第2回「グローバルシンクタンクサミット」 講演メモ 「日はまた昇る」を信じて

第2回「グローバルシンクタンクサミット」
講演メモ
「日はまた昇る」を信じて
衆議院議員
二階俊博
冒頭挨拶
ご列席の皆様、ただ今ご紹介を頂きました二階俊博
でございます。中国国際経済交流中心ほか、関係者の
皆様のご尽力により、ここ北京において、「第2回グ
ローバルシンクタンクサミット」が盛大に開催されま
した。本サミットについては、2009年7月に第1
回が開催されました際も、私は曾培炎理事長からお招
きを頂きました。そして、本日、2年越しでこのよう
な素晴らしい場に参加することができたことを、大変
光栄に思う次第であります。
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東日本大震災
サミットにご参加の皆様がご承知の通り、3月11
日、我が国の東日本地区は未曾有の大災害に見舞われ
ました。震災発生以降、中国をはじめ米国等、数多く
の世界の国々から、心温まるたくさんのお見舞いとご
支援を頂戴しました。この場をお借りして、心より感
謝申し上げます。
特に隣国の古い友人である中国の皆さんからは、震
災後、救援物資や燃料の支援、国際救助隊の派遣等、
様々なかたちで数々のご支援を頂きました。また、3
月18日に、胡錦濤国家主席ご自身が、震災の犠牲者
の弔問のため、在中国日本大使館をご訪問頂いたこと
に、多くの国民が心から感謝しております。また、5
月、東京で開催された日中韓サミットの際にも、温家
宝総理自らが、仙台及び福島の被災地、避難所に足を
運んで、お見舞いをして下さいましたが、このような
温かい心強いご支援を大変嬉しく思いました。あらた
めて中国の皆様のご厚情に感謝を申し上げたいと思
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います。
東日本大震災に襲われてから、100日が過ぎ去り
ました。我が国に与えた被害、そして日本人の心に与
えた衝撃はあまりにも大きく、未だに多くの方々にと
って不安な日々が続いております。震災に伴う一連の
負の連鎖に対し、海外の皆様も、日本の底力を信頼し
つつも、「日本」は果たして大丈夫かとのご心配をか
けております。しかしながら、私は、日本人のたくま
しさ、危機に陥った時に発揮する団結の力を信じてお
ります。あらゆる課題に全力を傾け、近い将来、「日
はまた昇る」を固く信じております。ご支援を寄せて
いただく国々の皆様のお陰で、やがていつの日か「日
本はこの通り復活しました」と、世界に向けて発信で
きるように、日本人の総力を尽くした「復興」を成し
遂げたいと思います。
原子力発電所事故
この震災に伴って、大変残念なことに福島第一原子
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力発電所において事故が発生いたしました。近隣諸国
をはじめとする各国に多大なご心配をおかけしまし
たことを大変遺憾に思います。現在、福島第一原子力
発電所の状況は着実に安定してきておりますが、一日
も早く事態を収束させるべく、国の総力を挙げて取り
組んでいるところでございます。
経済への影響
今回の震災が与えた影響は大きく、日本政府の試算
では、震災の影響によるストックの毀損額が約16~
25兆円と言われております。また、被災地の東北・
北関東地域には、世界的な部品・素材メーカーの工場
が数多く所在しており、震災発生によって、国内外の
サプライチェーンに影響が波及しました。この結果、
日本の優れた部品・素材を活用する世界各地における
生産活動に大きな影響をもたらしました。
しかしながら、現在は、被災地の経済活動も、急速
な回復に向け動き出しています。4月に経済産業省が
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公表した調査結果によれば、被災した生産拠点は4月
の時点で既に6割強が復旧し、残り3割弱も夏までに
復旧するという見込みであります。世界の国々に対し
て、部品、素材や工業製品を提供することは日本の産
業界の責務であると考えております。早急なサプライ
チェーンの復旧に向け、経済界を先頭に懸命に取り組
んでいるところであります。
中小企業
特に、被災した地域の企業のほとんどは中小企業で
あり、その中には電子部品製造など「ものづくり日本」
の基盤を支えるような技術を持つ企業も少なくあり
ません。東北地域には、
「元気なものづくり中小企業」
として認定された企業が100社近くもあり、こうし
た企業は、政府による震災対応の金融支援なども活用
し、相互に助け合って急速な復旧を進めており、震災
を機に海外市場も含めた新たな販路開拓を目指すよ
うな前向きな動きも出てきております。
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国際協力
我が国は震災後の復興・復旧に向け、官民を挙げて
取り組んでおりますが、中国をはじめとする国際社会
と協力しながら、この問題に対処していくことが重要
であると考えております。
(1)今回の震災によって海外から我が国への観光が
深刻な影響を受けております。4月の訪日外国人旅行
者数は前年同期比マイナス63%を記録し、過去最悪
の減少率となりました。特に、原発事故により、訪日
旅行の「安全・安心」に対する信頼が損なわれたこと
が大きいと考えていますが、実際には、一部の地域を
除く国内の大半の地域では、経済活動や市民活動は正
常に戻っております。観光に関しても、以前と全く変
わりない「おもてなし」の心で官民を挙げて、中国を
