「Safety & Tomorrow」に『当社のあゆみと技術の継承』

わが社の
防災体制
当社のあゆみと技術の継承
宇部工業株式会社
プロジェクト設計部 重富
1
工
得意とする分野で、数多くの実績を残しており
はじめに
宇部工業株式会社は山口県宇部市にある鉄
ます。又、石油・ケミカル製品の蒸発損失及び
工、鉄建、土木、建築、海事などからなる総合
環境影響防止に有効なウルトラフロートカバー
建設業の会社で、昨年11月には、創立60周年を
(内部浮き屋根)の設置でも全国展開をしてい
ます。
迎えることができました。
母体であり中核の鉄工部門は、危険物施設の
2
建設を中心に、北は北海道稚内から南は沖縄宮
会社組織
本
古下地島まで47都道府県の津々浦々で足跡を残
社
山口県宇部市大字妻崎開作874
番地の1
してきました。
支
燃料・化成品貯蔵設備、タンク建設・保全工
事、特に空港給油施設の建設についても当社の
店
東京・広島・福岡
営 業 所
島根・山陽小野田
関連会社
海栄工業株式会社
西日本住宅企業株式会社
山陽食品工業株式会社
株式会社ダック
株式会社エヌ・ユー・エス
タンク建設プラント事業は、鉄工事業部で
行っています。
宇 部 工 業 株 式 会 社
宇部本社事務所
管 理 本 部
総務部
鉄工営業部
鉄建部
鉄工事業部
生産部
設計部
建設事業部
土木部
建築部
海事事業部
海事部
E&F部
第一工場
1
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企業理念
当社は、
『創業期企業理念』
、
『第2創業期企業
理念』を掲げ、この理念に基づく、経営思想の
具現化としています。
『創業期企業理念』
思わぬ出来事により石油元売りでの実績がで
き、それが評価されて地上タンク業界へ、進
出して行きました。
1964年11月、別会社であった宇部築港株式
会社と合併し、現社名宇部工業株式会社とな
りました。
当時の状況を記録した写真を、一部ご紹介
します。
『第2創業期企業理念』
第2創業期企業理念
自らが誇れる会社、社会が評価する会社、
家族が満足する会社づくりを目指そう
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タンク建設プラント事業への取組
本事業は、鉄工事業部の鉄工営業部・設計部・
苫小牧での建設現場
生産部が一体となって取り組んでいます。タン
ク建設については、顧客ニーズの把握、技術的
提案、計画設計、地質調査、地盤基礎の設計、
本体の設計、消防申請、危険物保安技術協会の
審査、資機材の調達、供給者の選定、工場製作、
運搬、現地組立・溶接、試験・検査・試運転引
渡しまでの一式を行っています。
⑴
沿革
当社は戦後間もない1948年に宇部商工社と
いう小さな商社として創業しました。翌1949
年に宇部製缶工業となり、タンク製造をめざ
して活動を始めました。当初は木造漁船の燃
料タンクの製作と設置で、九州から山陰方面
で事業を展開していました。のちに地上タン
クへの営業を始めました。当時、宇部管内で
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大型タンクの建設現場
(クレーンの入らない急峻狭
隘地で新型ゴリヤスが活躍)
石油基地全景
その後、全国で石油元売り各社の油槽所建
設にあたり、製油所、化学工場などに、タン
ク・機械装置・塔槽類などを納入するほか、
道路橋・荷役設備・鉄骨建物なども順調に推
移しました。
受注の増加と大型化に伴い、1969年に既設
工場の2倍の規模と生産能力を持つ大型化工
機製作工場を建設しました。同工場の完成に
ローリー車出荷場
より、大型タンク・ガスホルダー・大型化工
機・各種輸送機・橋梁関係にも進出していき
ました。
新規顧客、新規商品の開拓を続け、直近で
は国内最大級8,000㎘のスチレンモノマー貯
蔵タンク、大阪でアスファルト設備新設、愛
媛 で 15,000㎥ 窒 素 ガ ス ホ ル ダ ー、大 分 で
