング(情動反応やストレス反応が生じると れることが二つ目の条件となります。三つ目は「他者 何とかしようとする行動のこと)はストレス反応を高 貢献」です。自己受容もでき,他者信頼もできるが, める傾向にあることなどが明らかにされています。 自分がまったくの役立たずだと思っていては健康的 ところで,コミュニティ心理学という分野では,問 ではない,自分は役に立っている,と感じられること, 題発生の予防を考える際に用いられるAlbeeの予防等 自分の存在そのものが他の人に貢献していると考え 式という考え方があります(図 1) 。この概念を生徒 られるようになることが三つ目の条件となります。ま の問題行動の発生にあてはめてみると,分子を減少さ た,アドラー心理学は正常な,あるいは健康なあり方 せ,分母の「対処能力」や「社会的支援網」 ・ 「自尊心」 についてはっきりとしたイメージを持っており,しか を増やすことが問題発生を小さくすることにつなが もこれを達成するための方法が非常に具体的に提案 ると予想されます。これまでの研究では,対処能力や されていることも学校教育に活かすことを考えた場 社会的支援網のストレス過程への影響を検討した研 合,大きな利点であると考えました。 究は多くみられますが,自尊感情をも含めた研究はあ まりなかったため,今回,本校生を対象に対処能力・ 調査対象 社会的支援網・自尊感情を含めたストレス過程の研究 1~3 年生 457 名(有効回答数 309 名,有効回答率 をすることにしました。 危険因子(ストレス+傷つき やすさ) 問題発生 = の大き さ 保護因子(対処能力+社会的支援網+自尊心) 67.6%) 。 調査時期・手続き 2009 年 12 月。ロングホームルームの時間に無記 名・個別記入形式の質問紙調査を約20分かけて実施。 図1 Albeeの予防等式 (中野,2001) また,養護教諭という立場から, 「精神的に健康で ある」とは,どのような心理状態なのか,ということ 調査内容 1) 本来感尺度(表 1) 本来感とは自尊感情の一種でそれを測る調査項目で す。4 件法(1.あてはまらない,2.あまりあてはまらな です。 「問題焦点対処」とは,問題の原因を考えたり, い,3.ややあてはまる,4.あてはまる)で尋ねました。 原因を取り除くために何かを変えようとする対処です。 2) Rosenberg の自尊感情尺度(表 2) 「逃避的対処」とは,自ら問題を解決することをあき 心理学で自尊感情を測るときに最もよく使われる調 らめる対処です。 「情緒焦点対処」とは,自分の感情に 査項目です。本来感と同じく 4 件法で尋ねました。 焦点を当てる対処です。4 件法(0.ぜんぜんしない, 3) 精神的健康尺度(表 3) 1.あまりしない,2.少しした,3.よくした)で尋 アドラー心理学の精神的に健康なパーソナリティに ねました。 ついて測る項目です。 「他者貢献」 ・ 「自己受容」 ・ 「他者 8) ソーシャル・サポート尺度(表 8) 信頼」の三つの領域からなります。5 件法(1.ぜんぜ ソーシャル・サポートとは,あ る 人 を 取 り 巻 く 、 んあてはまらない,2.あまりあてはまらない,3.どち 家族、友人、地域社会、専門家、同僚など らともいえない,4.ややあてはまる,5.とてもあては か ら 受 け る 様 々 な 形 の 援 助 の こ と で す 。周囲 まる)で尋ねました。 の人から普段どのような援助を受けているのかを, 父, 4) 高校生用学校ストレッサー尺度(表 4) 母,きょうだい,今通っている学校の先生,友人につ 一般的に高校生が学校生活で経験するストレッサー いて,5 件法(1.まったくあてはまらない,2.あま (ストレスを生じさせる刺激のこと) を測る項目です。 りあてはまらない,3.ややあてはまる,4.かなりあ 「教師との関係」 ・ 「学業」 ・ 「友人との関係」 ・ 「部活動」 ・ てはまる,5.非常にあてはまる)で尋ねました。 「校則・規則」の五つの領域からなります。ここ1ヶ 月間の経験頻度(0.ぜんぜんなかった,1.あまりな 結果と考察 かった,2.たまにあった,3.よくあった)と嫌悪性 1. 本来感がストレス過程に与える影響について (0.ぜんぜん嫌でなかった,1.少し嫌だった,2. 1) 本来感低群のストレス過程の特徴 かなり嫌だった,3.とても嫌だった)をそれぞれ 4 本来感とは自尊感情の一種です。自尊感情や精神的 件法で尋ねました。 健康がストレス過程に与える影響についても分析しま 5) 情動反応尺度(表 5) したが,本来感の結果と似通っていたので,ここでは ストレス反応(ストレッサーによる心身への影響の 本来感のみを取り上げて説明します。 こと)のうち感情面に現れる反応を測る項目です。 