[37] 成層火山 ① 火山が溶岩も火砕物も放出すると,溶岩流と火砕物の

[37] 成層火山
① 火山が溶岩も火砕物も放出すると,溶岩流と火砕物の単層が交互に積み重
なることで(上に)凹面状の形をもつ複式火山(composite volcano),すな
わち成層火山(stratovolcano)を作る.
② 成層火山は,沈み込み帯の上でよく見られる.
③ 有名な例が日本の富士山(図 12.11dを見よ),イタリアのベスビオ山とエ
トナ山,ワシントン州のレーニア山である.
④ セントへレンズ山は,1980 年の噴火がその北側面を破壊する以前は,ほぼ
完全な成層火山の形をもっていた(図 12.4 を見よ).
図 12.11d
成層火山は,火砕物質と溶岩流の互層によって作られている.割れ目の中で固
結した溶岩は葉脈状(riblike)の岩脈を作り,それらは円錐体(成層火山)を補
強する.
[38] 火口
① 椀の形をした窪み,すなわち火口(crater)はほとんどの火山の山頂に見ら
②
③
④
⑤
⑤
れ,火道の上にその中心がある.
噴火の間に,湧き出てくる溶岩が火口壁から溢れ出る.
噴火が終わると,火口内に残された溶岩はしばしば火道内へと逆流して固
結する.
次の噴火が起こると,その物質は,火砕性爆発によって火口の外へと噴き
出される.
火口は後に火口の中へ逆戻りした岩屑によって一部が塞がれる
火口の壁は急傾斜なので,それらは崩れたり,あるいは時間とともに侵食
される.
⑥ このようにして,火口は,直径が火道の数倍に,そして数 100 m の深さに
成長できる.
⑦ 例として,シシリア島のエトナ山の火口は,現在では直径が 300 mである
(図 12.11e を見よ).
図 12.11e
火口はほとんどの火山の山頂に見られる.噴火の後,溶岩はしばしば火道内に
逆流して固化し,後の火砕性爆発によって放出される.
[39]
カルデラ
①
大量のマグマが排出されると,大きなマグマ溜りはその天井を支えられな
い.
② そのような場合には,上に載る火山性構造が破滅的に崩落し,カルデラ
(crater)と呼ばれる,火口よりもはるかに巨大な,急な壁に囲まれた盆地
の形をした窪みを残す(図 12.11f を見よ).
③ オレゴン州のクレーターレイク(Crater Lake は固有名詞:訳は火口湖では
なくクレーターレイク)を形成したカルデラの進化を図 12.12 に示す.
④ カルデラは印象的な外観を持ち,その大きさは数キロメータ―からほぼ 50
キロメータ―あるいはそれ以上に及ぶ.
⑤ イエローストーン火山は,ロードアイランドよりも大きな面積をもち,合
衆国で最大の活動的カルデラである.
図 12.11f
カルデラは,激しい噴火が火山のマグマ溜りを空にし,その結果,上に載る岩
石を支えられなくなる時に生じる.それ(=上に載る岩石)は崩落し,急な壁
で囲まれた大きな窪地を残す.
図 12.12
クレーターレイクカルデラの進化のステージ
ステージ 1:新鮮なマグマがマグマ溜りを満たし,溶岩と白熱の灰の柱(=噴煙
柱)からなる火山噴火の引金になる(火山噴火を引き起こす).
ステージ 2:溶岩と火砕流の噴火が続き,そしてマグマ溜りが部分的に使い果た
される.
ステージ 3:カルデラは,山の頂上が空になった(マグマ)溜りへと崩落すると
きに生じる.大規模な火砕流が崩落に伴って発生し,カルデラとそ
の周囲の数百平方キロメータの地域を覆い隠す.
ステージ 4:湖がカルデラの中にできる.(マグマ)溜り中の残ったマグマは冷
却し,小規模な噴火活動が温泉とガス放出という形で続く.小さな
火山性円錐体がカルデラの中につくられる.