6,000㎘トルエンタンク貯蔵設備(地盤基礎・
受注管理システム
統合中央監視制御システム
附帯施設共)建設などの工事の実績を積みま
した。
⑵
といえます。
事業展開
●
●
2004年9月に、大型プロジェクト「九州
空港航空機燃料給油施設
1970年の熊本空港給油施設の建設を皮切
地区の石油基地建設」が完成しました。
りに、
空港給油施設の分野へ参入しました。
特定屋外タンク10基(翌年2基増設)
、準
以後、大分・松山・長崎・名古屋・新潟・
特定タンク1基、設備規模、レイアウト、
小松と建設して行きました。
最新の IT 技術を駆使した受注から出荷迄
の統合中央監視制御管理システム、基本プ
1980年には沖縄下地島空港、1989年受注
ランニングから運用開始迄の一切をお引き
の新千歳空港給油施設は3年間にわたる工
受けした当社にとって油槽所建設の集大成
事でした。2002年には成田空港公団第2給
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空港給油施設参入のきっかけとなった
熊本空港給油施設
(当初は50㎘枕型タンク1基だった。
)
地盤改良工事
新千歳空港給油施設
建設中のタンク群
油センターにタンク4基を納入しました。
女満別
新設工事のみならず、増設工事からメン
旭川
中標津
千歳
テナンス、部品調達まで、きめこまかく対
応しています。
青森
能登、神戸…、現在北海道女満別から沖
三沢
大館能代
秋田
縄下地島まで、41空港での実績があります。
庄内
山形
平成21年2月には、静岡空港の給油施設も
能登
完成・引渡しを行いました。
●
小松
石見
米子
広島
特定タンク、準特定タンクの安全性評価
の適合判定として、各分野の顧客のお手伝
いを行っています。
福岡
大分
長崎
神戸
松山
高松
徳島
高知
南紀白浜
OKINAWA
熊本
宮崎
鹿児島
成田
名古屋
岡山
静岡
山口宇部
佐賀
富山
松本
鳥取
出雲
タンクの安全性評価
新潟
仙台
福島
下地島
MIYAKO
タンク本体の評価は元より、タンク基礎
の評価についても、調査・事前評価を実施
し、各種提案を行っています。
●
ウルトラ・ブイラス(炭化水素ベーパー
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空港給油施設実績地図
ウルトラフロートカバー
大気放出
吸着
脱着
脱着
吸着
吸着塔A
OPEN
CLOSE
吸着塔B
吸着液
温度調整
吸着剤
N
回収塔
■給水
充填剤
P
P タンク
冷却
発生源
VP
P
真空ポンプ 回収ポンプ
ウルトラドーム
タンク
役立てています。現在まで全国各地に227
炭化水素ペーパー回収装置標準プロセス説明図
基を納めました。
今後も改善を行ないながら、より有効で
回収装置)
安全な製品を供給します。
製油所・石油化学工場・基地などの受入・
●
出荷・製造設備運転時に発生する炭化水素
ウルトラドーム(アルミ製ドーム)
ベーパーによる大気汚染の防止と貴重な炭
国内では、水道局向け PC 製貯水タンク
化水素資源の回収を高能率で行う設備で
及び農業用水用タンクのアルミ製屋根とし
す。
て建設しております。又、タンク貯蔵液の
品質確保及び貯蔵液の蒸発ロス防止の目的
め、溶剤等あらゆる炭化水素ベーパーに適
で設置できます。当社の今後の新たな製品
用できます。
として、各種分野へ本製品を供給します。
●
ガソリン・ナフサ・ジェット燃料をはじ
写真は UAE に建設されたウルトラフ
ウルトラフロートカバー(アルミ製・ス
ロート社製アルミドームです。タンク内部
テンレス製内部浮屋根)
にはウルトラフロートカバーが入っていま
当社では1979年から米国の特許製品であ
す。
るアルミ製・ステンレス製の内部浮屋根の
建設を行なっています。
5
固定屋根式貯蔵タンクから生じるベー
3 QS 活動と ISO9001
1970年に QC 活動として「3 Q 運動」をス
パーでの製品の損失を減少させることを目
タートさせました。