「怒 まず, 本来感尺度の得点が高い群 (高群) と低い群(低 り」 ・ 「悲哀」 ・ 「不安」の三つの領域からなります。こ 群)では, ストレス過程にどのような違いがみられるか こ 1 ヶ月間にどのくらいあったかを 4 件法(1.全く を検討するために, 本来感の平均値 16.6 を基準に低群 あてはまらない,2.少しあてはまる,3.かなりあて と高群に分け,多母集団パス解析という分析を行いま はまる,4.非常にあてはまる)で尋ねました。 した(低群 127 名,131 名) 。その結果が図 2 です。図 6) ストレス反応尺度(表 6) 2 をみると, 「学校ストレッサー」から「情動反応」へ 情動反応以外のストレス反応を測る項目です。 「身体 の矢印に「.67***」とあります。この数字はパス係数と 的反応」 ・ 「依存」 ・ 「引きこもり」 ・ 「表出性攻撃」 ・ 「関 いい,この係数が大きいほど影響が強いことを表して 係性攻撃」 ・ 「無気力」の六つの領域からなります。 「引 います。 「***」という記号は,0.001 の有意水準で有意 きこもり」 とは不登校につながる恐れのある反応です。 であることを表しています。有意とは、統計学の用語 「表出性攻撃」とは器物破損や対人暴力につながる恐 で, 「確率的に偶然とは考えにくく、意味があると考え れのある反応です。 「関係性攻撃」とはいじめにつなが られる」ことを指します。0.05 水準で有意ならば * , る恐れのある反応です。情動反応と同じく 4 件法で尋 0.01 水準と 0.001 水準に対してはそれぞれ ** , *** ねました。 と表示します。この場合, 「学校ストレッサー」が「情 7) コーピング尺度(表 7) 動反応」に与える影響は,パス係数.67 で 0.001 の有 コーピング(情動反応やストレス反応が生じると何 意水準で有意である,ということになります。つまり, とかしようとする行動のこと,対処)を測る項目です。 「学校ストレッサー」が「情動反応」に確率的に偶然 「援助要請対処」 ・ 「問題焦点対処」 ・ 「逃避的対処」 ・ 「情 ではない影響を与えているということになります。同 緒焦点対処」の四つの領域からなります。 「援助要請対 じように図 2 を見ていくと, 「情動反応」から「身体」 処」とは,問題解決のために他者に援助を求める対処 や「依存」といった反応への矢印にもすべて*印のつ いたパス係数がついています。ちなみに,分析の際は, せたりといった「逃避的対処」を高群に比べ多く使っ 「学校ストレッサー」から「身体」等のストレス反応 ていて,そのことが情動反応やストレス反応を高めて にも矢印を引いて分析しましたが,こちらはいずれも しまっていることがうかがえます。そして,解消され 有意なパス係数はみられませんでした。つまり,本来 ない情動反応は特に,ものをけとばしたり,こわした 感を低く感じている人たちは, 「学校ストレッサー」を くなる,他の人に暴力をふるいたくなるといった「表 受けたときに,まず「情動反応」が起こり,その次に 出性攻撃」として表れていることがうかがえます。 「身体」等のストレス反応が起こっていることがわか このような低群の生徒には,情動反応の段階で介入 りました。ストレス反応の中でも特に「表出性攻撃」 する必要があると考えられます。例えば,キレて感情 のパス係数は.98 と最も大きく,低群は, 「情動反応」 的になっている生徒が保健室に来た場合,養護教諭が を「表出性攻撃」として表していることがわかりまし 生徒の感情の整理を手伝い,問題解決に向けていくつ た。次に,高群の結果である図 3 をみてみると, 「学校 かの選択肢を検討するように手助けすることで,生徒 ストレッサー」から「情動反応」へのパス係数は.35 自身の対処能力を高めつつ,自分で問題に対処できた と低群よりも低い数値となっています。 「情動反応」か ことにより生徒の自尊感情をも高めることが可能であ ら「身体」等のストレス反応へのパス係数も低群に比 ると考えられます。このように,教師や養護教諭が感 べ,いずれも低い値となっており, 「表出性攻撃」にい 情整理の支援者となることで, 生徒の対処能力を高め, たっては,.54 と半分近くに減っています。このこと さらには自尊感情をも高めることが可能であると考え から,低群と高群では,ストレッサーを受けたときに られます。これら一連の対応を Albee の予防等式に当 起こる情動反応やストレス反応の量に違いがみられる てはめると,分母部分にあたる対処能力・自尊心・社 可能性があります。 会的支援網の三つすべてを高めることになり,問題発 そこで,低群と高群との間で,ストレッサー得点, 生の大きさを小さく抑えることが可能になると考えら 情動反応得点,ストレス反応得点に差があるのかどう れます。