[40]
①
数十万年の後,新鮮なマグマが崩落したマグマ溜りに再び入り,マグマ溜
りを再び膨張させると,カルデラ底が再び上方にドーム状に隆起し,再生カ
ルデラ(resurgent caldera)を形成する.
② 噴火,崩落,再生のサイクルは,地質学的な時間の間に繰り返し起こるこ
とがある.
③ 過去 200 万年間に 3 回,イエローストーンカルデラは破局的に噴火し,そ
れぞれの(噴火)事例で,1980 年のセントへレンズ山噴火の数 100 から数
1000 倍の物質を放出し,現在の合衆国西部の大半を覆って火山灰を堆積さ
せた.
④ ほかの再生カルデラがニューメキシコ州のバレスカルデラとカリフォルニ
アのロングバレーカルデラであり,各々,120 万年前と 76 万年前に最後の
噴火を起こした.
[41] ダイアトリーム
① 地下深部から熱い物体が爆発的に抜けていくとき,噴火が衰えると火道と
その下の供給通路はしばしば火山角礫岩で充填されたまま残される.
② その結果生じる構造はダイアトリーム(diatreme)と呼ばれる.
③ ニューメキシコ州の周囲の平原の上に聳え立つシップロック(Shiprock は固
有名詞)は,[以下は逐語訳]それ(=シップロックをつくる物質)が通過
して噴火した堆積岩が侵食されて露出したダイアトリームである.[以下は
意訳]堆積岩を通過して噴火したが,その堆積岩が侵食されることで(地表
に)露出したダイアトリームである.
④
大陸横断の空の旅行者には,シップロックは,赤い砂漠中の巨大な黒い摩
天楼のように見える(図 12.13).
図 12.13
ダイアトリームの形成.周囲の平坦な層をなした堆積物の上に 515mの高さで聳
えるシップロックは,ダイアトリームすなわち火山性のパイプであり,かつて
それを包み込んでいた軟らかい堆積岩が浸食されることで(地表に)露出した.
中心の火山性パイプから放射状に延びる 6 枚の岩脈うちの 1 枚である,垂直の
岩脈に注目しなさい.
1.マントル中心部からのガスに満ちたマグマが上昇し,リソスフェアを破砕
する(force には“無理やり”とか“強引に”という意味が含まれているの
で,“上昇し”の部分はこれらのニュアンスが表現されるような訳にして
ください←各自で考える).
2.急速に上昇するマグマは,超音速で炸裂する際に,地殻とマントルの破片
を剥ぎ取り,運搬する.
3.噴火後,火山性の通路は固結したマグマとこれらの岩石の破片,すなわち
角礫岩(breccia)からなるダイアトリームを形成する.
4.円錐体の軟らかい堆積物と地殻の表層は浸食され,今日私たちが見ている
ダイアトリームのコア(中心部)と放射状の岩脈を残す.
[42]
①
ダイアトリームを形成する噴火機構は,地質学的記録からその全貌を知る
ことができる.
② いくつかのダイアトリームで見られる鉱物と岩石の種類は,100 km ほどと
いうたいへんな深さ,十分に上部マントル内の深さでのみ形成されうる.
③ ガスに充填したマグマは,リソスフェアを破砕することによってこれらの
深さから上昇し,大気中へと爆発的に噴出し,深部地殻とマントル由来のガ
スと固体の破片をときおり超音速で放出する.
④ そのような噴火は恐らく,地面に上下逆にした巨大なロケットの排気の噴
出が空中へ岩石とガスをばら撒いているように見えるであろう.
[43]
①
たぶん最も風変わりなダイアトリームは,南アフリカの名高いキンバリー
ダイアモンド鉱床にちなんで名づけられたキンバーライトパイプである.
② キンバーライトは,たいていは鉱物カンラン石を含む超苦鉄質岩であるカ
ンラン岩の火山岩タイプである.