的とし、大気汚染防止及び資源有効活用に
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品 質(Quality)・工 程(Quickly)・原 価
(Quantity)の頭文字の3 Q と ThankYou をか
が当社の人材育成の柱となっています。
⑴
国家公認資格保有数(重複保有を含)
けたもので、後に安全(Safety)を加え、3 QS
1級土木施工管理技士
78名
としました。
1級管工事施工管理技士
20名
1級・2級建築士
8名
1級建築施工管理技士
22名
甲種消防設備士
41名
この運動は、職場・現場単位の小集団活動で、
4つの基本テーマを置き、そのテーマごとに、
「小さなところから改善して行こう」というも
ので、提案活動を含め、社員一人一人が積極的
乙種危険物取扱者(第4類) 17名
に活動することを目的とし、今では、完全に業
溶接施工管理技術者
22名
務と一体化した重要な活動として定着していま
鉄骨製作管理製品検査技術者
14名
す。
非破壊検査技術者
8名
建設機械施工技士・測量士・電気工事施工
現在はこの小集団活動と ISO9001品質システ
ムを一体化して取り組み、当社の大きな力と
管理技士・情報処理技術者等
なっています。
以下、私達鉄工部門の技術・技能継承専門教
「もともとあったが、体系化されておらず、
よってあいまいだったもの」を明確にし、体系
化し運用しています。製品の保管識別、不適合
育を簡単に紹介します。
⑵
設計技術者・製作施工管理技術者の教育
●
5月中旬、
鉄工部門に配属された新人は、
品発生時の処置、記録、施工手順書等の充実、
基礎的な技術知識を持った理工科系専攻者
文書の整理整頓、保管状態の向上などに大きく
であり、共通教育で最小限の法的教育と工
役立っています。P・D・C・A のスパイラルアッ
場実習は終了していますが、一部キャリア
プの考えが定着し、技術ノウハウの見える化が
採用者を除いて、私達が手掛ける完成品・
進みました。
製作及び組立過程・その為の作業・準備す
べき物等に関して一切が初めてです。
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各部署に配属されると、部署長を責任者
人材育成と技術・技能の継承
とし、規定通り予め作成・承認された各教
当社の社員教育体系は多くの業種・職種をふ
育内容とその担当者・達成基準・評価方法
まえて次の2つに大別できます。
1つは全社員を対象とした新入時・職種別年
及び基準を明記した1年間の教育訓練計画
次・階層別・社外委託の宇部工業グループ社員
書に基づく基礎教育が始まります。その間
としての共通教育・能力開発体系です。
には約4ヶ月間の建設現場派遣研修があり
ます。
1つは各部門別に実施される技術・技能の継
教える者は教えるために自身の能力向上
承を目的とした専門人材教育です。
共通社員教育は一般に行われる教育体系と大
を計り、教えられる者は毎日が法令・技術
差がないと思いますが、当社では法定教育・法
基準・社内標準と、慣れない専門用語・機
定資格と共に、施工管理技士・消防設備士等、
械と闘うというマンツーマン教育であり、
専門職の国家公認資格取得が義務付けられてい
徒弟制度にも似て、
時に寝食を共にしつつ、
ます。
且つ主として社内を対象とする社会技術取
得の場・人間教育の場と捉えています。
この2つを有機的に組み合わせて「個人別」
に「適切な時期に適切な教育」を実施すること
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●
以後、原則2年間、新人は各々の部門の
先輩が受け持つ JOB のアシスタントとし
て、直接業務に当たります。
いわゆる OJT による実戦経験ですが、
私達がお客様に納める仕事に同じ物はまず
ありません。同じお客様、同じ場所も少な
い上に1つの JOB 完了毎にアシストする
中堅・ベテラン技術者が変わります。