情動反応への介入の際は,STEP を用いた支援 かを検討するために分散分析という分析を行いました が有効かもしれません。STEP とは,アドラー心理学を (図 4) 。*印がついているグラフは,統計的に有意な ベースにした子育ての教育プログラムの一つですが, 差がみられたグラフです。図 4 をみてみると,ストレ そのプログラムの中には教育にも応用可能なカウンセ ッサーには*印がありません。つまり,統計的に低群 リング技法が多数含まれているからです。 と高群のストレッサー得点には差がないことになりま す。これは,低群も高群も受けているストレッサーの 2) 本来感高群のストレス過程の特徴 量に違いはないことを意味します。ところが,情動反 次に, 高群の結果についてみていきたいと思います。 応とストレス反応のグラフをみると,高群よりも低群 図 3 をみると,低群とは違い, 「学校ストレッサー」か のほうが,有意に平均値が高いことがわかります。つ ら「身体」 ・ 「依存」 ・ 「無気力」 ・ 「表出性攻撃」へのパ まり,受けているストレッサーの量が違わないにもか ス係数が有意でした。また,低群と同様に「学校スト かわらず,低群のほうが情動反応やストレス反応の量 レッサー」から「情動反応」を経由した「身体」等の が多いことがわかりました。 ストレス反応へのパス係数も有意でした。 この違いがどこからくるのかを調べるために,コー 本来感を高く感じている個人は,自己の感情を抑圧 ピング得点についても同様に分析しました(図 5) 。図 せず,その感情に気づき効果的に処理する能力がある 5 をみると, 「問題焦点対処」 ・ 「情緒焦点対処」 ・ 「逃避 ため(伊藤・小玉,2005) ,ストレッサーとストレス反 的対処」に*印がついています。このうち,低群が高 応を結びつけることができており,すなわち,ストレ 群に比べて有意に得点が高かったコーピングは「逃避 ス反応がストレッサーからの影響を受けて起きたもの 的対処」のみです。問題回避型のコーピングはストレ であることを自覚できているので,ストレッサーから ス反応を高める傾向にあることが先行研究で明らかに ストレス反応へ直接伸びたパス係数が有意だったと考 なっていますが, 「逃避的対処」も問題回避型と同様の えられます。また,ストレス反応への影響を無理に抑 質問項目を用いています。つまり,本来感を低く感じ えず出せていることの表れなのかもしれません。 ている人たちは,ストレッサーを受けたときに,どう 図 2 の低群の結果と見比べると, 「ストレッサー」か しようもないのであきらめたり,時のすぎるのにまか ら「情動反応」を経由したストレス反応へのパス係数 はいずれも高群のほうが低く,特に「学校ストレッサ がえます。すなわち,他者に貢献できているから,困 ー」から「情動反応」および「情動反応」から「引き ったときに助けてもらえるといったギブアンドテイク こもり」 ・ 「表出性攻撃」へのパス係数は低群の約半分 の関係がうかがえます。ただし, 「他者貢献」の平均値 となっています。これも,自己の感情に気づき,効果 が、他の二つの領域に比べて若干低かったため,高校 的に処理する能力によるものであると解釈できます。 生では「人の役に立てている」という貢献感があまり それを裏付ける結果として,図 5・6 をみてみると,高 持てていないため,ストレス反応等への影響が弱かっ 群は, 「問題焦点対処(問題の原因を考えたり,原因を た可能性もありま。今後「他者貢献」が高い群への調 取り除くために何かを変えようとする対処) 」や「情緒 査をしていけば,本来あるべき姿が見えてくるかも知 焦点対処(自分の感情に焦点を当てる対処) 」を低群に れません。 比べ有意に多く選択しており,また,ソーシャル・サ 松崎(2008)では,Q-U アンケート満足群出現率が 8 ポート(あ る 人 を 取 り 巻 く 、 家 族 、 友 人 、 地 割以上の学級では,本来感の得点も高いことが明らか 域社会、専門家、同僚などから受ける様々 になっていますが,このような学級では,学級集団で な 形 の 援 助 の こ と )も低群に比べ多く得ています。 の問題解決などに自分が貢献できていることの喜びや そして,図 4 をみると,受けているストレッサーの量 その集団の一員であることの喜びが学習意欲までも喚 に有意な違いはありませんが,情動反応もストレス反 起していることが明らかにされており,貢献感を持て 応も低群に比べ有意に少ない結果となっています。こ ていることが本来感を高めることにつながっています。 