はじめ、世界各国からのお客様をお迎えすることがで
きる準備が整っております。
中国においては、4月末に日本への渡航制限を緩和
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され、その後、東京への団体観光ツアーも再開されま
した。また、先月、温家宝総理が訪日された際には、
しょう き
い
りょゆう
邵 琪偉国家旅游局長を団長とした100名規模の観
光ミッションを派遣するとの御提案を頂き、5月末に
来日いただきました。その際、私も全国旅行業協会の
しょう
会長として 邵 局長ご一行をお迎えし、震災後の復興
等について、有意義な意見交換をいたしました。今後
とも、中国をはじめ、各国の皆様には是非、元気を取
り戻した日本にどしどしお越しいただきたいと思い
ます。
(2)福島第一原子力発電所の事故の影響により、農
産品や工業製品等の我が国からの輸入品について、多
くの国で規制・検査を強化する動きがあります。
例えば、中国においては、日本の一部地域の農産品
について輸入を禁止し、それ以外の地域のものについ
ても放射線証明書や原産地証明書等を求められるな
ど、非常に厳しい措置がとられていると承知しており
ます。我が国では、国内法に基づき、一部産品の出荷
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制限を行うことなどを通じて、食の安全確保にしっか
り取り組んでいるところであります。
是非とも、中国を含め世界の各国におかれては、科
学的根拠に基づいた対応をお願いしたいと考えてお
ります。
(3)福島第一原子力発電所の事故発生を受け、我が
国ではエネルギー政策の見直しが求められておりま
す。我が国のみならず、多くの国において、今後、エ
ネルギー安定供給のあり方について大きな関心を集
めていると思います。このような中で、省エネルギー
と再生可能エネルギーへの期待が一層高まっており
ます。我が国においては、1970年代のオイルショ
ックの経験を踏まえ、省エネ政策を国家戦略の一つと
して位置付け、世界で最高レベルのエネルギー効率を
実現するなど努力を続けてきました。
こうした経験を踏まえ、また、グローバルな気候変
動問題に対する対応として、中国をはじめとする諸外
国との間で省エネ・環境協力に力を入れて取り組んで
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まいりました。
中国との間では、私が経済産業大臣であった200
6年5月に、官民による省エネ・環境協力の場として、
「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」を立ち上
げました。それ以降、毎年開催し、今ではこれまでに
5回のフォーラムが開催され、のべ5000人以上の
経済人、技術陣が参加され、合計120件の省エネ・
環境協力について合意する等、これまでに大きな成果
を残してまいりました。このような省エネ・環境分野
における日中間協力は、アジア地域のエネルギー・環
境問題の解決に貢献するとともに、日本の優れた環境
技術・ノウハウを活用するものです。今後も、日中間
の技術交流が、より発展していくことを期待しており
ます。
コンテンツ
来年の日中国交正常化40周年という両国関係の
大きな節目の年を前に、昨年の日中首脳会談での合意
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を受け、日中映像交流事業として「映画、テレビ週間」、
「アニメ・フェスティバル」を本年、両国にて行うこ
とになっております。その日本側開幕行事が、今月8
日、ここ北京において盛大に開催されました。我が国
からは、総理時代に私がお仕えした麻生太郎議員が総
理特使として団長を務め、温家宝総理とともに開幕行
事に出席いたしました。
本交流事業において、中国では多くの日本の映画、
テレビ、アニメが上映又は放送を計画しており、また、
10月には、日本において中国側の開幕行事、映画、
アニメ・イベント等が開催されると聞いており、大い
に盛り上がることを大変楽しみにしております。この
ような交流は、両国の文化産業の交流や発展のみなら
ず、両国国民の真の相互理解に繋がるものであると確
信しております。
結び
経済発展が著しい、ここ中国では、昨年、上海万博
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が盛大に開催されました。私も、経済産業省の中に大
臣の諮問機関を設け、その提言を基に、鑑真和上像の
里帰りを実現する等、万博成功のため、官民挙げて全
力で応援をしておりました。本万博の開催が成功した
ことは、大変喜ばしいことと感じております。世界の
多くの方が、この万博の成功を見て、中国の経済発展
の勢いを実感したものと思われます。愛知万博、上海
万博の成功に続いて、来年は韓国麗水で万博が開かれ
ます。日・中・韓と続く万博の成功が、アジアの発展
のシンボルとして、世界経済の発展に大きく貢献して
いくことを期待しております。
最後になりますが、「グローバルシンクタンクサミ
ット」における議論が、アジア、世界各地の経済交流
の更なる発展に寄与することを確信しております。
「中国国際経済交流センター」の更なるご発展と、本
日ここにご参集の皆様のご健勝を祈念いたしまして、
私のご挨拶とさせていただきます。
ご静聴ありがとうございました。
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