先輩も自らの評価対象となる為、真剣か
つ時には辛辣な指導となりますが、社内は
もちろん、お客様・官庁・協力会社との調
整の場を始めとする現業実務全てにわたる
為、新人にとっては1番大切な、学べる・
力の付く期間です。時に後から操られつつ
も、単独で業務をやり遂げた JOB は大小・
出来・不出来の自信と反省は自らの足跡と
していつまでも思い出に残ります。
⑶
製作技能・溶接技能教育
当社はその生い立ちから専用工場を持ち、
設計から材料調達・製作加工・現場建設まで
の一貫した生産体制を取っています。
特にタンク本体等危険物施設施工に当たっ
ては、お客様に責任ある品質で納入するため
に自らの手で、
製作加工することが必要です。
一例ですが、私達が組立するタンク本体は確
実に製作された部材を、決められた位置に、
決められた手順で組み込む立体的ジグソーパ
ズルであり、決して現地で修正加工してはな
りません。
タンクの品質にとって最も重要な本体溶接
のために、可能な限り製作し、機械加工され
た高精度な開先を保持し、組立時決められた
ルートギャップを取って、母材側最適溶接条
件を確実にすることが最も重要と考えるから
です。
●
製作技能
工場の生産体制として、製缶 Gr・現寸
Gr・溶接 Gr・機械加工 Gr があります。
少 人 数 で の Gr 体 制 を 取 っ て い ま す。
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Safety & Tomorrow No.125 (2009.5)
10∼15年、リーダーの元で指導を受け、経
験を積んだ者が新たな Gr を作るというシ
ステムで、技術技能の継承を図っています。
現地工事では、協力会社を主とした体制
ですが、高齢化等の課題はあります。
●
溶接技能
当社にとって溶接技術は大変重要です。
破壊させる」
決められたこと(法や社内規則)を確認し、
持ち場・立場で確実に実践することで無災害を
達成せよ。
総合安全衛生管理室で具体的な安全衛生管理
計画を行い、実行しています。
安全衛生教育として、
「作業標準書」
「作業手
危険物タンクの品質は溶接に左右されるた
順書」の作成と活用の推進を行い、社員各自の
め、常に最高の技術と技能を発揮しなけれ
持つ高い技能と作業ノウハウの継承を行い、安
ばなりません。そのモチベーションの維持
全に効率よく、品質の良い製品を作ることに努
と日頃の鍛錬の成果を見る場として、競技
めています。
大会に定期的に参加しています。
1998年第28回、2004年第34回山口県溶接
技術競技会において団体優勝、2008年には
又、
「ヒヤリハット活動」の全社員参加を促進
し、
「施工検討会議」での予防措置の提案・検討
を実施し、安全意識の教育を行っています。
1979年以来の個人優勝を果たしました。
施工現場での溶接工の高齢化が言われる
中、それを見据えて養成していく必要があ
ります。
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おわりに
設計から施工までを自社でこなすことで、設
計に関しても施工に関しても、各種ノウハウを
先人より受け継ぎ、さらに発展させ、次に継承
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安全への取り組み
している状況です。
当社では「企業理念」及び「安全衛生基本方
めまぐるしい時代の変化に対応しつつ、技術
針」をもとに決めた「安全衛生重点方針」に従っ
者としての人材育成にいかに取り組むか、難し
た生産活動を全社員で推進しています。
い課題ではありますが、
これからも一歩一歩
「決
【安全衛生重点方針】
められたことを当たり前に・確実に実行する」
グループ安全衛生基本方針:無事故・無災害
安全衛生重点方針:
「労働災害・事故は企業を
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人作りに取り組んで行きたいと思います。