③ キンバーライトパイプはまた多様なマントルの破片を含んであり,その中
にはマグマが地表に向かって爆発する際に,マグマ中へ取り込まれたダイア
モンドも含まれる(contain は通例含まれているもの全体をさす場合に用い
られ,include はあるものが全体の一部として含まれている場合に用いられ
る).
④ 炭素を鉱物ダイアモンドへとぎゅうぎゅうと押し込むのに必要とされる極
度に高い圧力は,地球内の深さ 150 km 以深でのみ達成される.
⑤ キンバーライトパイプ中に見られるダイアモンドとその他のマントル破片
を注意深く研究することで,地質学者は,あたかも彼らが 200 km 以深に達
するボーリングコアをもっているかのごとく,マントルの断面を復元するこ
とができる.
⑥ これらの研究は,上部マントルが主にカンラン岩からなるという理論に対
し強力な支持を提供する.
割れ目噴火
[44]
①
最大規模の噴火は中心火山によってもたられるのではなく,地球表面のほ
ぼ垂直な,時には長さ数 10 km もの亀裂を通して起こる(図 12.14).
② そのような割れ目噴火(fissure eruption)は,中央海嶺に沿っての主要な火
山活動の様式であり,そこでは新たな海洋地殻が形成される.
③ 中程度の規模の割れ目噴火は,1783 年にアイスランドで陸上に顔をだした
中央大西洋海嶺の一区画で起きた.
④ 結果として,アイスランドの人口の 1/5 が飢餓で死んだ.
⑤ 長さ 32 km の割れ目が開き,マンハッタンをエンパイヤーステートビルの
約中間の高さまで覆い尽くすのに十分なだけの,およそ 12 km3 の玄武岩が
噴き出した(図 12.15).
⑥ 割れ目噴火は,1783 年の大惨事よりは小さな規模ではあるが,アイスラン
ドで続いている.
図 12.14
1992 年にハワイのキラウエア火山において,割れ目噴火が“火のカーテン”を
発生させている.プウ・オオ火山はちょうどこの写真の上左に外れて位置する.
図 12.15
極度に流動的な玄武岩溶岩の割れ目噴火では,溶岩は急速に割れ目から流れ去
り,火山性の山を築くよりはむしろ広範囲に及ぶ層を形成する.1783 年に開ら
き,陸上での有史中最大規模の溶岩の流れを噴出したラキ割れ目(アイスラン
ド)に沿った火山性の円錐体.
1.割れ目から噴出している極度に流動的な玄武岩は・・・
2.山よりはむしろ広範囲に広がる層を形成する.
[45] 洪水玄武岩
① 平坦な地域の割れ目から噴出する極度に流動的な玄武岩質溶岩は,溶岩の
洪水となって,薄いシートになって広がる.
② 連続的な流れは,噴火が中心火道に限定されるときに楯状火山を形成する
のとは異なり,多くの場合積み重なって洪水玄武岩(flood basalt)と呼ばれ
る広大な玄武岩質の溶岩台地になる.
③ 約 1600 万年前の洪水玄武岩の巨大噴火は,ワシントン州,オレゴン州そし
てアイダホ州の以前から存在する地形を 160,000 平方キロメータ―にわたっ
て埋め尽くし,コロンビア高原を作った(図 12.16).
④ 一枚一枚の流れは厚さが 100 メートル以上あり,そのいくつかはあまりに
も流動的であったため,給源から 500 キロメータ―以上も流れた.
⑤ 新しい河谷を伴った全く新しい景観が,古い地表を埋積した溶岩の頂面に
それ以来発達した.
⑥ 洪水玄武岩によって作られた高原(台地)は,全ての大陸に見られる.
図 12.16
ワシントン州のコロンビア台地の景観.洪水玄武岩の連続的な流れが積み重な
り,ワシントン州とオレゴン州の広範囲を覆うこの膨大な高原(台地)を作っ
た.