のことからも,本来感を高く感じている人たちは,自 本研究でも,精神的健康と自尊感情および本来感との 分の感情に気づくことができており,その先のストレ 相関をみると(表 9),「他者貢献」と「自尊感情」 ス反応へと移行しないように適切なコーピングを選択 (r=.44)および「本来感」(r=.51)との間には したり, ソーシャル・サポートを活用できているので, 中等度の正の相関がみられました。つまり,他者に貢 ストレッサーからの直接の影響は大きくても,それほ 献できていることが,困った時に援助を受けられるベ ど大きくストレス反応を出しているわけではなさそう ースを作るばかりでなく,自尊感情をも高めることが です。この結果を Albee の予防等式に当てはめてみる わかりました。 と,分母部分にあたる対処能力・自尊心・社会的支援 また,図 7 をみると,「他者貢献」と「自己受容」 網の三つすべてが高いことは,問題発生の大きさを小 との間に引かれた矢印に 「.46」 という数字があります。 さく抑えることが確認されました。 これは相関係数を表していますが, 「他者貢献」と「自 己受容」とは.46 の比較的強い相関があったことを意 2. 自尊感情と精神的健康の関連 味しています。同様に,「他者貢献」と「他者信頼」 ところで,精神的健康の三つの領域がストレス過程 の間には,.31 の弱い相関がみられました。「自己受 に与える影響を検討するために重回帰分析という分析 容」と「他者信頼」の間には,.14 という数字があり を行ったところ(図 7,8) , 「自己受容」と「他者信頼」 ますが,±.20 以下の相関係数はほとんど相関がない は「情動反応」や「ストレス反応」に負の有意な影響 ことを意味します。岸見(2007)によれば,アドラー を与えていました。これは, 「自己受容」や「他者信頼」 は「他の人に貢献できる自分が受け入れられるのであ ができていると「情動反応」や「ストレス反応」を緩 り,貢献するためには他の人を信頼できていなければ 和する効果があることを意味しています。しかし, 「他 ならない」と述べています。つまり, 「他者貢献」がで 者貢献」 はいずれも負の影響を与えていませんでした。 きたときに「自己受容」や「他者信頼」ができると述 しかし,図 9,10 をみると, 「援助要請対処(問題解決 べています。そのため,精神的に健康であるためには のために他者に援助を求める対処) 」 や 「問題焦点対処」 「他者貢献」 ・ 「自己受容」 ・ 「他者信頼」のどれ一つと およびソーシャル・サポートにおいて, 「他者貢献」は して欠くことができないとも述べています。 正の有意な影響を与えていました。この結果から, 「他 さらに,岸見(2007)は, 「ある状況が自分にとっ 者貢献」は,情動反応やストレス反応に直接働きかけ てどういうことかをまず考えるのではなく,皆にとっ るというよりはむしろ,ストレス反応を緩和させるよ てどういうことなのか,いいことなのか,悪いことな うなコーピングやソーシャル・サポートを受けるため のかを考えられるということ,その中で自分がどう貢 の下地を整えるような役割を果たしていることがうか 献できるかを考えていくことは,健康なパーソナリテ ィ,幸福であることの大きな条件です。このように常 に自分のことだけではなく, 他者のことも考えられる, 他者は私を支え,私も他者とのつながりの中で他者に 貢献できていると感じられること,私と他者とは相互 依存的であるということ,しかし,同時にそのことは 決して自己犠牲的な生き方を善しとする考えもなく, 自分も他者に貢献できていると思えること……このよ うな意味のことをアドラーは「共同体感覚」という言 葉で表そうとしている」 ,と述べています。そして,ア ドラーは,この「共同体感覚」こそが人類を救い,人 が精神的に健康であるかをテストする唯一妥当な方法 だ,と述べています。 自尊感情を高め,ストレスに強い子どもを育て,共 同体感覚を育てるために,これからの学校教育には, それぞれの生徒が自らの貢献感を味わうことができる ような機会を意識的に設けていくことが必要であると 感じられます。 おわりに お忙しい中、調査にご協力くださいました先生方を はじめ、生徒のみなさんに心より感謝申し上げます。 主な引用・参考文献 ドン・ディンクメイヤー&ゲーリー・D・マッケイ 柳 平彬(訳)(2005).STEP ティーン 親のためのガ イドブック 発心社. 岸見一郎(2007).アドラー心理学入門よりよい人間関 係のために KK ベストセラーズ. 松﨑学(2009).ある公立学校における取り組みの総括 と今後の日本の教育への提言 山形大学教職・教育 実践研究,4,71-82 岡田佳子(2002). 中学生の心理的ストレス・プロセス に関する研究―二次的反応の生起についての検討 ― 教育心理学研究,50(2),193-203.
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